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じんけん通信

 人権施策推進課では、人権に関する特集記事「じんけん通信」を毎月、ホームページ上で発信しています。

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令和2年(2020年)12月(第152号)

 1948年12月10日、国際連合は世界人権宣言を採択し、さらにその2年後の1950年には、同宣言の採択日である12月10日を「人権デー」と定めました。

 日本国内においては,法務省と全国人権擁護委員連合会が,同宣言が採択されたことを記念して、昭和24年(1949年)から毎年12月4日~10日を「人権週間」と定め,人権尊重思想の普及高揚に努めてきました。

 国内外ともに「人権」が注目される今月の12月号では、誰よりも地域の皆さんに近い立場で人権を守る活動に携わっている、「人権擁護委員」の活動についてお届けします。

特集 あなたの街の人権を守る~人権擁護委員の活動について~

人権擁護委員とは?

 人権擁護委員は,人権擁護委員法に基づいて,地域の方から人権相談を受けたり、地域の方へ人権の考えを広めたりする活動をしている民間ボランティアの方々であり、皆さんの一番身近な相談相手です。

 現在、全国で約14,000人、滋賀県内では217人が法務大臣から委嘱され、各市町に配置されて、積極的な人権擁護活動を行っています。

人権擁護委員とは

 今月号では、人権擁護委員として活動されている、滋賀県人権擁護委員連合会会長の大森 秀次さん、同連合会理事の木村 登代美さんにお話を伺いました。(以下、敬称略)

大森秀次さん
大森 秀次 さん
木村登代美さん
木村 登代美 さん

Q. 人権擁護委員になられたきっかけは?

 大森)退職した直後、人権擁護委員になることを当時の副市長から直に頼まれ、断るに断れない状況でした。それがきっかけで、人権擁護委員として12年ほど活動しています。

 木村)人権擁護委員を委嘱される前は民生児童委員を務めていたのですが、その当時、市内の人権擁護委員13名のうち女性は1名しかいませんでした。女性の人権擁護委員を増やしたいということで私に声が掛かり、人権擁護委員を務めて10年目になります。

Q. 普段、どのような活動をされていますか?

 大森)人権擁護委員の活動は主に3つあります。

 1つ目は啓発活動で、学校や保育園・幼稚園をまわって人権教室などを行います。

 2つ目は相談活動で、年間で割り当てが決まっています。法務局またはその支局にある常設相談所や、各市町に置かれた特設相談所で人権相談に応じます。

 3つ目は、調査・救済活動で、これは3年ほど前から制度として始まったのですが、法務局の職員の方と一緒に、人権を侵害されたと訴える人や、その相手方への聞き取りを通して、どのように対応するかを考えます。

Q. 人権相談はどのように受けられるのですか?

 大森)相談専門電話や、法務局や特設人権相談所において面談で受けることがほとんどです。

 電話相談は、特にどの時期に相談件数が多いということはなく、朝から晩までひっきりなしにかかってくることもあれば、1日3件ほどしかないときもあり、日によってまちまちです。

Q. 最近受けられる相談は、どのような内容が多いですか?また相談内容から、どのような課題が見えてきますか?

 大森)今年は新型コロナウイルス感染症に関する人権相談が新しい課題として出てきました。近所から白い目で見られるといった相談や、「出て行け」という張り紙を貼られるという相談を受けたこともありますが、相談件数全体としては3%程度の増加であり、コロナ禍で人権相談が急激に増えた、という印象はありません。

 内容として多いのは、親御さんからの子どものいじめに関する相談です。また、労働に関することや、自分の子どもや夫婦間のことなど、家族に関する相談を受けることもあります。

 木村)相談を受けていると、人間同士のぎくしゃくした関係が課題として見えてきます。

 例えば、近隣同士のトラブルに関する相談を受けると、円滑に隣人関係を築くことができていないのかなと感じますし、地域の中でコミュニケーションを取る機会が少なくなっているように思います。

 労働に関しても、自分が会社のすべてから疎外されているというような相談を受けたことがあります。その際は、会社のコンプライアンス部門に相談してみてはどうか、とアドバイスしてみたのですが、それでもだめだったから、と人権擁護委員に相談してこられました。本人がコンプライアンス部門に相談するのみでは、納得できる結果にはならなかったようで、そのときは法務局の職員の方も含め、本人と会社にお話を聞かせてもらいました。

 一方で、新型コロナウイルス感染症にかかる近所の目線や張り紙に関する相談は、ある意味濃密な隣人関係があって、それが良くない方向に働いてしまったのだとも言えます。

Q. 相談を受けられて、解決に導くまでに難しいと感じることはありますか?

 大森)人権擁護委員による救済活動は、法的に解決したりするのではなく、相手方を啓発することにより,自主的な反省を促すといった活動になります。

 難しいのは、そのことに相談者ご本人が納得されないと、救済活動ができないという点です。

Q. 子どもたちに対しては、「SOSミニレター」での相談も受け付けていらっしゃいますよね。

SOSミニレターについてはこちらをご覧ください。

 大森)県の南部6市で、年間平均250件ほど届きます。友達とどう付き合うかとか、学校の宿題が分からないとか、学校生活の中での些細なことを書いてくれる子が多いのですが、虐待など重要な相談も中にはあるので、適時適切な対応をすることになります。

