令和7年1月6日
(県政記者クラブ主催)
【知事】
新年あけましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いいたします。今日述べたいことは先ほど皆さんもご覧いただいている経営会議で申し上げたんですが、去年の今頃は能登震災が起こりましたので、大変な年明けとなりました。今なお被災地では大変な思いをされている方々がいらっしゃいますので心を寄せながら、おかげさまでこうして無事、健やかに新年を迎えられたことに感謝したいと思います。
また決意も新たに仕事始めを迎えました。今年は4月からいのち輝く未来社会のデザインというものをテーマにした「大阪・関西万博」が、そして9月にはいよいよ「シャイン」をテーマソングにした「わたSHIGA輝く国スポ・障スポ」が開催されるビッグイベントの年でありますので、それらをビッグチャンス、ものにして輝く一年、一つひとつ・一人ひとりの大切な命が輝ける一年、また、いのちの輝きを増すことができる一年、輝く滋賀をつくる一年にしようということを申し上げているところでございます。具体的なことについては、琵琶湖と暮らしを守る、三方よしで笑顔を広げる、豊かな未来をともにつくるということで、琵琶湖と水、さらには笑顔、そして豊かな未来ということをテーマに三本柱で重点的に取り組むことについて申し上げたところでございますので、これら申し上げたことの具体的なことが実現・実行できるよう努めてまいりたいと思います。
特に年末に「世界湖沼の日」が国連で議決されましたので琵琶湖の健康状態を確かめながら、水質や水産資源の回復に向けた取組、また科学の知見、県民の行動、行政の決断を総結集してMLGsを進化させていきたいと思っております。
笑顔という面では無事・安全・平和が基礎にあるということから、特に今年は阪神・淡路大震災から30年、戦後80年という一つの節目を迎えますので、自助・共助・公助の防災力強化の取組、平和という観点では戦争の悲惨さ、平和の尊さを知り、学び、伝え、語り継いでいく取組をつくっていきたいと思います。
また人権尊重という点ではジェンダー平等、多文化共生のプランをつくり、また変えていく年でもありますので、それらをしっかりと行うと同時にジェンダー平等債発行への検討を進めていきます。
笑顔という点で「食」。食べること、食べるものをつくること、それらを届けることについて学校給食を地産地消でモデル事業をつくっていこうということでありますとか、滋賀の高校生のお昼ご飯というものを楽しく美味しく、できるだけ負担少なく届ける仕組みづくりを考えていこうということを提起すると同時に、既に検討を進めておりますが、交通と公園についてこれまで進めてきた対話をさらに進め、暮らしをより良くするためにどのような関わりをつくればいいのか、また、それらを実現するためにどのような仕組み、システム、また負担が必要なのかということについて考える1年にしていきたいと思います。
また豊かな未来という文脈で「子ども・子ども・子ども」。引き続き、最重点で取り組んでまいりますし、高校、大学ということについて言えば、大学の力をさらに連携して高めていけるよう、生かしていけるよう県庁に大学との窓口について組織体制の強化を検討しているところでございます。
いずれにいたしましても、これからも皆さんとともに歩む県政をつくっていきたいと思います。メディアの皆様方や、ご覧いただいている皆様方の様々な御参画や、また御意見・御鞭撻を賜りますようお願い申し上げ、年頭、冒頭の私のコメントとさせていただきます。今年もどうぞよろしくお願いします。
[読売新聞]
いくつか今年取り組みたいテーマを挙げていただきましたが、まず学校給食を地産地消で届けるモデル事業ということがありましたが、これはどういうことをイメージされているのでしょうか。
【知事】
健康しがもしくは子どもの育ち・学びということからすると、食べることってとても大事なんですが、そのことがまだまだ高める余地があるのではないか。一方、その食べるものをつくる方々、また地域の様々な課題があります。つくる人が老いてきた、少なくなってきた、つくっても儲からない、というようなことがございますので、それらの課題や可能性を結びつける形で、県内でつくったもので、滋賀県の子どもたちを育てる、そういう取組を学校給食で、いっぺんに全県でということはなかなか難しいとすれば、モデル事業でつくり・起こすことができないだろうかということを今検討しているところです。生産者と子どもたちが学校現場を繋ぐ形で、より良い仕組みをつくっていければいいなと考えているところです。
