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じんけん通信

 人権施策推進課では、人権に関する特集記事「じんけん通信」を毎月、ホームページ上で発信しています。

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令和4年(2022年)8月(第172号)

 県が平成23年(2011年)に実施した「人権に関する県民意識調査」の結果、若年層の人権意識が低下している傾向が見受けられたことから、若者の人権意識の向上のため、効果的な啓発を大学生のみなさん自身に考えていただこうと、平成25年(2013年)に「滋賀県人権啓発学生サポーター会議」を設置しました。

 会議に参加された大学生のみなさんから、同年代の若者の心にとどく人権啓発の手法などを提案いただいたところ、「若者の集まる場所へ出向いての啓発が必要かつ有効」であるとのアイデア提示や、「実際の現場で取り組んでおられる人から話を聞くことは、より深く人権について考えるきっかけになった」との感想をいただきました。

 そこで、若い人たちに人権は身近なものであり、人権の尊重は私たち一人ひとりが考えていかなければならない課題であるという意識をより強く持っていただくことを目的として、平成27年(2015年)より、県内大学等において、各人権分野の最前線で活動されている方からの講話により、人権課題の現状を学ぶ機会を「若年層向け人権啓発講義」として提供しています。

 今回のじんけん通信では、この「若年層向け人権啓発講義」として去る6月14日にびわこリハビリテーション専門職大学で実施した内容について紹介します。

特集 「若年層向け人権啓発講義」

 びわこリハビリテーション専門職大学での若年層向け人権啓発講義は今回が初めての開催です。開催するにあたり、「理学療法や作業療法にかかる実習前に人権のことを学ぶ機会があればより理解が深まるのではないか」ということから、「人権基礎講座」と「実習前に…Quality of life※のこと、考えてみよう」の2つの講座を実施しました。

 

※「クオリティー・オブ・ライフ」とは、WHO(世界保健機構)が提唱した概念で、わが国では高度経済成長の結果、生活の量的なレベルが一応達成されたことから、今後は生活の質を問うべきであるという考え方が生まれ、1970年代後半から「生命の質」「人生の質」「生活の質」といった側面を包括する概念として使われています。入院・療養施設では、患者や家族の人生観や価値観を尊重し、生命・人生・生活の質的内容を重視するという考え方になります。プライバシーが保護されることはもちろんのこと、できる限り普段の生活に近い療養環境を整備していくことが必要です。(人権啓発冊子『こころやわらかく』(改訂版)2018年(平成30年)3月発行滋賀県人権施策推進課より抜粋)

 

 また、県では人権に関わりの深い特定の職業として医療関係者を挙げています。医療関係者の養成所において、患者や障害者をはじめとする様々な人権について、研修等の取組を促進しているところです。

■「人権基礎講座」(滋賀県人権施策推進課より)

講座の目的について

 将来、医療従事者になることを目標に日々学んでおられることから、びわこリハビリテーション専門職大学の学生の皆さんには、最初に「医療従事者には高い人権感覚が求められること」を伝えました。

 受講者に人権のイメージを聞きながら、最近の人権に関するニュースなどを例示(侮辱罪の厳罰化等にかかる刑法の改正やロシアのウクライナ侵攻に関することなど)し、人権が身近なものであること、私たち一人ひとりにとって大切なものであることを学習してもらいました。

◆個別の人権課題について

 個別の人権課題として一つ目は「障害者差別解消法」に基づく「不当な差別的取扱い」の禁止と「合理的配慮」の提供について、事例(障害を理由に説明会等への出席を拒むことが禁止されていることや、聴覚障害者の方へ手話などによる意思疎通を図る必要があることなど)を交えて伝えました。

 二つ目は新型コロナウイルス感染症に関連した人権侵害の防止について、県に寄せられている相談(感染者の個人情報がインターネット掲示板に書き込まれたことなど)について、その対応も踏まえて説明しました。

また、県が作成したコロナに関する人権啓発テレビスポット広告も上映しました。

(当日の配布資料より)
配布資料
(当日使用したジンケンダーテレビスポットCM)
配布資料

■「実習前に…Quality of life(以下「QOLという」)のこと、考えてみよう」

 次に、龍谷大学社会学部現代福祉学科講師の立田瑞穂さんの講義を実施しました。以下講義の内容について紹介します。

 「QOL(生活の質)と聞いてイメージする言葉やイメージするものはありますか」との問いかけから、この講義は始まりました。

 (受講生の皆さんは、将来、医療や福祉現場で働く方が多いと思いますが)医療も福祉も、支援の大きな目的は、かかわりあう相手のQOLを考えることです。単に、身体機能の改善だけでなく、その先にある相手の暮らしに目を向けることが重要です。

講義の様子

◆人権とQOLの同じところとは?

 人権とQOLについて、「(ともに)ひとりひとり、個人を大切にするといった点では共通した考え方」があります。

 日本国憲法第13条には「すべて国民は、個人として尊重される」とあり、世界人権宣言第1条では「すべての人間は、生れながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である」と記載されています。

 また、QOLの原則では、「すべての人間は、質の高い生活を享受する権利がある」(I.Brown &R.Brown, 2003) とされています。

◆障害はどこにある?

