令和4年9月2日(金曜日)午前10時から午前12時まで
県庁北新館5-A会議室
(1)次期「滋賀の教育大綱」について
(2)子どもたちの学ぶ力の育成について
(福永教育長)
本日はお忙しい中お集まりいただき、誠にありがとうございます。定刻となりましたので、ただいまから令和4年度第2回滋賀県総合教育会議を開催いたします。
本日ご出席の皆様につきましては、お手元の出席者名簿と配席図の配布により、ご紹介に代えさせていただきますので、ご了承願います。
本日はゲストスピーカーといたしまして、野洲市立野洲小学校の角憲幸先生、また米原市立伊吹山中学校の藤川直子先生にお越しいただいております。先生方どうぞよろしくお願いいたします。
また後ほど、文部科学省初等中等教育局教育課程課の常盤木課長様からオンラインによりご説明いただく予定をしております。
あわせまして、去る8月22日付で本県の副知事に就任されました大杉副知事におかれましては、本日が本県の総合教育会議への初めての出席となります。後ほど知事に続きまして、ご挨拶いただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
なお本日の会議は会場とオンラインの併用で開催しておりまして、三日月知事と窪田委員におかれましては、オンラインでご出席いただいております。また会場での傍聴とあわせましてウェブ会議システムのウェビナー機能により、オンライン視聴をいただいておりますので、ご承知おきいただきますようお願いいたします。
それでは開会にあたり、知事からご挨拶をお願いいたします。
(三日月知事)
おはようございます。滋賀県知事の三日月です。
7月から3期目をスタートさせました。これからも、知事としての大権を謙虚に行使しつつ、皆様方のご負託に応えられるように頑張ってまいりたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。この総合教育会議を主催させていただきます。
3期目をスタートするにあたりまして、「健康しが」をコロナに負けず、みんなで作っていこうとしています。その重要な柱として「子ども、子ども、子ども」、子どものために、子どもと共に創る県政を志向したいと考えておりまして、その強力な助っ人として、8月22日から文部科学省より、大杉住子副知事をお招きいたしまして、一緒に頑張ることとなりました。
後ほどご挨拶をいただきますが、今日のテーマであります、次期「滋賀の教育大綱」をどうするのか、またその中の主要なテーマである、子どもたちの「学ぶ力」をどのように高めていくのか、小・中学校、高校といった教育現場も大事ですが、小学校に入るまでの子どもたちの過ごし方などについて、大杉副知事は以前、幼児教育課長として、幼稚園や保育園などと学校との架け橋など、プロジェクトを作ってこられたご経験もお持ちですので、ぜひ、皆様方と一緒に考えてまいりたいと思います。
今日は角先生、藤川先生、大変お忙しい中ありがとうございます。後ほどご講演いただきます常盤木課長、どうぞよろしくお願いいたします。
私の挨拶は短くして、大杉副知事からご挨拶いただきたいと思います。
(福永教育長)
ありがとうございました。
それでは続きまして大杉副知事からご挨拶をお願いいたします。
(大杉副知事)
皆様おはようございます。8月22日付けで滋賀県副知事を拝命いたしました大杉住子でございます。
文部科学省での様々な経験を活かしつつ、滋賀のことを皆様に教えていただきながら、一緒にいろんな意見を発信していきたいと思っております。
着任のご挨拶で、どうしてもいろいろ言ってしまうので、一言多すぎ、大杉住子ですと、ご紹介を申しあげましたら、知事からは大歓迎ですと、受け止めていただきました。一言言いやすい雰囲気を作っていただいて、ありがたいと思います。ただ一言申し上げるからには、有意義なことを申し上げたいと思いますし、中だけではなくて、皆さんの思いを外に向かって一言申し上げることもしっかりやっていきたいと思います。
着任してまだ修行の身という感じでございますが、いろいろお話を伺わせていただいていて、三日月知事の「子ども、子ども、子ども」のもと、県庁内の全ての部局が、子どもとの繋がりを考えているということに正直驚きました。これは大変な追い風だと思います。教育委員会にとっては大きなチャンスだと思いますので、社会に開かれた教育課程を実現するという意味でも、この機会を大いに生かしていくためのお手伝いができればと思っております。
教育委員の皆様方にもお世話になります。土井先生には新しいカリキュラムのスコープもシークエンスも、どうしたらいいかわからない手探りの状況の中で、いろいろな考え方の切り口を示していただいて、本当にお世話になった記憶がございます。
そういった中で、教育の充実に一緒に取り組めることを大変嬉しく思っております。今後の滋賀ならではの教育の充実、滋賀県の目指す未来を拓くこころ豊かでたくましい人づくりに向けて、ぜひ力になってまいりたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
(福永教育長)
ありがとうございました。
それでは議事に入らせていただきます。まず議題の1番目、次期滋賀の教育大綱につきまして、まず事務局から説明をお願いします。
(教育総務課長)
それでは議題(1)、「次期滋賀の教育大綱について」でございますが、今年度から来年度にかけての2ヶ年にわたって、次期大綱を検討してまいりたいと考えておりまして、その方向性となります策定方針について、ご協議をお願いしたいと考えております。
資料が2種類、1-1と1-2がございますが、1-1が策定方針の案でございまして、1-2がその要旨となっておりますので、資料1-2で説明させていただきます。
<以下、資料1-2により説明>
<資料3ページ>
策定から3年を経過した現大綱を振り返り、主な成果と課題をまとめております。成果といたしましては、学校現場のICT環境が飛躍的に整備され、ICTの有効活用の蓄積が進んできたことや、「読み解く力」の育成に基づいた授業理解度の向上、さらにコロナ禍にあっても湖の子等の滋賀ならではの学びや、生涯学習活動を継続してきたことを挙げております。
一方、課題としましては、ICTを一層有効に活用した学びの充実を図ることや、「読み解く力」をもとにした、児童生徒の夢と生きる力の育成の推進、滋賀ならではの学びや生涯学習の一層の充実だと考えております。
<資料4ページ>
次期大綱の策定に当たりまして重視すべき観点を七つにまとめております。
