人権施策推進課では、人権に関する特集記事「じんけん通信」を毎月、ホームページ上で発信しています。
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令和5年(2023年)4月(第180号)
スマートフォンやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)が普及し、誰もが簡単に情報の受発信ができるようになりましたが、その一方で、誹謗中傷や差別書き込み、プライバシー侵害など、インターネット上の人権侵害が大変深刻な問題になっています。
インターネット上の投稿で自分の権利が侵害されたとき、その投稿者の氏名や住所などの情報を開示請求することができます。この手続が、昨年10月から簡易・迅速になったことをご存知でしょうか?
今回のじんけん通信は、発信者情報開示請求について定めた「改正プロバイダ責任制限法」の概要についてご紹介します。
インターネットでは、自分の思いや考えを自由に投稿することができます。
しかし、他人を誹謗中傷する内容を投稿すると、相手から名誉棄損罪や侮辱罪などに問われることがあります。また、自らの投稿でなくても、同調してその情報を転載・拡散した場合、二次発信者として加害者になることがあります。
また、たとえ匿名の投稿であっても、投稿者を特定できる場合が多いのです。
皆さんご存知のように、一旦、インターネット上に書き込まれた情報は完全に削除することが難しいため、投稿や「イイね」は慎重に行うことが大切です。
プロバイダ責任制限法とは、正式には「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」といいます。
インターネット上に他人の権利を侵害する投稿がされたときに、その発信者(投稿者)の情報を開示する権利と、その開示に関する手続、また関係するプロバイダの免責要件について定めた法律です。投稿の削除を求める権利を定めたものではありません。
この法律は2001年に制定された、約20年前の法律です。近年のSNSの普及により様々な課題が生じてきたことから、2021年に改正法が成立し、昨年10月に施行されました。
改正の背景には、誹謗中傷対策があります。2020年に、女子プロレスラーの木村 花さんが、番組中の言動を理由にSNS上で激しい誹謗中傷を受けて亡くなるという痛ましい事件がありました。この事件が与党や政府を動かし、総務省が「インターネット上の誹謗中傷への対応に関する政策パッケージ」を公表しました。そのうちの1つに、「発信者情報開示に関する取組」が含まれています。
発信者情報開示請求とは、インターネット上で誹謗中傷された場合、その投稿者の氏名や住所の開示をプロバイダ(インターネット接続業者やSNS運営業者等)に求める行為のことです。
ただし、開示請求には要件があります。「相手を殴りたい、蹴りたい」といった理由では開示することができません。開示には、「損害賠償請求を行いたい」などの正当な理由が必要です。
実は、この情報開示には、これまで半年~1年半ほどの期間がかかっていましたが、法改正により新たな裁判手続が創設され、かかる期間が短くなりました。個別の内容にもよりますが、数か月~半年ほどになりました。
また、一申立てあたりの手数料は、これまで15,000円でしたが、新しい手続の手数料は1,000円となりました。
ただし、弁護士費用等別途必要な費用があります。
私たちがインターネットに何かを投稿するときは、アクセスプロバイダ(インターネット接続業者、例:ドコモやauなど)と、コンテンツプロバイダ(SNS運営業者等、例:Twitter、LINEなど)を経由して投稿しています。
スマートフォンやパソコンなどの電子機器には、IPアドレス(198.51…などの数字の羅列)が割り振られています。IPアドレスは、インターネット上の住所のようなものです。
投稿時にはこのIPアドレスが、アクセスプロバイダとコンテンツプロバイダの両方に記録されます。あわせて、タイムスタンプ(通信日時)も記録されます。
発信者情報開示請求により投稿者を特定する際は、一般的には先ほど記載した通信経路を辿っていきます。
1…コンテンツプロバイダに、投稿に係るIPアドレス、タイムスタンプ等の開示を請求
2…コンテンツプロバイダから、IPアドレス、タイムスタンプ等が開示
3…2で開示されたIPアドレスからアクセスプロバイダを特定、アクセスプロバイダに契約者情報の開示を請求
4…アクセスプロバイダから、契約者の情報(氏名、住所等)が開示
⇒投稿者を特定
SNSの中には、投稿時にIPアドレス等を記録していないものがあります。その場合、上記のやり方では投稿者を特定できません。
そこで、法改正により、一定の場合には以下の情報も開示対象となりました。
のIPアドレスやタイムスタンプ等(特定発信者情報)
SNSには、サークルの公式アカウントや友達と共同で使っているアカウントがあり、必ずしもログインをした人が投稿した人とは言い切れません。裁判でも、ログイン時のIPアドレス等は開示対象になるのか判断がわかれていました。しかし、被害者救済の必要性が高まっているため、開示対象となりました。
