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第56回 「こんにちは!三日月です」

  • 対話相手「マキノのメタセコイア並木を守り育てる会」の皆さん

「マキノのメタセコイア並木を守り育てる会」の皆さん

今回は、「マキノのメタセコイア並木を守り育てる会」の皆さんと対話を行いました。

マキノ高原からマキノピックランドまでの約2.4kmに500本のメタセコイアが連なり、「平成6年 新・日本街路樹百景」「平成22年 日本紅葉の名所100選」にも選定された「マキノのメタセコイア並木」。「マキノのメタセコイア並木を守り育てる会」の皆さんは、四季を通じて全国から数多くの観光客が訪れるこの並木を市民の自主的かつ奉仕的な活動により保全、保育されています。

今回は、並木の維持保全活動の現状や、並木周辺の環境向上にかかる課題、ボランティアや地域との連携等について意見交換を行いました。

知事から

今回の対話にあたって

  • メタセコイア並木の素晴らしい景観や空間をお守りいただき、発信やおもてなしをいただいていることに敬意を表し、感謝申し上げる。
  • 一昨日からマキノ町の山中集落の家を借りて、明日までの4日間住ませてもらっている。様々なマキノの魅力や課題、可能性を感じたので、これからの県政にしっかりと活かしていきたい。マキノ町内には鞆結駅(ともゆいのえき)があり、大化の改新以降、奈良時代、平安時代と様々な方が通られる時に鞆結駅で人馬を休めたり、食料を入手したりした交易の拠点であったことを学んだ。午前中は在原業平のお墓にお参りもしてきた。県の除雪区間の先にあるので、高島土木事務所長と一緒にパトロールを兼ねて行ってきた。他には集落の方々との交流もさせていただいている。一昨日は、山下元利先生のお墓参りもさせていただき、地域のため、郷土のため、また国のために、長年御貢献いただいた大先輩の御遺徳を偲ばせていただいた。
  • 次の時代に、このマキノ、高島、滋賀をどうつないでいけばいいのか。そのために今、何をすればいいのか、しなければならないのかを皆さんと一緒に考えていきたいと思うので、気軽に御意見等をいただきたい。

「マキノのメタセコイア並木を守り育てる会」の皆さんから

設立までの経緯について

  • 「マキノのメタセコイア並木を守り育てる会」は並木の保存会である。平成22年11月に設立総会を開催し、現在に至っている。昭和50年代の初めに、琵琶湖周辺を直撃した台風により、観光栗園の約4万本の栗の木のうち7割強が倒木の被害にあった。その時に防風用のポプラ並木もほぼ全倒するという甚大な被害を受けた。そのような中、マキノ町果樹生産組合が、国の復興予算による援助再生と合わせ、ポプラ並木が植わっていた栗園を縦断する幹線道路沿いに、防風と修景を兼ね備えた強靱で美しい並木の創出という企画検討を進めた。そして、当時の県庁、マキノ町役場にも尽力いただき、メタセコイアの植栽を始めた。
  • 後に県が100本植えたので、現在は2.4km500本になったが、当初は1.8kmにわたって400本の木が植えられた。当初植えた土地は地権者144名の個人の土地。昭和51年に農事組合法人化されたマキノ町果樹生産組合が、その土地を借りて植えた。このような取組を行ったのは、非常に強い危機感があり、ランドマークをつくりたいという思いがあったからである。
  • メタセコイアを選んだ理由は、当時の新聞記事にある。化石から、琵琶湖周辺にメタセコイアが生えていたことが分かったという記事が載っていた。その記事を見て、メタセコイアは非常に形が良いと思った。また、成長が早い。用材にはならないが、修景木には最適だということで選んだ。
    そこから、マキノ町果樹生産組合の役員さんや組合員の皆さんが、ものすごく御苦労されながら木を大きくされた。木を植えて約10年後に新・日本街路樹百景に選ばれ、ようやく日の目を見た。その後、韓流ドラマの『冬のソナタ』が流行って観光客が来るようになった。その頃に、県が県道にさらに100本のメタセコイアを植えたが、「鳥が飛んできて糞を落とす」「暗くなった」等のクレームが来たため、約50本ほど伐採することになった。その時にマキノ町果樹生産組合の組合員さんが、「メタセコイア並木を活かし、自分たちで守らないといけない」と動き、平成22年に「マキノのメタセコイア並木を守り育てる会」ができた。
  • メタセコイアが育つと枝や葉が道路に落ちることなどもあり、地域の皆さんの理解が不可欠なので、地域の皆さんも入っていただき組織化した。