1点目、学習者主体で未来社会を見据えた人づくりとしまして、児童生徒が社会の中心となって活躍する2040年以降の社会を見据えて、教育施策を構築する必要があること、また一層不確実さを増す時代にあって、自ら未来を切り開く力の育成、あるいは本県がこれまで取り組んできました、夢と生きる力の育成の継承、また、学習者を主体に置く教育によりまして、自分なりの答えを主体的に見いだし、変化の激しい時代に向かうたくましさを備えた人づくりが重要と考えております。
2点目、コロナ禍の経験からの気づきとしまして、改めて健康の価値や、共に学び交流する価値などを再認識することが大切であり、また急速に活用が進んだICT等については、新しい学び方として捉えていくことが必要だと考えております。
3点目、特別な支援が必要な生徒の他、家庭の状況や言語的、文化的背景などからくる困難な環境など、多様化する児童生徒等の状況に対しまして、学びから誰一人取り残さないことが重要とする観点でございます。取組に当たりましては福祉部門など教育以外の分野の主体も含めて、社会全体で対応する必要があると考えております。
<資料5ページ>
4点目、高等学校段階の学びの充実では生徒一人ひとりの好奇心や探究心を発展させる場として、課題を見つけ、解決に向けて考え行動する教育を展開する必要があると考えております。
5点目、教職員の資質能力の向上では、魅力ある職場環境の構築と、教職員と子どもたちの笑顔があふれる学校現場を作っていくことなどが求められていると考えております。
6点目、人生100年など寿命の延伸が指摘される中で、生涯を実り多いものとするために、多様な学びが重要だという観点です。合わせて、生涯にわたる学びの主たる担い手となります地域や家庭において、教育力を充実していくことが重要と考えております。
最後の7点目、教育においては個人と社会全体のウェルビーイング、幸せの実現を図る観点が重要とするものでございます。様々な状況にあっても、教育へのアクセスが担保されるよう、包摂性と持続可能性を十分に備え、一人ひとりの可能性が最大限に引き出される教育、また愛を原点として、学校だけでなく、家庭や地域などあらゆる主体の関与のもと推進する教育、こうした教育のあり方を目指すべきと考えております。
この7つの視点を重視した上で、次期教育大綱の方向性を整理しております。
<資料7ページ>
まず基本的な方向性ですが、これまでの教育大綱との連続性への配慮や、現在国で検討されております次期教育振興基本計画の参酌の他、教育を受ける当事者である子どもたちの意見を取り込むことが重要と考えております。
方向性(2)にありますように、愛を持ってみんなで取り組んでいく教育、児童生徒や生涯学習の学び手など、学習者を主体に置く教育、そして、一人ひとりと社会全体の幸せ、ウェルビーイングの実現を志向する教育、この3点を、全体を貫く方向性として持ちたいと考えております。
<資料8ページ>
より具体的な観点からの方向性を示したものでございます。これまでの現大綱の成果や課題、次期大綱で重視すべき観点を踏まえ、時代の変化にたくましく向き合い主体的に答えを見いだし、未来を自ら切り開く夢と生きる力の育成、また滋賀ならではの学びの充実、教育におけるICTの効果の最大化など、今後議論していくポイントを7つに整理をさせていただきました。
以上が策定方針の事務局案でございます。本日ご協議いただいた結果を反映の上、この策定方針を固めてまいりたいと思っております。また今後この大綱と一体的に策定いたします、教育振興基本計画の議論も別途審議会でスタートしますが、そこへの知事からの諮問内容に、この内容を反映していきたいと考えております。
以上で説明を終わります。ご審議のほどよろしくお願いいたします。
(福永教育長)
それでは、本日は、次期教育大綱の方向性について、事務局作成の方針案をもとに、皆様からご意見を伺ってまいりたいと思います。
まず、教育委員の皆さんがお気付きの点や、ご意見がございましたらよろしくお願いいたします。
(岡崎委員)
私も、もっと先を見据えた新しい教育が必要だと思っています。
今の取組の成果として、子どもたちが社会で活躍するのは20年後、30年後です。今の課題に対して取り組まなければならないこともありますが、もっと先にどんな社会を作っていくか。もっと私達も夢や未来を想像するために一歩、二歩、先を考えながら、今始めなければいけない教育を積極的に考えていくべきだと思います。2040年にとどまらず、滋賀のもっと先の未来をデザインできればと思います。
(福永教育長)
確かに2050年、2060年を見据えた教育も必要だと思います。
(石井委員)
次期教育大綱の方向性の「教育におけるICT効果の最大化」について、昨年、ふれあい教育対談で朽木東小学校を訪問した際に、ある先生が、手段が目的化していないか自問自答している、とおっしゃっていました。ICTの技術革新が先行していて、それを追いかける先生としてはプレッシャーもあって大変だと思いますが、なぜやるかということを先生同士で深いレベルでオーソライズして、共通の認識に立って進めることが、非常に大事であると思います。
DXとは、スウェーデンのウメオ大学の教授が2004年に提唱した概念で、技術革新を活用して、豊かな人生を送ることを目的としているそうです。改めて、なぜやっていくかということが問われる時代に入っており、大いに期待をしています。
(福永教育長)
急速に導入されたことで、使い方が強く意識されていますが、御指摘のように、何のためにやるのか、その目的を改めて考える必要があると思います。
(野村委員)
甲子園では滋賀県の近江高校が活躍されましたが、山田投手について、非認知能力が長けていると報道されています。生まれたときから、幼児期や児童期にかけて、我慢する力や自制心、人を思いやる心が、家庭での愛情を基盤に培われていくそうです。
この大綱の中でも、机の上の教育だけではなく、地域全体で、いろいろな方が関わりながら、良い方向に子どもたちが育っていく環境を作りたいと感じています。
私も勉強させていただいていますが、全ての県民の方が少しずつでも知識を持っていただければ、子どもたちの成長に良い影響があると思いますし、子どもを育てる保護者やご家庭に浸透していく機運が生まれると良いと感じています。
次期大綱では家庭や地域での取組についても重視していただきたいと思います。
(福永教育長)
誰一人取り残さないためには、そういった体験や機会が全ての人に与えられる仕組みを考えていく必要があると思っております。
(土井委員)
基本的によくまとめていただいていると思いますが、私からは1点、一般的な話と、これを進めていく上で2点、特に考慮していただきたいことをお話しさせていただきます。
