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知事定例記者会見(2022年6月6日)

令和4年6月6日
(県政記者クラブ主催)

【知事】

おはようございます。今日もよろしくお願いします。

昨日は第72回全国植樹祭でした。前日のリハーサルもありましたので、相当、日に焼けていらっしゃる方々もおられることと思いますが、ありがとうございました。まずは、お天気が何とかもちました。天、自然、山の神に感謝したいと思います。また、この植樹祭の開催にあたって多くの方の御尽力、御協力を賜りました。その方々に厚く御礼申し上げます。

天皇皇后両陛下がオンラインで御臨席くださいました。お手植え、お手播きいただいた苗木と種子は事前に滋賀県から送らせていただいたものですし、植えていただいたものを近日中に滋賀県に戻す予定です。お披露目の時期等が決まりましたらお伝えしたいと思います。

滋賀県で(全国植樹祭を)やらないかと打診を受けてから、私が知事になって以降、もう6年近く対応してきたのですけれど、新型コロナウイルス感染症もございました。1年延期、また、両陛下オンラインでの御臨席、開催規模の縮小というようなこと事で、大変悩みながらの対応でございましたが、関係者一同、力を合わせてよく頑張ってくれたと思っております。今朝の経営会議で、そのあたりの労いをしたところでございます。

両陛下、大会会長の衆議院議長からも大変素晴らしい大会だったというお褒めの言葉いただいたのですが、例えば、滋賀県らしい取組として昨日も(植樹祭終了後の会見で)申し上げましたが、下流府県との連携ですとか、琵琶湖の水草を使った堆肥での植樹ですとか、滋賀県らしい植樹祭をつくれたこともよかったと思っております。

これからはレガシーをしっかりと残していこうということで、その第1弾といたしまして、「滋賀もりづくりアカデミー」というものがございますが、その学長に知事である私が7月1日以降に就任させていただくことといたしました。これまで琵琶湖環境部長が務めておりましたが、部局を超えて森林・林業人材を育成していく必要があるということを協議、また判断いたしまして、知事である私が就任しようということになりました。詳細近日中に御案内させていただきたいと思います。

6月5日は「環境の日」、今月が「環境月間」ということで関連いたしまして、6月1日に東京で行われた環境省の「脱炭素先行地域選定証授与式」に米原市が出席されました。滋賀県も一緒に「農山村の脱炭素化と地域活性~米原市『ECO VILLAGE構想』~」、この共同提案者として名を連ねております。米原市、ヤーマンホールディングス株式会社様とともに実現、前進に向けて取組を進めてまいります。今回は第1弾ということでしたが、第2、第3の脱炭素先行地域が選定される予定ということでございますので、引き続き、米原市以外の地域の選定に向けて、一緒に頑張っていきたいと思っております。

それでは、資料に基づきまして2点申し上げます。

まず1点目は、「琵琶湖と共生する農林水産業『琵琶湖システム』、いよいよ世界農業遺産の認定に向けた現地調査が実施されます」ということについてです。期日は6月16日の木曜日でございます。2019年2月に日本農業遺産に認定されました。世界農業遺産に申請することも認められたのですが、コロナ禍の影響でなかなか現地調査が実現してこなかったということがございます。

御案内のとおり、(本県では)古くから琵琶湖とともに暮らしがあります。持続的な農林水産業が社会や環境に適応しながら、幾世代にもわたり発達し、継承し、形づくられてきたということがございます。この滋賀県民の誇りである本県の農林水産業をより健全な姿で次の世代に引き継ぎ、付加価値を高めていきたい、また世界にも発信していきたいということで、世界農業遺産の認定を目指しているところです。