上記の情報の開示には、プロバイダが投稿時のIPアドレス等を保有していないことなど、要件を満たす必要があります。
先ほど、法改正により新たな裁判手続が創設され、情報開示にかかる期間が短くなったと記載しました。手続がどう変わったのかをご説明します。
<法改正前>
法改正前の発信者情報開示請求では、2段階の裁判手続が必要で、長い期間がかかっていました。
【1】コンテンツプロバイダへの開示請求
【2】アクセスプロバイダへの開示請求
<法改正後>
法改正により、新たな裁判手続(非訟手続)が創設されました。非訟手続とは、訴訟ではないという意味です。コンテンツプロバイダへの開示命令手続と、アクセスプロバイダへの開示命令手続が併合され、1つの手続で出来るようになりました。
【1】コンテンツプロバイダに開示命令・提供命令を申立て
→コンテンツプロバイダは、保有するIPアドレスをもとにアクセスプロバイダを特定し、被害者にその名称を提供
→アクセスプロバイダに開示命令を申立て
あわせて、審理中にプロバイダからIPアドレス等の情報が消去されることを防ぐため、プロバイダに対し、保有する発信者情報の消去禁止命令を申し立てることができるようになりました。
なお、法改正前の訴訟手続は廃止されたわけではなく、現在も利用することができます。事前にプロバイダから強く争う姿勢を示されたケースなどは、訴訟手続を利用することが想定されます。
また、今回の法改正により、被害者による発信者情報開示に伴う手続の負担と期間は軽減・短縮されましたが、被害者側に相当程度の負担を強いるという課題は依然として残っています。
インターネット上で誹謗中傷を受けた場合、言い争ってしまうと、さらに悪化する可能性がありますので、注意が必要です。冷静に対処しましょう。
誹謗中傷を受けて困ったら、ひとりで抱え込まずに専門の窓口に相談しましょう。秘密はかたく守られますので、安心して相談してください。
○まもろうよこころ(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/mamorouyokokoro/
*電話、メール、チャット、SNSなどで相談可能
○みんなの人権110番(法務省)
0570-003-110
○インターネット人権相談受付窓口(法務省)
https://www.jinken.go.jp
※投稿の内容が身の危険を感じる内容の場合は、最寄りの警察署に相談してください。
該当する投稿のURLやアドレスを控え、画面の保存(スクリーンショット)をしましょう。
発信者情報開示請求の方法や、SNS運営業者等への削除依頼の方法に関する相談は、以下の窓口で受け付けています。
○違法・有害情報相談センター(総務省支援事業)
https://www.ihaho.jp/
*Webフォームから相談受付
匿名性のある空間では、人は攻撃的になりやすいと言われています。いら立ちや怒りは自然な感情ですが、その勢いで誰かを攻撃していないか十分気を付けましょう。また、他人の投稿を安易に転載・拡散せず、内容をよく見極めましょう。
●AV出演強要・「JKビジネス」等被害防止月間
いわゆるアダルトビデオ出演強要問題や、いわゆる「JKビジネス」と呼ばれる営業により児童が性的な被害に遭う問題などが発生しており、若年層の女性に対する性的な暴力に係る問題は深刻な状況にあります。特に、年度当初は、進学、就職等に伴い若者の生活環境が大きく変わる時期であり、こうした被害に遭うリスクが高まることも予想されることから、4月を被害防止月間と位置づけ、必要な取り組みを集中的に実施することとしています。
●2 日 世界自閉症啓発デー /2 日~8 日 発達障害啓発週間
平成19年(2007年)12月の国連総会で定められ、世界各地で自閉症に関する啓発の取組が行われています。日本でも、「世界自閉症啓発デー・日本実行委員会」が組織され、自閉症をはじめとする発達障害について社会全体の理解が進むよう広く啓発する活動が展開されます。
●7 日 世界保健デー
WHO憲章がはじめて設定された4月7日を記念して、1950年以来、毎年4月7日が世界保健デーとして定められました。WHOが毎年、世界保健デーのテーマを発表すると、世界中の多くの国では、「世界保健デー」として、4月7日を中心にさまざまな健康のためのイベントが行われています。
●10 日 法テラスの日
法テラス(正式名称:日本司法支援センター)は、国民の皆さんが、どこでも法的なトラブルの解決に必要な情報やサービスの提供を受けられるよう、平成18年に、総合法律支援法に基づき設立された公的な法人です。その設立日である4月10日を「法テラスの日」とし、毎年その前後の日に全国各地で無料法律相談会や街頭啓発活動など様々なイベントが行われます。
●28 日 職場での安全と健康のための世界デー(労働安全衛生世界デー)
この日は、職場での安全・健康文化の創造と推進について世界の人々の関心を集めるとともに、仕事に関連する死亡者数の削減を図ることを目指して、毎年様々な啓発が実施されています。