一つ目は一般的な話ですが、ウェルビーイングを主題として、個別最適な学びと協働的な学びを進めていくことが重要だと思います。これは子どもたちの学びの問題にとどまらず、教育のあり方そのものの問題だと思っています。
私は、一人ひとりの個性や多様性を重視していく必要があると思っています。その理由として、教育で理想を追求していくと、どうしても一人ひとりの人間をオールマイティの完璧な人間に育てることが目標になります。しかしそれは不可能ですので、基本的なところはしっかりと押さえなければなりませんが、一人ひとりの個性、多様性を踏まえて、それぞれの得意分野を伸ばしていく必要があると思います。
他方で、一人ひとりが自分の得意分野を伸ばして、その分野で活躍するということは、一人では何もできないということなので、個性と多様性を重視、尊重するのであれば、多様な人たちが協働する関係をしっかり作らなければならないと思います。
この二つは両輪なので、一人ひとりの個性を大事にしていくことと、その人たちが協働関係を作って、目標を実現していくことを、しっかりと教育の中で取り組んでいく必要があると思います。それを子どもたちの学びに当てはめると、個別最適な学びと協働的な学びになりますが、同時に先生方の働き方にも関わっています。それぞれの先生方が、自分たちの役割を実現していくと同時に、チームとして協力できなければ、学校運営はうまくいきませんし、働き方改革の本来の目標は実現できないと思いますので、この点については全体として取り入れていただきたいと思います。
あと2点、簡単に申し上げると、1点は子どもたちの学習の内容について、元々本県では「生きる力」と「学ぶ力」を重視するところから始まっていて、その中で「読み解く力」を重視していくという形で進んできています。私は依然として「学ぶ力」と「読み解く力」の両方が重要だと思います。
今後も、読み解く能力を育成していく必要があると思うのですが、同時に、学ぶ力の基本として、自分自身で学習目標を立て、それに向けて何をすればいいか考え、しっかり身に付くように学んでいくことを、小学校の段階からしっかりと身に付けていく必要があると思います。
それが身に付いているからこそ、多様な学びが可能になるのであって、それが身に付いていないまま、先生方が全部教え込もうとすると、結局、画一的な指導しかできなくなるので、その点を重視してほしいと思います。
もう1点は、先ほどの個性、多様性と協働性の問題に関連しますが、やはり学校の先生方の働き改革を進める上で重要な点は、学校の先生にしかできないことをしっかりやっていただくことであり、そのためには、先生方をサポートする人たちの充実が絶対に必要になっています。
スクールソーシャルワーカーやスクールカウンセラー、スクールロイヤーをしっかりと充実させない限り、先生方が自分たちのやるべきことをやる体制はできないと思います。
この点については予算が必要になりますが、しっかりと手当てしていくことが大事だと思っています。
(福永教育長)
子どもたちの個別最適な学びや、協働的な学びとあわせて、先生方の働き方改革については、本年から、「笑顔あふれる学校づくり」として取り組んでおります。先生や子どもが笑顔になる学校作りに、引き続きしっかり取り組んでまいりたいと思います。
(窪田委員)
現行の教育大綱の成果と課題を踏まえて丁寧に作ってくださったと感じています。
重視すべき観点を7つ挙げていただいていますが、3点目の「児童生徒等の多様化に対応し、誰一人取り残さない学び」は、今、求められていることだと感じています。
多様化への対応については、様々な方面と連携しながら、多様な学びの場や多様な学び方を保障していくこと、例えば夜間中学校の議論についてもそうですが、多様な個々のニーズに合わせた学び方を用意することが重要だと思います。
一方で、ニーズに応じて子どもたちはそれぞれの場へ行けばよいということではなく、いろいろなニーズのある者たちが集う学校教育の中で、お互いが自分とは違うニーズを持つ者同士だからこそ、協働していく必要性を学ぶことが、社会に出たときにも大事であると思うので、多様化に対応することと、両輪で考えていきたいと感じました。
また、4点目の「高等学校段階の学びの充実」について、今は特別支援学校や中学校の特別支援学級から、高等学校に進学する子どもたちが徐々に増えてきていますので、ぜひ入試のあり方と合わせて議論していきたいと感じました。
(福永教育長)
多様な子どもたちへの対応は、非常に大きな課題だと思います。
教育委員の皆様からご意見をいただきましたが、副知事が何かお気づきの点がございましたらお願いいたします。
(大杉副知事)
重視すべき観点の1点目で学習者主体について、また2点目の「コロナ禍の経験からの『気づき』」で、学校などの場において共に学び交流する価値について、取り入れていただきました。
先ほど知事からも、就学前の教育についてお話がありましたが、今、滋賀でも、「幼保小の架け橋プログラム」に取り組んでいただいています。「幼保小の架け橋プログラム」が出来上がった背景はいろいろありますが、子どもの主体性と教員の意図性をどのようにバランスよく掛け合わせて学びを実現していくか考えるにあたり、幼保小の接点というのは非常にいい場だと思います。教材がない中で、大人の関わり方と環境の構成を考え、生活を丸ごと受け止めている幼児教育の世界と、時間割がある中で、様々な教材と掛け合わせながら考える小学校以上の世界が、お互い良いところを持ち合って、子どもの学びや指導のあり方をもう一度振り返る、非常によい機会になっていると思います。
モデル事業をやっていただいている彦根市だけでなく、県内全域でそういった観点で考える機会があればよいと思いますし、またそれがプラスアルファの負担になるのではなく、それに集中できる環境作りについても、併せて考えていただきたいと思います。
(福永教育長)
学習者主体を考えていくことは非常に大事だと思います。
続いて知事から何かコメントはございますか。
(三日月知事)
私もこの時点ではこのようなまとめ方でよいと思います。
今、教育委員の皆様や大杉副知事から伺った観点をわかりやすく表現することが重要だと思います。私自身も個性と多様性を重視する立場ですし、一人ひとりの学びを大事にしたい、そして学校現場で共に学び合う環境を大事にしたいと考えています。
「夢と生きる力」を育むため、「学ぶ力」と「読み解く力」を向上させるべく、これまで取組を進めてきました。今回、新たに盛り込もうとしているワーディングで、皆様、気になられたかもしれませんが、「愛」という表現を使っています。最近、知事は、滋賀県は、教育において何を大事にするのか、と問われた際に、「愛」ではないか、という言い方をしています。「愛」をもって、滋賀の教育を作っていくことも、次の教育大綱の中で表現したいと思います。
