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じんけん通信

 人権施策推進課では、人権に関する特集記事「じんけん通信」を毎月、ホームページ上で発信しています。

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令和3年(2021年)4月(第156号)

 「LGBT」など性の多様性についてメディアで取り上げられる機会が増える中、性的指向・性自認を理由とした人権侵害が大きな問題となっています。こうした問題をなくし、誰もが自分らしく生きられる社会を実現するためにはどうしたら良いでしょうか。

 今月のじんけん通信では、県広報誌「滋賀プラスワン」3-4月号に掲載している「ふれあいプラスワン」の特集記事「多様な性を尊重し、認め合う心を」についてさらに踏み込み、再編集してお届けします。

特集 多様な性を尊重し、認め合う心を

性的指向・性自認って?

 「性的指向(=Sexual Orientation)」とは、どのような性の人を好きになるか、「性自認(=Gender Identity)」とは、自分の性をどのように認識しているかです。この2つを併せて、「SOGI」(ソジまたはソギ)という表現が使われています。

 「LGBT」を性的指向・性自認で分類すると、以下のように表されます。

表1

 LGBT以外にも、男女のどちらにも恋愛感情を持たない人や、自分自身の性が決められない人・分からない人など様々な人がいます。

 また、性を構成する要素は、性的指向や性自認だけという訳でもありません。多くの研修講師の方の説明によると、性を構成する要素は4つあり、性的指向や性自認に加えて、染色体や性ホルモンのレベルなどにより決定される生物学的な性(=Sex)や、自分の性をどのように表現するかという性別表現(=Gender Expression)も性の構成要素です。

 自分は生物学的な性・性自認のどちらも女性だと感じており、好きになる対象(性的指向)は男性だけれども、ボーイッシュな服装を好んで着る(性別表現)、という方はたくさんいると思います。自分は生物学的な性・性自認・性別表現のどれも男性だと感じているけれども、好きになる対象(性的指向)が男性という方も、周囲の人には知られていないだけで、あなたの身近にいるかもしれません。

 上記はほんの一例であり、生物学的な性、性的指向、性自認、性別表現は男性・女性の2つに分けられるものではなく、その組み合わせも人それぞれです。

 まずは、性のあり方には非常に多様な形がある、ということを知って下さい。

性のあり方に関する人権侵害とは

本人の同意を得ずにその人の性的指向や性自認を暴露する「アウティング(※)」などの人権侵害が大きな問題となっています。

※「アウティング」は、本人の意思により自分の性のあり方を打ち明ける「カミングアウト」とは異なります。

 令和元年に施行された「改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)」では、個人の性的指向・性自認に関する侮辱的な言動やアウティングがパワハラにあたると位置づけられました。

 また、平成27年に大学内で発生したアウティングに関する裁判では、アウティングが「人格権やプライバシー権などを侵害する許されない行為」との判断が令和2年11月に示されました。企業内で行われたアウティングでも、企業側が責任を認めて本人に謝罪した例があります。 

 このように立法・司法の観点からアウティングが人権侵害だということが明示されてはいますが、今年に入ってからも、本県内の保育園の「保育園評価書」上で、園児の性別の違和感や受診歴が同意のないままホームページ上で公開され、一旦提訴されるといった問題が発生しています。

 自分の性をどのように認識するのか、どのような性の人を好きになるのかは、人としての尊厳そのものにかかわる問題です。個人の性のあり方を本人の同意を得ずに他人に広めたり、侮辱したりすることは決して許されません。

 また、「支援しよう」という気持ちから行動を起こした結果アウティングとなってしまい、当事者の方を傷つけてしまうというケースも少なくありません。性的指向や性自認に関する個人情報は、意識して慎重に取り扱うようにしましょう。

LGBT支援団体 RainbowCreate 定政 輝さんインタビュー

定政さん
LGBT支援団体 RainbowCreate代表定政(さだまさ) 輝(ひかる)さん

○「いない」のではなく、「見えにくい」だけ

 民間の統計調査では、人口の約9%、人数にすると800万人前後がLGBTなどの多様な性の方々であるともいわれています。

 講演会でそう話すと驚きの声が上がり、特に学校教員向けの講演会だと、「身近にあまりいない」という先生がすごく多いです。

 一方で生徒向けの講演会では、「友だちや知り合いにいる」という子が結構いるのですが、子どもたちも講演会中にはそのことを言いにくいようで、講演会後に、自分が悩んでいるということや知り合いに当事者がいるという相談を受けます。生徒向けの講演会や相談の後は、「自分が友だちを傷つけてしまっていたのではないか」と自分の言動を省みる様子や、私が講演会で話す「『カミングアウトされた時の6か条(次項参照)』を守って友だちに接していきたい」という声が多いです。