改めて、「琵琶湖システム」の概要について、今日はニゴロブナの立場で「育つ」「獲られる」「食べられる」の順に御紹介をさせていただきます。

まず、育つということでございます。「魚のゆりかご水田、Fish Cradle Paddy」という状況を御案内いたします。古来、出水期(水が出る時期)には、琵琶湖と沿岸部の水源がつながりまして、ニゴロブナなどは水田まで上って産卵しておりました。今でも、農業者だけでなく、子どもや大学生、企業なども参画していただき、湖魚を育む水田づくりの取組を進めております。現地調査では野洲市須原の事例を紹介する予定です。(モニターの動画を見ながら)これは魚が田んぼをずっと上って産卵する様子です。最近、赴任してこられたメディアの皆様方はご存じない方もいらっしゃるかもしれませんが、魚のゆりかご水田ではこういった状況が繰り広げられております。

次に「獲られる」。「Traditional ERI Fishing、エリ漁」でございます。魚の習性を利用した「待ち受け型」の漁法でございまして、一定以上のサイズの魚を必要な量だけ漁獲する仕組みでございます。古墳時代の遺跡、平安時代の和歌、江戸時代の文献などにも紹介される、そういう意味でエビデンスも多く、古くから資源管理型漁業が行われてきたことがわかっております。現地調査では高島市安曇川町の三和漁港から漁船に乗って「エリ漁」を御案内する予定でございます。

最後に「食べられる」。せっかく育ってきたのですが、獲られて食べられることとなります。皆様ご存じの「ふなずし」でございます。伝統的な食文化の代表格でございます。自然の恵みに感謝する祭礼。(モニターの動画を見ながら)これは守山市下新川神社の「すし切り」神事でございますが、祭礼にも湖魚が用いられ、地域の絆の醸成にも寄与しているところでございます。現地調査委員の方には鮒ずしをはじめとした湖魚や滋賀の農産物を召し上がっていただき、舌でも「琵琶湖システム」を感じていただく予定でございます。

現地調査におきましては、私もお出迎えいたしまして、説明を尽くし、是非とも世界農業遺産の認定をいただけるよう努めてまいります。報道機関各位、皆様もぜひ御取材等にお越しいただき、皆で世界農業遺産の認定に向けて、お力添えいただければ幸いでございます。

次は、CO2ネットゼロムーブメントを推進する取り組みについて2点御紹介いたします。

まず、配付資料の一つ目、「しがCO2ネットゼロムーブメント推進強化期間」というものを設定いたしまして、取組の「見える化」を集中的に実施することとしております。今年度は、新しい条例である「滋賀県CO2ネットゼロ社会づくりの推進に関する条例」および「滋賀県CO2ネットゼロ社会づくり推進計画」の実質的なスタートの年であり、滋賀県としてCO2ネットゼロを宣言してから3周年の節目ともなります。この節目を契機といたしまして、まだCO2ネットゼロへの関心が低い方も巻き込んでムーブメントを盛り上げていくため、令和4年12月から令和5年1月を推進強化期間と定めまして、取組の見える化を集中的に行おうと考えております。

見える化の具体的な内容は、情報の見える化や交流を目的としたプラットホームサイトの開設や各種イベントの実施、また、イベント内での表彰式や成果発表の場などを設ける予定でございます。

本日からこの推進強化期間中に、企業や団体等で実施されるCO2ネットゼロに関連する取組を広く募集させていただきますので、ムーブメントに御賛同いただき、情報提供や県もイベント等への御参加、御協力をお願いできればというものでございます。

配布資料の2つ目は、このムーブメントの一環として昨年度から始めました「CO2ネットゼロみらい賞」についてでございます。本日から今年度の募集を開始いたします。この賞は、CO2ネットゼロ社会づくりに関する県内の優れた取組を表彰いたしまして、広く紹介することを目的としており、「先進導入・実践部門」と「製品・サービス部門」と「地域づくり部門」の3部門を設定しております。受賞者につきましては、推進強化期間中に開催予定のイベントにおいて表彰させていただく予定です。先進的な取組をされている事業者や県民団体の方々からの応募をお待ちしております。