[読売新聞]
給食の食材に例えば近江牛を提供するような取組は県内でも行われていると思うのですが、今おっしゃったように生産者側の事情も踏まえて、そこの結びつきを能動的に、生産者のことを踏まえてより食材をたくさん導入していくようなイメージでしょうか。
【知事】
今おっしゃっていただいたように部分的、一時的に琵琶湖の湖魚を給食に提供するとか、近江牛を食べてもらうという、こういう取組はこれまでもやってきましたが、もっと生産者と結びつける形で、もっと常時、もしくは継続的に提供できるような仕組みで、みんなが喜べる形で「ウィン・ウィン・ウィン」でつくっていければというふうに思っています。
[読売新聞]
それをどこかの自治体でモデル的に能動的にやっていきたいというようなお考えということでしょうか。
【知事】
そうですね。学校給食は特に市立・町立の小・中学校で主に運営されておられますし、給食費などとの兼ね合いもございますので、そういった調整は市町とも丁寧にやっていきたいと思います。
[読売新聞]
同じ分野でもう一つ。高校生のお昼ご飯についてですが、負担を少なく届ける仕組みということをもう少しご説明ください。
【知事】
これは事前にどういうことを知事として年始に申し上げていったらいいだろうというアイディア出しをする過程で、高校生のお弁当をいろいろ頑張っておうちの方がつくっていただいている。どちらかというとお父さんよりお母さんにお弁当を作る負担が偏っているかもしれないと。これらを少し変えていく仕組みができないだろうかということからですね、既に一部の地域で、一部の学校でその仕組み等を検討されているようなこともあるようですのでそういうものも取り入れながら、生かしながら高校生が選んで、そしておうちでつくる負担が少し軽くできるような状態で新たな仕組みというものをつくっていくことができないかということを考えていきたいなと思っています。
[読売新聞]
ライドシェアについて言及がありました。国スポ・障スポにあわせて検討ということはこれまでもおっしゃっていたと思いますが、具体的にいつから試行されるというスケジュールはお持ちでしょうか。
【知事】
具体のサービス、どこでいつからというところまでを、まだここで整えて申し上げられる段階には来ておりませんが、一部の地域で、また一部の事業者がこういった新たなライドシェアの仕組みを導入する意向を既に示していただいているようでございますので、そういったものをはじめ、そして繋ぎながら、今年行われる国スポ等のビッグイベントの際に来訪された方の移動等に繋げられるよう、またその後の公共交通の仕組みづくりにも生かしていけるように行っていきたいなと思っています。
[読売新聞]
体験プログラムこどもなつやすみについて、これはどのような取組でしょうか。
【知事】
子どもたちの育ちにとって体験というのはとても重要だということから、また滋賀にはいろいろな体験ができる機会や場所・施設等がございますので、そういったものを束ねて・繋いで・発信をする。そしておうちの事情等によって使えない、行けないということではなくて、誰でも行きやすい形で提供できるようなメニューを用意しながらですね、「しがのこどものなつやすみ」として発信することができないか。夏以降いろいろな部局で今検討をしているところですので、まとまれば予算公表と同時に、こういうメニューで皆さんにお知らせできないかということを紹介したいというふうに思います。
[NHK]
中学校給食の話で地産地消は非常に素晴らしいと思いますし、高校生にも広げるというのは歓迎すべきことなのですが、一方で全国的に中学校給食の導入、滋賀県内でも100%にまだ行っていないですし、無償化というのも全国で議論されていると思います。そのあたりについて知事はどういうお考えですか。
【知事】
