平成28年4月25日
(県政記者クラブ主催)
熊本を中心とする地震被害、多くの方のご尽力がありますが、今なお現場の皆様方には非常に厳しい状況にあるということも伺っております。第1陣支援チーム、県から既に7名が現場で対応をしておりますし、現地からの情報等によれば、まだまだ水の問題ですとか、食料の問題ですとか、物資の問題、更には、そろそろ次の段階に課題が入ってきていて、避難所になっている教育現場をどう再開していくか、更には避難されている方の健康状態をどう保ち回復していくのかといったこういう課題もあるように伺っておりますので、その辺りのことを我々も出来る限り伺いながら、第2陣、第3陣の派遣にも活かして参りたいと思っておりますし、まずは熊本での復旧が第一優先でございますが、併せて、かねてから申し上げておりますように本県の防災対策を不断に再検討していくということが必要だと思いますので、そのことに活かして参りたいと思います。
また、週末は米原において、「街道をゆく」は近江からはじまったということで、司馬遼太郎先生没後20年記念シンポジウムを開催致しました。この中にもご参加、ご取材いただいた社様いらっしゃいますけれども、たいへん大勢の約1,500名の方に県外からもご参集いただいて、有意義なシンポジウムを開催できたのではないかと考えております。真の地方創生というか真の滋賀活性化に繋がる一歩を踏み出せたのではないかなと考えておりまして、司馬先生をはじめ多くの先人がこの滋賀、近江の魅力、価値というものにスポットライトを当てていただいている、そのことを私たち県民自身が学び、そして自信をもって発信していく、そういうことに更に繋げて参りたいと考えております。
そういったことにも絡みますが、本日は2点ご報告、ご案内をさせていただきます。
まず1点目は、平成28年度日本遺産の認定等についてでございます。
昨年認定されました「琵琶湖とその水辺景観-祈りと暮らしの水遺産」への5件の構成文化財の追加が認められました。追加されたのは、水と暮らしにまつわる文化財として、石山寺、彦根城、菅浦の湖岸集落景観、そして水と祈りの分野につきましては西教寺と竹生島が追加されたということでございます。今回の追加でストーリーが更に充実致しました。新たに長浜市が加わることで、視覚的にも琵琶湖を取り巻くストーリーになって参りました。
それぞれ個々の施設等については皆様方もよくご存じだと思いますが、まず1つ目の石山寺につきましては、紫式部が源氏物語の着想を得た所として有名でございます。琵琶湖と水が持つ神秘的・芸術的な景観は見る者の心の有り様を表す景観として日本遺産のストーリーをより豊かに彩るものだと思います。
彦根城につきましては、かつては琵琶湖や内湖に接して築かれた水城であったと、堀沿いに残ります船着場跡でありますとか、船頭、漕ぎ手の屋敷跡、船町という地名から水に関わった当時の人々の暮らしぶりを読み取ることができると思います。
菅浦湖岸集落景観は、中世まで遡る集落運営の仕組みとともに維持されてきた水辺の暮らしが今も息づく重要文化的景観でございます。
西教寺は延暦寺、三井寺とともに、天台三総本山といわれておりまして、琵琶湖を天台薬師の池とする水の浄土の信仰を集めておりますし、庭園には琵琶湖の形を模した池がしつらえられており、水の浄土に対する信仰の形を表しております。
竹生島は古くから水の神の宿る島として崇められ、航行の安全を守る神としても信仰を集めております。現在では琵琶湖に浮かぶパワースポットの島としても広く知られており、水と祈りを体感できる場所でもございます。
昨年4月に認定を受けまして、日本遺産を活かした滋賀琵琶湖を巡る旅づくりですとか、地域観光振興への取組を進めるため、県や関係6市、関係団体で作ります日本遺産「水の文化」ツーリズム推進協議会を設立致しますとともに、各地域においても関係者等で構成致します地域協議会を設置して取組を進めております。
認定初年度でありました昨年度は、日本遺産の認知度向上を図るための情報発信と地域での受入れ環境の向上を図るための取組をスタートさせました。情報発信と致しましてはお配り致しておりますパンフレットやラッピングトレインの運行でありますとか、日本遺産関連の土産品の選定、PR事業などの展開をしたところでございます。受入れ環境の整備につきましては、写真でもご紹介しておりますとおり、各地域でのワークショップを開催し、構成文化財を核とした観光街歩きや周遊に繋げるため、地域の皆さんとともに地域資源の洗い出し等を行いました。また、ボランティアガイドの充実を図るため養成講座を開催し、ホスピタリティの向上などにも努めたところでございます。
