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平成30年(2018年)10月(第126号)
人生100年時代と言われていますが、人生のそれぞれのステージではさまざまなことが起こります。
歳をとっても、病気になっても、障害があっても、社会に出て働くことに不安があっても、自分ができることをそれぞれが持ち寄って集まれるような場所があれば、いきいきとした毎日を過ごすことができるようになり、それはやがて地域の活力へとつながります。
今回は、さまざまな福祉関係の事業所が集まる「あいとうふくしモール」の中で地域の困りごと解決のコーディネートを行っておられる「ほんなら屋」のスタッフの方に「ほんなら堂」と若者支援の2つの事業について、お話を伺いました。
~みんなの居場所づくりに向けた、ほんなら屋の取り組み~
◆「ほんなら堂」の事業についておしえてください。
「地域の困りごとは地域で解決する」をモットーとして、住み慣れたこの愛東地域で誰もが安心して暮らせるように、暮らしの中の困りごとを地域住民の協力で解決しよう、地域の困りごとを仕事に、という試みの事業名が「ほんなら堂」です。高齢者の比率が高いこの地域では、家の掃除やゴミ出し、買物など、生活する上で必要なさまざまな作業を自分一人で行うことが難しい方々がおられます。こうした人達の日常生活を手伝うサポーターを地元で募り、両者の橋渡しを行うのが「ほんなら堂」の仕組みです。「こんなことで困っているんやけど…」「ほんなら(それなら)こんなことができるけど、どうや?」「ほんなら堂」では、こんな住民のヨコのつながりで助け合える地域社会をつくることをめざしています。
<ほんなら屋の外観>古民家を改装した雰囲気のある建物です | <ほんなら屋スタッフ>中屋さん(左)と島村さん(右) |
◆「ほんなら屋」についておしえてください。
「ほんなら堂」と地域の若者支援の2つの事業を行うための活動の拠点であり、居場所であり、仕事場でもある場所が「ほんなら屋」です。さきほどお話しした「ほんなら堂」と併せて行っている若者支援では、ひきこもりやニートなどの状態にあり、社会に出て働くことに不安を持つ若者と一緒に農作業やおにぎり作りなどをしています。「地域で孤立している若者に居場所を」ということを、あいとうふくしモールの発足当初から大切にしています。
「働きたい」と思う半面、コミュニケーションに不安があったり、何から始めればよいかわからなかったりする方を対象としています。ともに活動している若者の中には「ほんなら堂」のサポーターとして活動している方もいます。2つの活動は互いに関係し合いながら運営しています。
おにぎり作りについてもう少し詳しく説明すると、稲作が盛んなこの地域では、高齢化により農業の担い手探しが課題となっています。地域の財産である農業とお年寄りたちの知恵、そして地域の若者とをマッチングした結果、生まれたのが「あいとうむすび」で、おにぎりに入れる具材には地域のお年寄りのアイディアが生かされています。「仕事をむすぶ」、「人をむすぶ」という想いをこめて「あいとうむすび」と名付けました。機会があればぜひ味わってみてください。
また、「あそ部(ぶ)」と称して、若者たちと月に1度、卓球をしたり、滝を見に行ったり、「ほんなら屋」に集まっておしゃべりをしたりしていて、これも気楽に情報交換をしたり、交流を深めたりする場として定着してきています。
◆活動実績についておしえてください。
「ほんなら堂」では、昨年度、約300件の依頼を受け活動しました。ご利用いただいた方々の「ありがとう」の言葉や、頼りにしてもらっているという実感と充実感がサポーターをはじめ、私たちの励みとなっています。若者支援では、若者が作る「あいとうむすび」を東近江市役所内や道の駅あいとうマーガレットステーションなどで販売しています。新しい味のおにぎりの試作品を作って、ほんなら屋に持って来る若者もいて、地域の若者が「やりがい」を持って活動しているという、確かな手ごたえと喜びを感じているところです。
若者支援は長期に渡る視野を持って取り組むことが大切だと思っています。「支援」とつくと「上から手をさしのべる」という印象があるかもしれませんが、私たちの考える若者支援は単なる就労支援ではありません。私たちは彼らと目線を合わせて「支援を行う者」であるよりまず、「一緒に働く仲間」として、彼らの参加しやすいペースでともに活動しています。
また、「ほんなら屋」は単なる「就労先」ではなく、「誰が来てもいい、みんなの居場所」としても開放しています。毎週火曜日には喫茶スペースとして地域の住民の方々にもご利用いただいています。
< あいとうむすび > | 農作業(若者支援)のようす |
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◆めざす将来のイメージについておしえてください。
< あいとうむすび > | ほんなら屋を利用する地域の人々 |
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「ほんなら堂」のコーディネートなしでも住民同士が直接助け合うことができる、そして住み慣れた地で誰もが安心して暮らせる地域づくりをめざしています。若者もお年寄りも障害者も誰もがいきいきと暮らせる地域をめざし、今は「地域育て」に取り組んでいる真っ最中です。
若者支援については、「若者は就労し、社会参加するのが当たり前」という風潮がある中で、適応できない若者側の姿勢ばかりが問われていることに違和感を抱いています。周囲の人がそうした若者に寄り添い、思いをくみ取る必要があるのではないでしょうか。周りの人が理解を深め、意識を変えていかないといけないと思います。制度だけあってもうまく進んでいかないので、時間をかけて人と人のつながりをつくっていく中で、体感していってもらいたいと思っています。また、「ほんなら屋」が彼らの居場所であると同時に、彼らの言葉を発信する場にもなればいいなと思います。
◆県民の皆さんにひとこと
私たちは多様な生き方が尊重される「みんなの居場所づくり」をすすめています。
若い皆さんへ、他の人と比べた時に生き方が違っていても大丈夫です。人の数だけ、道はありますよ。
◆取材を終えて
人間関係の希薄化が問題となっている現代社会。みんなの居場所をつくり、そこに集うみんなの力で、地域の課題を解決しようとする「ほんなら屋」の取り組みがさらに広がっていくことを期待しています。
人と人のつながりは一朝一夕では成り立ちません。性別や年齢、障害のあるなし、国籍など、それぞれ違うところはあっても、同じ地域に暮らす者同士です。お互いに尊重し合いながら、みんながいきいきと暮らすことができる地域にしていきたいものですね。