令和5年7月28日
(県政記者クラブ主催)
【知事】
今日もよろしくお願いいたします。
危険な暑さが続いておりますので、エアコンを使っていただいて、また屋外での活動、作業で控えられるものは控えていただいて、安全にお過ごしいただきたいと思います。夏の事故、子どもたちの事故が続いています。県内においても、26日、長浜市内のプールで放課後児童クラブで活動中の子どもが溺死するという事故がありました。亡くなった命に思いをいたし、御遺族の方には故人の御冥福をお祈り申し上げたいと思います。この件につきましては、監視体制がどうだったのか、また水温、健康管理が十分だったのか、放課後児童クラブのプールでの活動に対する対策などを今後検証し、また関係者に注意喚起する対策をとってまいりたいと思います。
世界水泳選手権でアーティスティックスイミングの乾選手が、ソロテクニカルルーティンならびにフリールーティンの2種目で金メダルという快挙を果たされました。2大会連続の2冠というのは、日本の水泳史上初の快挙ということでございまして、「滋賀県県民栄誉賞」を授与したいと考えております。なお、世界水泳の同じ選手権大会で、他の種目でも活躍された選手がいらっしゃいます。混合シンクロ高飛込で、銅メダルの伊藤洸輝選手、板橋美波選手です。お二方には「滋賀県民スポーツ大賞特別賞」を授与する予定でございます。また、世界パラ陸上競技選手権の400mで金メダル、走幅跳で銀メダルの福永凌太さんには、「滋賀県民スポーツ大賞栄誉賞」を授与する予定でございます。いつどのような形でお渡しさせていただくかは詳細が決まりましたら、またお知らせをいたします。
コロナの状況は現在少しまた増えている状況です。定点観測の週ごとの報告を見ると、前週比での増加スピードというのは、以前よりも鈍ってきている感があるのかもしれませんが、増え続けていることは事実ですし、県で確保している病床の使用率も徐々に上がってきている状況でございますが、重症者は比較的少ないということでございます。したがって、これから夏の行楽シーズン、お盆の帰省シーズンを迎えますので、受診相談センターの回線を増やしたり、自宅療養者等支援センターの体制を増強する対策を講じてまいります。また、診療所、高齢・障害施設では、申込みがあればということではございますが、一斉検査を行っていくことといたします。少し以前よりもこういった対策が緩んでいることを受けまして、夏の感染対策のポイントというものを皆様方にお知らせをしています。一つは今日の会場もそうですけど、換気です。窓を開けると熱い空気が入ってくるということもありますが、換気と手洗いとマスクの着用、今度のびわ湖大花火大会には混雑する電車に乗って来られる方もおられると思いますが、混雑する車中等でのマスクの着用など、こういったことを改めて皆さんにお呼び掛けいたします。「もういいだろう」とか、「私はいいだろう」ということではなくて、こういったことで、うつることもうつすことも避けることができるということについて、皆様方に御案内をさせていただきます。
もう一つは今週24日から26日、山梨県八ヶ岳で開催されました全国知事会議に出席させていただきました。最近知ったのですけど、私全国知事会の副会長だそうで、責任重大ということで全日程参加し、会議の直前に行われた理事会にも参加させていただきました。そして、これまでの「次世代育成支援対策プロジェクトチーム」が格上げされ、「子ども・子育て政策推進本部」が新たに設置をされました。その本部長を私が仰せつかることとなり、47都道府県全てが加入する体制となりました。したがいまして、この子ども・子育て政策の充実を含め、自然災害対応、脱炭素対策、公共交通の問題など、様々な議論が行われましたので、国への提言活動を含め、滋賀県の取組をさらに充実させることに尽力してまいりたいと存じます。
