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令和3年度 年度始めの知事挨拶

みなさん、こんにちは。滋賀県知事の三日月大造です。

満開の桜、色とりどりの草花が彩り、「山笑ふ」美しい湖国。鳥の囀(さえず)りが賑やかで、そろそろ鮎が湖面を撥(は)ねる頃ですね。

過日、朝、琵琶湖畔でのウォーキング中に、「シャッターを押してください」と写真撮影を求められ、応じました。県外から来られたという、歳のころ、私と同じぐらいの男性でした。50センチものヘラブナを釣り上げられ、たいそう驚き、喜んでいらっしゃいました。私が知事であることはご存知なく、滋賀県民であることだけはご認識されていたのか、ニコニコしながら、「琵琶湖には夢がありますね!」と少年のように仰いました。久しぶりに聞いた、ピュアな表現にハッといたしました。

「今、生きている」「共に生きている」みなさんと、「夢」を大切にしたいと思います。

さて令和3年4月1日、本日、新年度、令和3年度が始まりました。午前中、183人の新規採用職員を迎えました。今年はびわ湖ホールで一堂に会し、辞令の交付を行いました。一人ひとり個性があり、魅力と能力、みなぎる決意を感じました。嬉しく、頼もしく、心強く存じます。あたたかく迎え、一緒に成長していきましょう。

新しい立場や職場、新たなメンバーから成る新体制で始動いたしました。後ほどご挨拶頂きますが、今、私の隣に座っておられる江島宏治新副知事にもご就任頂きました。今日、今、心に抱く気持ちを大切に、また1年、共に頑張ってまいりましょう。

ここでは、「3つのこと」を呼びかけ、年度始めの訓示といたします。

第1に昨年来、力を合わせて奮闘している「新型コロナウィルス感染症」対策です。

再拡大あり変異株あり正念場、しっかり取り組もう、ということと、このコロナ禍から得られる学びを活かした滋賀県政をつくろう、ということです。何より、「感染症対策」は県行政の使命であり出番です。しっかり自覚し、総力を挙げて対応します。再び感染拡大期に入りました。ご案内の通り、大阪府など近隣府県や地方都市においても、拡がりが出てきています。

すでに着手している検査・調査の強化、変異ウィルスの監視体制の強化、医療提供体制の再構築、ワクチン接種の推進、飲食・会食の対策徹底などに、この4月上旬、重点的に取り組むとともに、影響を受ける県民や事業者等への支援対策を切れ目なく作り、届けていくことに引き続き尽力します。

同時に、「つながり」の大切さ、文化・スポーツ・芸術活動への渇望(かつぼう)、特に子どもや若者への影響、逆に、改めて気づいた滋賀の強みなど、このコロナ禍で学んでいることを捉えながら、「より良き自治」を追求し、本当の意味での「健康しが」をみなさんと一緒につくっていきたいと思います。

第2に、「未来への一歩」を記す、踏み出す一年にしよう。

そのために、これからの5年、特に「ひとづくり」に重点を置いた施策づくりを考えよう、ということです。今年度、「ひと」・「社会経済」・「自然」の未来をより良く変えるために、「一歩踏み出す一年」にしよう、と予算と組織体制を作りました。びわ湖発のグリーンリカバリーを強く打ち出し、施策を進めていきます。

まず、すべての土台、私たち生きものの生存基盤である「自然」です。気候変動対策としての、「しがCO2ネットゼロ」の取り組みについては、すべての部局、所属の使命、所管事項とし、すべての職員が全庁で、県民も力を合わせて全県で取り組むことといたします。びわ湖版のSDGsである「マザーレイクゴールズ」、MLGsを7月1日「びわ湖の日」制定40周年の節目を活かして発信しながら、自然の恵みを頂く農水畜林産業の振興、自然の災いから命と暮らしを守る防災減災対策などを強力に進めます。

「社会経済」の未来に向けては、「つくる力と支え合いの再強化」です。次の時代を牽引(けんいん)する滋賀の産業の創造と育成、新しい福祉や教育、新しい公共交通の共(きょう)創(そう)、滋賀の「光を観(み)る」ニューツーリズムの創造と発信などに、部局連携で取り組みます。

「ひと」の未来に向けては、すべてのひとのいのちが等しく守られ、輝き、人権が尊重される持続可能な共生社会を目指し、子を産む・子が生まれる・子が育つことへの支援の拡充、医療・看護・介護の体制の再構築、コロナ禍で悩み傷んでいる「こころの健康」への取り組みを強化するとともに、失業なき労働移動、新しい働き方への移行支援、死生懇話会の開催など、次世代のことを考え、次世代を担う人たちと知恵と力を合わせて、取り組みを作り進めていきます。

また、ひと・社会経済・自然の未来を変えるために、私たちの便利でより豊かな暮らしや全ての人の幸せを創るために、DX(デジタルトランスフォーメーション)は重要なツールです。蓄積されるデータの活用も含めて、滋賀県のDX進展への基盤を、今年度、しっかりと確立していきましょう。

何より、これらすべてを貫くテーマとして「人づくり」に力を入れます。今年度から5年間、ひとづくり強化の期間とします。各分野、各地域の次世代を担う人づくりに、あらゆる資源を投入する滋賀県をつくりましょう。

最後、第3にみなさんに訴えたいこと、それは、私たち一人ひとり「人間であろう」ということです。

「人間を大切にする滋賀県庁をつくろう」ということです。私は知事である前に、人間であることを自覚します。みなさんも「職員である前に人間であってほしい」と呼びかけます。当然、私たち人間の生命は有限であり、死に向かう歩みです。常ではない無常(むじょう)なものです。ですから、今を、一期一会を大切にしよう。

「人はひとの中で人になる」と私は言いますが、ひとりではありません。人の間と書いて「人間」です。ですから、人とひとの間を大切にする努力をもう一段してみよう。「おはよう」「お疲れさま」「ありがとう」など、人とひとの間、礼儀や挨拶、かけ声や一言を大切にしたいと思います。

人間には、喜怒哀楽、感情があります。得手(えて)不得手(ふえて)があります。当然です。ですから、その「個性を大切にしたい」と思います。日々刻々、営みや暮らしがあり、その積み重ねが人生です。できる限り健やかで実り多きものとなるよう、お互い心がけていきましょう。

なぜこのようなことを言うのか。今、言ったことごとを忘れていないだろうか、軽んじていないだろうか、押し殺していないだろうか、との印象があるからです。昨年度、「県庁職員は笑わない」と指摘されたことが心に突き刺さっています。とても笑えない難しい仕事がいっぱいなのでしょうか、笑えない、堅苦しい職場になっているのかもしれません。ただ、みなさん、今、一緒に生きています、働いています。「人間であること」を大切にしよう。省みて改めながら、より良くなっていこうではありませんか。

締めくくりに一句。今朝の心境です。

 

「一つひとつ滋賀の未来へ種浸(ひた)し」

 

みなさん、ともに頑張りましょう。