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第55回 「こんにちは!三日月です」

  • 対話相手「ジョブ・サポートセンター・メイピス」の皆さん

「ジョブ・サポートセンター・メイピス」の皆さん

今回は、「ジョブ・サポートセンター・メイピス」の皆さんと対話を行いました。

NPO法人風の会が運営するジョブ・サポートセンター・メイピス(以下、メイピス)は平成23年に就労継続支援B型事業所(以下、B型)として開所し、平成30年12月からは高島市内では初となる就労継続支援A型事業所(以下、A型)の運営を開始。企業(鉄道リネンサービス(株))と業務提携しリネン業を中心に作業を行っており、障害者の自立のため、安定した就労の場を目指しています。

今回は、作業の様子を見学した後、メイピスの利用者の皆さんやその御家族、支援員の皆さんと障害のある人が自立した生活を送るうえでの、現状や課題、そして今後に向けた夢や希望について意見交換を行いました。

知事から

今回の対話にあたって

  • 一昨日から明日まで、高島市マキノ町山中にある家を借りて住んでいる。自然豊かで、人と人のつながりを大事にしてくださる高島市で一つでも多くのことを学んで帰りたいと思っている。
  • 先ほど、枕カバーやシーツ、ガウンなどの洗濯作業、プレス作業、畳む作業を拝見した。皆さんが機械を操作しながら、また、色々な注意を払いながら一生懸命仕事をしていただいている様子を拝見し、とても感動した。メイピスは高島市で初のA型の事業所であるので、私達も注目しながら、しっかりと応援していきたいと思うので、皆さん頑張って仕事をしていただければと思う。また、皆さんの仕事を支援いただく方々や、注文、発注をしていただく方々にも感謝申し上げたい。
  • 働くことで得られる喜びや、働くことで得られるつながり、働くことで感じられるやりがいをこれからも私達は大事につくり、広げていきたいと思う。

「ジョブ・サポートセンター・メイピス」の皆さんから

メイピスの概要について

  • メイピスを運営するNPO法人風の会は、障害のある方の働く場所をつくることを目的に、平成23年3月に法人設立した。そして、平成23年5月にメイピスがB型の事業指定をいただき、活動を始めた。現在7年が経過しようとしている。
  • ジョブ・サポートセンターの名の通り、働くこと、仕事をすることをコンセプトにした事業所であり、利用者の皆さんは一生懸命仕事がしたい、毎日頑張って働きたいという強い思いを持って仕事に来ておられる。
  • メイピス最大の特徴は、企業と提携し、事業展開しているところ。鉄道リネンサービス(株)と開設当初から業務提携を結び、活動している。福祉の力だけでは到底及ばない仕事量を確保し、提供いただいている。建物や設備も全て鉄道リネンサービス(株)が用意してくださっており、昨年12月から現在の場所に移転し活動している。他にはない恵まれた環境で仕事ができるのも、福祉に対する理解や障害の特性に対する理解が十分にある鉄道リネンサービス(株)と一緒にやらせていただいているからだと非常に感謝している。
  • 仕事の内容が、障害をお持ちの方でも十分に対応できる、非常に分かりやすい作業なので、やり方さえ覚えれば、自分達の力でできる仕事である。利用者の皆さんには本当に一生懸命取り組んでいただいている。「ワゴン1台分仕上がった」「次のワゴンも全部仕上がった」というように、仕事の仕上がりが目に見えて分かるので、仕事に対するやりがいや充実感、達成感が非常にあると思う。
  • 利用者の方の中には、一般就労、企業就労を目指している方もいらっしゃる。開設から7年経過し、過去16名の方がメイピスを卒業されて、一般企業に就職されている。これも私達の目指す特徴の一つだと思っている。
  • 一般就労を目指すのも一つだが、慣れた環境で支援を受けながら雇用できることが、なお良いのではないかということで、昨年12月から高島市で初となるA型を開設した。現在2名の方がA型として就労されている。
  • 他にもNPO法人風の会では、2年前からグループホームの運営もしている。仕事の支援と同時に生活の支援ができれば、将来的に自立した生活が送れるのではないかということで運営を始めた。利用者の皆さんが、自分の将来をどのようにつくっていくか、イメージしやすいようにし、家族や支援員と相談しながら、自分の未来を切り開いていくことを願っている。
  • 法人の理念は「人のために」、行動指針は「互いを認め高め合う」である。メイピスの仕事は、共に働く仲間と協力し合いながらでないとできない仕事である。一人一人が持っている能力も違うし、それぞれが違った個性を持っているが、その違う個性を互いが認め合って、一人一人が一生懸命取り組み、持てる能力を発揮し、仲間と共に支え合い、お互いを高め合っていく事業所を目指している。自分の存在や頑張りが、周りの仲間のためになる。それが、人のためになる。そして最終的には自分自身が頑張れる源になると思っており、そのような事業所を目指している。