それではいくつか資料を配付しておりますので、資料に基づいてお話をいたします。子ども若者向きの広報の今年度の新規事業として、高校新聞部による県政広報事業を実施します。この事業は、県内の高校新聞部の記者の皆さんを対象に、私が記者会見形式で、県の施策を説明いたしますとともに、それぞれの学校が独自に取材、編集された記事を校内新聞に取り上げていただくことで、県がどのような取組を行っているのか、高校生に情報を届けていこうというものでございます。実施日時は、8月9日水曜日16時からです。会場は滋賀県危機管理センター1階の大会議室です。県内の高校新聞部8校から、各校3名の記者の皆さんにお越しいただいて、約1時間2つのテーマでお話をし、質問をお受けします。テーマは「滋賀県における再生可能エネルギーの活用」と「滋賀県北部の人口減少」についてでございます。この会見のテーマは各校新聞部の希望テーマをもとに設定しました。県内の広報新聞部には全国大会で何度も最優秀を受賞している学校もあります。若い視点、様々な独自の視点での質問が出てくるのかもしれません。今回は県立高校だけなので、今後は県内私学にも広げていきたいと思いますので、また皆様方のお力添えをよろしくお願いいたします。メディア機関のリクルート活動にも生かせるかもしれませんね。
続いては、「びわ湖マラソン2024」に関するお知らせでございます。令和6年、2024年3月10日、日曜日に開催いたします。ランナー7,000人とボランティア3,000人程度の募集を、8月1日火曜日正午から開始いたします。今年3月に開催した第1回大会では、ランナー、ボランティアともに9割を超える方々に「参加して良かった」との御評価をいただいたところです。ランナーの皆さんからは、良かったところということで、ボランティアの方々の対応・気配りや、給水・給食の内容や量が良かったとか、これは近江牛ローストビーフとか、近江米のおにぎりとかですかね、もうちょっと小さかったら食べやすかったという御意見もちょっと聞きましたけれども。湖魚の佃煮などの滋賀らしさあふれる給水所。また冠雪が残る山々、琵琶湖の景色。またフラットなコースだったということに高い評価をいただいたということでございます。私も沿道でちょっと応援し、応援もいただきましたけど、あれは嬉しかったですね。また、たまたま通りかかって応援したという人が最後まで応援してしまったとか、応援したことが楽しかったとか、そういうお声もいただいておりました。もちろんランナーの皆さんからは、すごく勇気づけられたというようなお声もいただきました。2024年の大会も期待に応えられるように準備を今進めているところです。コースについては、一部変更いたします。ランナーの皆さんがより走りやすく、地元の皆さんがより応援しやすいように、メロン街道を使うとか、草津川跡地公園のai彩ひろばの前を通るルートに一部変更させていただいております。関わる全ての方々に御満足いただける世界一のマラソン大会を目指して、前回を超える感動を味わっていただけるように準備を進めているところでございます。よろしく御報道、御案内方お願いいたします。
続いて、デジタル地域コミュニティ通貨「ビワコ」が開始から1年経ちましたという御案内でございます。これまでの間、体験を提供するスポットとして、約500の企業、団体、個人の皆さんに御参加いただきました。ユーザー数は8,000人に上っているということでございます。この度、「ビワコ」のサービス提供開始から1年という節目に、子どもたちの夏休みの自由研究に役立ててもらえるイベントを実施いたします。具体的には「ビワコ」を導入されている甲賀市・高島市・長浜市・近江八幡市・日野町において、地蔵盆やカブトムシなど、この時期ならではのテーマ等について、子どもたちが学びを深める体験を提供しようというものでございます。ぜひ、「ビワコ」をダウンロードしていただいて、お子様と一緒に地域を巡って、楽しみながら学んでいただければと思います。こういう来てほしい人と行きたい人を繋ぐ、遊びながら学べる、こういう仕組みをデジタルで実現していく、こういうチャレンジを行っていき、地域活性化、地方創生につなげていきたいと思いますので、ぜひ皆様方共々お力添えいただければ幸いでございます。私からは以上です。
[NHK]
長浜市のプールでの事故死の問題についてですが、事故が起きてから、事故が起きる前にも国からの通知を県としては、長浜市の担当部署の方に通達をしていて、結果としては、長浜市の学童クラブを管轄するこども家庭支援課には、その通知は共有されていなかったということも明らかになっていて、県としては、この事案が起きた後にさらに緊急の事故防止対策の徹底についての通知を出されていると思いますけれども、今申し上げた長浜市の対応について、知事としてどう受け止めていらっしゃるのか伺ってもよろしいでしょうか。
【知事】