CO2ネットゼロ社会の実現に向けて、県内での取組を「見える化」していくことで、ムーブメントの輪を広げ、盛り上げていきたいと思いますので、共に頑張ってまいりましょう。私からは以上です。

[毎日新聞]

先日、厚生労働省が発表した合計特殊出生率のことでお尋ねします。全国的には前年の「1.33」より減りまして「1.30」。滋賀県も減りました。人口減少社会についてどのように受けとめていらっしゃるか、知事の御感想等をお願いします。

 

【知事】

私が知事に就任したころから滋賀県も人口減少局面に入っていまして、直近この3年はコロナ禍で、さらにそういう状況が進んでいるのではないかと思っています。特に、結婚しよう、パートナーと一緒に暮らそう、子どもを持とうという夢や希望がより損なわれている印象を持っておりまして、その意味で危機感を持っているところであります。

「子ども・子ども・子ども」ということで、子どものために、子どもとともにつくる県政を標榜しておりますし、人の健康、特に「心の健康」「社会の健康」「自然の健康」という「健康しが」を目指している中で、それぞれが夢と希望を持って、夫婦になる、家族を持つ、子どもを産むということに、より資する施策をしっかりとつくっていきたいと思います。

また、あわせて、人口の社会的増減を左右する「関係人口」、「交流人口」の拡大も大変重要な要素だと思っておりますので、今年度から行うデジタル通貨などを活用した取組をしっかりと行い、どういう効果があるのか見極めて、今後につなげていきたいと思います。

 

[毎日新聞]

滋賀県の「人口減少を見据えた未来へと幸せが続く滋賀総合戦略」では、合計特殊出生率を「1.80」にすると目標を掲げられています。令和3年、滋賀が「1.46」、その前が「1.50」、その前が「1.47」だったということですが、この「1.80」という目標が結構チャレンジングだと思うのですが、その辺はどう考えていらっしゃいますか。

 

【知事】

相当チャレンジングです。野心的な目標だと思います。まず、この目標を掲げた経緯は、希望する出生率を目標に掲げようということで「1.8」としておりますが、やはり現状を鑑みますとコロナも加わりまして相当乖離しており、この現状を我々も受容せざるを得ないと思っております。まずはこの第2期の総合戦略をしっかりとやったうえで、どれぐらい乖離するのか、また持ち直すのかという見極めを少しやったうえで、次の目標設定に臨んでまいりたいと思います。

 

[共同通信]

今の質問にも関連しますが、3月29日をもって知事が男性の職員の育休100%宣言をされました。それが出生率の低下にどのように影響、良い影響をするか、知事の受けとめを聞かせていただければと思います。

 

【知事】

男性も女性も、生まれてくる子どもの育児に関わる、また家事も分け合うという社会の有り様というのは、やはり子どもを何人持ちたいという希望を持って実現する大きな要素になると思っています。それが叶うための職場のあり方ですね。理解をすることもそうです。体制に余裕を持つこともそうです。「いいことだよ。楽しいことだよ。応援するよ。」という声かけなど、こういったことを絡めて進めていくことが、「2人目が欲しいけど、3人目が欲しいけど、職場もこうやって言ってくれているし、知事もこうやって言ってくれているし、持てるといいね」となるように期待もしたいし、まだまだ現実は、そうじゃそうじゃないところがたくさんあると思っています。これはもう、まず県庁も率先して動きながら、社会全体でその機運を盛り上げていけるように努めていきたいと思います。

 

[読売新聞]

知事選のことで伺います。かねてから、支援してくれる人も多ければ多いほうがいいとおっしゃっています。抽象的な質問になるが、支援してくれる方を多くしようと思うと、政策が総花的になるといいますか、俗に言う、とがったものにならないというか、そのあたりのジレンマはお感じになられるのでしょうか。

 

