滋賀県知事の三日月大造です。
「コロナきて 危機を転機へ 滋賀の春」
4月1日、新年度、令和2年度がスタートいたしました。昨年の4月1日は、新しい元号令和の発表に沸いた日になっていたことを覚えてらっしゃる方も多いと思います。1年経ってこの状況です。
真に令和な時代となるように、祈りたいし、ともに努めていきたいと思います。
新型コロナウイルスの影響により、異例の年度始めとなりました。この知事訓示もそれぞれ皆さん職場にいていただいて、庁内放送でお届けするという形になっています。
この新型コロナウイルス感染症の拡大は、フェーズが変わってきたのではないかと感じています。東京を中心とする大都市で、毎日2桁を超える新たな感染患者の発表や京都の大学でのクラスター発生などが確認されています。滋賀県内においても、クラスターやオーバーシュートがいつ発生してもおかしくない、そういう状況にあるのではないかと思っています。
まずこういう状況下で、毎日、いや、日夜最前線で連日ご苦労いただいている保健所スタッフの皆さん、また医療福祉、教育関係の皆さん、保健師の皆さんや多くのスタッフの皆様方に心から感謝いたします。
政府の対処方針にも出ていますけれども、情報を共有し、注意喚起しながら、接触機会を少なくすることによって感染拡大の速度を抑えていくこと。医療提供体制をしっかりと整えながら、高齢者や子どもたち、重症者や亡くなる方の発生を最小限に食い止めるための万全の措置を講じていく必要があります。大きな影響が出ていますが、的確な蔓延防止策を講じながら、経済・雇用対策も進め、社会経済機能への影響を最小限にとどめることが重要です。こういう時こそ県庁の出番です。政策総動員で頑張りましょう。
また、誰一人取り残さない視点。こういう時こそ、弱い立場にある方々や、困難な状況にある現場の方々のことを考えながら、国の予算や対策を待つだけではなくて、積極的に想像力を働かせて、必要な対策を講じていこうではありませんか。補正予算も機動的かつ柔軟に編成し、議会にお諮りをしていきます。長期戦になります。バタバタとしたスクランブル体制ではなく、持続可能な長期で対応できる体制を構築してください。休みながら、交代しながら、県民の皆様方にとって必要な体制をしっかりと維持し強化して参りたいと思います。
また、注意しなければならないなと思っていることが2つあります。
1つは、私自身も感じていますが、新型コロナウイルスに感染したらあかんなと。感染したらどうしようかなと思っていませんか。感染していても言いだしにくいな、職場の人に迷惑かけるなと思っていませんか。誰だってなろうと思ってなっているわけではありません。遠慮なく、熱があったり、具合が悪い時には申し出てください。こういう時だからこそ何でも言い合える、そういう職場をつくっていきたいと思います。
また、もう1つは、お互いの人権への配慮です。お互いに思いやりを持つ、お互いのことを考える、そういう輪を県庁から広げていきたいと思います。
せっかくの機会ですので、少し長めにお時間をいただいて、新年度に当たり、2点のことを申し上げます。
1つ目は、「ピンチをチャンスに。健康しがへの挑戦を進めよう」ということです。
2つ目は、危機を転機として、「育つ」「育てる」県庁を作ろうということです。
1つ目の「ピンチをチャンスに健康しがへの挑戦を進めよう」の項目については、少々時間をいただいて、新年度予算に込めた思いや新たに挑戦する事項について、皆さんにお伝えしたいと思います。
今日は職場で皆さんはお仕事しながら、時には電話等とりながら聞いていただいている方も多いと思いますが、いつもより長めにお話申し上げます。
新たな予算もスタートいたしました。執行体制も整えて、人事も刷新して、スタートしています。これらは、課題を克服するために、可能性を伸ばしていくために、考えに考え抜いて、協議に協議を重ねて作った組織です。持続性と柔軟性、機動性を重視しています。
ぜひ新年度の予算については、早く、広く、前向きに執行してください。事業も前倒しできるものは、前倒しして実施していくということに心がけて欲しいと思います。と同時に、この4月と5月は前年度の出納整理期間です。この業務も極めて重要です。会計管理局だけに任せるのではなく、各部局で責任を持って、出納整理を行ってください。そしてこの期間で、会計や財務、出納について、職員が学べるように、お互い心掛けていきたいと思います。
新年度に重視する施策を4つ掲げました。