取組概要について

  • 5、6月頃に施設管理者であるマキノ町果樹生産組合、マキノ高原が並木の保全活動、主に除草作業を各施設中心に実施している。7月には総会を実施し、9月、12月、3月に除草や並木の側溝の清掃等を会員の方に参加いただき、ボランティアで実施している。1回で60名~70名ほどのボランティアの方に参加いただき活動している。
  • 広報活動も兼ねて、会報の発行や並木のフォトコンテストも実施している。随時の活動としては、ホームページの更新や募金活動も行っている。
  • 人口が少ない地域なので、活動に人が集まりにくい状況がある。特に農繁期は参加者が少ないので、マキノ以外の地域の方にも来ていただければと、ホームページでも案内している。地元に防災行政無線があり、その無線も使ってボランティアを募っている。
  • 9月は根元に伸びたツタを機械で除草する。葉っぱが一通り落ちて、側溝に落ち葉がたまる12月には、側溝の清掃と落ち葉拾いを行う。3月には、冬の間の着雪等で枝折れしたものを拾い集めてもらっている。参加者がたくさん集まると短時間で終わるが、なかなか集まりにくい状況であるので、ホームページなど、色々なかたちで参加を募る方法を今後も考えていく必要があると思っている。ボランティアの方は常連さんが多いが、新しい人の開拓も大切。ボランティア活動をする意義が重要かと思っている。
  • 会員数は団体会員を入れて85。県外にも会員はいらっしゃり、増えてきている。
  • 元々植えた時は高さ1.2mくらいの木であった。雪で折れるなど、紆余曲折はあったようだが、今の25mほどの高さまで成長した。メタセコイアは今後も、まだまだ伸びる。最低でも35m、最高だと65mくらいまで伸びる。大きく伸びることを見越して5m間隔で植えている。
  • 結局は活動が楽しくないといけないと思う。今は年3、4回掃除や草刈りをしている。それをうまく利用して、地域の人が自分の地域の誇りと思ってもらえるよう、楽しいものに持っていかないといけないと思う。
  • 「四季遊園マキノ交流促進協議会」という会があり、マキノ地域の9つの観光関係の事業所で構成している。この9つの構成団体は全て「マキノのメタセコイア並木を守り育てる会」に入っており、重機等を持参して作業に出ている。年1回の定期総会にも、「四季遊園マキノ交流促進協議会」の会員がたくさん出席しており、並木を守らないといけないという意志は固い。
  • 高島市は滋賀県のなかでも自然が豊かで、景色が美しい。手前味噌だが、滋賀県でも一番きれいな地域だと思っている。一見するとつくられたものではないように思うが、地域の人が守り育てて、つくって来られた景観である。海津大崎の桜や湖岸の松林は植えられてから100年近く経っているし、メタセコイア並木も38年経つ。美しい景色を公共空間として地域のみんなで盛り立てていく取組が続けられていることは、非常に誇らしいし、今後とも続けていかないといけないと思っている。