【知事】

政治家として、今おっしゃったようなことを感じることはあります。ただ、総合行政をお預かりする県の知事としてやるべきことは、総合的であるべきだと思いますし、それらを着実に進めるという意味でいうと、やはり合意形成の着地点というものを一定持ちながら、見出しながら進めていくということも必要ではないかと思います。そのためにも、社会がどのような潮流で動いていくのか、そこで暮らしている方々がどのような思いをお持ちになっていらっしゃるのかを、できる限りつかんで、その先にあるゴール、ターゲットを提示していくということも求められるのではないかと思います。

総花的、とがったものがなくなるのではないかと思いつつ、言われつつ、そうは言っても、全国にないものや新たにチャレンジするものも出し始めていますので、そういったことを県民の皆さんに問うていく機会になればと思っています。

[読売新聞]

全国にないものや新たにチャレンジしたものは、例えばどういったものでしょうか。

 

【知事】

例えば、この2期目も相当時間をかけてやりました交通の問題。交通を維持するための負担・分担をする仕組み、いわゆる交通税の問題などは、全国に例のない取組ですので、ビジョンづくりとセットで丁寧に進めてまいりますが、これは一つのチャレンジだと思います。また、昨日、植樹祭を行いまして、そのレガシーを形成するための「やまの健康」。我々がお預かりする琵琶湖の上流である「やまの健康」を保つための取組。いよいよ育ててきた木が伐期を迎え、それらを伐って、再造林をしていくステージに入ってきますが、針葉樹だけではなく、広葉樹を植えていく取組や滋賀の植生に合った山にしていく取組、獣害のことも考えながら、あらゆる生き物と共生できる山づくりも志向していきたいと思っております。こういった取組などもおおよそ100年かかる取組だと思いますが、着実に一歩を踏み出していければと考えておりますので、こういったことを皆様方にお届けし、信を得ていけたらいいなと思っております。

 

[読売新聞]

原発の関係ですが、電気料金がかなり上がってきていて、今後、企業経営にかなり打撃になると思われますが、現状、原発の再稼働を求める・要請するお考えはないということでよろしいでしょうか。

 

 

【知事】

まず原発は電源です。このエネルギーの問題というのは、安全性を含め、持続可能性というものが大前提になると思います。もちろん、安定供給も大事ですけれども、安価であることというのも大事ですけれど、何より安全性を含めた持続可能性が担保できているのかということをみる視点を強く持ちたい。その意味で、我々は実効性ある多重防護体制というものを求めておりますし、万が一にも事故等が起こった場合、影響を受けるエリアに入っている自治体の権限というものを安全協定上、もしくは法定上、しっかりと認めていくべきではないかという提起をさせていただいております。

加えて、原発を動かしたときに出てくる廃棄物の処理や循環の仕組みも十分に確保されていないということからすると、多重防護体制が実現されず、そういった静脈が整備されていない現状下においては、再稼働を容認できる状況にはないということを常々申し上げているところでございまして、今の情勢下で、我々から何か「原発を再稼働してください」というようなことを申し上げる状況はございません。

ただ一方で、エネルギー価格が高騰して生活や事業に相当程度影響が出ている、また電力需給がひっ迫するという状況もございますので、例えば省エネを一層進めるとか、こういった生活や事業に対する影響を緩和する取組について、予算も含めて行っていくということをしっかりと進めていきたいと考えております。

 

[中日新聞]

植樹祭の関連で1点教えていただきたい。植樹祭を前に、5月31日に記者クラブ所属の記者等に、当日参加する記者に生年月日や住所などを身分照合のために提出してほしいという問い合わせがメールでありまして、この件について、取材のために自宅住所や生年月日を求めるのは法律に基づかないのではないかという指摘がありますが、知事として御見解があれば教えていただけますでしょうか。

 

 