まず原材料を県内産で整えるということについては、学校給食のパンは全て県産小麦でつくっていただけている状態など農業県・滋賀県ならではの取組は全国よりかなり進んでいるところがあると思います。それらはさらに進める形で今回の地産地消のモデル事業にも生かしていきたいと思います。また後段お尋ねいただいた学校給食費をどのように負担軽減していくのか、また場所・場合によっては無償化していくのかという議論は今、国でも検討されていて年末に一定の取りまとめを、まだ中間報告の段階だと思いますが、されているようですので、そういった動きも見ながら自治体として、また広域自治体である県としてどういう取組を検討していけばいいのかというのを考えていきたいと思います。
[NHK]
戦後80年の取組として中国大陸への侵略、沖縄戦というある意味加害の歴史の方にも着手されているということが伝わってきたんですけれども、語り部や体験者が年々少なくなっていく中で、どういうことをどういうふうに子どもたちに伝えていくかということについてお考えはありますか。
【知事】
私自身もそうですし、私の親も直接この戦争を体験していない世代です。そういう世代の人間が知事をやったり、また議員をやらせていただいたり、また行政の職員でいるということが今の現実ですよね。そうすると、記憶、実体験こういうものを知らないという状態で平和を語る、もしくは戦争しないということをつくっていかなければならない。この難しさをぜひ皆さんと力を合わせて克服していきたいと考えています。幸い滋賀県には平和祈念館がございまして、戦争を体験された、空襲等を経験された方々の証言、また(戦争に関する)物についてもアーカイブして展示も行ってきています。例えば企画展の開催ですとか、あと沖縄や広島、長崎、被爆の様々な証言ですとか、沖縄戦の証言ですとか、こういったことについてはぜひそういったアーカイブをお持ちの館とも連携をして、滋賀県にいてもそういったことが学べる機会づくりですとか、あとは実際に行き来することで、紹介し合うようなそういう取組を考えていきたいと思います。ぜひ戦後80年から90年までをまず戦争のない時代としてつくることができるように、平和の象徴である彦根城の世界遺産を目指す滋賀県として主体的に取り組んでいければと思います。
[京都新聞]
高校生のお昼ご飯の取組というのは、既に何か一部そういう先進的なことを検討されているところがあるというお話でしたけれども、どんなものや方向性をイメージされているのか教えてください。
【知事】
具体的な検討はまだこれからなんです。ただ、一部検討されていると申し上げたのは、アプリ等を使いながら(お弁当を)届けられる人と届けてほしい子どもたち、学校等を繋ぐ仕組みをつくられている事例ですとか、県内の高校などでも一部、そういう仕組みがつくれないかということを検討されている学校もあるようですので、そういったところを後押ししながら、またできれば、そういう(お弁当の材料になる)食べ物をさっき申し上げた県内産であるとか、近くの場所から届けられるような仕組みなども考えていければと思っています。
[京都新聞]
MLGsの関係でグローバルサウスの国や地域と繋がりというお話がありましたが、これは何か具体的に想定されていることがあるのでしょうか。
【知事】
今回の世界湖沼の日の国連への提起はインドネシア政府がとても頑張って御尽力いただいて、そして多くの理解を得て実現をいたしました。世界水フォーラムでも、伸びゆく国の可能性を短い期間ではありましたが感じました。また昨年ブラジルのリオグランデドスール州のレイテ知事が来訪され、懇談する機会を持ちました。こちらも伸びゆく国で農業を中心に、例えば水利などを整えながら、どのように発展モデルを構築していくのかということについて悩まれていることを意見交換いたしました。こういった国々、地域とさらに結びつきを強めながら、滋賀県がやってきたこと、やっていることを共有すると同時に、そういったより良い事例を共有して、これからどんなことを考えていけばいいのかということについて探っていければと思っています。
[中日新聞]
度々で申し訳ないですが高校生の昼ご飯についてですが、アプリを使用した取組のイメージとしては私達が日頃使うようなUberとかそういったイメージになるのでしょうか。
【知事】