仕事のやりがい、これからの目標について

  • 日頃から仲間と協力し合っている。また、仕事を休まず、残業も頑張っている。洗い終わったシーツなどに汚れやゴミがついていないか確認する検品が難しい。ものによって長さが違うし、畳まれたものが機械でどんどん出てくるので大変。一日の生産が目標を超えると一番うれしい。また、1時間で自分の中でどれだけ生産ができるかというのも、目標を超えたらうれしい。
  • シーツやタオルの洗濯、クリーニングはお正月や大型連休、夏休みなどが特に忙しい。大みそかも仕事をしていた。新しい工場に移転したが、動きやすいし、集中できる。利用者同士の協力もよりできるようになってきた。お互いに見て、助けに行ってという助け合いができている。利用者同士のコミュニケーションや支援員さんとのコミュニケーションは順調だし、1日の作業を終えて帰ったら、ご飯がおいしい。
  • 慣れるのにちょっと時間がかかった。僕の中では1、2年かかった。
  • 分からないことや助けてほしいことは互いに言い合うが、できる場合は自分でやろうと思っている。利用者同士でできる限りやろうという感じである。
  • これからの目標として、僕はシーツの検品をしっかりしたいと思っている。検品はシーツが一番難しい。
  • A型の洗濯業務に行けるように頑張りたいと思っている。今はA型が2人なので、3人目の人になりたいと思っている。
  • NPO法人風の会が2年前に新旭に開設したグループホームで生活して、職場に通っている。グループホーム開設後、第1号として入居した。グループホームには現在3人いる。グループホームで生活していると、将来的なことが考えられる。何かしらできることがあるので、それを一つ一つやっていっている。
  • 他にもたくさん色々な障害者がいると思うが、メイピスに入ってきてもらえるとうれしい。そこでまた色々な出会いや学ぶことがあると思う。

支える家族の思い

  • 家族である自分は仕事の内容のことは全然知らない。メイピスに通い始めて5年になるが、休みたいと言ったことがなく、ずっと真面目に行ってくれている。今回A型をつくっていただいたことで、これから先、A型を目指したり、一般就労を目指したりすることができるので、ずっとこの仕事が続いてくれることを願っている。
  • 私の子どもは移転したことで、電車に乗る時間が少し長くなった。30分ほど早めに家を出るようになった。こちらに勤めさせていただいて、毎日張り切って行っている。子どもは小学校、中学校は地元の公立に通っていた。中学校の先生から「片道2時間ぐらいかかるが、長浜に高等養護学校というのがあるのでチャレンジしてみないか」と勧めていただいた。新旭にも養護学校があるので、それまで全く考えていなかったが、受けさせてもらったら、ありがたいことに受かった。長浜まで通っていたが、やはり長浜は遠く、朝はまだ電車の便が良かったが、帰りが本当に大変だった。私も勤めていたので、迎えに行ってあげることもできず、途中で電車が止まって1時間待たないといけない時も待って、一切自力で通学していた。そのときの大変だった経験があるので、雪が降っても、雨が降っても、よっぽど体調を崩さない限り休むこともなく、ほとんど満勤で行っている。通っていた中学校では初めて長浜の高等養護学校に行った。それから先生が自信を持って勧めておられ、毎年、受験し通っている子どもがいるそうである。ただ、メイピスに就職が決まるまで、なかなか就職先がなかった。長浜だと守山や草津の方までが通勤圏内になるので、就職先は結構あるが、こちらだとなかなかなくて決まるまでが大変だった。本当にメイピスがあって良かったと思う。ここだけが頼りだった。最近は、新たにスーパーなども建ってきてはいるが、たまたまその年に求人があれば良いが、求人がないと、働きたくても就職先が決まらず大変。メイピスに就職させていただいて、本当にありがたかった。学校に就職関係の情報が来るので、在学中から色々と研修に行かせてもらっており、その中の一つがメイピスだった。
  • 私の子どもの場合は、小中学校は地元で高校は新旭養護学校に行った。新旭養護学校の3年生の時にメイピスに実習で来させていただいていた。卒業後、三重県四日市市にある聖母の家学園に2年間行っていた。言わば、障害者の短大や大学である。寮があり、そこで生活をする。金曜日に学校が終わったら家に帰って来て、月曜日の朝にまた四日市に行くという生活をしていた。子どもが通っていた時は、高等部専攻科は2年制しかなかったが、今は4年制になっている。20歳ぐらいの年代は、すごく大事な時期なので、高等部3年を出たからすぐにどこかで働きなさいというよりも、もう2年や4年の期間を大事に過ごさせてあげたかったので、そこを選択した。その期間で、自主性が出て、自分から発信できるようになった。高等部のときにメイピスで実習させてもらった時は面談をしても自分で答えられないような状態だったが、専攻科の2年を卒業する前に「ここで働きたい」と自分から言えるようになっていた。