その上でこれから県民の皆さん、そして代表者である県議会議員の皆さんにご説明する際に、気をつけるべき視点をいくつか申し上げると、一つは、成果を3点、課題3点をまとめていただいていていますが、それぞれ成果、課題として考える理由をわかりやすく表現することが必要であると思いました。
次に、ICTの活用法はこれからもより進めなければなりませんが、先ほど石井委員がおっしゃったように、手段と目的を履き違えて、学校の先生方が戸惑う状況をできるだけ早く払拭して、豊かな学びのために、豊かな人生のために有効・有益であるということを、もっと我々が得心して、表現できることが必要だと思います。
また、重視すべき観点の4点目に「高等学校段階での学びの充実」についてあげていますが、次期教育大綱の期間中に、高等専門学校の開校を予定して準備しているところでございますので、このことについても入れていきたいと思います。ここでは、「課題を見つけて解決に向けて考え行動する教育の展開」と書かれていて、聞いただけで取り組むのが嫌になってしまうような表現になっていますが、「それぞれの夢を実現する」ような、前向きな捉え方ではどうでしょうか。「課題を見つけて解決する」といったことも大綱には書かなければならない、大人は言っていかなければいけないのかもしれませんが、子どもの目線に立つと重い印象を受けました。
最後に、「教職員の資質能力向上」についても、この表記は大事だと思いますが、先生方の学び、能力向上を応援してあげるようなことも、併せて書けると良いと思いました。
(福永教育長)
ありがとうございました。皆様から様々なご意見をいただきました。
それでは、教育大綱の方針としては、この案で進めさせていただき、今いただいたご意見を大綱の中に盛り込んでいくということで、よろしいでしょうか。
それでは、本日の協議を踏まえまして、引き続き次期教育大綱の策定に向けて取組を進めてまいります。あわせまして、滋賀県教育振興基本計画としても、近々設置を予定する審議会に、本日ご議論いただいた方針に基づいて諮問をすることとして、取組を進めてまいりたいと考えております。
それでは続いて二つ目の議題、「子どもたちの学ぶ力の育成について」に移らせていただきます。ここから、文部科学省初等中等教育局教育課程課の常盤木課長様にオンラインでご出席いただきます。常盤木課長様、よろしくお願いいたします。
進行につきましては、まず常盤木様からご説明いただき、その後事務局からの説明、本日のゲストスピーカー角先生、藤川先生からの発表を踏まえて、意見交換をさせていただきます。
それではまず、文部科学省の常盤木課長様から、「令和の日本型学校教育」についてご説明をいただきたいと思います。
よろしくお願いいたします。
(文部科学省常盤木教育課程課長)
皆様、こんにちは。文部科学省教育課程課長の常盤木でございます。よろしくお願いいたします。
まず、三日月知事、福永教育長をはじめ滋賀県の皆様、平素より文部科学行政にご理解ご協力いただきまして、大変ありがとうございます。また本日は、大変貴重な機会をいただきまして、感謝申し上げます。それでは説明に移らせていただきます。
今回、滋賀県教育委員会の皆様から、令和の日本型学校教育について、国ではどのように考えているのか、また個別最適な学びとはどのような考え方なのか、詳しく説明してほしい、また先進事例があれば教えてほしいとのオファーを受けました。その観点からまとめております。
<資料1ページ>
こちらにございますとおり、令和の日本型学校教育は端的に、全ての子どもたちの可能性を引き出す「個別最適な学び」と「協働的な学び」が一体的に充実した学びが実現されたものであると言っております。
その前提となる、「令和の」の後ろに付いている「日本型学校教育」についても、国として整理をしておりまして、それが資料の下の部分でございます。
学校が学習指導のみならず、生徒指導等の面でも主要な役割を担い、様々な場面を通じて、子どもたちの状況を総合的に把握して教師が指導を行うことで、子どもたちの知・徳・体を一体で育む教育のことでございます。
すなわち、ここに掲げております学校教育の本質的な役割につきまして、「学習機会と学力の保障」、これは当たり前だと思いますが、「社会の形成者としての全人的な発達成長の保障」、また「安全安心な居場所・セーフティネットとしての身体的、精神的な健康の保障」ということも含めた学校教育を想定しているのが、日本型学校教育でございます。こうした学校に対する考え方については、今後も国の教育行政のベースになっていくと考えております。
単純な外部への切り出しは、受け皿の問題もあり、また経済事情などの環境によって格差が生じかねないため、行うべきでないと考えております。特に義務教育においては公教育としてあってはならないことですので、民間の活用は大いにしていくべきですが、学校に繋がっていく、公に繋がっていく形で行っていくべきだと考えております。
全人的な発達という学校の役割が「日本型学校教育」であり、そこに「令和の」という文言が付いているわけです。
<資料2ページ>
赤字で記載した部分についてご説明します。
「令和の」としていますので、ICT等の活用が関連してまいりますが、最初に「個別最適な学び」について説明いたします。
これはその名の通り、全ての子ども一人ひとりの興味・関心、発達や学習の状況等に合わせた学びです。
先ほどの議論でもありましたが、学習者主体という目線がこの言葉に繋がると思っています。子どもに応じた重点的な指導や、特性、学習進度、学習到達度等に応じて、指導方法・教材・学習時間等の柔軟な提供や設定を行うこと、また、子どもが自分の学習の状況を把握して、学習を調整していくことが、個別最適な学びの意味であり、イメージが湧きやすいと思います。
ただ、これには留意点もあります。「個別最適な学び」が「孤立した学び」に陥らないようにすることが必要です。
そのために「協働的な学びとの一体的な充実」という言葉に繋がっているのですが、この「個別最適な学び」を、単にAIドリルを与えて、個人のドリル学習のようなものとして捉えてしまうと、学習の個別化ではなく、孤立化に繋がってしまうと考えています。教材を与えていればよいという考え方に陥らないように留意することが必要です。
その場合には、この学習の前提となる意欲への働きかけが欠けてしまい、取り残される子どもが出てきかねないと考えています。
もう一点が、「協働的な学び」でございます。これは子ども同士の支え合い、学び合いの中で、一人ひとりの良い点や可能性を基礎に、異なる考え方が組み合わさり、よりよい学びを生み出す学びのことで、多様な他者の中で学ぶ、学校という場で生活を共にするからこその学びです。