今後の取組でございますが、大きく分けて3つの柱の事業を行って参ります。昨年度から実施しております認知度向上に向けた情報発信の取組と、受入れ環境の充実に向けた取組の充実に加えまして、実際に日本遺産を訪れていただく旅行商品の造成を図るため旅行会社等へのプロモーションを強化して参ります。こうした取組により認知度を向上させて地域の魅力を向上していくことで、来年度に開催を予定しております「水の文化」をテーマに各地域を巡る「水の文化ぐるっと博」を地域が主体となる観光まちづくりの取組に繋げて参りたいと思います。
特に新たに加わっていただきます長浜市、5つの構成文化財と既存の地域が融合して厚みと幅のあるより魅力的な日本遺産として、誘客促進に繋がるものと期待しておりまして、しっかりと連携して取り組んで参りたいと思います。命の源泉であり、祈りの対象であり、癒しの場所である琵琶湖、この水辺景観を大切に訴えていくために、この日本遺産、新たに加わったものと重ねて、琵琶湖保全再生法とも上手くリンクをさせながら、琵琶湖の魅力を丸ごと発信してまいりたいと考えております。
続いて2点目、これも資料提供させていただいておりますし、既にコメント等も発しておりますが、昨年9月に琵琶湖の保全及び再生に関する法律が公布・施行されまして、この法律に基づきまして去る4月21日に琵琶湖の保全及び再生に関する基本方針が策定されました。
昨年来、国に対して基本方針の早期策定をお願いしておりましたし、様々国とも意見交換をさせいただいておりましたので、それに応えて策定していただいたことに感謝をしているところです。
基本方針は、いわば基本設計図のようなものでございまして、これからは、この基本設計を勘案しながら、本県が実施設計図であります琵琶湖保全再生計画を策定することとなります。この基本方針をご覧いただけましたら分かるように特に趣旨の所、2つ目のパラグラフの5行目、琵琶湖と人との共生を基調としという所でございますとか、中段以降、なお琵琶湖の保全及び再生には以下が重要であるとの認識の下、これらを行うものとする所で3つ。1つ目、琵琶湖の重要性や現状、保全及び再生の必要性について、国民の幅広い共感を得るように努めること。2つ目、琵琶湖の保全と多様な産業活動等活力ある暮らしとの共存を図るように努めること。3つ目、琵琶湖の価値を将来にわったて共有できるように努めること。この共感、共存、共有というところが極めて重要なキーワードとなっております。
いずれも先程の琵琶湖と人との共生を基調とし、ということも含めまして、今ありますマザーレイク21計画の柱になる考え方を、この国の基本方針の中でもしっかりと位置付けていただいたということでございまして、これは今後策定致します基本計画でも大きな支柱となってくると位置付けております。
法律にも明記されておりますとおり、この国民的資産ともいえる琵琶湖、しかし保全及び再生が困難な状況にある琵琶湖。この取組を展開することが全国の湖沼再生の先駆けとなるというふうに位置づけられておりますので、しっかりと取り組んで参りたいと思います。これから保全再生計画の策定段階に入りますが、策定にあたりましては県議会での議論はもとより市町や関係府県、住民や関係団体など多様な主体の皆様と幅広く意見交換しながら、これからの取組も糧としながら今年度中の策定を目途に進めていきたいと考えております。自然と共生する社会モデルを、琵琶湖を中心に県を挙げて作り、滋賀県から全国、また、世界に発信して参りたいと存じます。
[京都新聞]
琵琶湖の保全再生の計画をこれから作ることになるんですけれども、県内の市町も含めて下流域の自治体とどう連携協議していくのかということだろうと思うんですが、計画をつくる枠組みですね。既に決められたやり方もあるのかもしれませんが、より幅広く協議をするという意味でどういう枠組みで話し合っていこうかということについて、知事は今お考えがありますでしょうか。
[知事]
法律に基づく計画づくりは初めてでございますので、特にモデルになる事例先例があるわけでもございませんが、先ほど申し上げた通り市町をはじめ関係団体、NPOを含め幅広くご意見をいただける環境をまず作りたいと思います。今の段階でこういう会議をというようなアイデアがあるわけではございません。
また首長会議等においてもこの点についてご提議いただいておりますので、首長会議も定例、臨時も含め、少し工夫をして、ご意見を承ってまいりたいと思います。下流府県のさまざまなご意見、ご提言をうかがうことは必要だと思うんですが、少しここは段階を置いて、滋賀はまず滋賀でまとめて滋賀でできる事を作った上で、下流府県等々とも協議に臨んでいくのが良いのではないかと考えております。
ただこれまでやってきた積み重ねもございますので、保全計画以上のことも対象とするマザーレイク21計画が現時点であります。こういう今ある計画との整合性をどう図っていけばいいのかということも少し検討の対象にもなると思いますので、この辺り早急に整理をして、幅広い計画を作っていけるようにしたいと思います。