まずは楽しい夏休み、そして待ちに待っていたプールでの活動で、命を亡くすとか子どもが亡くなるとか、そういうことを想定しておりませんので、親御さんはそうですけれども、関係者の悲しみ、これは如何ばかりかと心を寄せたいと思います。放課後児童クラブ活動での死亡事故というのが、滋賀県ではこういうものが報告義務付けされてから今までなかったので、初めての事例ということになります。特に放課後児童クラブの場所以外での活動、こういったプールを使ってやるとか、そういったことの安全対策というのは、これまで以上に気をつけなければいけないということだと思いますし、当該児童が小学校入ったばかりの1年生ということであれば、泳力がどうだったのか。水に対して自分の命を守る行動を取れるのかということに対する認識がどうだったのか。水深がどうだったのか。また、子どもの健康状態に対して水温はどうだったのか。こういったことなどは、もちろんプール管理者も気を付けることがあるでしょうし、放課後児童クラブを運営し、活動を見守るスタッフの体制、これは意識・知識の両面でそうですけれども、より重要になってくると思います。したがって、まず今回のことがどうして起こったのか、どうやったら防げたのか、ということを再度確認すると同時に、今まだ夏の期間ですので、プールでの活動はこれからも行われると思いますので、関係者に改めて注意喚起をしていきたいと思います。この事故が起こったからということではないですが、県と市町で一緒に議論をする「子ども政策推進会議」が8月3日に行われるということですので、今回のことは改めて共有したいと思います。遊泳用のプールが県内に105あり、保健所がそれぞれを管轄し、管理状況等を確認しているということでございます。中核市の大津市は保健所設置自治体ということですが、大津市だけで28ございますので、県としては77、こういったプールの管理状況の確認についても再度徹底していきたいと思います。
[NHK]
今おっしゃった各プールの管理状況というのは、確認されたら何か発表されたり、数字としてまとめたりなど、何か御予定とかはあるのでしょうか。
【知事】
今何か数字としてということまでは考えておりませんが、そもそも監視人をどのように置いていらっしゃるのか。貸切で子どもたちを泳がせて、大人が見守る活動の中で、どのような体制をとればいいのか。また、プール活動等に慣れていらっしゃるスタッフさんは、目の付けどころや危ないところはわかるんだと思いますが、そうではない事業者に対してどのような体制をとっていくのが良いのか。まずは今回のことを受けて、どのような対策が必要だったのか、どうすれば防げたのかということを確認したいと思います。
[NHK]
ビッグモーター社の件で、各都道府県でビッグモーターの店舗前の街路樹が枯れているという事案が確認されていて、滋賀県の中でも3店舗あるうちの草津店の前で確認されていると報道にも出ておりますけれども、県として今後どのように対応し、どのように現状認識されているのか伺ってもよろしいでしょうか。
【知事】
まず、一連のビッグモーター社をめぐる様々な問題については、例えば車の管理のあり方、保険のあり方、こういうものの信頼を揺るがしかねない事象だということで、憂慮しています。報じられていることなどが事実だとすれば、これは極めて遺憾なことではないかと思います。店舗の前の街路樹の問題については、県内に3つ店舗があり、彦根の店舗の前には街路樹がなく、守山の店舗の前は枯れていなくて、(スライドを指差しながら)この写真にありますように、草津の店舗前の街路樹は枯れて、今こういう状態になっているということです。原因を調べています。どういう経緯があったのかを調べた上で、その内容に基づいて対応、対処してまいりたいと思います。
[NHK]
疑いとして言われていることは、ビッグモーターの社員が何か薬剤などを使って枯れさせていたのではないかという憶測も出ていますけれども、もしそうだった場合は、警察への被害届の提出など、県としてはどう対応されますか。
【知事】
報道は報道として、まずこの当該事例がどういう状況なのか、どういう経緯があったのか、そして今わかることがどういうことなのかということを調べた上で、その結果に基づいて必要な対応を取ってまいります。
[NHK]
どういったことを調べられるのでしょうか。
【知事】
