今回は、「滋賀県交通安全女性団体連合会」の皆さんと対話を行いました。
「交通安全は家庭から」の実践を促進し、交通事故のない明るい社会の実現に寄与することを目的に、県内全体のカンガルークラブや家族会、母の会等の交通安全団体をとりまとめ、平成3年に結成され、現在は15団体、約2200名で構成されています。
高齢者から幼児までの幅広い年代を対象とした啓発を実施されるなど、その活動は「交通事故のない滋賀」の実現に大きく貢献し、子どもたちにも大盛況です。
今回は、滋賀県交通安全女性団体連合会の皆さんと三日月知事が、日々の活動を通じて感じておられることや、交通事故のない明るい社会の実現に向けての課題等について語り合いました。また、対話の後には知事と滋賀県交通安全女性団体連合会による「地域から広げよう交通安全の輪」宣言が行われました。
●常日頃、高齢者の皆さま方への声掛けなど、女性の視点で交通安全のために貢献いただいていることに心から感謝申し上げる。
●歩道にいる子どもに車が突っ込んで来て2名が亡くなるという事故が県内で起こり、全国各地でも、例えば高齢の方が運転される車で事故が起きるということが頻発している。今年は滋賀県も前年に比べ、すでに20人も多くお亡くなりになっているという状況。
●一人が気を付けても、行政だけで呼び掛けても、交通安全はつくれるものではないが、諦めることなく粘り強く広めていくこと、取り組むことは、大変重要だと思っている。その意味で、今日は皆さんが現場で日ごろお考えになっていることをしっかりと承って、今後の政策に活かしていきたいと思っている。
●交通戦争と言われた昭和50年代以降、交通弱者を交通事故から守ろうとする動きが全国的に起こり、県内各地にカンガルークラブ、交通安全家族会、交通安全母の会などができ、それぞれがバラバラに活動を行っていた。それらの団体をとりまとめ、平成3年に「交通安全は家庭から」をモットーとする当連合会が結成された。現在15の支部の下、会員約2200名が活動している。
●当初は、子どもを交通事故から守ろうとする母親目線での活動が中心だったが、今は高齢者が犠牲となる交通事故も増加しているため、子どもと高齢者を守る家庭目線での活動を行っている。
●一番力を入れている取組が、高齢者訪問事業である。一軒一軒、高齢者宅を訪問している。留守なのか、老人福祉施設等に入所されているのか、全く分からない状態での訪問であるので、すごく手間取っているが、毎年、県内で約4300世帯を訪問している。これは平成7年ごろから、ずっと続けている取組である。他にも、高齢者が集まるサロンや皆さんがよく行かれるグランドゴルフ場に出掛けて行き、直接、交通安全を呼び掛けている。他にも、チャイルドシートの着用促進、母と子の自転車教室、三世代交流交通安全教室などを行っている。
●当連合会主催の指導者向け研修会も年1回行っている。各地域で直面している諸問題、情報交換を積極的に行い、リーダーとしての役割を理解していただいている。内閣府主催の講習会も年1回ある。ここでは、近畿地区で活動している人が一堂に会した交通安全交流会が行われている。各府県が輪番で開催するが、その県特有の交通指導など色々な情報を聞き、良いところを学んでくる。また、滋賀県から他府県へのアピールもしている。熱の入った交流会が続いている。
●啓発時には、啓発グッズとして“無事に帰る”という願掛けで“カエル”をつくったり、空き缶とボール紙をリリアン(手芸用の組糸)で巻いて、事故“防止”とかけた“帽子”などをつくったりしている。
●交通安全フェアなどのイベントでは、オリジナルの反射材づくりを体験できるブースを出店している。毎回大盛況で、ワッペンに子どもが好きな絵を描いて、お母さんお父さんと一緒につくって持って帰っていただいている。子ども達が自分でつくった反射材を身に着けてくれることで交通事故に対する意識向上を図っている。
