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令和3年 知事年頭あいさつ

令和3年、2021年、新年あけましておめでとうございます。

新年は大切な節目、決意も新たにお迎えのことと思います。災いなく、福や恵み、幸い多き一年となることを願っています。

雪あり、コロナあり、医療や福祉あり。年末年始も県民のためのお仕事をしてくださった方々に、また職員の皆様に感謝します。

 

「かのとうし ついあふぎみる 初比叡」

 

拙い句でありますが、元旦、大津で詠みました。

今年、令和3年は、十干・十二支の「辛丑(かのとうし)」にあたります。「痛みを伴う幕引き・終わり」と「殻を破ろうとする希望や命の息吹・始まり」とが共存する年と言われています。

今年は、滋賀県にとって、1871年廃藩置県により県が置かれてから150周年。1981年7月1日を「びわ湖の日」と定めてから40周年。2011年3月11日東日本大震災が発災してから10年という節目です。終えることややめること、新しく始めることや変えていくことを見極めながら、果敢に一歩を踏み出す、「変わる滋賀、つづく幸せ」を実感できる1年にしていこうではありませんか。

 

昨年から新型コロナウイルスという未知、未曽有の感染症と対峙しています。約1年、世界中で経験していること、この渦中での学びを大切に刻みたいと思います。

私自身は、感染症や鳥インフルエンザ対応の中、様々な決断や発信をしながら、県行政や知事としての責任の重さや大きさを痛感しています。そのような中にあって、多大なご協力やご支援をくださる県民や県人会、県ゆかりの企業や事業所がたくさんいらっしゃることや、専門分野を持ち、現場を熟知し、使命感を持って、それぞれの担当で尽力する多くの職員がいてくれることをとてもとても心強く感じています。ぜひこれからも一緒にがんばっていきましょう。

 

このコロナ禍で、グローバル経済への過信、市場効率主義への偏重、さらには東京をはじめとする都市への一極集中など、明治時代以降つくりあげてきた近代の社会システムの課題が顕在化したのではないでしょうか。そのことに気づき、つくり直していこうというメッセージを込め「卒近代」と呼び掛けています。

医療や保健、福祉のシステムの弱さやもろさもはっきりと表れています。県民のいのちを守るため、現状を乗り越えるために、現場で懸命に奮闘してくださっている関係者の皆さん、庁内外で奔走していただいている皆さんに改めて、心を寄せたいと思います。何より現在の状況を忘れず、しっかりと記録に残し、次に備えていこうではありませんか。

 

昨年あった嬉しかったことのひとつに、6月に実施した「県政世論調査の結果」があります。

「滋賀に住み続けたい」と答えた人が前年から5.0ポイントアップして80.4%に。滋賀県に誇りを持つ人が前年から4.3ポイントアップして、79.5%に。幸福度も前年からポイントアップして、10点満点中6.9点になりました。いずれも過去最高です。コロナ禍にあって、健康長寿、自然に恵まれた暮らし、環境意識や連帯感の強い県民性などが再評価されているのではないでしょうか。自信と誇りをもって、より良い自治と本当の意味での「健康しが」をつくるために、皆さんと一緒に歩みを進めていきたいと思います。

 

コロナにより日常や通常が大きく変わりました。これまで当たり前だと思っていた“つながり”が分断されてしまっています。今、私たちは、これまで以上に人とひと、人と社会、人と自然のつながりの大切さを再確認しています。

感染症の発生や拡大の原因の一つとも言われている気候変動の進行を少しでも食い止め、今を生きる私たちのみならず、未来を生きる子どもたちのいのちとくらしを思いやることの重要性を共有したいと思います。

 

いまこそ、私たち自らと人びとの幸せのために、私たちと琵琶湖や地球の未来のために、私たちの子どもや孫、次の世代のために、「未来を変える一歩」を踏み出す時です。全ての人のいのちを守り、次の世代とともに生きる滋賀をつくっていこうではありませんか。

今年は気持ちを新たに、時に気持ちをひとつにして、未来とつながる年、より良き自治を追求し、本当の意味での健康しがをつくるため、「未来を変える一歩」を自分らしく、みんなで踏み出す年にしたいと思います。

 

キーワードは「一歩」です。

 

今年の県政を進めるにあたり、引き続き、コロナ対策に万全を期してまいります。感染拡大の抑制、医療提供体制の確保、さらには生活や経済・雇用への支援対策などを引き続き、しっかりと行っていきます。

そのうえで、今から述べる3つの柱のもと、県政をつくり進めていくことに挑んでまいります。

 

1つ目は、「ひとの未来につながる一歩」として、すべての人のいのちと健康を守ることへの挑戦です。

特に、「こころの健康」へのケアをこれまで以上に強化するとともに、「失業なき労働移動」に挑戦していきます。

コロナの影響もあり、こころに悩みを抱える人が増えています。人とひととのつながりが絶たれ、薄くなってしまうこともあります。大切な命を自ら絶ってしまうことがないように自殺対策について、SNSを活用した相談窓口を設けるなど充実させていきます。不登校・ひきこもり対策については、市や町と連携し、福祉と教育の連携もさらに強くすることで、対応する新たな仕組みをスタートさせます。フレイルや認知症対策も強化し、「こころの健康」の面でも日本一となる滋賀をつくっていきましょう。