 近年の障害観の変化もまた、人権やQOLと同様に、支援に対して大きな影響を与えてきました。

 伝統的な「医学モデル」では、個人の(身体の)側に障害があると考えてきました。

 その後、1980年代頃から「社会モデル」の考え方が広まり、障害は社会の側にある、または個人と社会の間にあると考えられるようになってきました。 個人の心身機能の改善を目指すアプローチだけでなく、環境に働きかけることの大切さを、社会モデルは伝えています。

◆ワーク「わたし(の暮らし)にとって大切なものは?」

 まず、「自分自身の暮らしにとって大切なものは何か」を考えてみるワークを行いました。支援には自分の価値観が現れます。自分はどんな価値観を持った人間であるかを常に考えるのはとても大事なことです。

(シート「わたし(の暮らし)にとって大切なものは?」)
配布資料

◆事例を通じたワーク「障害当事者の事例から考えてみよう」

 次に、障害当事者の事例を題材としたワークを行いました。

 事例の概要の紹介後、その人の暮らしにどんなことが大切かを話し合いました。お金や健康、楽しみに関することなど、様々な意見が受講生から発表されました。

 支援をしていく中で、本人の視点、家族の視点からQOLを考えてみる、あるいは専門職としてかかわる中での視点など、立場によって大事に思っていることが違うことに気づくかもしれません。

 専門職の人にとって大事なことは、その人のQOLについて様々な立場の人との対話を通じて理解を進め、その中で専門性を発揮することです。その人抜きにその人のことを決めないことも大事です。

講義の様子

◆まとめ

 QOLについて、様々な考え方がありますが、暮らしを多面的に考えてみることは大切な視点の一つです。例えば、専門職として患者さんに出会ったとき、その方の健康面をどう改善するかが支援の焦点になるかもしれません。そして、健康面の改善は外出の楽しみという、生活の他の側面につながっていく場合もあります。また、基本的な生活のニーズや自己実現について、どのようなことを相手が大事にしているのかを考えてみることも大切です。このように、様々な側面からQOL考えてみることで、支援や支援を届ける相手の暮らしの豊かさにもつながります。

■最後に

 学生の皆さんには、2つの講義を熱心に、またワークにも積極的に参加していただきました。

 「人権やQOLについて理解が深まった、改めて人権の大切さを感じた」、「人権について現在のニュースを踏まえて想像しやすかったです」などの意見があり、人権について考えてもらえる良いきっかけとなりました。

 また、「人によって何を大切に考えるかは異なっている」、「みんなが同じではないということをしっかりと頭にとめておくことが大切だと考える」、「専門職の立場だと、身体の障害をケアしようとしてしまうが、それだけでなく、対象者のQOLにも注目してケアしていくことに気を付けたい」などの意見から、人権とQOLについての理解を深めていただけたと考えています。

 このような取り組みが今後さらに活発となることで、人権意識が高まることを願っています。

 

ジンケンダー

人権カレンダー8月

●6日 広島原爆の日 /9日 長崎原爆の日

昭和20年(1945年)8月6日に広島へ、9日には長崎に原爆が投下され、広島では約14万人が、長崎では約7万人の方が亡くなったとされています。

●7日 ホームレス自立支援法の公布・施行

平成14年(2002年)のこの日に公布・施行。ホームレスの自立の支援や、ホームレスとなることを防止するための生活上の支援等に関して、国、地方公共団体の責務を明らかにしました。 平成30年(2018年)6月14日の改正により、自立支援の有効期限が令和7年(2025年)まで10年間延長となりました。

●12日 国際青少年デー

8月12日を「国際青少年デー」とすべきだとする青少年に関する世界閣僚会議の提案が、平成11年(1999年)12月17日、国連総会に認められました。 この日は政府やその他の人々の注意を世界の青少年問題へ向ける機会とされており、毎年異なるテーマが設定されています。

●15日 戦没者を追悼し、平和を祈念する日

昭和20年(1945年)8月15日に第二次世界大戦が終結したことを受け、昭和57年(1982年)に、この日を「戦没者を追悼し、平和を祈念する日」とすることが閣議決定されました。

●28日 解放令の公布

明治4年(1871年)のこの日、明治政府は、それまで賤民とされていた人々の身分や職業を平民と同様とする内容の「太政官布告(解放令)」を公布しました。

●26日~9月1日 全国一斉「子どもの人権110番」強化週間

全国の法務局では、子どもの人権に関する専門相談電話「子どもの人権110番」(フリーダイヤル0120-007-110)を設置しています。週間中は平日の電話相談受付時間を延長するとともに、土曜日・日曜日も電話相談に応じますので、気軽にお電話ください。通話・相談は無料、秘密は厳守します。

●30日 強制失踪の被害者のための国際デー

世界のいたるところに存在する何万人という強制失踪の被害者への関心を高める日となっています。わが国は拉致問題を含む強制失踪の問題への国際的な関心を高める上でも重要であることから、「強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約」に平成19年(2007年)に署名、平成21年(2009年)7月23日に締結しました。

お問い合わせ
滋賀県総合企画部人権施策推進課
電話番号:077-528-3533
FAX番号:077-528-4852
メールアドレス:[email protected]
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