【知事】

私も今回の植樹祭を実施するにあたり、多く来られるメディアの方々、また参加者にどのようなことをお願いしていたのか詳らかではないのですが、昨日も現地で、ここまでしなければならないのかというような、例えば、持っているものを全部袋に入れて、閉じて開かないようにするとか、このようなことまで皆さんにお願いしているのだということを確認させていただいたところです。

警護対象者の方もいらっしゃり、両陛下御臨席も前提で準備していましたので、もちろん警護上の安全管理ということも必要なのかもしれませんが、必要以上に何かを求めたり、お願いしたりするというやり方は、一方で理解が得られないということもあると思いますので、そういったことも検証して、振り返りをして、今後に生かせるようにしていきたいと思います。またメディアの皆さんからも、今の事象以外にもこういった声があったとか、こういったことを疑問に思うというようなことがございましたら、またお寄せいただければと思います。

[中日新聞]

しがCO2ネットゼロのムーブメントに関連して、「滋賀県CO2ネットゼロ社会づくり推進計画」の概要をみておりますと、2013年度から2030年度に温室効果ガスの排出削減目標50%を目標に掲げられています。全国の他の都道府県で60%を目標としているところがあり、少し消極的ではないかという批判もあるようですが、知事としての御見解を教えていただけたらと思います。

 

【知事】

御指摘のとおり、私どもは2030年度に2013年度比で半減しようということで、国の目標よりも野心的な目標を掲げておりますが、各界、各分野からは、低すぎのではないか、それだと地球規模の温暖化抑制に十分な効果を持ち得ないのではないかといった御指摘もいただき、現に議会でも請願が可決されたところです。その請願でも3項目ありまして、50%以上を目指す努力を追求すべきだということであるとか、より具体的で削減に実行力ある施策をしっかりと明記し、目標数値を盛り込んだロードマップを作るべきだということとか、進捗状況の評価を民主的で透明性の確保されたプロセスで行うべきだという、この3項目が出され、可決いたしました。そういった内容に基づく取組をどのようにつくっていくのかということは、現に検討もしながら進めているところです。例えば、今回示した強化期間を設けて「見える化」するという取組もこの請願内容に一定沿った内容でございますし、お尋ねのあったより高い目標を追求すべきだというのは、一定理解しつつも50%削減というのも十分高い目標ですので、まずは一歩皆で踏み出しましょうということで、御意見いただいた方々、御指摘いただく方々にもお返しをしながら目標に向かってまず一歩進めようと。ただこの目標で終わりということではなくて、さらなる高みを目指して取組を進めていきますということで、一定、御理解をいただいているのではないかと理解しております。

 

[中日新聞]

50%目標で十分だというお考えでしょうか。

 

【知事】

十分かどうかというと、地球レベル、また全ての方の得心、納得ということでいうと、決して十分だとは思いませんが、現状と照らし合わせるとすごく高い目標だと思いますので、まず一歩、この目標に向かって進み出そうというのが今の県のスタンスです。

 

[京都新聞]

行財政改革の関係でお尋ねしたいと思います。知事が先ほどおっしゃった新しい政策とかチャレンジのためには財源が必要不可欠だと思うのですが、今年2月の収支見通しでは来年からの4年間で669億円不足するというのが出ていたかと思います。何の対策もしなければ4年後ぐらいには基金も底をついてしまうという状況かと思うのですが、財源確保に向けてはどういったお考えをお持ちでいらっしゃるでしょうか。

 

【知事】

あらゆる方策をしっかりと行っていくというのが、まず総論の答えになると思います。具体的に言うと幾つかあるのですが、まず一つは、様々な仕事、業務、事業をこのまま続けていいのか、もっと効率的なやり方がないのかというのをしっかりと精査して検討するというのが一つ。

また、財源確保の面で言えば、国の様々な資金も入れて、そして県も様々な努力をしながら、様々な資産も有効活用して、有効活用できてない土地については、ワンショットになりますが、しっかりと売却や貸借などを行いながら活用していくといったような財源確保の取組をしっかり進めていくということだと思います。公営事業であるボートなども大変好評、好調で一定財政改革に寄与してくれておりますけれども、例えばこういったものなどもしっかりと進めていくということに取り組んでまいります。