並木周辺の環境向上にかかる課題について

  • 県道の側溝にふたをかけてほしい。側溝に葉が落ちて詰まって、大変な思いをしている。
  • 草刈りや落ち葉拾いなど、大変なことを重機まで使ってやっているので、道路維持管理という面で、地元だけでなく県とも協力しながらやっており、負担の軽減にもなっている。ただ、行政として取り組むと経費もかかると思うので、ボランティア団体と、地域の皆さんの力を支援する温かい県政をお願いしたい。事業者も一緒に力を合わせていかないといけないと思っている。
  • 4月にオープンするカフェ前の道路を横断する電線は、地中化されることになったが、マキノ高原側の500mはメタセコイア並木沿いに並行する形で電線が通っており、景観的にも良くない。また、電線の維持管理に合わせた剪定をされてしまうので、樹形が乱れてしまう。景観の素晴らしいところでは、電線は地中化する支援をしていただきたい。規制緩和など、手法は色々あると思うので、ぜひ取り組んでほしい。地中化が難しければ、迂回するという方法もあると思う。電線の設置業者にお口添えいただきたい。
  • 県道であるため、県土木事務所の方で管理していただいており、台風が来て、木が折れた時もすぐに撤去してもらい、交通がすぐ復旧した。高島土木事務所道路計画課には参与として会に関わってもらい、指導いただいている。
  • ピックランド横の果樹園からは、木の外側に遊歩道がある。だが、その先の堀切川から南牧野交差点のあたりまでは歩く部分がなく、観光客が車道の方を歩かれる場合があるので、県で遊歩道のようなものを考えていただきたい。もう1点は、南牧野あたりの排水の根本的な改良をお願いしたい。道路の構造的な問題もあり、道路の排水が詰まって、水浸しになることが多い。その都度、土木事務所に電話して対応してもらっているが、できたら改良してほしい。メタセコイアは根が強いので、並木の根が道路をでこぼこにさせている。このあたりの側溝は、割と軽いU字側溝を使っているので、余計根が持ち上げてしまい、排水が詰まっているのかもしれない。
  • 石庭(いしば)という在所に行くためのメイン道路は並木道になるが、紅葉の季節は観光客の車で渋滞し動けなくなる。シーズン前には、警察や市が、車をどこに逃がすかなどを会議するが、石庭から出てくる道路はここしかない。裏の道を通っても、途中で詰まってしまい、なかなか出られない。生活道路にもなっているので、そことの兼ね合いが課題。
  • たくさんの観光客の方には来ていただけるが、並木をすっと抜けて帰られることが多く、なかなか収益につながらない。
  • 紅葉の時期が、一番多い。11月の下旬~12月の上旬ぐらいが、ものすごく混む。警備員を頼んで交通整理もしているし、果樹組合の役員にも出てもらって、少しでも流れをよくするために駐車場内も制限をしているが追いつかない。各近隣の集落の方に迷惑をかけて申し訳ないという気持ちがあり、今後も努力して、改善していかないといけないと思っている。
  • 年々、観光バスの立ち寄りが増えてきている。昨年は年間を通じて1000台ぐらい来た。大型バスは背が高いため、一番近道となる百瀬川隧道(ももせがわずいどう、隧道=トンネル)を通ることができず、迂回をせざるを得ない。そうすると、集落の中の旧国道を通ることになるが、狭いところは譲り合ってすれ違ってもらわないといけない。この隧道は天井川になっているので、平地河川化の話が前から出ている。上流部に沈砂池(=土砂などを沈殿させて流れから除くための池)をつくり、堰堤で段差部をつくって、隣の生来川の方へ迂回させ平地河川にするという話で進んできたが、だいぶ前からストップしている。そのため隧道の撤去もできない。観光だけでなく、災害面から見ても、天井川は氾濫の危険性があるので、近隣の集落の方も非常に心配されている。隧道の撤去を一気に進めてほしい。それと併せてアクセス道路の整備をお願いしたい。
  • バイパス道路をつくっていただいたのはありがたいが、バイパスと並木の間に道路照明がない。防犯や交通安全面から、道路照明をお願いしたい。
  • バイパスと並木の間は消雪もない部分がある。消雪設備の設置もお願いしたい。
  • 平地河川化も進んでおらず、隧道撤去も進まない状況の中、一向に今の状況が分からない。1年に1回でもいいので、「今はこういう状況です」「こういうかたちで進めています」ということを報告してほしい。地域住民の方や、関係する事業所の方は気にしている。1回そういう機会を持っていただけるとありがたい。
  • 百瀬川が平地化されれば、自動的に道路も改良できるので、まずは百瀬川の平地化改良が先立つことだと思うので、最優先でお願いしたい。
  • ピックランドは5月のサクランボから始まり、11月末のリンゴまでの6カ月間、観光農園として営業しているが、数年前からサクランボの人気が高まり、現在の生産量では観光には量的に相当不足している。来園者の方に入園制限をして、大変迷惑をかけている。そこで数年前からサクランボを量産しようと増反しているが、増反するには獣害や野鳥の防御のためにネットやフェンスなど資材が必要になる。また、サクランボは雨に弱いので、最盛期には、上にビニールをかける必要があり、増反にあたっては資材の経費が相当かかる。県には、色々と支援や協力をお願いしたい。最近は若い方の来園が多くなり、サクランボやブドウの人気が高い。ピックランド内にあるフルーツベジタブルハウスという野菜等の直売所で、地元の農家さんの生産物を販売しているので、来園者が増えると、多くの地元農家さんに対しても貢献度があると思う。