 

2つ目は、「社会の未来につながる一歩」として、徹底して次世代にこだわる県政に挑戦していきます。

昨年の4月~6月、コロナ禍において3か月間で6年分の「知事への手紙」、「声」が寄せられました。その中には、高校生など若い世代からの声も多くありました。若い世代の「自分たちのことを、自分たちで決めたい」という自治や自律の思いの発露を、私は頼もしく感じています。

滋賀県では、子どもや中高生などの声を集めて、子ども版の新しい生活様式「すまいる・あくしょん」をつくるなど、次の世代とともにつくる施策を重視しています。

こうした流れを大事にして、加速させるため、次世代が考える、次世代の施策づくりに挑戦し始めます。例えば、無作為に選ばれた人びとで構成される次世代会議のような場をつくり、議論検討し、方向性を見出し、県政に生かしていきます。ともにつくる県政、「ともつく県政」をつくり進めたいと思います。

 

3つ目は、「自然の未来とつながる一歩」として、びわ湖発のグリーン・リカバリーを進めることに挑戦します。

既にご存じのとおり、一昨年につづき、昨年も2年連続で琵琶湖の健康にとって重要な全層循環が北湖の一部で確認できておりません。湖中や湖底の溶存酸素や水質も心配です。かつて赤潮という琵琶湖からのアラームを受け取り、県民一丸となり石けん運動を始めたように、私たちは、この琵琶湖から発せられる「気候変動アラーム」を、危機感をもって受け止め、行動を起こしていかなければなりません。

ちょうど1年前、滋賀県は、「“しがCO2ネットゼロ”ムーブメント」のキックオフ宣言を行いました。今年はその取組を一段高めるため、勇気をもって具体的な一歩を踏み出す1年にしたいと思います。

まず、県庁が使用する電力を100%再生可能エネルギー化する「RE100」に取り組み始めます。その一歩として、来年度は、本庁舎の電力の50%を再生可能エネルギーにすることに挑みます。

次に、県内の森林整備などによって生み出されるCO2排出権を琵琶湖発のJクレジット「びわ湖・カーボンクレジット」と呼称し、積極的に生み出し、活用を進めます。例えば、このクレジットを活用したカーボンオフセット商品、つまり、CO2ネットゼロ商品の開発を呼び掛け、県関係の大規模イベントなどで排出するCO2をこのクレジットでネットゼロ化することに挑戦することとします。

その一環として、6月に本県で開催予定の全国知事会議について、「びわ湖・カーボンクレジット」によりオフセットし、「カーボン・ゼロ会議」とすることを提案します。全国の知事が本県に移動される際に排出されるCO2、宿泊や会議等の実施によって排出されるCO2などの量を計算し、見える化を行います。排出した分は、県内の森林整備を行うことで吸収し、CO2ネットゼロ化することに挑戦します。

気候変動という世界共通の喫緊の課題に対して、地方から具体的な「一歩」を踏み出し、CO2ネットゼロ社会の実現に向け、一人ひとりの行動変容を促す契機としたいと思います。本県の森林は、国民的資産である琵琶湖の水源林でもあります。「びわ湖・カーボンクレジット」を積極的に生み出し、民間企業と連携するプロジェクト等もつくりながら、やまを健康にし、琵琶湖と地球を健康にする取組を進めてまいります。

また、「びわ湖の日」と定めて40周年となる7月1日を目指して、琵琶湖版SDGsとしてMLGs(マザーレイクゴールズ)を琵琶湖に思いを寄せていただく多くの皆さんとともにつくっていくことにも挑戦してまいります。

 

なお、これら3つの挑戦の土台、共通基盤として行政サービスのデジタルファーストを推進し、「県民の幸せ」と「より豊かな暮らし」を実現するためのDX(デジタル・トランスフォーメーション)を進めてまいります。

デジタル化のひとつの障壁となっている「押印」については、全庁的に見直しを求めたところ、既に約1200件の県民向けの手続きで押印省略可能という結論を出しました。県に提出される一般的な請求書等については、押印省略できるようにするなど、すぐにできるところから迅速に進めていくこととします。

 

少し長くなりました。例年とは異なる形での年始の挨拶となりましたが、5月以降、半年以上コロナ対応をしながら、世界の様々な分野の有識者の方々との対話を重ね、私自身、読書や思索などの活動も行い、担当部局の職員とも練りに練って本日この瞬間に臨んでいます。

WEB、ネットでの配信を通じて、できるだけ多くの皆さんとこの思いや方針を共有し、共感を拡げ、今年の施策、そして、来年度以降の施策等にも確実に反映させて、結果を出していきたいと思います。

皆さんとともに、未来につながる、未来を変える一歩を踏み出していきたいと強く決意しています。

今年も元気に一緒にがんばっていきましょう!

 

以上を申し上げ、私からの令和3年、2021年の新年のメッセージとさせていただきます。ご清聴ありがとうございました。