また三つ目は、一つ目、二つ目の根底にもなると思うのですが、絶えずこの状況を県民の皆さんと共有しながら、現在の県の財政状況を共有して、問題認識を共に持つということが大事だと思いますので、その時々の状況をしっかりとできるだけわかりやすい形でお示ししていきたいと考えております。

 

[京都新聞]

交通税についても公共交通を維持するうえでのお金ということで、財源確保の一助になるかと思うのですが、いつ頃からの導入を知事としては目指していこうと思ってらっしゃるのでしょうか。

 

【知事】

まず導入時期については、まだ明確に持てる状況ではありません。税制審議会からも、広く利用者だけではなく社会的に効果、便益のある交通というものを維持する、活性化させていくために、県民みんなで負担を分かち合うような仕組み、(すなわち)税制については積極的に検討されたしといった趣旨の答申をいただいておりますので、交通をどうするのかというビジョンづくりとセットでこの議論を進めていきたい。例えば、負担を求める場合、どの税目でどのレベルで求めるのかということとあわせて議論しながら理解を得ていくということが重要だと思いますので、丁寧にやっていきたいと思います。したがって、いつからというものをまだ持てる状況にはないと思います。ただ、国に求めるだけ、利用者(負担)だけではない、もう一つの選択肢を広域自治体である県というところで持つということは、県民の皆様方の移動や観光で訪れた方々の移動、通勤通学で移動される方の需要を充足する一つの有効な手段になり得るのではないかと私は思っておりますので、これは逃げずにしっかりと議論していきたいと思います。

[京都新聞]

時期についてはまだ言える段階ではない一方で、財源不足というのは確実に今あるということで「今これだけ足らないから皆さんの負担もこれから求めていくことになるかもしれませんよ」といったような呼びかけも一つ考えられるのではないかと思うのですが、そのあたりはあまりリンクさせておっしゃっていないような気がするのですが、いかがでしょうか。

 

【知事】

当然、行財政改革を進めていく、財政の持続可能性を担保していくために、今ある事業を、例えば止めさせてもらいます、減らそうと思いますというときには、その当事者の方々に負担をお願いする、不便を享受いただくということになると思いますので、しっかりとお願いや説明をしていくということになると思いますし、「他の自治体ではやっていませんが、交通という非常に県民の皆様方の不満足の多い需要も多い部分をより良くしていくための負担を分かち合う議論も始めますよ、進めますよ」ということも示し始めています。そういう意味でいうと、負担をお願いする議論も逃げずにやっていく状況に滋賀県は今進み始めているということだと思います。

また、この議論、財政の持続可能性は、社会保障もそうでしょう、公共事業もそうでしょう、やはり国全体でどのように考えていくのか、財政目標をどこに持ち、補助金や交付税だけではまかなえない部分をどのように負担していくのか、次の世代のことも考えた議論をやはりしっかりと行っていくべきだと思います。

 

[日経新聞]

県史編さんについて伺います。先週、有識者懇談会が発足しました。その中で検討するテーマの一つに、どの時代を今回の県史編さんの対象にするかということがあります。前回の議論では近代以降にしようという方向でした。県がこれから取り組もうとしている彦根城の世界遺産登録であるとか、安土城の復元プロジェクト等の近世以前が含まれません。県史編さんの対象とする時代について、知事御自身はどの時代をやってほしいとお考えでしょうか。

 

【知事】

まずは懇話会、検討会を立ち上げてスタートしていただきましたので、その中での議論を尊重したいと思うのですが、県政、今年は150年、前回の県史編さんが県政100年を機に行われ、その前は県政50年を機に行われたということで、基本はその50年の時、100年の時にやられていない歴史をしっかりとまとめておく、記録するということが基本になると思いますが、今までの県史に入れられてない歴史を描くのに、表現するのに、その前の時代がどうだったのかというのを少しさかのぼってみておくことの重要性を先生方からも指摘されております。