 「SOSミニレター」は、場合によっては何度かやり取りを繰り返すこともあるのですが、相談していることを親御さんに知られたくないから、返信を分からないように持ってきてほしいという子もいました。郵送だと親御さんに見られてしまう可能性もあるため、その子が帰ってくる時間を聞いて、その時間に合わせて家まで返信を届けたこともあります。

Q. 相談を受けられる際、心掛けていることはありますか?

 木村) 相談をされる方の中には、話を聞いてもらうだけで納得される方もいらっしゃるので、こちらからああしなさい、こうしなさい、と言うのではなく、相談者ご本人が答えを見つけられるように意識しています。

 また、より適切な相談機関があれば、ご紹介するようにしています。かといって、あまりにあちらこちらとつなぐのは良くありませんが…。

 大森)私も、相談者の話を聞くことに徹しています。話をしている間に、いろんなことを相談者ご自身で見つけられることが多いので。

 あとは、相談者が何を求めているかをきちんと聞き取ることです。怒っている方も悩んでいる方も、辻褄の合わないことを含めたくさん話をされるのですが、その話を受けて、きちんと筋道を立ててあげるようにしています。

 何を求めているのか聞き取るためには、相談者の話す内容を、「ご相談されたいのは、こういうことですか」と確認しながら、整理していくことがコツだと思います。そうしていくうちに、何に悩んでいるのか、何を伝えたいのかが相談者本人の中で明らかになっていきます。

Q. これまでの活動で、印象に残っていることはありますか?

 大森)学校をまわる啓発活動で、人権教室でまもる君、あゆみちゃん(※法務省人権イメージキャラクター)のバルーンが登場すると、子どもたちが喜んでくれることですね。一度行った学校に次の年ももう一度と、繰り返し行くと啓発につながると考えています。

 また、人権相談を受けた際も、一つの場所に留まっている訳ではなく、あちらこちらへ出向くことがあります。相談者は滋賀県の方でしたが、その関係先が京都だったため、そちらへ出向いたということがありました。

 木村)私が相談を受けた中で印象的だったのは、DVの相談を受けた時です。その方は、家を出るということを相談された時点で既に決めておられたのですが、お子さんを連れて出るにはどうしたらよいか、という相談でした。

 その時私は、「着の身着のまま家を出るのではなく、加害者には分からないように、家を出た後に頼るところや、お金などを準備してから家を出た方が良い」とアドバイスをしたのですが、今でも、そのようなアドバイスで本当に良かったのか、相談者はその後どうしているのかが気になっています。

 その方は、案外色々な相談機関などをご自身で調べておられたので、実行に移すために、誰かに背中を押してもらいたかったのではないかと思いました。

Q. 滋賀県人権擁護委員連合会が加盟されている「滋賀県人権啓発活動ネットワーク協議会」は、プロバスケットボールチームである滋賀レイクスターズと連携した活動もされていますが、その感想をお聞かせください。

 木村)人権のことで関わるまで、滋賀レイクスターズのことをよく知らなかったのですが、昨年、試合会場での人権啓発ブース出展に参加し、その時に滋賀レイクスターズの人気にびっくりしました。

 大森)選手と一緒に、県内の中学校を持ち回りで訪問するプログラムがありますが、子どもたちが喜んでくれますし、選手がその場でしゃべってくれますので、子どもたちへの啓発としてはとても良いと思います。

Q. 人権擁護活動について何かPRがありましたらお聞かせください。

 大森)12月の人権週間に合わせ、マスクとマスクケースを公共施設に設置しますので、ぜひ貰いに行ってください。

 あと、私たちも選考に参加している「中学生人権作文コンテスト」で、県内の中学生が全国でも良い賞を受賞されることがありますので、ぜひ読んでみてください。わりと中学生の方が時代の流れに敏感で、このように物を考えなければならないのか、と私たちの方が学ぶことも多いです。

Q. 今後の活動で、特に力を入れていきたいことなどありましたらお聞かせください。

 大森)滋賀県人権擁護委員連合会として力を入れていきたいと考えているのが、高齢者・障害者福祉施設での相談活動と、企業での啓発活動ですが、どちらもなかなか壁が高いです。

 福祉施設での相談活動は、入所されている方の家族会とつながることができるとよいのですが、どうつながりを作るかが課題です。企業での啓発活動も、以前は企業内人権研修がよくあったのですが、最近は減ってきているようで、企業側になかなか受け入れてもらえないです。子ども相手の研修はよく行っているのですが、大人相手の研修は難しいですね。