すいません、私もそのアプリを見ていませんので、使ったこともないのでわからないので、具体はこれからです。ただおうちでお父さんお母さん、おじいちゃん、おばあちゃん、またおうちの方にいろいろつくってもらう、自分でつくって(お弁当箱に)詰めてくるという子どもたちもいるのかもしれませんが、もっと美味しく楽しく負担少なく大切な高校生のお昼ご飯を届ける仕組みができないかということを、ぜひこれは高校生とも一緒に考えていきたいし、届けてほしい人と届けられる人とを結びつけるツールとして、こういったSNSのテクノロジーもあると思うので、そういうものもぜひ導入していけたらいいなと思っています。考えの起点となったのはジェンダー平等の視点もあったと思います。女性にそのことが、主にお母さんに偏っているとすれば、そういうものを軽減する仕組みを高校生と一緒に考えていくということだと思います。
[中日新聞]
イメージとしては給食とはまた違う形でということでしょうか。
【知事】
高校で給食ということは想定していません。持ってくるお弁当を他所から届けられるような仕組みを考えられないかと思っています。
[中日新聞]
国スポのあり方について最近様々な報道がされているかと思います。通年開催でプロも参加するような大会というような話も出ているかと思いますが、国スポの存在、あり方について知事のお考えを教えてください。
【知事】
まさに今年は滋賀県で「わたSHIGA輝く国スポ・障スポ」が開催される年ですので、この国民スポーツ大会、障害者スポーツ大会によって、選手が輝くアマチュアスポーツの国家最大のイベントですので、それぞれの種目でまず選手が輝ける。と同時に見る人、応援する人も楽しむ、輝く。そういう過程を通じて地域が輝く、元気になる。みんなでおもてなしをしたり、これを機会にお土産をつくったり、新たな仕組みにチャレンジしたりということも考えられます。私の場合この10年、国民スポーツ大会、障害者スポーツ大会の準備をまさに競技力向上とともにつくってきた者としては、この国スポ・障スポを機にさらに健康しがの取組を前に進めるイベントにしたいなと思っています。ただ、この機会に施設の更新ですとか、いろいろなおもてなしの準備にも費用はかかりますし、人の面でもこれは市町もリハーサル大会ではずいぶん御苦労をいただきました。これから国スポ・障スポに向けて体制もかなりシフトしていきますので、そういう面での一時的な負担増ということは乗り越えていかなければならない。こういうことは課題としてあると思います。そのあたりのことを中心にどうすればより良い国民スポーツ大会というものをつくっていけるのかという検討が、これは全国知事会から提起する形で行われていると思いますので、今までとは違う、良い面は残しつつ、困ったな問題だなと思うところが解消されるような方向で合意できることを期待しているところです。
[毎日新聞]
子どもの体験プログラムについてですが、滋賀でできる様々な体験というのは、具体的にはどういうものを想定しておられるのでしょうか。
【知事】
これはいろいろあると思うんですけど、今年は万博もありますのでこれは夏休み期間だけではありませんけど、子どもたちを招待するという形で「へえ、こんな社会になるんだ」「こんなことができるようになるんだ」ということを見る機会としてはまずあろうかと思います。通年で申し上げても、琵琶湖を真ん中にその湖の環境、湖と繋がる川の環境、そしてその源である山の環境、それぞれの地域にある里の環境、動物や昆虫たちとの触れ合い、こういう環境には事欠かないフィールドが(滋賀県には)あると思いますね。また最近「こどなBASE」ということで、放課後の子どもたちの体験プログラムを企業、事業所の皆さんから提供していただきながら、企業の皆さんがプログラミング教育をするですとか、様々なアイディアを形にするような、こういう取組もされておられますのでそういうものを部署部署、場所場所でやっているだけではなくて少し束ねて、7月1日は「びわ湖の日」ですし、8月10日は「山の日」ですし。8月27日が「世界湖沼の日」に決まったことですから、少し全体トータルで楽しい夏休みをみんなで過ごさないかという呼びかけ、発信ができたらいいなと思っています。それぞれの家庭で旅行に行く、色々と帰省する、これもいいと思うんですけど、それだけではない楽しみ方や参加の仕方があるんだということを提示していけたらいいなと思っています。