1つ目は「未来への投資」です。子どもを育む環境づくりをしっかりと強化しようと言ってきました。
2つ目は「世界との繋がり」。諦めませんよ、こういう時だからこそ、世界と繋がり続ける滋賀をつくります。そしてわくわくチャレンジする。そういうことをしっかり応援していきたいと思う。
3つ目は「やまの健康」です。
4つ目は「強くしなやかな地域づくり」です。
それぞれ申し上げますので、関係する部局、担当する部局を中心に聞いていただければと思います。
結婚、出産、不妊治療の支援を強化しようと言っています。生まれてくる子ども、育つ子どもだけではなくて、授かりたくても授かれない方への応援を、社会を上げて、企業とも連携してやろうという取組を始めています。しっかりとPRしていきたいと思います。
保育人材、保育の質を向上しようという新たな取組を始めました。今、学校が休みになり、それでも仕事に行かなければならないという状況下で、保育士の皆さんも現場で懸命に頑張っていただいています。ぜひ、滋賀の保育を日本一にする取組を新年度からスタートさせていこうではありませんか。
県立学校のICT環境の整備も本格的にスタートさせます。今だからこそ分かったこともあるのではないでしょうか。在宅で学ぶシステム、学校に行かなくても、遠隔で繋ぎ学べるシステムをこの際築いていこうではありませんか。
私立学校の振興を強化すると同時に、高校の魅力づくり。高校の再編も視野に入れた検討を本格的にスタートさせます。あわせて、高等専門人材を育成する機関について、どの分野でどういう体制でどういうカリキュラムで行うのがいいのか。本格的に検討していくこととなります。虐待をはじめ、困難な状況にある、生きづらさを抱える子どもへの支援も強化します。子ども・青少年局も体制を強化・充実させました。子ども・青少年局の大岡局長はじめ、皆さん頑張ってください。
こういう時だからこそ、家に居たいけど居にくい。親と過ごしたいけど、なかなか過ごせない家庭や子どもたちへのフォローをしっかりと行っていきましょう。スクールソーシャルワークスーパーバイザーを市町に派遣しながら、様々な課題を乗り越えようとする取組をしっかりと応援することも始めます。
医療的ケアが必要な児童生徒の通学に係る保護者の支援も本格的に導入し始めます。ともに生きること、ともに学ぶことを大事にする滋賀県にしていきたいと思います。
2つ目の「世界と繋がりわくわくするチャレンジ」では、「健康しがの推進」が柱になります。医療、福祉、介護に関わる人材をしっかりと確保すると同時に、それぞれの地域ごとに専門職をつなぐネットワークをより充実・強化していきます。新型コロナウイルスの問題で分かったことは、それぞれの地域や在宅で過ごす環境がいかに大事かということでもあるのではないでしょうか。また、PCR検査をはじめ、感染症に対応できる病院やスタッフ、資機材の整備を含め、滋賀県の感染症対策をこの機に強化していきたいと思います。苦労しているこの機に、しっかりとテイクノートして、将来につなげる施策を作っていきたいと思います。
「みんなでつくる健康しが」の取組でも、とてもいい動画を作っていただきました。ありがとうございます。「シガ、シガ」というのが、ゆっくり、ゆっくりというギリシャ語であったことを私も初めて知りました。こういう少し面白くて、前向きな取組をもっともっとつくっていこうではありませんか。健康しがツーリズムは、こういう時期だからこそコロナに負けないぞというキーワードで、売り出していけることも多くあると思います。
産業振興ビジョンを改定しました。中小企業のAIの導入、IoTの実践を含めて、チャレンジを、実証実験をしっかりと支援、応援している取組を広げていこうではありませんか。
農畜水産業、しっかり守り、磨いて、そして攻めていこう。近江米のみずかがみとコシヒカリがダブルで特A認定をいただきました。本当にうれしかったです。聞くところによりますと、平和堂の店頭では、近江米の売り上げが130%から140%ということだそうです。生産者をはじめ、現場で技術普及に取り組んでくれている皆さんの努力の賜物です。誇りに思います。こういう時だからこそ、免疫力をアップさせよう。そのために、近江米、近江のお茶、近江牛、湖魚、近江の野菜。地産地消でもっともっと食べられる、そういう状況をつくろうじゃありませんか。家に届けるサービスと連携させることによって、県内のおいしいもの、免疫力を高めるために最適なものを届ける、そういうサービスを充実させていきましょう。