 木村)人権の重要性は変わりませんが、LGBTに関することや、インターネット上の人権侵害、今年であれば新型コロナウイルス感染症に起因する人権侵害というように、時代とともに課題となる内容が変わっていきます。

 私たちも、現在どのような問題が起きているのかということに、ついていかなければいけません。ですから、日々講演会を聞きに行ったり、問題となっていることに目を向けて勉強していかなければならないと思っています。

大森さん、木村さん、ありがとうございました。

編集後記

 地域に近い立場で相談や啓発に携わる人権擁護委員の方だからこその、人権をめぐる現状分析や課題の捉え方は、大変参考になりました。私たちも、時代の変化を敏感に捉え、その時々に合った施策を柔軟に考えていかなければならないと感じました。

人権擁護委員への相談はこちら

みんなの人権110番(全国共通人権相談ダイヤル)(外部サイトへリンク)0570-003-110

電話をかけていただくと最寄りの法務局・地方法務局につながり、法務局職員または人権擁護委員が相談に応じます。

滋賀県人権啓発活動ネットワーク協議会×滋賀レイクスターズ

まもる君
人権イメージキャラクター 人KENまもる君
レイクス
あゆみちゃん
人権イメージキャラクター 人KENあゆみちゃん
ロゴ

 滋賀県人権擁護委員連合会が加盟する「滋賀県人権啓発活動ネットワーク協議会」は、より多くの人に“人権”の大切さについて考えてもらうため、県内唯一のプロバスケットボールチームである「滋賀レイクスターズ」と協力して啓発活動を行っています。

 *ホームゲーム会場での広告掲載・ブース出展

 滋賀レイクスターズのホームゲーム全試合において、人権啓発広告を掲載しています。

 また、下記の日程で、試合会場に人権啓発ブースを出展します。

 滋賀レイクスターズを応援しながら、休憩時間は人権についてちょこっと考えてみてください。

 【日時】令和2年12月5日(土) 14:45~

 令和2年12月6日(日) 10:45~

 【場所】いずれも ウカルちゃんアリーナ(大津市におの浜4丁目2−12)

  ※試合会場への入場はチケットの購入が必要です。

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場内広告
ブース写真
←↑昨年度の様子
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人権カレンダー12月

・1日 世界エイズデー
 世界エイズデーは、世界レベルでのエイズのまん延防止と患者・感染者に対する差別・偏見の解消を目的に、WHO(世界保健機関)が昭和63年(1988年)に制定したもので、毎年この日を中心に、世界各国でエイズに関する啓発活動が行われます。

・2日 奴隷制度廃止国際デー
 昭和24年(1949年)のこの日、「人身売買及び他人の売春からの搾取の禁止に関する条約」が採択されたことにちなみ制定されました。

・3日 国際障害者デー
 平成4年(1992年)、「国連障害者の10年」(昭和58年(1983年)~平成4年(1992年))の終結にあたり、国連総会は12月3日を「国際障害者デー」と宣言しました。総会では加盟国に対し、障害のある人々の社会参加をいっそう促進させるため、この国際デーに重点を置くよう呼びかけました。

・3日~9日 障害者週間
 毎年12月3日から9日は「障害者週間」です。期間中は、障害や障害のある人に対する国民の関心と理解を深めることを目的として、障害のある人が社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加することを促進するため、全国で啓発行事が行われます。

・4日~10日 人権週間/10日 人権デー
 国際連合は、昭和23年(1948年)第3回総会で世界人権宣言が採択されたのを記念し、昭和25年(1950年)第5回総会において、世界人権宣言が採択された12月10日を人権デーと定めるとともに、すべての加盟国に記念行事を実施するよう呼びかけています。法務省と全国人権擁護委員連合会は、毎年12月10日の人権デーを最終日とする1週間を「人権週間」と定め、全国的に啓発活動が展開されます。
法務省 人権週間HP(外部サイトへリンク)

・10日~16日 北朝鮮人権侵害問題啓発週間
 北朝鮮当局による人権侵害問題に関する国民の皆さんの認識を深めるとともに、国際社会と連携しつつ北朝鮮当局による人権侵害問題の実態を解明し、その抑止を図ることを目的として、平成18年6月「拉致問題その他北朝鮮当局による人権侵害問題への対処に関する法律」が施行されました。同法では、国および地方公共団体の責務などが定められるとともに、毎年12月10日から同月16日までを「北朝鮮人権侵害問題啓発週間」とすることとされています。週間中は、国民の皆さんの認識を深めるようなシンポジウムなどの様々な啓発活動が予定されています。

ジンケンダーのちょっと一言

ジンケンダー
白

人権のことで困ったときには、

身近な人権擁護委員さんに

相談してみるのだー!

お問い合わせ
滋賀県総合企画部人権施策推進課
電話番号:077-528-3533
FAX番号:077-528-4852
メールアドレス:[email protected]
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