何よりさかのぼってみるときに、2次資料ではなくて、1次資料に基づいて書けるのかということが県史の信頼性を保つうえで重要だということを言われておりますので、さかのぼれば、さかのぼるだけあるのかもしれませんが、一定どのラインで線を引いてまとめにかかるかということについては、どこかで線を引く必要があるのではないかと思います。その意味で、その前の歴史はある程度その時点でわかっていた1次資料に基づいて書けているとするならば、私は明治以降というのも一つ、合理的なラインではないかと思っています。

 

[日経新聞]

50年刻みで県史が編さんされていますが、2回目のときはやはり近代以降が県史の対象になりました。ということは、100年前に書かれた、昭和初期の知見で書かれたものしか近世以降というのがないということになります。これは県の歴史を考えるうえで、近世以前、古代から近世について全く触れられていないということと同じではないかと思います。しかも有識者懇談会で近代以降にする理由として、期間がかかると。また費用や人員という問題もあると思います。そういった問題に何かこう「そんたく」しているような印象を受けました。やはり知事として、そういうことは気にせずにやってくれと、必要であるならばですが、そういった見解を示すことも必要ではないかと思ったのですが、いかがでしょうか。

 

【知事】

まず、今の御指摘はしっかりと受けとめたいと思います。同じ思いを持たれている方がいらっしゃるのかもしれません。その意味でしっかりとまず受け止めます。加えて、この県史編さん事業には、期間もかかれば費用もそして人員も必要だということは、委員をお務めいただく先生からも既に指摘されているところでありますので、新たにこの県政150年を機に、書かれてない昭和、少し遡って近代以降をしっかりとみていくということにおいても相当程度の時間が必要で、人も体制も予算も必要だということはしっかりと腹をくくって県民の皆さんの御理解をいただいて進めていかなければならない事業だと思っております。

かつ「この時代から」と線を引くだけではなくて、例えばテーマによっては、このことを書くのに少しさかのぼって調べようではないかということも出てくるのかもしれません。昭和天皇の実録などもこれ以降出てきたということからすると、昭和の時代の実像もわかってきたということもあるでしょうし、いろいろな史実が文献や文化財とともに明らかになるということからすると、物の見方が変わってくるということにやはりしっかりと耐えうる県史にしていくことは重要だと思いますので、そのあたり今回懇話会に入っていただいている先生方ともよく相談しながら、進めていければと思っております。

[朝日新聞]

世界農業遺産の認定の調査ということですが、これはどういう意味があるのかということをお聞きしたい。県の統計を調べたら、総農家数が1954年は10万1,143戸もあったようですが、2020年は2万1,000戸と5分の1。特に最近の減り方はすごくて、2000年には4万8,000戸あったところが20年で半分以下になっていまして、農業の問題は私もどうすればよいかわからないが、滋賀県をドライブしていても耕作放棄地的な土地があちこちに見えていて、農業はもう衰退の一途という印象がありますが、知事は滋賀県の農業をどうしようとされていて、それにおいてこの世界農業遺産の認定というのはどういう意味があるのか、お考えをお聞かせください。

 

【知事】

大事な視点だと思います。総じていえば、今、御指摘いただいたようなこともあるので、農業の持つ価値を再評価する、再認識するために日本農業遺産があり、世界農業遺産があるのだと思っております。私たちも2代、3代さかのぼれば専業の農家だったり、専業の林業だったりしていたのではないでしょうか。それが時代の移り変わりとともに兼業になり、そして農業をやめということもあるのかもしれません。また、この間、区画整理が行われ、農地も随分と集約されましたし、機械化も進み、全ての方が手作業で小さい田畑を耕すという時代ではなくて、集落単位でやる、企業がやる、法人でやるという農業も可能になってきました。したがって、総農家数というものは必ずしも増加ではなく、減少というものもあったのだと思います。