そもそも他のところは瑞々しく生えているのになぜここだけが枯れているのか。どういう経緯で、いつ何が起こってこうなったのか、なぜここだけ木を切ったのか、そういう経緯をまずは調べる必要があります。それがいつなのかによって土壌がどういう状態なのか成分分析などをする必要があるでしょうし、当該店舗とどういうやり取りがあったのかということもわかる範囲で調べる必要があると思います。
[読売新聞]
ビッグモーター社の件ですが、土壌の成分調査、店舗への聞き取り調査はされるということでよろしいでしょうか。
【知事】
いたします。
[読売新聞]
時期はいつ頃でしょうか。
【知事】
今もう指示しましたので、早急に行います。
[読売新聞]
プール事故の問題ですが、もう夏休みに入っており、他の学童さんとかも子どもさんをプールに連れていくという計画をされていて、今回の事故の原因を早急に調べないといけないと思うのですが、調査はいつされるおつもりでしょうか。
【知事】
まず、今やれることとして見守りの体制ですとか、子どもの健康観察ですとか、泳力などは、学校はある程度把握してやっていますけど、放課後児童クラブの活動で、こういったことがどのように把握されているのかということについては、改めて今回起こったことを教訓に、担当所管課と共有をした上で、事業者にもしっかりと通知、通達していきたいと思います。その上で、今回の事故がどういうことで起きたのか、聞いていますと、コースロープに絡むことがあったんじゃないかとか、プールの深さが当該児童に対してどうだったのかとか、水温は問題なかったということですけど、それとてどうだったのかとか、そういったことなども今後わかってくることもあるでしょうから、そういうことを受けて、例えば中長期でどうするのか、次の施設でどうするのか、またこういった事業者とプール施設を管理する人たちとの連携体制をどのようにするのかとか、そういったことなども、改めて考えていきたいと思います。この夏に間に合うことは、この夏、共有伝達をし、次の季節になることは、次の季節に徹底していきたいと思います。
[読売新聞]
再発防止策など、できる対応はこの夏休み中にやりたいということですか。
【知事】
すでに、8月3日には市町の担当者と議論を共有する場も持ちますので、改めての(安全対策の)徹底と、そして県内には105か所の遊泳用プールがありますので、そういった場所で、こういう貸切などをする場合の連絡連携、責任体制をどうするのかということの議論をしていきたいと思います。
[読売新聞]
びわ湖マラソンの件ですが、今回コースを変えたというのは、県民の方との触れ合いとかをもう少し増やした方がいいかなということがあったんでしょうか。
【知事】
皆さんに御案内のとおり、(スライドを指差しながら)後半に琵琶湖岸からゴルフ場に行って、また同じ道を戻ってくるというランナーの気持ちを折るようなコースがありましたし、大宮橋を渡って琵琶湖岸に行けるかなと思ったら、早速矢橋帰帆島の裏道、これはこれでいいんですけど、そういう同じところを行って帰ってくるということは少なくすることができないかとか、いろいろと改善できるところを指摘いただいておりましたので、メロン街道とか草津川跡地公園のai彩ひろばとかなら、こういう活用の仕方があるということなどがありましたので今回改善を行うこととしました。
[読売新聞]
よりランナーの気持ちに寄り添って、気持ちよく走ってもらうということでしょうか。
【知事】
そうですね。
[読売新聞]
メロン街道とかはあまり人がいなさそうですけど、県民の方とかは来られるところなんですか。
【知事】
コースになるということになれば、きちんと御案内しますし、また給水ポイントをどこにするのかとか、応援もしていただけるし、走る方にも楽しんでいただけるコース設定になるんじゃないかと思います。
[読売新聞]
給食スポットで出すものというのはまだ決まっていないんでしょうか。
【知事】
基本、昨年と同様に滋賀県を代表する産物を提供できると思います。(スライドを指差しながら)前回大会の様子ですね。走っているときに湖魚。前回大会ではおにぎりに湖魚を乗せて、滋賀県ならではの食べ方をしておられた方もおられたようです。給水ポイントでも、提供される方も楽しみながらやっていただいたことが印象に残りました。応援している人も元気をもらえたし、走っている人もすごく元気づけられたそうです。(記者に向かって)一度走られたらどうですか。私は連れ合いが走ったので、「あなたも走らないと」と言われています。次回かどうかはわかりませんが、またチャレンジしていきたいなと思います。