 逆に先生の場合は、当事者の子どもの存在を認識していないとなかなか取組がしにくいようです。当事者の子どもの存在を認識していると、学校全体で意識をもって、当事者を招いてLGBTなどの人々やカミングアウト、アウティングに関する授業を行っているのですが、当事者の子どもの存在を認識していないと、そういった授業にも踏み込めないようです。

 ですが、人口の約9%が多様な性の方々である、ということを考えると、当事者が身近に「いない」のではなく「見えにくい」だけなのです。左ききの人や血液型がAB型の人と同じくらいに身近な存在だと感じてもらいたいです。そういったことを踏まえ、学校の先生方には正しい知識を身につけてもらい、生徒からカミングアウトを受けた時の対応や、アウティングがなぜいけないのかをしっかりと認識したうえで、子どもたちに授業をしてもらいたいと思います。

 高齢の方などの中には、見た目で性別の変化が分かるような方に対して「あの人はそういう人なんじゃないか」と色眼鏡で見る人もいるのですが、そのような目線が当事者を傷つけていることを知ってもらったうえで、その人自身のことを、「心の目」でしっかりと見てほしいです。

○定政さんが考える「カミングアウトされた時の6か条」

表2

1について

 先生方や保護者の方など、日々忙しい中で突然カミングアウトされることがあると思います。その時に、「忙しいから後で」と流すのではなく、当事者が勇気を出してカミングアウトしてくれたことにまず「ありがとう」と伝え、最後までしっかり話を聞いてほしいです。どうしても忙しい時には、別の時間を設定する、改めて別室で話を聞くといった対応をしてもらえると、当事者も安心してカミングアウトができるのではないでしょうか。

2について

 例えば自分の性がレズビアンなのか、トランスジェンダーなのか、それともそれらに当てはまらない性なのか、しっくりくるまでにはすごく時間がかかるものです。その人が誰を好きになるかはその人自身が知っていることなので、見た目が男性で好きになる対象も男性だからゲイだ、見た目が女性で好きになる対象も女性だからレズビアンだ、と見た目でセクシュアリティを決めつけないでほしいと思います。

 思春期には自分の性が揺らいだり悩んだりする時期があるので、先生が早まってセクシュアリティを決めつけ、制服や更衣室などの対応を急いでしまうと、かえってしんどくなり、学校に行けなくなってしまうということもあります。当事者がどうしてほしいのかを確認しながら、当事者のペースに合わせて、対応を考えていってほしいです。

3について

 もし当事者がカミングアウトをしたのなら、信頼しているその人だから、勇気をもって打ち明けたのです。それに対して「ありがとう」と伝えるだけで、当事者は「この人に打ち明けて良かった」とすごくほっとした気持ちになります。具体的な対応は何もできなくても、これだけは伝えてほしいと思います。

4について

 当事者の方からは、制服を変えてほしい、今使っているトイレや更衣室がしんどい、などというのはなかなか言い出しにくいです。カミングアウトをされたときに、「どんなことで困っているのか」を聞いてあげることで、当事者にとって言いやすい環境ができます。

5について

 例えば当事者の生徒が担任の先生にカミングアウトし、担任の先生が学年全体の先生に伝えてしまったとします。そのことを本人が知ると、「信頼していたから打ち明けたのに、勝手にばらされた」と感じ、後でカミングアウトしようと思っていた保護者や友だちへの信頼までも失ってしまい、孤立してしまいます。カミングアウトを受けた時には、「誰に話してもいいのか」を必ず確認し、当事者が「この人だったら話しても良い」という人だけに留めておいてください。

6について

 LGBTなどに関するイベントや動画、本などを紹介することで、「一人じゃない」「頼れる人がいる」と知ってもらうことができるので、もしカミングアウトを受けたら伝えてあげてください。

 また、カミングアウトは、恋愛感情の告白とは別物です。カミングアウトを受けた人が、自分に好意を向けられていると勘違いしてシャットアウトしてしまうということはよくあることですが、どちらかというと当事者にとっては、カミングアウトをすることにより、その人が多様な性の人々へ理解があるかを伺い知ろうとしていることが多いと思います。

 カミングアウトを恋愛感情の告白だと勘違いし、距離を置かれてしまうことは、当事者にとって一番傷つくことなので、そのことを是非知っておいてもらいたいです。

○理解よりも、まず知ってほしい

 当事者は、人にもよりますが、「理解してほしい」「助けてほしい」とはあまり思っておらず、「みんなと同じように接してほしい」という思いを持っています。

 学校の制服を変えてほしい、自分の性に合ったトイレや更衣室が使えるよう対応してほしいという思いはもちろんありますが、自分が望む性でしんどい思いをしないように過ごしたい、というただそれだけのことです。

 「普通」や「当たり前」が何かは人によって違うと思うので、ありのままのその人自身を認めてほしいです。理解するよりまず知ってほしい、そして、できれば寄り添い、応援してほしいと願っている人が多いと思います。