そういう状況下にあっても、食べるものをできるだけ近いところで、自分たちの力で作っていくという力は、大変重要な力だと思いますので、それらの持続可能性を保つうえでも、もう一度その価値を再評価し、携わる人たちまた関わり応援する人たちを増やしていきたいという思いで、この世界農業遺産認定に向けた取組を精力的に行っているところです。

とりわけ、私たちは真ん中に琵琶湖があって、琵琶湖との関わりにおいて水利ですとか、生態系ですとか、守っていますので、「琵琶湖システム」という形で名称を付けて、関連付けて発信することが、滋賀県らしさを持てる意味においても、共感を広げる意味においても大変重要だと思っておりますので、こういった表現をさせていただいております。これを機に、ぜひ循環型の生業をしっかりと発信していけたらいいなと思っております。

 

[京都新聞]

ロシアのウクライナ侵攻で小麦の価格が高騰しており、今後も続くという見方もあるかと思いますが、米どころの滋賀県で米の消費量を増やしていくということも一つ重要かなと思います。そのあたり県として、米の消費が低迷している中、テコ入れというか、この機会をとらえてにさらに促進するというお考えはありますでしょうか。

 

【知事】

大きな意味で二つあります。一つは、滋賀県は米どころ、おいしい近江米も作れますので、この米の消費、米を食べることを増やしていくということを、これまで以上に進めていくということ。近江米の振興、PR、これは境こだわり農業も含め、また連続して特Aの評価をいただくといった品質も含め、しっかりと発信をしていきたいと思います。同時に、食卓だけではなくて中食需要、外食などもコロナで少し低迷をいたしましたが、今後回復期にありますので、こういった需要にも沿う形で進めていければと考えております。

消費拡大のことでいうともう一つ、酒米や飼料米にもまだまだ可能性があると思っておりまして、GIを取得した近江の地酒振興のためにも、近江の中で、滋賀県の中で優秀な酒米を作っていくということですとか、耕畜連携の取組で、滋賀で獲れたお米、稲藁を食べて育つ近江牛にもまだまだ伸ばせる可能性があるのではないでしょうか。そういったものでまず消費を増やしていくということが一つ。

もう一つは、この時代の流れをみながら水稲、お米だけではない耕作に変えていくということも必要で、したがって大豆ですとか、今お取り上げいただいた小麦。ちょうど今、刈り取りの時期で、すごく良質な小麦が滋賀県でも獲れる、日本でも5番目の小麦の生産地でもございますので、こういった小麦の生産力もしっかりと高めていければと思っております。

そのための一助として、例えば、県内で食べる給食のパンは全て県産小麦でまかなえるようになりましたので、さらにこういった取組をしっかりと発信して広げていきたい。だから、水稲だけではない、より効率的な栽培方法も追求していくという、この二本立てでやっていければと考えております。

 

[共同通信]

世界農業遺産のことでもう1点伺いたいです。まだ、国内では11か所しか認定されていないと資料にあったのですが、滋賀県が現地調査までしてもらえるということは、認定に向けて結構良いところまできているという感触なのでしょうか。

 

【知事】

直近の状況は私も知らないのですが、相当ハードルは高いと聞いています。しっかりと御覧になられますし、ライバルも多いので。現状、世界で65地域、日本で11地域が認定されているということでございます。今、既に選ばれているところも、新潟県の「トキと共生する佐渡の里山」や石川県の「能登の里山里海」など、日本の中でも自然と共生する農業・農法ということで、先進地域と思えるところも多いので、それに比する「琵琶湖システム」になれるように、頑張りたいと思います。御関心を持っていただいてありがとうございます。ぜひ、いろいろな現地取材等もいただければと思います。

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