支援する人々の思い

  • 集中して、長い時間、同じ作業をずっとし続けるのはすごいと思う。私達は、たぶんできないと思う。すごい力だと思う。
  • 支援員をしているが、日々、利用者さんにこっちが教わったり、助けられたりしている感じがものすごくする。一人一人、できることや得意なことなど作業ペースが全然違うので、個別の支援ができるよう日々心掛けている。
  • 支援員は9人いるが、常に9人いるわけではないので、どうしても目が行き届かないところは利用者さん同士で助け合われているのですごく良い状態である。
  • 仕事をきっちりと提供いただいているので、障害者の方の働く場を一層拡大していきたいと思っている。A型10名分の定員が増えたので、全部で30名の事業所になった。働きたいと願う方をもっと受け入れていきたい。移転してから、前に比べ不便な場所になったが、自分の力で出勤するということで、今津駅から路線バスで通って来られている。工場のすぐ前がバス停なので、朝は非常に便利が良いが、帰りの時間が合わないので、終業後一斉に今津駅まで送り届けている。帰りもうまくダイヤがかみ合うと、路線バスに乗っても自分達の力で帰れるので、それをまず実現できないかと思っている。
  • 私達は鉄道リネンサービス(株)という企業と一緒になってやらせていただいており、そのおかげでこのような形になっているというのは非常にあると思う。福祉の力だけでは、できないことも多いので、他の福祉の事業所はものすごく苦労されているところもあると思う。利用者さんに支払える給料もかなり違ってくる。そのあたりも企業のバックアップがないことには、福祉だけでは全然できないことである。仕事と労働対価がないことには生活は困難になってくると思う。
  • 鉄道リネンサービス(株)は滋賀県以外にも奈良と京都に工場を持っている。奈良では社会福祉法人がA型を、京都はNPO法人がA型とB型をやっている。ここは高島の第3工場で、第1工場、第2工場は新旭にある。第1工場は健常者だけで、第2工場にはメイピスとは別の事業所の障害者の方が15名ぐらい働いている。高島工場の生産の半分ぐらいは、福祉関係の方で生産している状況。ここは鉄道リネンサービス(株)の工場の一つとして、他と同じ勤務体系で働いていただいている。その代わりに、会社も他と同じような設備にするし、自動化の機械も入れる。生産性を上げるには自動化ラインを持ってこないといけない。洗濯工程はほとんど自動化している。全部コンピューター管理をしているので、生産性が高い。生産性が高いということは、利用者の皆さんの生産ペースが上がり、利用者さんの工賃に反映される。会社としても、生産量が上がると、Win-Winの関係になる。そういう関係でないとなかなかうまくいかない。忙しいときには出勤・残業もしてもらっており、他の工場と同じように、土曜、祝日もシフトを組んで仕事をしてもらっている。週休二日制ではあるが、シーツなどは毎日出てくるものなので、土曜、祭日だから休むというわけにはいかない。
  • 色々な仕事があるので、一人一人の特性や体力に合った場所で仕事をしていただいている。全員が同じ仕事に携わっているわけではないので、「私は体力がない」とおっしゃる方でも、何らかの仕事がある。
  • 苦手なことも「私はこれは苦手」と気軽に言っていただくと、どうしたら克服できるか一緒に考えることができる。もしくは、少し手を加えるだけで「苦手だったけど、できるようになった」という方もいらっしゃる。それが、どんどん向上心や意欲につながっているように思う。利用者さんは、今度はさらに難しい仕事もしてみたいという意欲を持っておられる。生産が目に見えてすぐに分かり、給料も上がっていくので、良い循環になっている。
  • メイピスには色々な方がおられて、毎日、少ししか通えない人もいたり、週に何日間しか通えない人もいたり、本当に色々な方がおられる中でここがあるのは、本当に大事なことだといつも思っている。色々な方があってこそ、みんなと一緒に笑ったり、困ったり、怒ったりできる。

知事から

対話を振り返って

  • 先ほどガウンを畳む作業をしている利用者さんがいらっしゃったが、すごくきれいに次から次へと畳んでおられた。なかなかできることではないと思う。皆さんはすごい力を持たれているし、その力をすごく伸ばされていると思う。
  • 高等養護学校は甲南、長浜、愛知にあるが、湖西側にはない。通学にも御苦労いただいているので、湖西側にもつくれないかと来年度予算を計上しようとしているところ。
  • それぞれの能力を活かして、みんなのため、人のために仕事ができる素晴らしい環境をメイピスはつくってくださっているので、そういうような取組をこれからも応援できるようにしたい。十分、力を活かせずに困難な思い、悲しい思いをしている人はいると思う。
  • 皆さんがすごくうまく連携しながらそれぞれできることをやり、できないことを支え合いながらやっていただいているように見えた。
  • メイピスさんのような施設があり、鉄道リネンサービス(株)の仕事をみんなが頑張ってくださっている、グループホームに住みながら通ってくださっている、A型を目指して頑張ってくださっている、こういう取組が広がり、周知されると、今、色々な所で勉強している人達もここで働いてみたいなと思ってもらえるかもしれない。
  • どちらが支援していて、支援されているのかという垣根がなくなって、色々なことを学び合ったり、支え合ったりできるというのは良い環境だと思う。今日は色々な力をいただいた。