[毎日新聞]
子どもの対象としてはどれぐらいの年齢を考えておられますか。
【知事】
そんなに限定して何年生まで何歳までということを規定するつもりは今のところないんですけど、何か特典に伴う財政で優遇するようなことがあるとすれば、一定の条件を設ける必要があると思いますが、例えば今も公共交通の利用、近江鉄道をはじめとするそういう場面でももっと子どもたちが乗りやすい仕組みをつくれないかななんてことも検討していただいておりますので、そういうことをいろいろ広く楽しく繋いでいけたらいいなと思います。
[時事通信社]
ジェンダー平等債についてお尋ねします。先ほどもお話の中にジェンダー平等債発行への検討を続けていくというお言葉があったかと思います。昨年7月の知事が10年目の就任にあたっての会見では、早ければ2025年度中にも発行するという方針を示されていたかと思いますが、このスケジュール感に変更がありましたら教えていただけますでしょうか。
【知事】
人権とジェンダーの平等というのは、今年大事にしていきたい、またそのための具体的な取組をつくっていきたい、そういう年です。昨年行った知事就任10年の会見でも申し上げましたが、ジェンダー平等を実現するための1つのツールとしてジェンダー平等債というようなものをつくり、企業や様々な賛同いただく方のお力添えをいただく仕組みづくりができないかなということを考えているところです。来年度、4月以降だと思いますが、「パートナーしがプラン」というベースとなるプランの改定を行いますので、そこで書いたことをドライブする1つの取組としてもジェンダー平等債が位置づけることができればいいなと思いますので、おそらく来年度様々な検討を具体的に行っていく年になると思います。いつまでにその成案、具体像が示せるかというのは、まだ現時点で持てているわけではありません。その過程の中で、いつ頃案が出せる、そして発行ができるということがわかり次第、お知らせしたいなと思います。
[時事通信社]
これまでに発行手段については、サステナビリティリンクボンド債のやり方も重要な選択肢の1つとおっしゃっていたかと思いますが、こういった方向性についても2025年度中に考え、改めて決定をするという方向性でしょうか。
【知事】
おっしゃるとおりで、これまで滋賀がつくってきて出してきたサスティナビリティリンクボンド、こういったものも参考になると思います。同じ仕組みでいくのか、違う仕組みをつくるのか、こういったことも併せて検討していきたいと思います。
[朝日新聞]
公共交通の考え方について、1つは北陸新幹線もそうですし東京から山梨を通っていくリニアもそうですけども、なかなか大型公共交通政策がうまくいっていない一方で、地方ではローカル線が行き詰まり生活に不便だということもあります。公共交通政策としての財源の振り分け方として、本当に今必要なものか、あるいはそれがこれから持続可能な公共交通機関として求められるものというのは一体どういうものかということを考えたときに、東京-大阪を新幹線は約2時間半で繋げているところを、1時間台で繋ぐために本当に何億何兆円ものお金を投資することが今必要なのかとかいうことをこの年末年始に考えていました。その一方で、やはり鉄道、公共交通として少しでもお金があれば何とかなるというところもありながら、こういう大型公共交通政策が一方でうまく進んでいない。新幹線、リニアも、開発を進めた計画当初の時代状況を考えると、かなり変わってきているということもあります。例えば、コンコルドという超音速旅客機がありました。これは1960年代に、イギリスとフランスが共同開発を進めたのですが、採算性、安全性の面から2000年代初頭にも断念しています。同じ次元で語れるかわからないですが、原発の高速増殖炉の開発も、結局半世紀経過して実証炉の「もんじゅ」が行き詰まっているという状況にあり、開発当初からかなり時間が経ち、時代、状況も人々の求めるものが変わってきています。知事は県内の公共交通を何とかうまくどうしていこうかということを考えていらっしゃると思いますが、その立場に立ったときに、新幹線をこれだけの巨額を投資してつくる、あるいはリニアといった東海道にもう1本高速鉄道網をつくる、そういうふうに何兆円ものお金を投じるということについて知事はどんなふうに考えておられるのでしょうか。