●身に着けていただく啓発品も良いが、高齢者の方は食べものの方が喜ばれるので、草津栗東では、おせんべいをつくって啓発している。これはものすごく好評であり、ずっと続けている。
●長浜では、手づくりのマスコットをつくって、高齢者の方にお渡ししている。
●甲賀では、少し前まで、信楽焼のカエルを使った200~300個の啓発品を個人で自主的に作ってくださる方がいらっしゃった。今はその方が高齢になられて、最近は別の啓発品で啓発しているので、みんなで何か新たな啓発品を考えようとしているところ。
●季節感あふれる事業もやっている。例えば、夏には浴衣を着て、手づくりのうちわを配る、バレンタインにはチョコレートをつくって配る、七夕には皆さんに短冊を配る、クリスマスはサンタの格好をして啓発するなど。
●連合会の中でも地域ごとに色々なかたちで啓発をしている。例えば、草津栗東には20支部あり、支部ごとにやり方が違う。どこの支部も頑張っている。
●県ブロックで考えると、他の県と比べても活発に活動している方だと思う。
●交通安全家族会は、登下校を見守るお母さん達の会から立ち上がってきたが、登下校の見守りはPTAで行うことになり、規模が縮小していったので、交通安全家族会としては小学校に出向いて、交通安全教室をしている。去年は栗東市にある9つの小学校のうち、4つの小学校と3つの子ども会、自治会などを回り、出前教室をしている。栗東には、交通安全家族会、カンガルークラブの他にもたくさんの会がある。
●カンガルークラブは、幼児対象に交通安全教室をやっている団体。栗東の他にも各地にある。
●私たちの活動は微力だが、地域に浸透するように、そして事故のない明るいまちをつくるために、女性パワーをいっぱい出し切って、積極的に活動をしていきたいと思っている。
●滋賀県の学校では各発達段階に応じて、自転車交通安全教室の指導を行っていくことになっているが、どこまでどうしていくかという判断は担当の先生に任されるようで、毎年先生と話し合いをしていかないといけないというところが難しい。子どもの自転車教室をするにあたり、学校側からなかなかいい返事をいただけないこともあるので、滋賀県教育委員会などを通じて、指導していただけたら良いと思う。
●逆に、学校の方から依頼があって、自転車教室を行う地域もある。自分の自転車の点検をした後、外に出て乗ってみたり、運動場で自転車の乗り方を教えたりする。体育館の中に信号機などをつくって、渡り方などを教える活動をしている地域もある。
●甲賀市の大原小学校は、去年の交通安全子供自転車大会で、県1位になって全国大会へ行った。細い道を脱輪しないように乗ったり、ジグザグ走行をしたりするなどルールがある。この大会に参加する児童がなかなか集まらない。練習も大変だし、大会は学校が休みの日にするので、引率する先生も大変。この大会は、小学校単位だが、学校の協力が得られないところは、学童単位で出場する。だが、学童の子が優勝をしたら、小学校ではないので、出場権がなくなる。ぜひ小学校の協力がほしい。
●小学校だと、児童の自転車の乗り方を学校が把握するのは難しい。「ヘルメットを買いなさい、お金を出しなさい」と直接的には言えない。中学校は通学で必要なので、全員買いましょうと言えるが。
●小学校でも登下校の時にヘルメットをかぶっている地域がある。そこでは、入学時に新しいヘルメットを買う。小学校、中学校の行き帰りは必ずヘルメット着用ということに決まっている。以前、子どもの事故があり、それ以降、ヘルメットを着用するようになった。自転車教室でもヘルメットを着用している。これも地域性がある。
●大人は全然ヘルメットをかぶっていない。ビワイチなどで、速く走るスポーツタイプの自転車に乗っている人は、ヘルメットを着用している人が多いが、普通の自転車では誰もかぶっていない。以前、おしゃれなヘルメットを警察の方から紹介いただいて、自治会で購入して、私も持っているが、実際に自転車に乗る時にはかぶれない。災害時に活用させてもらっている。いつも自転車に乗る時に、そのヘルメットをかぶって乗っているおばあちゃんがいて、「すごいね」と声を掛けたことがあった。
