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じんけん通信

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令和5年(2023年)7月(第183号)

刑務所を出所した人や少年院を退院した少年が、円滑に社会復帰し、再犯を起こさないように生活していくことは、本人のためにも社会のためにも大変重要です。しかし、矯正施設からいきなり一般社会に戻り、自分だけの力で生活しながら更生することは、決して簡単なことではありません。

更生意欲があっても、住む場所や働く場所がないなど、社会の中で居場所や出番がないと、経済的に困窮したり、孤立したりして、再び罪を重ねてしまうこともあります。

今回の特集では、罪を犯した人や非行をした少年が、住む場所や仕事を見つけて地域の中で自立し、円滑に社会復帰できるよう、その立ち直りを支援されている「保護司」の活動についてご紹介します。

特集 地域のチカラが犯罪や非行を防ぐ~「保護司」の活動とは~

■「保護司」とは

保護司は、犯罪や非行をした人の立ち直りを地域で支える民間のボランティアです。民間人としての柔軟性と地域の実情に通じているという特性を生かし、地域で保護観察官(※1)と協働して保護観察を受けている人と面接を行い、指導や助言をするほか、刑事施設や少年院に入っている人がスムーズに社会生活を営めるよう、帰住先の生活環境の調整や相談を行っています。

全国では現在、約4万7,000人、県内では488人(令和5年1月1日現在)の保護司が活躍されています。

※1:保護観察官…地方更生保護委員会や保護観察所に勤務し,心理学,教育学,福祉及び社会学等の更生保護に関する専門的知識に基づき,社会の中において,犯罪をした人や非行のある少年の再犯・再非行を防ぎ改善更生を図るための業務に従事する専門家(国家公務員)。

■保護司は、このような活動をしています。

◆保護観察

 月に2~3回、保護観察を受けている人を自宅に招いたり、あるいは、家庭を訪問したりして面接を行い、保護観察期間中の遵守事項を守るよう指導するほか、被害者の思いに応えることや、就労の援助、本人の悩みに対する指導等を行っています。

◆生活環境の調整

 矯正施設(刑事施設や少年院)に収容されている人が釈放されたときに、更生に適した環境で生活できるよう、収容中から帰住先の調査や引受人との話し合い、就職先等の調整を行うなどし、必要な受入体制を整えるなどの活動を行っています。

◆犯罪予防活動

 犯罪や非行の発生を未然に防ぐことを目的として、様々な犯罪予防活動を実施しています。

 また、“社会を明るくする運動”など、地方公共団体、学校等教育機関、福祉関係機関、警察関係者等、地域における様々な機関・団体と連携して、更生保護の啓発活動を行っています。

■(図)罪を犯した人の立ち直りを支援する「更生保護」の仕組み

(図)更生保護の仕組み

■「保護司」の活動について<インタビュー>

(画像)滋賀県更生保護ネットワークセンター

 県内で活躍されている保護司の皆さんの活動について、今回は「滋賀県保護司連合会」の方にお話を伺いました。

黄色い羽根

Q:保護司の皆さんの活動の内容について教えてください。

・私たちの活動は、一言でいうと「更生保護」です。「更生」とは、犯罪や非行をした人を立ち直らせること、「保護」とは、地域社会を犯罪から守ることを指します。このことから、保護司としての日頃の活動としては、大きく分けて罪を犯した人や非行をした少年の立ち直りの支援、もう1つは犯罪予防活動の2つになります。

・日常的に行っている活動としては立ち直り支援の方が多いのですが、こちらにも「保護観察」と「生活環境調整」の2つの活動があります。「保護観察」では、仮釈放を許された人、仮退院を許された少年、また保護観察処分少年や保護観察付執行猶予者になった人を対象として、保護観察官と保護司が協働して指導・支援を行っています。

・具体的には、保護司は保護観察対象者(以下「対象者」)に対して概ね月2~3回面談を行い、「遵守事項」や「特別遵守事項」がきちんと守られているかどうかを確認します。例えば、「仕事にきちんと従事する」という遵守事項がある場合、仕事の内容を聞いたり、給料の使い道に注意しているかなどを確認します。面談は保護司の自宅まで来てもらい(来訪)、1回あたり30分~1時間程度行います。また、対象者の自宅を訪ねる(往訪)場合もあります。