観光もせっかく「スカーレット」と「麒麟がくる」があったのに、少し遠慮がちにならざるを得ません。反転攻勢できるように、しっかりと準備していきましょう。新型コロナウイルス感染症が収束した後にどういう対応をとることができるのか。ぜひ、観光振興局の中山局長はじめ、しっかりと考えて欲しいと思います。
ワーケーションというキーワードもあるのではないでしょうか。自宅にいるだけではなくて、環境の良い場所で過ごして、そして、その場所からテレワークで仕事をする。そういう場所として、滋賀県各地は最適な場所も多いのではないでしょうか。ぜひこういうチャレンジも応援していきたいと思います。
ビワイチがナショナルサイクルルートに認定されました。こういう時こそビワイチです。安全な走行環境をしっかりと整えると同時に、「走って、はい、終わり」ではなく、泊まっていただける、食べ物を食べていただける。できればビワイチの関連商品ももっともっと作り、売り出していきたいと思います。
外国人材の受け入れもより強化し始めましたが、その折に新型コロナウイルス感染症の拡大です。だからこそ、本当の意味での多文化共生、一緒に生活する人としての理解をぜひ進めていきたいと思います。ベトナムとの関係もしっかりと構築したい。古来、滋賀県は多文化共生、世界に開かれた形で発展してきました。その意気込みをしっかりと示していきたいと思います。
文化財保護活用行政を教育委員会から文化スポーツ部に移管しました。文化財は、保存なくして活用なしです。しっかりと保護、保存に努めます。そして、興味のある歴史や文化、文化財のことをもっともっと分かりやすく、興味深く伝えていける、せっかくある文化財をもっともっと見ていただける、楽しんでいただける、そういう取組を強化していきたいと思います。
美の滋賀。今、近代美術館の再開館に向けた工事が始まっていますが、美の滋賀としてどのように表現、発信していくのか、具体化をしていきましょう。そして楽しみながら説明をし、聞いた人がもっと楽しみになる、そういう取組をみんなで力を合わせてやっていこうではありませんか。文化スポーツ部の村田理事をはじめ、皆さんに期待していますので、よろしくお願いいたします。
東京オリンピック・パラリンピックは延期されました。ホストタウンの取組など県も主導してやってきましたけれども、少しターゲットが遠くなりました。長く取り組めることをメリットとしながら前向きにとらえて、取組をつくっていきたいと思います。ワールドマスターズゲームズ2021関西もオリンピックの時期を見ながら考えなければならない、また、連動して盛り上げていける、そういう仕掛けも考えていきたいと思います。
2024年国民スポーツ大会、全国障害者スポーツ大会の準備も鋭意進めていただいておりますが、困難な課題もあり、今年度は正念場を迎えることになりそうです。しっかりと情理を尽くして、力を合わせて乗り越えていきましょう。
今年の夏、8月、お城EXPO in滋賀びわ湖を開催する予定になっています。もちろん、コロナウイルス感染症を乗り越えてということになりますけれども。ぜひ、1,300ものお城、お城跡。国宝彦根城。世界遺産を目指す取組を強化しながら、安土城はどういうお城だったのか、その復元も夢見ながら、滋賀の城、城跡の魅力を全国に世界に発信していこうではありませんか。また、織田信長、豊臣秀吉など目立つ戦国武将だけに光が当たりますけれども、私は最近、この石垣を、このお城を、当時の農業を営む人たちが、当時暮らしていた人たちがどんな思いで、どんなに苦労をして作っていただいたのだろうか。そういうことにも思いを馳せています。滋賀のお城は滋賀のお城EXPOはそういうことも表現できる、そういう場にしていきませんか。
3つ目のやまの健康は、密閉されず、密集せず、密接に集まらなくても楽しめる。まさに山こそこういう時に行ける、楽しめる最適の場所ではないでしょうか。伐り頃を迎えた木をしっかりと伐り、木のおもちゃを含め、しっかりと使い、もっともっと流通させる。そういう滋賀の林業の循環サイクルを作りながら、山村の活性化のためにも力を尽くしていきたいと思います。
4つ目の強くしなやかな地域づくりでは、社会資本を着実に整備していきたいと思います。こういう時期だからこそ、新型コロナウイルス感染症の拡大に加えて、大災害が発生したらどうなるだろうという、この想像力を常に働かしておこうではありませんか。避難所は運営できるのか、考えただけでも、背筋が寒くなりますが、しかし、絶対に起こらないとは、絶対に言いきれない。ぜひ、ソフト・ハード両面で強くしなやかな地域をつくるという取組を今年も着実に進めていきたいと思います。