●幼稚園の送迎時でも、子どもにはヘルメットをかぶらせているが、親はかぶっていない。幼稚園の時にかぶっていたものを持っていても、小学生になると大きさが合わないし、ヘルメットは結構高い。大人用なら6000円くらいする。
●小池東京都知事が、車の事故防止装置の取り付けに補助金を出すと言っていた。滋賀県も補助を出してもらえるとありがたい。
●高齢者はあと何年乗れるか分からないので、新車は買わない。なので、今の車に付けられるような装置の方が大事。
●最近、高齢者の交通事故がすごく多いということで、自主返納について調べてみたところ、県下でも、だんだん自主返納をされる方が増えてきている。甲賀管内も右上がりに多くなってきているが、甲賀市内は田舎が多いので、返納すれば事故を起こす心配がないとは分かっていても、車がないと生活ができない。分かりながらも乗っているのは、そういうことだとおっしゃるお年寄りが多い。
でも、しようがないとは言いながら、交通事故を起こしてしまったら、それもまた大変。子どもをひいたり、人をはねたりという事故は、やっぱり避けないといけないと思う。最近は70歳を超えると、運転免許更新の際に講習をしたり、実技試験をしたりしているみたいだが、聞いたところ、その講習では、脱輪や信号無視をするような状態の人でも更新ができて喜んでいたとのこと。ひどい認知症でない限り、更新されるのが現状になっている。
警察の方に、もっと厳しくしたり、取り上げたりできないかと聞いたところ、免許証は本人が取得した権利であるため、むやみに停止したり没収したりすることはできないとのことであった。法的に厳しくするような対策を、警察だけ、行政だけでなく、日本の方向としてできないかと思っている。
●70歳以上は病院に行き、診察の結果、運転に適さないとなればドクターストップがかかり、治療をすればまた運転ができるという制度が他国にあるとテレビで見た。そういう補助もできないかと思っている。
●返納後、1年間はバスの料金が優遇される特典があるが、1年では短いと思う。もっと改良して、みんながこれなら返納しても、 病院まで行くのも大丈夫だと思えるような特典を付けてほしい。
●国道161号線あたりのビワイチの自転車道はいまいちである。お金が要ることで申し訳ないが、「この道は危ないから、こっちの道から行けますよ」とか、「こっちの道が安全ですよ」というような看板を設置してほしい。これからは夏休みなので、親子でビワイチをする人も増える。
●歩道が2メートルあり、その横に自転車道が1メートルぐらいあり、またその横に車道があるというのがどうかと思う。歩道は利用者が少ないのに、自転車道があまりに狭過ぎる。何とかうまく自転車が通れるように、条例か何かができたら一番良いかと思う。
●車に取り付ける事故防止装置のことについては、この前の議会でも指摘があった。その時は「やります」とは答えていない。高齢者の限定免許など免許制度を変えようとする動きがあったり、補助をするにも色々な機械、器具があったり、そもそも器具を設置しなくても、最初から安全装置が付いている車があったりするので、少し研究をしようと言っているところである。
●ビワイチのルートを分かりやすく安全にし、歩道と自動車道とうまくすみ分けをして、人通りがない広い歩道なら、必要な安全対策をし、自転車歩行者専用道路として走れるようにという取組を今やっているところ。琵琶湖の周りで、より安全に走ってもらえる場所の案内表示をしたり、必ずしも国道でなくても、少し人通りの少ない方へ誘導をしたりと、今どんどん変えていっている。逆に言うと、人通りが少ないからと言って自動車の来ない方を誘導して、そこが生活道路だったりすると、それも危ないので、「ここは生活道路なので、ゆっくり走ってください」というような呼び掛けもしていく必要があると思っている。