他者を価値ある存在として尊重できるようになりますし、社会を形成していく上で不可欠な、人間同士のリアルな関係作りになり、学校に集まる意味といえるかもしれません。
ただこれも、集団の中で個の子どもたちが埋没してしまわないようにすることが留意点です。この部分は、これまでの画一的な教育、一律一斉の教育と同じ話かもしれません。
だからこそ、この「協働的な学び」だけではなくて、先に申し上げた「個別最適な学び」との一体的な充実が必要であるということです。
言葉で言うのは簡単ですが、なかなか難しいものだと思っております。これまでは、1人の先生に対して20人、30人、40人の子どもたちがいる中では、難しいのではないかと言われていましたが、令和の時代になって、強力な武器を先生や子どもたちが持つことができました。
GIGAスクール構想で導入されたICT機器等を、使いこなしていくことが不可欠になっていきます。これは指導者、学習者も当然ですし、校務、また教育行政にも当てはまると思います。
こうした中で、ICTを活用しないとできないという、強い意識を持つことが必要であり、併せて、働き方改革や人的支援にも繋がっていくと思っております。
ICTで、これまでの一斉授業ではフォローしきれなかった、一人ひとりの学び方の個性に対応するような教師の仕事をサポートすることができると思っています。
知事からもお話がありましたが、目的と手段を違うことなく、使いこなす中で、よりよい「令和の日本型学校教育」実現のための強力なツールとしてお使いいただくのがよいと思っております。その上で、一番下にあります一斉授業か個別学習か、履修主義か修得主義か、デジタルかアナログか、遠隔・オンラインか対面・オフラインかといった二項対立に陥るのではなく、いいとこ取りをして、すべて子どもをベースに、どちらが子どものためになるかという観点から、教育の質の向上のために、組み合わせて活かしていくことが、国としても進めていきたい方針です。
最後に二つほど、他県の先進的な事例をご紹介いたします。
<資料3ページ>
一つが、山形県の天童市立天童中部小学校です。
全体のおよそ2割の授業で、次にご説明するマイプラン学習、フリースタイルプロジェクトの名称で、子どもの個に応じた学習と、また協働的な学習の一体的な充実に取り組んでいます。
まずマイプラン学習について、左から2番目の画像は一つの単元について作られたペーパーですが、一つの単元について五つの段階を子どもたちに示し、8時間かけて取り組むと説明をします。
これを基にして子どもたちは、私は最初の時間はここまでやろう、次の2時間目はここまで頑張ろう、といったように、自分で学ぶ計画を立て、また学習を振り返りながら計画を修正して、学びを進めていくというものです。
学び方は様々です。写真のように、集団の中で学ぶ子どももいれば、個で学ぶ子どももいます。また教室を離れて、図書館等で学習することもできます。
1学期に一つの単元程度を、複数の教科に渡って行っています。
もう一つはフリースタイルプロジェクトですが、こちらは単元の計画などを示しません。学習方法に加えて学習内容も子どもたちが決めます。
もちろん何でも自由に決めるのではなくて、テーマ、内容を決めるときには、先生と相談して決めて、進めていきます。
総合的な学習の時間などを活用して、1年間で40単位時間程度、1学期で20単位時間程度実施されていると聞いています。
自分の得意や興味関心に基づいて学びの内容を決め、似たテーマを学習したい仲間もいますので、自分で気づかなかった自分に出会いながら、探究を充実していくというものです。
<資料4ページ>
もう一つは愛知県春日井市の数多くの学校で取り組まれているものです。
これは資料の一番上に記載していますが、1人1台のICT端末を効果的に活用し、同じ教室にいながら、様々な学びを常に実践することを心がけるという取組です。
子どもたちの状況は、教師が学習ログを収集分析することで、適切にフォローを行っています。一番左の写真は、一つの主要教科の授業ですが、集まって勉強している子どもや、一人で勉強している子ども、近くの子とペアになって2人で相談しながら進めている子どももいます。
中央の写真ではチャットなども活用しながら、学習を進めています。
右側の写真では、子どもが振り返りの中で、できたこと、わかったことを書き、先生がそれをリアルタイムで把握しているので、教師は子どもたちが学習した状況が全部分かります。
個別の状況、全体の状況がわかるので、個別支援や授業改善はこれに基づいて行いますし、わからないことがあれば、先生が直接その子どものところへ行って指導が行われています。
下にはデータを載せていますが、春日井市では、多くの学校でパソコンを使う頻度がほぼ毎日となっています。先生よりも子どもたちの方が高く、96%の子どもたちがほぼ毎日使っていると回答しています。
その結果、左側のグラフのように、1人1台端末がなかった頃と比較した場合に、勉強が楽しくなった、よくわかるようになった、自分のペースで進められるようになった、そして協働できるようになったと多くの子どもが回答しています。
「個別最適な学び」と「協働的な学び」が、まさに一体的に実現されている例だと思っております。
私からの説明は以上です。
(福永教育長)
ただいまご説明いただきました内容につきましてご出席の皆様からご質問等がございましたら、お伺いしたいと思いますがいかがしょうか。
特に皆様からご質問等ないようですので、文部科学省常盤木様のご説明は以上とさせていただきます。
本日はどうもありがとうございました
(文部科学省常盤木教育課程課長)
ありがとうございました。
知事のおっしゃった愛を持った滋賀県の教育を進めていただければと思います。
今後とも何卒よろしくお願いいたします。
(福永教育長)
それでは続きまして本県における取組について、事務局から説明させていただきます。
(幼小中教育課長)
それでは、本県の「学ぶ力」と「読み解く力」の育成について、概要を説明いたします。
県教育委員会では本県の子どもたちの課題から、これまで「学ぶ力向上滋賀プラン」をもとに、「読み解く力」の育成を図り、「学ぶ力」の向上に向け取り組んできたところです。
特に取組の重点として、学びを実感できる授業づくり、学ぶ意欲を引き出す学習集団づくり、子どものために一丸となって取り組む学校づくりの三つの視点から取組の焦点化、重点化を図ってきたところです。
「学ぶ力」の向上につきましては、これまで指導主事の学校訪問での指導助言をはじめ、様々な取組を進めているところではありますが、本日は令和2年度に作成した「読み解く力」実践事例DVDに収められました授業の中から、野洲市立野洲小学校の角先生に算数科の授業実践を、そして米原市立伊吹山中学校の藤川先生から、英語科の授業実践を発表していただきます。どちらも子どもの生き生きとした学習に取り組む姿が見られます。