[朝日新聞]
先ほど高校野球の県大会で近江高校が、コロナで休みだった大会を挟んで5回連続優勝で17回目の甲子園出場を決めたのでメッセージをいただければ。
【知事】
熱闘、激闘を制して5連覇、そして甲子園への出場に心からの祝意を贈りたいと思います。決勝戦も激戦だったそうですね。またそれぞれの試合、予選トーナメントもすごくいい試合がたくさんあって、いろいろなドラマがあったということも聞いておりますので、高校生、関係者の皆さんの頑張りにも敬意を表したいと思います。また一度しかない青春ですので、大いに盛り上がってほしいなと思います。
[朝日新聞]
「健康しが」実現の施策として、人と動物の豊かな関わりの推進を掲げていらっしゃいます。これについてお尋ねしたいと思います。今回の県議会の一般質問でニホンザルの問題が取り上げられ、県の環境審議会でも今議論されていますけれども、農作物を荒らす野生生物、野生動物を害獣として駆除するということ。農家の方にとってみれば切実な問題なので、その重要性についてはもちろん理解はしているのですけれども、野生動物との豊かな関わりということからすれば、駆除だけではなく共生するという方向も非常に重要ではないかなと思います。ニホンザルやカワウあるいはシカの個体数管理を進めている、いろいろ計画も立てて今取り組んでらっしゃると思うのですが、うまく人間と野生動物が棲み分けるという取組もあろうかと思います。その点についてはどのようにお考えでしょうか。
【知事】
今おっしゃったニホンジカ、そしてニホンザル、カワウは以前よりも増えすぎて、人里、生活区域にも出てきて、大切な農作物などを食べたり被害を与えたり、また貴重な植生等が失われたりということがございまして、このことに対して様々な対策をとっているところです。駆除だけではなくて、もちろん必要な駆除もさせていただきますが、被害を防ぐこと、これは防護柵。また生息環境を管理すること。さらには今、どれだけどこにいるんだという個体群を管理するという、今この3本柱でやっていますし、そのことが基本になると思います。その上で、棲み分けということになれば、一つは山をはじめとする自然環境を変えていくということは重要だと思います。針葉樹を植え過ぎました。伐れていません。十分管理できていませんので、この針葉樹を伐ってまた植え替えるときに、広葉樹の山に戻していく。雑木の山に、実がなって葉が落ちる山に戻していくという、こういう対策は一つあると思います。人間が住むところと、そういった自然動物、野生動物が棲むところとの間の里山とか、鎮守の森とか、境界の自然というのもとても大事になってくると思いますので、こういった視点で山の管理などを行っていく必要があると思います。
ただ大きな問題は、山間部は過疎化とか高齢化が進んでいて、いろんな対策を取ろうにも人手がいないとか、動けないということもあると思います。何かいい事例ですね、例えば企業や大学生と一緒になって対策を講じている事例なんかも県内にはありますので、優良事例をつくり、広げていくような取組も進めていければと思います。
[朝日新聞]
環境審議会でも進めている滋賀県ニホンザル第5次管理計画の中にもありましたけれども、その考え方を踏まえてだと思うのですが、里の餌価値を下げる、森の餌価値を上げる、そして里は人、山は動物という形で、それぞれが棲み分けていく方向性というのは、今回滋賀県が進めている方策の中でも、棲み分けて共生していこうというものが感じられるのですけれども、一方で農水省が鳥獣被害対策の第1の柱として挙げているのは、やはり個体数管理で、イノシシやシカなどの個体数は10年間で半減させるという数値目標を出しています。
個体数の数字だけということになると、数値目標達成のためにどれだけ捕獲するのか、駆除するのかと。食料として野生動物を狩猟するとか、スポーツとか趣味としてハンティングというか狩猟をするということは理解できるのですが、数を達成するために意味なくその動物の命を奪うということは、本当にあっていいのかなと考えてしまうので、こういう計画を立てる上でも、滋賀県は動物と人間が共生していくという世界を目指しているんだということを、もっと強くアピールされると良いのかなというふうに感じています。
