御来庁の皆さん、職員の皆さん、こんにちは。副知事の岸本です。先月の東副知事に続いて、今月は私が談話を担当させていただきますが、来月からはまた知事談話に戻りますので、どうぞご安心ください。
この場をお借りしてお話するのは、昨年夏の副知事就任直後、令和6年8月の知事談話で知事から少しインタビューをしていただいて以来となります。滋賀に来てからもう1年が経過したのかと思うと、時の流れの速さに驚くと同時に、焦りも感じるこの頃です。
右も左も全く分からない中でここまでなんとか大過なく過ごしてこられたのは、すべて職員の皆さんのおかげであり、心から感謝しつつ、今後はしっかり滋賀県のお役に立てるようにお返しできるようにしなければと決意を新たにしています。
昨年の知事談話にお邪魔した際のことを振り返りますと、知事から「滋賀県の印象は?」というお尋ねがありまして、まず「琵琶湖」と、そして「国宝や重要文化財が多く、東京、京都、奈良に次いで4位の数であることに驚いた」とお答えしたことを覚えています。来たばかりのときはそんな感じで驚いていましたが、今は、古来より交通の要衝であり、都の文化、生活を支えてきた近江に文化財が多いのは当たり前だと感じますし、そのことをもっと県外の方にも知ってもらいたいと思っています。ちなみに滋賀県は2024年4月時点で国宝・重要文化財の数が832件です。
最近も、琵琶湖疎水の第一隧道が64年ぶりに国宝指定され、あわせて大津閘門なども重要文化財に指定されるという嬉しいニュースがありました。これを記念した講座が昨日県庁内でありましたので、私も聴講してきましたが、疎水工事は、西洋技術の習得過程にあった明治中期において、工部大学校を卒業したばかりの弱冠21歳の田邉朔郎が主任技師となって、その他測量技師等すべて日本人が指揮をとって行われた初めての近代的な大規模土木事業であり、今なお疎水が現役で活躍している施設であることなどを聞いて、改めて明治時代の先人の偉業に感嘆しましたし、自然と共生しながら琵琶湖の恵みを産業、経済、文化に活かしていくことの重要性を伝えてくれる貴重な遺産であると感じました。今回、近代の土木構造物としては初めての国宝指定とのことで、これをきっかけに是非多くの方に疎水関係施設や琵琶湖を訪れてみていただきたいと思っています。
また、昨年の知事談話の際、「滋賀県でやってみたいと思うこと」についてもお尋ねがあり、「ビワイチにチャレンジしたい」とお答えしました。その後、念願のビワイチは8月に南湖を回り、北湖は少し涼しくなってから10月に1周し、達成できました。やってみて、ビワイチは私のようなスポーツ初心者でも、琵琶湖ならではの朝昼夕の景色を堪能し、風や太陽の光を感じながら楽しめて、途中の観光や食べ歩きなども含めると可能性の大きなコンテンツでもあることを実感しました。また、無事に走りきったことで、何か妙な自信がつき、これが、自分の体力や可能性の限界に挑戦することで達成感や自己肯定感を得られるというスポーツの効果であるなということも思いました。
ビワイチについては、「いいサイクリングの日」である11月3日の「ビワイチの日」から9日までのビワイチ週間に色々なイベントが行われる予定ですので、私もまた何らかの形で参加してみたいと思っています。
それから、スポーツに関する最近の出来事をいくつかご紹介したいと思います。まず、5月中旬に中国汨羅(べきら)で行われたドラゴンボートの国際大会で見事3位受賞された「LAKEBIWAJAPAN」チームの皆さんに、先日御報告においでいただきました。ドラゴンボートは女性や障害のある方なども含め誰でも容易に楽しめる「ソフト・スポーツ」ということですが、御報告にきてくださったチームも、下は高校生から上は60代までの幅広い年齢の男女混合14人で構成されていました。色々お話を伺ったのですが、例えば、
ドラゴンボートは滋賀県と湖を縁に友好提携を結んでいる湖南省が発祥の地であり、洞庭湖に注ぐ支流の一つ、汨羅に、約2,300年前、中国戦国時代の楚の政治家・屈原が、楚の将来に絶望して入水自殺したところを、近隣の漁民達が助けるためにドラや太鼓を打ち鳴らして舟で探し回ったものの間に合わず助けられなかったことを悔やんで、スピードを競うドラゴンボート競争が始まったという伝説があること、
今回、メンバーの7割が初めての中国で、出発前は言葉や食べ物に不安を抱いていたけれども、通訳をしてくれたボランティアや、他国のチームと交流ができ、親睦を深めることができたこと、
2027年開催の『ワールドマスターズゲームズ2027関西』では、琵琶湖モーターボート競走場で世界各国の選手によるドラゴンボート競技が行われる予定であること、
ドラゴンボートは水面を身近に感じられるスポーツであり、様々なところに遠征に行くが、いつも琵琶湖が最高だと感じること、など興味深いお話をたくさん伺いました。