角先生の授業では、子どもたちが自分の考えを、図や式、表などを用いて相手に伝わるよう一生懸命説明する様子が見られます。
また藤川先生の授業ではディベートで話し合いをし、自分の考えを伝えたり、意見を聞いたりすることを通して自分の考えをより確かにする活動をされています。
どちらの授業でも子どもの主体的に学ぶ姿が見られました。
これまでの学ぶ力向上の取組に関する成果といたしましては、令和4年度の全国学力・学習状況調査の結果からは、資料の一部から必要な情報を引用したり、根拠を明確にして書いたりするなど、「読み解く力」関連の設問において、改善の傾向が見られました。
また児童生徒質問紙においても、小学校において、「国語・算数の教科の学習が大切だと思う」「将来役に立つと思う」といった項目では、肯定的な回答が90%以上でした。
さらに、「自分にはよいところがある」「難しいことでも失敗を恐れず挑戦する」とした子どもが増えつつあり、「友達と協力することは楽しいと思う」という設問に関しましては、小中ともに94%近くが肯定的な回答をしています。
教員の指導力における成果といたしましては、当課の調査では学校それぞれの課題を中心に据えながらも「読み解く力」の育成と校内研究を関連づけている学校が、小学校89%、中学校84%となっており、「読み解く力」の育成による「学ぶ力」の向上についての理解は進んでいます。
さらに、今年度の全国学力・学習状況調査の学校質問紙において、「授業において、子どもが課題の解決に向け、自分で考え、自分から取り組むことができている」といった設問では、肯定的な回答が小学校で88%、中学校で83%となっていることから、多くの学校で主体的・対話的で深い学びの実現に繋がる授業改善を進めていただいていると考えております。
課題といたしましては、基礎的・基本的な知識技能の習得が不十分である子どもに対して、学校や地域の実情に合った取組を全校体制で進める必要があるということ、小学校において記述式の問題に課題が見られたため、自分の考えをしっかりとまとめ、筋道を立てて、正しく書く取組を進める必要があること。また、「読み解く力」の視点に立った授業づくりのモデルプランの周知が進み、主体的・対話的で深い学びを意識した授業が増えましたが、さらに実践と研究を積み、日常の授業においてしっかりと取り組まれる必要があることが挙げられます。
さらに子どもがしっかりと自ら学びに向かえるよう、学校において支持的風土の醸成を図ることをはじめ、家庭や地域等の子どもを取り巻く環境をよりよいものにしていくことが重要であることから、引き続きそのような課題の整理や、関係機関との連携が必要であり、全ての子どもに学びに向かうための支援がしっかりと行き渡るよう、個々の子どもの見取りをしっかりと行う必要があると考えております。
(福永教育長)
それでは続いてゲストスピーカーの2人に発表をお願いしたいと思います。
まず野洲小学校の角先生から、ご発表よろしくお願いいたします。
(野洲小学校角教諭)
<資料1ページ>
野洲市立野洲小学校の角憲幸です。本日は、このような貴重な機会を与えて頂き、ありがとうございます。
<資料2ページ>
私からは、こちらの2つのことについて、報告させて頂きます。
1つは、「読み解く力」の視点を踏まえた授業づくりの取組や手立てについて、
もう1つは、その成果と課題についてです。
<資料3ページ>
まず、「読み解く力」の視点を踏まえた授業づくりの取組や手立てについてです。
「読み解く力」の視点を踏まえた授業において、(1)発見・蓄積、(2)分析・整理、(3)再構築の3つのプロセスに向かう前に、しっかりと子どもたちの目的意識を高めることが効果的な授業につながります。
私は、まず、授業の導入において、学習に対する目的意識を生み出すことに重点を置き、子どもたちが学習の目的を明確にすることで、課題を焦点化し考えを深められるよう配慮しました。
<資料4ページ>
例えば、私が担任した4年生の、算数「広さの表し方を考えよう」の授業では、目標の「面積(広さの表し方を考えよう)」を意識できるように、導入場面で「陣取りゲーム」を取り入れ、「面積」に対する子どもの興味・関心を高めることにつなげました。
同色の図形が、1人の子どもの「陣取り分」を表しています。さまざまな形の陣地を取り、その面積を求めることで決着がつきます。「陣取りゲームの勝敗をつけるために、正方形や長方形の面積を計算で求めたい!」、「面積を数字で表したい!」等、こどもたちの心に、「知りたい!」「学びたい!」の火をつけることができました。
<資料5ページ>
さらに、目的意識を生み出す方法としては、今までに学習した既習内容と本時の学習とのズレから子どもたちに「あれ?」「なんで?」を生み出し、目的意識を生み出すことに努めました。
A、Bの図形について、面積を表すには、それまでの既習内容で解けるのですが、Cの図形は子どもたちにとって新たな考えが必要となります。「今までと違うぞ」、「どうやって求めたらいいんだろう」等、子どもの声から本時のめあてを生み出し、学習することに必然性をもたせるよう配慮しました。
<資料6ページ>
次に、二つめの重点事項となる「分析・整理」のプロセスでは、子どもたちが多様な考えにふれ、自分の考えを広げたり深めたりする姿を目指して授業をコーディネートしました。
例えば、本時では、問題解決の方法を探るために、友だちと積極的に交流することを進めました。自力解決のときには手が止まっていた児童が、友達と交流することでヒントを見つけ、授業終盤には、みんなの前で自分の考えを発表することができました。
<資料7ページ>
また、別の授業では、左の写真のように電子黒板に、一人ひとりが自分の考えを表示し、各自が目的に応じて交流したい相手を選び、交流できるようにしました。
こうすることで、子どもたちが意図を持って話し合うことができるとともに、
「なるほど」、「同じだね」の言葉が自然と生まれました。多くの児童が、友だちから得た考えや情報をもとに、自分の考えを確かなものとすることができました。
<資料8ページ>
また、私は、「個」と「全体」を繋げる時間も大切だと考えています。本時では、様々な考えを仲間分けしたり、友だちの考えを他の児童が説明したりする場面を設定し、多様な考えに触れながら自分の考えを広げたり深めたりすることができました。
<資料9ページ>
さらに、個と全体をつなげる場面では、「発表できる」雰囲気づくり、関係づくりもとても重要と考えています。