動物と人間が共生するというと、ちょっと夢物語みたいな感じはするんですけれども、例えば水族館の大水槽の中での魚同士が食ったりしないですよね。あるいは今、大河ドラマでもやっていますが、戦国時代は国と国とで人が殺し合うのが当たり前の世界だったのですが、今の世の中はもうそういうことはなく、人々は国が違っても平和に生きていけるという世界を実現しているわけなので、決して夢物語ではなく、実現することというのは可能なのではないのかなというところに希望というか、滋賀県らしく、動物も人間も社会も三方よしという、そうした形の動物の管理というか、「やまの健康」を目指すという方策というのは、滋賀県ならではというか、滋賀県にこそ目指してほしいなと思うところではあります。これから計画や実施において生かしていっていただけたらなというふうに思っていますので、そこはよろしくお願いします。
【知事】
広くて深いお言葉をエールと受け止めて、考えていきたいと思います。審議会での議論は、今行われている途中なのか、私も詳らかに把握するわけではありませんが、山の餌価値を上げて、里の餌の価値を下げるというのは重要な視点だと思います。と同時に、せっかく作ったものが刈り入れ直前に動物に食われる、取られるというのは、農家からすると大変なことですので、そういったことにどのように向き合っていくのか。その一つの手段として個体数を管理しようじゃないかという、これも必要なことですので、両面を見ていく必要があると思います。
ただ長い目で見れば、動物は動物が棲めるところ、人は人が住めるところ、そして双方に共生をしていく、豊かな関わり合いをもっていく。これが大事なことだと思います。滋賀県は真ん中に琵琶湖があって、里がその周りにあって、そして周囲を山に囲まれているということからすると、山のことと里のことが比較的身近なところでみんなが体験できる、共有できるという、こういう地域だと思います。したがって、今、利害が相克するいろいろな課題に対しても折り合いをつけて、生き物のことも考えながら生きていくという、全ての生き物の命のことを考えながら生きていくという実践がとりやすいと思います。ぜひ、おっしゃったような視点も取り入れながら、計画などに反映していきたいと思います。
[NHK]
隣県の話になるのですが、福井県にある関西電力の高浜原子力発電所の1号機が、今日およそ12年ぶりに再稼働するということで、原則40年に制限されている運転期間を超えて再稼働をするのは全国で2例目ということですけれども、隣県の滋賀県の知事として、受け止めをうかがってもよろしいでしょうか。
【知事】
まず、電気・電力は私たちが生きるうえで必要なものですし、今これだけ酷暑・猛暑の中、エアコンを適度に使ってと言っておりますので、その安全・安定供給に御尽力されている方々に敬意を表したい。また、原発はどこにでも立地できるわけではなくて、ここに、この場所でということで、そのことに御理解いただいている方々に思いを寄せ、そういった自治体だけではなくて、電気・電力の供給を受けている地域にあっても、当該地域のことを一緒に考えていくということが大事だと思います。と同時に、原発の稼働・再稼働ということに関しては、私どもは立地自治体だけではなくて、何か起こって被害が広域に及んだときに、その影響を受ける可能性のある地域も含めて、またある意味では電力供給を受けている地域も含めて、実効性ある多重防護体制の構築が必要だということを申しております。これはハード面だけではなくてソフトも、そして立地自治体だけではなくて、隣接する自治体も含んだ形で、法定でルール作りをして対応を強化していくということが必要ではないかと。
また何より、動かすと必ず出てくる廃棄物もしくは使用済み核燃料。そういったものの使い方とか、処理の仕方が決まっていない、いわゆるバックエンドの問題ですね。こういったことに道筋をつけられていない状況、また冒頭申し上げた実効性ある多重防護体制が十分構築できていない状況下においては、不安に思う人も多いであろうと。したがって、再稼働を簡単に容認できる環境にはないというのが私たちのスタンスです。ただこういったことも含めて、様々な取組が今行われようとしておりますので、そういったものを私どもも注視していきたいと思います。