知事から

対話を振り返って

  • 皆さんから直接話を伺って、よく分かった。すぐにこうする、ああするとは言えないが、持ち帰って考えたい。今日伺ったことをどうやって、どんな順番でやるのかをよく協議する。その上で、今日伺ったことをこう考えますというのをお返ししたいと思うので、少し時間をいただきたい。
  • 百瀬川の改修に伴う隧道の撤去は、今日も通ってきて、できるだけ早くやらないといけないと思った。今どうなっていて、今後どう考えているというのを、地元の皆さんに、きちんと改めて説明した方が良いと思った。
  • 折しも今は、防災、減災、国土強靱化ということで、国もある程度の予算を確保して、県を応援するという体制になってきているので、うまく活用しながら集中的にやって、どれぐらいまでに、例えば河川改修をやります、そしてその先どれぐらいまでに、道路をさわります、なくしますという見通しをお示しできるように頑張りたいと思う。それとセットで、消雪をどうするのか、歩いて通ってもらえるような道をどうつくるのか、側溝をどうするのかは関連してくると思う。景観を売りにしているのに、景観を害するような電線があったり、枝を切らないといけなかったりというのは、一日も早く改善した方が良いという思いで聞いていた。せっかくカフェも設置されて、カフェの前の電線がなくなるのなら、並木沿いで一部残っているものもできるだけ早く解消したいと思った。技術的にどうなのかというのは確認はするが、急いで検討したい。
  • 歩く人や車もそうであるが、自転車で通る人も、最近は増えている。そういった方々も含めた安全対策は課題になってくると思う。
  • 何より一緒に考えたいのは、これだけの景観があって、これだけおいしいものがあるので、素通りして写真を撮ってさようならではなく、立ち止まってもらって、買って、食べてもらってという仕掛けを皆さんと一緒につくっていきたい。そのためには、サクランボの増産が課題ということも伺いましたので。県も米だけでなく、園芸品目の産地化に取り組んでいて、その生産技術の強化にも取り組んでいます。来年度の予算には、醸造用のブドウを入れようとしている。そういうメニューのなかに、マキノのサクランボが入れられるのか、入れられないのかをよく検討させていただく。
  • 一朝一夕にならないこの風景は、次の世代にもより良いかたちで、インターナショナルに楽しんでいただけるかたちで、引き継いでいきたいと思う。そのために何をやらないといけないのかを一緒に考えて、やれることからしっかり取り組んでいきたいと思う。
  • これだけファンの多いメタセコイア並木なので、事業者の皆さんも含め、掃除等で御苦労いただいているが、道路管理者としてもしっかりやらないといけないことをやる。地元の皆さんともよく連携し、かつ部外の人も巻き込んで、素晴らしい景観のメタセコイアを守るのに力を貸してくれというのを積極的に発信して力を得るような仕掛けを、カフェ開設と同時に力を入れてやっていこう。皆さんの御苦労を直接お伺いし、さらにやらないといけないという発奮材料になった。