児童の中には、恥ずかしいから手を挙げない子もおり、学級の中に安心して発表できる雰囲気がないと、学級全員参加の学び合いとはなりません。
そこで、私は、発表者の「話す力」とともに、周りの児童の「聴く力」も高めることで、対話の土台を作り、自分の考えを伝える児童を少しずつ増やすことができました。
<資料10ページ>
このように、私は、「分析・整理」のプロセスにおいて、友達との「学び合い」を重視したことで、自分自身のそれまでの授業スタイルを大きく変化させることができました。
以前は、「課題把握」→「自力解決」→「集団解決」→「適用問題」というような、一斉授業のスタイルに終始することが多かったですが、「分析・整理」のプロセスにおいて、「学び合い」を重視したことで、友達から得た考えや情報をもとに、判断・選択し、自力解決するなかで、一人ひとりの児童が自分の興味関心を広げたり、自分なりの自分に合った取組を進めることができました。
<資料11ページ>
それでは、これまでの取組の成果と課題について報告します。
まず3つの成果が見られました。
1点目は、「読み解く力」の視点を踏まえた授業が、児童の主体性を生み出し、多様な考えにふれることで、自分の考えを深めることができ、いわゆる「主体的・対話的で深い学び」につなげることができました。
2点目に、友達の考えにもふれながら、最終的には、個人の考えを深めることができ、「個別最適な学び」に通じることができました。
そして、
3点目には、友達と意見交流することを主とする、「読み解く力」の視点を踏まえた授業は、学習集団、学級集団としての高まりを生み出すことができました。
<資料12ページ>
また、私が取り組んできて課題と考えていることもあります。
1点目は、中・長期の時間がかかるということです。「読み解く力」の視点を踏まえた授業では、児童間の関係性が大切で、まずは、しっかりとした学級集団に高めていく必要があります。
また、2点目に、基礎・基本があってこその「読み解く力」であると思っています。子どもたちの、基礎・基本の定着を図るとともに、「読み解く力」の視点を踏まえた授業を展開するために、しっかりとした、単元計画を立てることが重要となります。
3点目の課題は、新しいことにチャレンジすることに対して構えている先生がおられることです。教師間で、取組をしっかりと共有することが必要です。
私の場合、同僚の先生方と、単元計画や指導案について共有し、子どもたちに対して共通の指導を行い、さらに、指導方法の改善を進めることができたので、今後は、「読み解く力」の視点を踏まえた効果的な授業を、校内全体に広げていきたいと考えています。
<資料13ページ>
最後になりますが、私自身、「読み解く力」の視点を踏まえた授業づくりに取り組んで、これまでの自分の授業づくりの考えを大きく変えるきっかけになりました。
また、この「読み解く力」の視点を踏まえた授業づくりを通して、学級の子どもたちを、「できた!」「わかった!」「学びたい!」と笑顔あふれる小学生へと導けたことは、私にとっても大きな自信となりました。
その意味で、読み解く視点の授業を通して、「小学生」を、「笑学生」へと導けたことは、私の理想へと一歩近づけた瞬間でもありました。
これからも、引き続き、子どもたちの笑顔のために自分の授業を改善し、進化させていきたいと思っています。
以上で、私の報告を終わります。
(福永教育長)
それでは続きまして伊吹山中学校の藤川先生から、ご発表をよろしくお願いいたします。
(伊吹山中学校藤川教諭)
<資料1ページ>
米原市立伊吹山中学校の藤川直子と申します。
2年間、滋賀県教育委員会や米原市教育委員会からのサポートをいただきながら、この「読み解く力」の研究に参加させてもらいました。
また、今回、このような発表の機会をいただけたことに大変感謝しております。
今日は中学校英語科における「読み解く力」の視点を踏まえた授業づくりを通しての成果と課題を発表させていただきます。
<資料2ページ>
今日はこのような流れでお話しさせていただきます。
<資料3ページ>
まず、年度当初に行った公開授業の様子を御覧ください。昨年度、私は2年生を担当しました。1年生では指導をしていなかった子どもたちだったのですが、学習集団づくりに課題を感じていました。
これは、英語で「話すこと」の授業なのですが、相手を気にせず、ただスクリーンの英文を読んでいるだけの生徒の様子がお分かりになるかと思います。語彙や文法の定着が不十分で、自己表現することに苦手意識を感じていたり、授業中の反応や発言も少なく、私にとっても、生徒にとっても辛い公開授業でした。
授業後、教科指導と学習集団づくりの両輪で日々の実践を行う必要性を強く感じました。
<資料4ページ>
そこで、「読み解く力」の視点を踏まえながら、よりよい「再構築」の姿を目指した取組を教科指導・学習集団づくりの両輪で始めました。取組は、大きく3つあります。
1点目は、「読み解く力」の3つのプロセス「発見・蓄積」「分析・整理」「再構築」を繰り返しながらよりよい「再構築」へと向かう授業展開です。
生徒がよりよい「再構築」を目指して、繰り返し学習に取り組むためには、明確な目的意識をもつことが大切だと考え、例えば、「ALTに自分たちのことをよりよく知ってもらうために、英語で伝える」といった、英語を使う必然性のある課題設定を心がけました。
また、生徒の様子に基づいて、できるようになった姿を価値づけたり、誤りへの気付きを促す中間指導を続けることで、生徒自ら発見、分析しながら、再構築の姿へ向かえるよう支援しました。
<資料5ページ>
2点目は、ICTの効果的な活用です。録画することで、自分が英語で発表する姿を客観的に見返すことができます。そして、よりよい「再構築」となるよう、発表内容を吟味し、自己調整を図りながら学習を積み重ねることができます。
また、原稿を書いてそれを暗唱するのではなく、ICT端末で示すグラフやイラストを頼りに、伝えたい内容を自分の言葉で伝えることは、今、外国語教育で求められている「即興性」につながります。
<資料6ページ>
3点目は全校体制での取組です。よりよい「再構築」を目指すには、安心して自分の意見が言える、意見を聞いてもらえる雰囲気が大切だと考え、職員全体で連携を図りました。
具体的には、校内研究に「読み解く力」部会を設置し、「再構築」している子どもの姿をイメージしながら、授業の組み立てを交流しました。
また、「再構築」につながる表現力を高める取組として、委員会ごとに、全校の前で発表する場を設けました。そこでは、聞き手を意識しながら、一生懸命自分の言葉で伝えようとする姿が見られました。