・私が対象者との最初の出会いの時に伝えていることは、3つあります。

・まず1つ目は、「保護観察になってよかった」と思ってほしいということです。保護観察になったことをやり直しのチャンスと捉えて、これから頑張ってほしいと伝えています。

・2つ目は、遵守事項をきちんと守らなければならない、ということです。刑務所や少年院などの矯正施設に入る「施設内処遇」に対して、保護観察になることを「社会内処遇」と言いますが、社会の中にいる状態で処遇を受ける以上、遵守事項をきちんと守る必要がある、ということを伝えています。

・以上の2つはどの保護司も同じように伝えることですが、最後の3つ目として、私がいつも伝えている話があります。

・昔、実際にあった話なのですが、バスケットボールをずっと頑張っていたある中学生が、交通事故に遭って右腕切断の重症を負ってしまいました。本人は事故でまるで命を奪われたかのように落胆してしまい、ふさぎ込んで誰にも話さないような状態になったのですが、ある日、お見舞いに来た人が彼に松葉杖をプレゼントしました。彼は最初、「自分は、足は大丈夫なのだから、松葉杖なんかいらない。」と怒ったのですが、後で「自分は今までなくした右腕のことばかり考えていたが、足は大丈夫だし、こうして人ときちんと話をすることもできる。」ということに気付き、「自分にはまだよいところがたくさんあるのだから、失ったことばかりを考えず、もう一度頑張ってみよう。」と思い直すことができました。こうした話をすることで、対象者には「確かに社会に対してよくないことをしてしまったけれども、自分にはよいところもたくさんあるんだ。」という思いを持ってもらい、そこに目を向けてこれからの人生を歩んでいってもらいたいと考えています。

・もう1つの「生活環境調整」では、矯正施設に入っている人が仮釈放や仮退院で地域に帰ってくることになった際、身元を引き受ける「引受人」がいるかどうか、また引受人に本当に引受けの意思があるかの確認などを行います。こうした生活環境の調整の結果を踏まえて、対象者の仮釈放などが決定した場合、引き続き保護観察の支援に移ります。

・保護観察や生活環境調整以外にも、「犯罪予防活動」として、“社会を明るくする運動”の街頭啓発、学校訪問などの啓発活動を行っています。

・また、滋賀県内では、県からの委託を受けて昨年より「滋賀・更生保護フォローアップ事業」が行われており、保護観察期間が終了した後も、必要に応じて対象者からの相談に対応しています。

黄色い羽根

Q:活動の中で大変なこと、不安に感じていることはありますか。

・2021年度(令和3年度)に県内の保護司全員を対象に実施したアンケート調査では、「保護観察対象者を担当することに不安や負担を感じていますか?」という質問に対して、「感じている」と回答した人が76%となっています。また、「どんなことに不安や負担を感じますか?」という質問には、「自身の経験値や処理能力等のスキル」、「責任の重さ」などの回答をした人が多数となっています。

・また、「保護観察が終了する段階で、対象者の今後について不安を感じることはありますか?」という質問に対しては、「感じている」と回答した人が85%となっており、その内容としては、「日常生活がきちんとできるか」、「仕事を続けることができるか」、「再犯するのではないか」といった回答が多くなっています。このように、どの保護司も、自身の責任の重さを感じるとともに、対象者の将来について、「親心」のような気持ちで日々不安を感じているのではないかと思います。

・近年は全国的に犯罪の発生件数が減少傾向にあり、一人の保護司が一度に担当する対象者は1~3人程度となっています。以前は一人で5~6人を担当しないといけない時期もあり、その頃に比べれば負担は軽減していますが、それでも仕事をしながら支援活動を行うのは大変です。保護司全体の高齢化も進んでおり、成り手不足が課題となっている状況です。