令和9年に開催予定のワールドマスターズゲームズ関西では、県内で他にホッケーや10キロメートルのロードレース、ソフトボールなども実施される予定となっています。本年秋の国スポ・障スポ、来年のインターハイに続いて、青い空と青い湖の下、様々な熱戦が繰り広げられることを想像すると、私も本当に楽しみです。
もう一つ、5月に滋賀県在住の山口美也選手がいくつかの世界大会で優勝され、パラ卓球の世界ランキング1位になったことについて御報告に来てくださいました。パラ卓球での世界ランキング1位は、全クラス通じて日本人選手初の快挙とのことです。山口選手は10月の「わたSHIGA輝く障スポ」大会にも出場予定であり、お世話になった滋賀県に恩返しがしたいとお話してくださいました。私も5月のリハーサル大会で山口選手の試合の様子を少し拝見したのですが、プレーの時の集中力や鋭い切れ味のサーブ、レシーブと、ふだんの物静かで落ち着いた様子とのコントラストが印象的でした。国スポ・障スポでは山口選手含め各選手が持てる力を最大限発揮できるよう、万全の準備をして、滋賀県代表の各選手の活躍を期待したいと思います。
今日、7月1日はびわ湖の日です。今朝、県政経営会議構成員の皆さんとともに「びわ湖を美しくする運動」に参加することができました。今回は、国スポ・障スポ大会に訪れる方々を歓迎する「おもてなし一斉清掃」でもあり、琵琶湖岸のゴミを拾いながら、地道な活動の大切さを改めて感じました。美しい琵琶湖を後世に引き継ぐため日頃活動されている団体等や職員の皆さんに心から感謝と敬意を表したいと思います。
そして、本日の「びわ湖の日」に始まり、8月27日までが「びわ活重点期間」として、びわ湖を守る、びわ湖と暮らす、びわ湖と親しむ、という、びわ湖と関わるさまざまな取組や活動を行う期間となります。今年の8月27日は、昨年12月に「世界湖沼の日」が国連総会で決議されてから初めて迎える記念日です。「世界湖沼の日」は、湖沼が世界各地の淡水需要や生態系の安全性、生物多様性保全に取り組むうえで重要な役割を果たしていることを世界で再認識し、湖沼とそれに関係する生態系の保全再生を進めていく国際的な記念日として、滋賀県が1984年に大津市で開催した第1回世界湖沼会議の開会日にちなんで8月27日と制定されました。
今月21~25日には、第20回世界湖沼会議がオーストラリアで開催されますので、本県からも会議に参加し、機運醸成に向けた発信を行うとともに、次世代を担う立場である県内高校生にも、琵琶湖での環境保全の取組について発表いただく予定としています。
この機会に、すべての職員の方に琵琶湖の水に生かされている一人として、環境に配慮し行動する「びわ活」を楽しみ、また、琵琶湖を通じて世界の環境にも意識を向けていただきたいと思います。
最後に「ホールの子」についてお話したいと思います。「ホールの子」事業は、毎年、びわ湖ホールに県内の小学生等を招き、オーケストラと声楽アンサンブルによる公演を行うことで、子どもたちの舞台芸術への関心を高め、創造性を育むことを目指し、今年度で15年目を迎えた滋賀県の代表的な子どもの体験学習活動の一つです。
びわ湖ホールについては、昨年来、機会を捉えて行くたびにすごさを実感しています。全国に2000以上ある公立劇場のうち、総合芸術と言われるオペラを年数本自主制作し続けているのは、びわ湖ホールとあと一つぐらいだそうです。
オペラの自主制作を続けるためには、舞台機構や照明・音響設備などのほか、公演を企画・制作するスタッフや、音響・照明・舞台機構などを回すスキルの高い技術スタッフが必要なのですが、びわ湖ホールでは、それができる自前の人材をこれまで育成してきた積み重ねが最大の要素と聞いています。6月に観た「ホールの子」でも、大きなスクリーンにソロパートを担当する楽器や演奏者をタイミングよく映し出すことで、指揮者や演奏者の動きを分かりやすく伝え、会場を盛り上げていました。
阪 哲朗芸術監督の指揮の下、京都市交響楽団、そして全国唯一、劇場専属の「びわ湖ホール声楽アンサンブル」が奏でる、多くの子にとっておそらく初めての本格的な舞台芸術体験。様々な曲に合わせて元気良く手拍子をしたり、事前に各校で練習してきた「翼をください」を、手話も使いながら歌い上げたホールでの一体感のある合唱は、子どもたちにとって心に残る体験になったに違いないと感じました。このような全国トップクラスの舞台芸術を送り出せるハイレベルのホールが身近にあることは素晴らしいことだと思います。令和9年度にはホールが一時閉館し、「ホールの子」もいったん休止にはなりますが、未来を支える子どもたちの感動のためにも、よりよい公演ができるよう、リニューアルに向けた準備を頑張っていきましょう。
関西では記録的な早さで梅雨明けし、いっそう暑くなってきました。熱中症に注意し、栄養と休養を十分にとり、今月も頑張りましょう。それではこれで副知事談話を終わらせていただきます。ありがとうございました。