 もし身近な人からカミングアウトを受けたら、すぐには受け止められないかもしれません。ですが、多様な性の方々は、テレビの中の特別な人ではなく、身近にいる存在だということをまず皆さんに知ってもらいたいです。

 性のあり方に関する偏見や誤解を防ぐためには、正しい知識を持つことが大切です。例えば「レズ」・「ホモ」といった言葉は差別的な表現なので、「レズビアン」・「ゲイ」と言い換える必要がありますが、そうとは知らずに悪気なく使われ、当事者を傷つけることがあります。

 私は滋賀県にも講演でよく行かせていただくのですが、地域によっては、当事者の存在が見えづらく正しい知識を周知するための取組がなかなか進んでいなかったり、身近な人にカミングアウトをしにくい環境であったりするということも耳にします。滋賀県出身の友人もいますが、地元ではカミングアウトしにくいために、大阪などの都市部に出て仲間を見つけ、自分らしさに自信を持ってから親にカミングアウトした、という人もいます。一方で同じ県内でも人権に対しての意識が高く、LGBTなど多様な性に関して積極的に啓発に取り組んでいる地域もあります。

 企業などの研修で講演を行うこともありますが、支援者の数や、働きやすい職場に向けた取組を行うところはすごく増えてきたと実感します。多様な性のあり方を正しく知る人が増えれば、誰もがありのままの自分で生きられる社会の実現につながっていくのではないでしょうか。

定政さんへのインタビューを終えて

 LGBTなどの人々についてある程度の理解はあるつもりでいても、例えば同僚に「彼氏(彼女)はいるの?」と異性愛を前提とした聞き方をしてしまうなど、無意識のうちに、身近な「見えにくい」当事者の方を傷つけてしまっていたかもしれないと感じました。 

 性のあり方は男性/女性にきっちり分けられるものではなく、グラデーションです。LGBTなどの人々に限らず、誰もが多様な性の当事者として、自分事として考えていく必要があるのではないでしょうか。

 多様な性のあり方について皆が正しく知ることが、私にとってもあなたにとっても、もちろんLGBTなどの方々にとっても、自分らしく生きられる社会の実現につながっていくのだと思います。

自身の性のあり方などで悩んでいませんか?

一人で悩みを抱え込まず、相談してください。

心の悩みに関する相談窓口

・一般社団法人社会的包摂サポートセンター よりそいホットライン

 TEL:0120-279-338

 ※性のあり方に関する相談の場合は、音声ガイダンスが流れたら「4」を押してください。

 ホームページはこちら → https://www.since2011.net/yorisoi/

人権侵害に関する相談窓口

・法務局 みんなの人権110番(全国共通人権相談ダイヤル)

 TEL:0570-003-110

 開設時間:平日8時30分~17時15分

 ※最寄りの法務局につながります。

 ホームページはこちら → http://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken20.html

じんけん豆知識

シトラスリボンプロジェクトとは?

 じんけん通信読者の皆さんは、「シトラスリボンプロジェクト」についてご存知でしょうか?

 コロナ禍で生まれた差別、偏見を耳にした愛媛県の有志グループ「ちょびっと19+」が主導するプロジェクトで、「たとえ新型コロナウイルス感染症に感染しても、誰もが地域で笑顔の暮らしを取り戻せる社会に」という願いから生まれました。

 このプロジェクトでは、愛媛特産の柑橘にちなんだシトラス色のリボンや専用ロゴを身につけて、「ただいま」「おかえり」の気持ちを表す活動を広めています。 リボンやロゴで表現する3つの輪は、地域と家庭と職場(もしくは学校)です。

 たとえ感染してしまったとしても、復帰するときに「ただいま」「おかえり」と温かく声を掛けあえるなら、安心して検査を受けることができ、ひいては感染拡大の防止につながります。 また、感染者や医療従事者などへの差別や偏見を防ぐこともできます。感染者が何人出た、どこの誰が感染した、ということ自体よりも、感染が確認された後に的確な対応ができるかどうか、回復して戻ってこられた方にどのように接するかで、その地域のイメージが左右されるのではないでしょうか。

 感染された方々や、私たちの暮らしを守り、支えてくれる医療従事者をはじめとする方々が、それぞれの暮らしに戻った時に、「ただいま」「おかえり」と言いあえる地域であるといいですね。

ロゴ

 




滋賀県人権施策推進課は、シトラスリボンプロジェクトの趣旨に賛同しています。

 シトラスリボンプロジェクトの詳細については以下のURLをご覧ください。

https://citrus-ribbon.com/

ジンケンダーのちょっと一言

ジンケンダー
白



誰もが「多様な性」の当事者。正しい知識を身につけて、

自分らしく生きられる社会を、自分たちの手で

つくっていきたいのだー!

お問い合わせ
滋賀県総合企画部人権施策推進課
電話番号:077-528-3533
FAX番号:077-528-4852
メールアドレス:[email protected]
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