黄色い羽根

Q:活動をされている中で、よかったこと、嬉しかったことはありますか。

・対象者と信頼関係を築き、打ち解けることができたときが一番嬉しいです。40歳から36年にわたって保護司を務めた方が退任される際、「確かに苦労はあるが、やりがいのある仕事である。大変だったけれども、充実感があった。」という話をされていました。対象者が周囲の支援を受けて自立し、仕事に就き、家庭を持って意欲的に生活している。こうした姿を見られることが、何よりも励みになります。

・対象者とは支援期間が終わった後、直接的な接触の機会はあまり持てないのですが、「大学に合格しました」や「結婚しました」といった報告を受けたり、日々仕事を頑張っているといった話を地域の中で聞くことがあると、嬉しく感じますね。

黄色い羽根

Q:罪を犯した人や非行をした人の立ち直りを支えるため、私たち一人ひとりにできることはありますか。

・一人ひとりにできることはたくさんあります。そこに目を向けることができるかが大切だと思います。例えば、更生保護のシンボルである「幸福(しあわせ)の黄色い羽根(リボン)」を身に付けることで、更生保護への理解や関心を表すことができます。この「幸せの黄色い羽根(リボン)は、元々はアメリカの「幸せの黄色いリボン」を原作にした日本の「幸せの黄色いハンカチ」という映画と、更生保護のシンボルマークであるヒマワリの黄色とが由来なのですが、羽根(リボン)は学校訪問や街頭啓発等で配布したりもしていますので、機会があれば身に付けてほしいと思います。

・企業やお店を経営している方の場合は、「協力雇用主」(※2)になることで支援する方法もあります。また、個人の場合でも、「更生保護法人」(※3)(滋賀県更生保護事業協会)の賛助会員になることで、更生保護活動を間接的に支援いただくことが可能です。

・立ち直ろうとしている人を地域の中で孤立させないための取組も重要です。子ども食堂やコミュニティカフェなど、その人を地域の中で一人きりにしないようにする取組については、皆さんにもできることがあるのではないかと思います。

・また、“社会を明るくする運動”では、毎年、作文や標語のコンクールも行っています。こうしたコンクールに応募したり、街頭啓発でチラシをもらったら、それをきっかけに家族と再犯防止の取組について話をしてみるなど、日常生活の中でできることはたくさんあると思います。

※2:協力雇用主…犯罪・非行の前歴のために仕事に就くことが容易でない刑務所等出所者等を、 その事情を理解した上で雇用し、立ち直りを助ける事業主。協力雇用主になるためには、各都道府県にある保護観察所への登録および地区協力雇用主会への入会が必要となる。

○問い合わせ先…大津保護観察所(TEL:077-524-6683)

※3:更生保護法人…犯罪や非行をした人たちの改善更生を助けることを目的とした「更生保護事業」を営む目的で、法務大臣の認可を受け設立された法人。

○問い合わせ先…滋賀県更生保護ネットワークセンター(TEL:077-524-9362)

黄色い羽根

Q:最後に、読者の皆さんへのメッセージをお願いします。

・犯罪を減らすことは犯罪被害者を減らすことにつながり、ひいては、安全・安心な社会の実現に結びつくのだということを意識してください。「あの人は罪を犯した人だ」として排除するのではなく、地域の一員として温かく迎えることで、再犯をなくしていく大きな力になります。その結果、誰もが暮らしやすい社会になっていくのだということを、多くの人に理解してもらえればと思います。

・滋賀県では近江商人の「三方よし」の考え方にちなんで、令和元年に法務省とともに「再犯防止『三方よし』宣言」が行われています。これは、「支え手よし」、「受け手よし」、「地域よし」として、保護司などの再犯防止支援を行う「支え手」、支援対象者である「受け手」、そして「地域」の3つの支援をともに進めることで、安全・安心な社会の実現につなげていく、というものです。この考え方をもっと広めることで、多くの人に更生保護活動への理解や共感の気持ちを持ってもらえるようになればと思います。