[京都新聞]
日本遺産に関連して、今回追加認定されて幅が広がるという意味では喜ばしいんだろうと思いますけど、残念ながら今回は認定されなかった件も、今後は練り直したり、あるいは制度上そういうことができるかどうかなんですが、もう一度トライするとかお考えでしょうか。
[知事]
第二次、二回目の認定というもので国全体のラインナップがどう整い、それらがどう活用されるのかということがまず大事だと思います。各市を中心にエントリーされたものが落選して、その方々とも協議する必要があると思いますが、この件で既に認定されている日本遺産の枠組みの中で関連してPRできる項目もあるのかもしれませんし、認定されたことをどう生かすのかという実績を作りたいと思います。
その上で今回応募に応じられた自治体の皆様とも協議したいと思います。
[京都新聞]
昨日、衆院の補選が2つ終わりまして、特に北海道5区については与野党対決という形になって、野党が共闘する形で選挙に臨んだ結果、自民党の候補が勝つ形になったんですが、これを今の政権に対する評価として受け止められるのかどうかを含めて知事のご感想をお願いします。
[知事]
今回2つの補欠選挙が行われ、その結果だけを見て、現政権に対する評価というのは少し難しいのではないかと思います。といいますのもそもそもの補欠選挙が行われた理由というのも前衆議院議長の逝去であったり、前衆議院議員の辞職であったことから行われた補欠選挙でありましたし、北海道と京都という限られた地域での、ある意味違った構図の中ですので、その結果だけを見て今の政権に対する評価というのは難しいのではないかと考えます。
しかし北海道において今の与党の枠組みと野党が共闘しての選択肢を示された上での結果ということであれば、その地域の政権に対する評価というものには当てはまるのかもしれません。その意味で見方はそれぞれなんでしょうけど予想以上に接戦、僅差だったのかなあということからすれば、そのことが今の一つの評価なのかもしれません。
いずれにいたしましても熊本を中心とした震災の対応、経済対策等々もありますので、国会も会期末が近づき、参院選挙も近づいているということですから、それぞれの政党、勢力の皆様が機会をとらえて、どう有権者の皆様に選択真意を問われるのかということだと思いますので、私たちも一国民として、自治体の長としても注目をしていきたいと思います。
[読売新聞]
日本遺産の件で、長浜市さんは単独の申請は認められずに認定されているものに加わるということなんですが、最初から長浜市さんが加わっていれば琵琶湖を一周する形になっていたと思うんですが、そのあたりに対しての知事のお考えと、「ぐるっと博」の事もおっしゃってましたけど、来年度までにどこか新たに加わる可能性、琵琶湖に接するところはそうですが、川なども含めて水辺の景観ということもあるかもしれませんし、感触としてどのようにお考えですか。
[知事]
1点目の当初から長浜市さんも、ということについては我々もそうなればいいなということで取り組んでまいりましたが、初年度一年目、かつ準備まで少し時間が足りなかったということで、一緒にやろうという合意が取れた自治体と滋賀県で応募申請し、認められたということでありますし、一年開きましたけれども今回長浜市さんの文化財も認定されたということですので、ぐるっと琵琶湖周辺ということをよりわかりやすく訴求する力が高められたのではないかというふうに思っております。
もう一つのそれ以外の市町もということでいうと、およそ「琵琶湖とその水辺景観-祈りと暮らしの水遺産」ということで言うと、滋賀県は琵琶湖を中心に何らかの関わりがございますので、そのあたりのことは単に調整し、市町の施設だけにとらわれない取組というものも柔軟に展開してまいりたいと思いますので、そこは今回認定された、あるいは追加認定されたものを核としながら広がりのあるキャンペーンを行っていきたいなと思っています。
[NHK]
琵琶湖再生に関して、改めて基本方針を踏まえて計画を作る際に何を最も大切して、何を中心に計画を作っていくのかということと、それをどうアピールしていくのかということをもう一度うかがってよろしいでしょうか。
[知事]
2つありまして、まずは法律でもいろいろと指摘していただいているんですが、琵琶湖の困難な状況にある課題、水草の問題でありますとか、オオバナミズキンバイ、侵略性外来水生植物、こういった課題。これに即応するということがまず一つ。
もう一つは中長期的に見て、また全国や世界の湖沼の状況を勘案して、その解決に先駆けとなる分野。たとえば水質の問題でありますとか、在来魚介類の復活、また山との関係。山の木の状況と琵琶湖の問題と関わり合いですね。こういったところは、つながり再生ということで研究しておりますので、国の一部来ていただく研究機関ともリンクしながら共同研究を進めて取り組んで、つなげていくという大きくこの2つが重要なテーマだと思っております。