【知事】
極めて重要な問いかけだと思います。国土交通政策を専門にしてきた、また一時期国会議員、政府の要職にも就かせていただいた私としては、この20年間ずっと考えてきた、今も考えているテーマの1つだと思います。リニアや整備新幹線といったプロジェクトは、国家レベルの、また都市間を高速に重層的にどう繋いでいくのかというプロジェクトだと思います。大きな投資が伴いますが、やはりここは重要だ、ここは必要だということは不断に追求し、実施をしていくべきものではないかなと思います。同時に、今、知事として滋賀県での日々の暮らし、地域のまちづくりというものを考える際に、地域の公共交通をどのように整えていくのか、整え直していくのかということに心を砕いているところですので、公有民営の方式ですとか、これまでにはない仕組みをつくっていくということもとても重要なことだと思います。こっちにある大きな投資をこっちに回せばいいのではないかということだけではなく、大きなところは繋いで、太い幹をつくって、そして枝葉を伸ばしていく、整えていくという議論も必要ではないかと思います。確かにコンコルドの計画、もしくは高速増殖炉、国内ではMRJ(三菱・リージナル・ジェット)ということもございました。当然、安全を考えなければなりませんし、計画したときと今日的な状況が違うではないかということについても議論が必要だと思いますので、その議論は逃げず避けず行うことが必要であると思います。
[朝日新聞]
ちょうどこの年末に、NHKスペシャルで吉田茂、岸信介、田中角栄の功罪を取り上げた番組を見ていて思ったのですが、この整備新幹線は、田中角栄が日本列島改造計画の中で着想し進めてきた全国を高速鉄道で結ぶという、まさに高度成長期の走りの段階で考えてきたアイディアだったと思います。それを今の時代、本当にどれだけ早く結ぶことに意義があるのかということよりも、人々の価値観もずいぶん変わってきていると思うので、そういったことを踏まえて考えていくことが必要だと思います。今というよりは、これから先に一体何が本当に必要なのかということを考えて、民主党政権のときに止めるべき公共事業を止めるということはやってこられたと思うのですが、公共交通の鉄道に関して、本当に大都市を高速鉄道で結ぶということが本当にこの時代、あるいはこれから先の時代に求められているのか。本当に急ぎであれば飛行機もあるし、交通手段の未来はどうなっているかわからないですが、そういったことを考えたときに、やはり立ち止まって考えるという視点というのも、持っていくべきなのかなというふうには思います。そこは、交通政策をライフワークとしてやってこられた知事としてどのように考えておられるのかお聞かせください。
【知事】
道もそうですが、鉄の道である鉄道も、都市と都市とを繋ぐということからすると、これは文化の架け橋にもなると思います。したがって、それらをどういう仕組みで、公共事業なのか、民間投資なのか、またどれぐらいの投資をどれぐらいの年数をかけてやるのかということは、これは国民的なコンセンサスをとりながら進めていくことだと思いますが、いろいろな事業を見直した民主党政権でも、その事業は止めずにやってきたということからすると、そこは必要だ、重要だということで進めてきたという経過があります。しかし、東京からずっと伸ばしてきて、いよいよ東京から福井まで来て、福井から京都、大阪を通していくという都市から地方にではなく、地方から都市に繋いでいく、元々ないところに繋いでいくというのではなくて、あるところに繋いでいくという、こういう過程に入っていきますので、これまでにない合意形成の難しさはあると思います。元々あるのだからそんな費用をかけてまではいらないのではないかとか、こういうことも当然出てきますので、これまでにはないいろいろな議論というものが必要になってくると思うので、そこは丁寧にやっていかなければならないと思いますが、基本的に道路にしろ、鉄道にしろ、都市と都市とを安全に、できるだけ早く、そして快適に繋ぐというのは文化の形成に役立つ投資ではないかなと私は考えます。