■インタビューを終えて

現代の日本では、インターネットなどの影響もあり、一度罪を犯した人は周囲からの偏見や差別に晒されやすく、社会復帰がより困難な状況になっているものと考えられます。

しかし、罪を犯した人が孤立を深め、再び罪を犯すことになってしまうと、本人自身が不幸であるだけではなく、周囲の人にとっても不幸な結果となってしまいます。立ち直ろうと決意した人を地域で支え、誰もが安心して暮らせる社会を実現するためにも、まずは一人ひとりが「幸福の黄色い羽根」に込められた思いへの共感を深め、「自分には何ができるか」を考えてみることが大切ではないでしょうか。

ジンケンダーセリフ

人権カレンダー7月

●“社会を明るくする運動”強調月間 ~犯罪や非行を防止し、立ち直りを支える地域のチカラ~ 強調月間

社会を明るくする運動”は、すべての国民が、犯罪や非行の防止と罪を犯した人たちの更生について理解を深め、それぞれの立場において力を合わせ、犯罪や非行のない安全で安心な明るい地域社会を築こうとする全国的な運動です。強調月間である7月を中心に、1年を通じてSNS等を活用した広報活動に力を入れて取り組みます。

第73回社会を明るくする運動ポスター
第73回“社会を明るくする運動”広報用ポスター
ホゴちゃん
更生保護マスコットキャラクター更生ペンギンの「ホゴちゃん」
サラちゃん
「サラちゃん」
彦根城
「第72回“社会を明るくする運動”」イエローライトアップの様子(彦根城)
豊郷小学校
(豊郷小学校)
びわこ大津館
(びわ湖大津館)

◇法務省ホームページ「第73回“社会を明るくする運動”」

https://www.moj.go.jp/hogo1/kouseihogoshinkou/hogo_hogo06.html

再犯防止啓発月間

平成28年(2016年)12月に「再犯の防止等の推進に関する法律(再犯防止推進法)」が施行され、7月を再犯防止啓発月間とする旨が定められました。

なお、滋賀県では、平成31年3月、刑事司法関係機関のみによる取組を超えた国・県・市町・民間協力者等が一丸となった「息の長い」支援等について、国との適切な役割分担を踏まえ、SDGsの視点を生かして県がその力を最大限に発揮し、県民が安全・安心に暮らすことができる社会の実現を図るため、「滋賀県再犯防止計画」を策定し、取組を推進しています。

◇滋賀県ホームページ「滋賀県における再犯防止の取組」

https://www.pref.shiga.lg.jp/ippan/kenkouiryouhukushi/chiiki/326010.html

青少年の非行・被害防止滋賀県強調月間

内閣府では、7月を「青少年の非行・被害防止全国強調月間」と定めています。本県においても、同月を「青少年の非行・被害防止滋賀県強調月間」とし、関係機関・団体、地域住民等が青少年の非行と犯罪被害に対する共通の理解と認識を深め、青少年はもとより、社会全体が規範意識を高め、社会環境の浄化を図るための諸施策・諸活動を集中的に実施し、青少年の非行や被害の防止と保護の徹底を図ります。

なくそう就職差別 企業内公正採用・人権啓発推進月間

県および市町では、企業の経営者や従業員等が同和問題をはじめとする人権問題に対する正しい理解と認識を深め、差別のない明るい職場づくりを推進するため、企業における就職差別の撤廃と同和問題をはじめとする人権研修がより一層充実・強化されるよう、毎年7月を「なくそう就職差別 企業内公正採用・人権啓発推進月間」とし、各種啓発活動を行っています。

●16日性同一性障害者特例法の施行

平成16年(2004年)のこの日に施行。性同一性障害である場合、家庭裁判所の審判を経て、戸籍上の性別を変えることができるようになりました。

●30日人身取引反対世界デー

国連により、平成26年(2014年)に定められました。人身取引の問題を世界中の人に知ってもらうため、キャンペーンが展開されます。

お問い合わせ
滋賀県総合企画部人権施策推進課
電話番号:077-528-3533
FAX番号:077-528-4852
メールアドレス:[email protected]
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