[滋賀報知]
まず、日本遺産ですが、昨年度はスタートだったんですが、もう一つ長浜が加わったんですが、戦略的にどうされるのか、日本遺産という名前の割にはもうひとつ取組が見えにくいというようなものがあって、今年度この加わったことでどういう具合に進めていかれるのかあらためて伺いたい。2点目は京都新聞さんから質問がありました、昨日のダブルの選挙なんですが、あの結果を踏まえていろいろ言われていますが、まず、解散を衆参ダブルでいくべきかどうかという、あるいは安倍さんどうするかという問題があるんですが、知事はどのように受け止められているのか。
[知事]
まず、1点目の日本遺産の取組は、石川さんはそう取られるかもしれませんが、我々は、素晴らしくいい機会、認定をいただいたと思っていまして、まずは初年度は、そういった広報物ですとか、PRですとか、また、せっかくだから学ぼう、ちゃんと案内できるようにしよう、というネットワークづくりから始めましたし、たとえば、この施設などは訪日外国人旅行者の増ということもありますが、入込客数などを見ますと沖島は230%、そして、針江は121%、また、伊庭内湖でも前年比116%など、もちろんこれだけではないですが、一定の効果が発現してきている。また、今後伸びていく可能性をつくりだし始めていると思っていますので、むしろ、これからだと思っています。
さらに、長浜市さんの重要文化的景観である、菅浦ですとか、ここは、大浦とのイネの刈取りに関する、浦と浦の、村と村との争いの歴史ですとか、竹生島などは、これはまさに水運。水の祈りでいうと象徴的な場所ですので、これが入ったことによってさらに、観光というものに幅、深みがでてくると思いますので、そのあたりを有効にPRしていきたいと考えています。
2つ目におっしゃった今回の結果を受けて、解散総選挙がどうなるのかというのは、わかりません。私もまったくわかりません。まったくわからないですけれども、安倍総理はどう考えられているんですかね。かつ、こういう震災対応もありますし、補正予算の問題があり、だいたいゴールデンウィークというのが一つの時期になるんじゃないですか。国会議員のみなさんがどういう顔をして何を言って過ごすのか、たとえば、このゴールデンウィーク期間中の閣僚の皆様方の海外視察の状況がどうなのかとか、ゴールデンウィーク直前の代議士会や議員総会で、どんなことを党幹部から言われて地元に帰られるのか。僕はこの時期の選挙というのはやったことがないですが、すごくゴールデンウィークが大事な期間であるということを言われてきましたので、私自身も大事にしてきましたので、この期間をそれぞれの皆さんがどう過ごすのかというのが一つのメルクマールになるなと思って見ています。
[毎日新聞]
答えにくい質問で恐縮ですが、昨日、野党共闘が県内でも成立し、民進、共産、社民が林参議院議員を統一候補として戦うことが決まりましたけれども、それに対する評価をあらためて教えていただければ。
[知事]
野党共闘が成り、参議院議員選挙の予定候補者の野党間での統一が図られたという、そういうニュースには接しているんですけれども、具体的にどういう内容で合意され、今後、政策やマニフェストでどんなことを言っていかれるのか、私は少し詳しくありませんので、その中身を見て、また述べていくことになると思いますけれども、前回も申し上げたようにやはり、政治、選挙というのは理念、政策が大事ですので、そこで何を書かれるのかだと思います。ただ、大きな権力に対して、候補者を束ねて戦っていこうといわれるその動きについては、私は期待を持って見守っていきたいと思っています。
[時事通信]
熊本の地震の関係なんですが、被災地では避難が長期化するという見込みもありまして、仮設住宅なんかの話もでております。4月中は集中的に募金活動をするとお話されていましたが、5月以降は県としてどのような形で被災地の支援をされるお考えなのか。
[知事]
今日は4月25日ですので、もう少し状況を見たいと思っています。刻々と変わっているようですし、新たな課題もあるようですし、また、我々が滋賀にいて報道を通じて知ることと、現地の派遣職員からいただく情報とをつなぎ合わせて県として今後どういう対応をしていけばいいのかということをよく考えたいと思います。
いずれにしましても、これまでの震災等と少し違うのは、800回に及ぶ余震ですとか、建物が無事であっても家の中がぐちゃぐちゃであったり、危険度が判定できないがゆえに屋内に留まることができず、車内、駐車場、テント等で過ごされる方がいらっしゃるという状況が今後どう展開されていくのか、こういったことは、これまでにない被災の状況でもありますので、そこをよくよく見ながら、県としての対応を検討してまいりたいと思います。