そのために2つあります。区域指定の促進です。流域治水条例に基づく区域の指定、土砂災害警戒区域の指定、さらに進めていく必要があります。また、昨年度、女性の参画による防災力向上ということで、精力的に検討していただいた内容があります。これらをもとに、滋賀県の地域の防災力をしっかりと向上させる取組をさらに進めていきたいと思います。
移動・交通については、私が知事の間に今よりも一段二段、革新することができるように、皆さんの知恵と力を集めたいと思います。
近江鉄道については、全線存続ということで方針を決めました。しかし、いつまで全線存続をさせるのか、どのような形で全線存続させるのか、そのためには何がどれだけ必要なのか、これからしっかりと考えていかなければなりません。
JRや京阪、バスやタクシー、新たなMaaS、ぜひ、滋賀県内の交通や移動についての革新を今年から本格的に起こしていきたいと思います。土木交通部の中嶋理事、よろしくお願いします。
最後になりましたけれども、スカーレット。大変感動してご覧になった方も多いのではないでしょうか。私もその一人です。スカーレットレガシーをしっかりとこれからにつなげていきたい。信楽焼。女性の自分らしい活躍。骨髄ドナー、骨髄の提供をしっかりと応援する体制をとっていきます。
今年の冬は暖冬でした。琵琶湖の全層循環がまだ確認できていません。だからこそ、滋賀CO2ネットゼロの取組をしっかりと全県をあげて進めていきます。
仮称ではありますが、死と生、死ぬことと生きることを考える「死生懇話会」をスタートさせます。また、SDGs達成のために、取組を県としても強化することとしています。
これら今申し上げたことを、すべてをしっかりとやりとげるためには、持続的な財政が重要です。今年は、減収や様々なピンチが予想されます。ぜひ皆さんと知恵と力を合わせて、この財政の持続性というものにもしっかりと取り組んでいきたいと思います。
ここまでが、ピンチをチャンスに健康しがへの挑戦を進めようという項目です。
最後に、危機を転機に「育つ」「育てる」県庁にしようということを申し上げて終わります。
今年のキーワードは、私たち自身が育ち、そして自分の次の世代を育てる県庁にしようということです。自分たち自身が学び、今日は昨日より成長できたなと実感できたり、4月はちょっと自信なさげやったけど、下半期はなんか自信満々で仕事しているなと、お互いが確認できるような、1年経って、来年の4月1日に1つ歳を取っただけではなくて、1年で自分が成長できたなと思える、そういう県庁にしましょう。
自分よりも若い世代をしっかりと応援する。特に様々な困難を抱えながら仕事をする職員の皆さんやいろんな事情を抱えながら仕事をする人たちが仕事を楽しめる県庁をつくっていきたいと思います。
病気と闘いながらでも力が活かせるな、民間企業の経験が活かせるな、こういったことも感じ合えるような県庁をつくっていきたい。キーワードはダイバーシティです。
多様な考えやいろんな事情や都合や経験、そういったものが活きる、それぞれの違いを楽しみ、尊重し合える、そういう滋賀県庁をつくっていきたいと思います。
ダイバーシティを推進します。総務部の林管理監をはじめ、全庁の皆さんに申し上げます。もっともっと県庁の多様性を広げていこう。そのために必要な制度は何か、そのために、変えなければいけないものは何か、そういう視点で日々仕事をしていただければと思います。
その意味において、現在の新型コロナウイルス感染症は心配です。一日も早く乗り越えたいけれども、この機にできることがたくさんあるのではないでしょうか。今日も新規採用職員の入庁式が一堂に会して実施することができませんでした。しかし、知事室にグループごとに来てもらって、短時間でしたけれども、直接顔を見ながらメッセージを伝えることができ、むしろこの方が良いのではないかという感想もありました。
テレワーク、在宅勤務、柔軟な働き方。職員の皆さんのライフイベントを応援しながら、どんなライフステージでも仕事を続けられる。そういう滋賀県庁をつくるためにも、この新型コロナウイルス感染症による危機を「転機」に変えていきたいと思います。
ぜひ皆さんの今年度1年間の精力的な頑張りを期待し、一緒に頑張ることと、寄り添って、悩み考えることを誓い、少々、いや、だいぶん長くなりましたけれども、私からの訓示とさせていただきます。
皆さん、一緒に頑張りましょう。