さらに、各クラスの朝の会で行っているニュース発表を工夫して行ったり、道徳や総合でも、ペアやグループ活動を取り入れたりすることで、互いの思いや考えを認め合える学習集団づくりを目指しました。
<資料7ページ>
継続的な実践を通して11月の公開授業では、「豊かな人間関係を通した学びの充実」が見られました。5月の写真に比べると、生徒同士の距離が近く、話し手は聞き手を意識し、また、聞き手は話し手が伝えたいと思っている内容に意識を向けながら聞いている様子が伺えます。
また、生徒たちの表情からは、学び合う楽しさやできる喜び、自信が感じられました。
<資料8ページ>
また、このような変容も見られました。
友達との学び合いを通して、よりよい再構築に向けて、粘り強く学ぶ姿。英語で伝える相手を意識して、自分の思いや考えを詳しく伝えようとする姿です。
「読み解く力」の視点を踏まえた授業づくりによって、ペーパーテストではかることができる「学力」だけではなく、豊かな人間関係に基づいた、全人的な「学ぶ力」の高まりが徐々に見られたと感じています。
<資料9ページ>
これは11月の公開授業の際に生徒が書いた振り返りです。
「相手意識をしっかりとした発表ができた」
「前の自分より、思いを伝えられるようになった」
「相手の興味をより引くように気を付けて表現できた」
このように、生徒たちの言葉からも、豊かな人間関係を通した学びの充実が感じられました。
<資料10ページ>
しかしながら、課題も感じています。外国語における資質・能力の育成については、よりよい「再構築」の姿になるまでにかなりの時間を要します。よって、図のような領域を統合しながら、長いスパンで「読み解く力」の視点を踏まえた学習過程を粘り強く繰り返す必要があります。
<資料11ページ>
さらに、生徒一人ひとりが「読み解く力」を発揮するためには、特定の教科だけでの取組では不十分です。教科や学年を越え、「読み解く力」について全職員による共通理解、共通実践が不可欠です。
具体的には、「教科を超えた校内研究」や「各教科等での実践」です。まだまだスタートラインに立ったばかりですが、今後もこれらの課題を解決するために、粘り強く授業改善に努めます。ご清聴、ありがとうございました。
(福永教育長)
それでは事務局と2人の先生方から、説明いただきましたが、その内容についてご質問等がございましたらお願いします。
特にないようでしたら、皆様と意見交換をさせていただく中で、お二人の先生方に対してご質問をいただきたいと思います。
それでは、これまでの説明また発表を踏まえまして、子どもたちの学ぶ力の育成の方向性につきまして、皆様と意見交換をしてまいりたいと思います。
学ぶ力の育成は次の教育大綱でも主要な事業になると考えておりますので、ご意見、ご質問をいただければ幸いです。
(土井委員)
ご報告を伺って、大変充実した授業づくりをしていただいていると思います。私が関心を持った点についてお伺いしたいのですが、角先生の資料10ページで、学び合いと自力解決が循環していて、おそらく教室の中でも自分で学ぶところと、みんなで学ぶところが出てくると思います。藤川先生のご説明でもそういう話が出ましたし、先ほどの常盤木課長のご説明にあった春日井市の取組でも、1人で学んだり、ペアやグループで学んだりする状態があると思います。
私はこういう形の授業が可能であれば、よいと思うのですが、子どもたちが自分自身で学んで、次に友達同士で学んで、必要があれば、先生のところへ聞きに行くということが、自然にできるようになるものなのか、それとも、先生方が、まずはこれするよ、あれをするよ、というように指示をしてやっておられるのでしょうか。最初は指示をするけれども、次第にできるようになるのでしょうか。
(野洲小学校角教諭)
小学校ですので、算数科以外の教科や、また朝の会でも取り組んでいます。
ご質問いただいたように、初めは、「こうするんだよ」と指示をして、段階を追ってやっていきました。そうすることで徐々に授業でも、「困ったから友達に聞きに行こう」とか、「先生にヒントをもらって、自分の考えを確かめよう」といったように、少しずつ力がついていったと思っています。
先ほど課題として発表させていただきましたが、時間がかかると感じています。
(伊吹山中学校藤川教諭)
中学校でも小学校と同様の取組をしています。
まずペアでやるときは、例えば縦の列をAペア横の列をBペア、斜めの列をCペアとして、いくつかパターンを作ってやってみよう、Bでやってみよう、Cでやってみようと、最初は指示を与えています。
子どもたちが慣れてくると、わからないときに、子どもから「ペアで聞こう」と言い出すこともあります。
みんなの意見を聞きたいときには、2人のペアを、4人のグループに広げるなどの工夫をして、何度も積み重ねることによって定着していったと思います。
また、中学校は教科ごとに担当教科が変わりますが、私は全校に発信するとともに、学活や道徳など、他教科や他の学習でも使えるような手段を、学校全体で作っていくことで、少しずつ子どもたちの間にも学び合いという形が浸透すると考えています。
(土井委員)
今回、「読み解く力」でまとめていただいていますが、私はそれが「学ぶ力」の基本で、大人になって働くことを含めて、人の活動は大体こういうものだと思います。
自分で取り組む中で問題が出てきた場合に、誰かと相談することで必要な解決を得て、また自分で取り組むということを、いかにうまくできるかが社会に出て生きていく力を高める上での学び方としては非常に重要で、誰かの話を一方的に聞いて、それを記憶して自分の能力を高めるだけの活動は社会にはあまりありません。
先生方がおっしゃったように、ある程度早い段階で指導することによって、子どもたちが自分の力でそれを処理していくことができるのであれば、できるだけ進めていけばよいと思います。
(岡崎委員)
非常に興味がもてるご説明で、実際の授業も見に行きたいと思いました。
この取組をされた際に、今までの授業のあり方を少し変えなければいけなかったと思います。先生方ご自身が一番悩まれた点や、授業を受ける子どもたちが困惑した点があるのではないかと思ったのですが、これまで取り組まれた中での悩みやお気づきの点があれば教えてください。
(福永教育長)
今までと授業の持ち方を変えたことで、子どもたちがどのように考えたり、反応したりしたかということについて、何かお気づきの点がありますか。
(伊吹山中学校藤川教諭)
例えば「分析・整理」における「気づきを促す中間指導」として、従来であれば、教員が「文法はこういうものだ。では、どこが違っているか」という解説をすることが英語指導においては多かったのですが、例えば生徒たちの誤りを含んだ英文を3点ほど紹介して、どのように直したらより良い英文になるか、子どもたち自身に気づきを促す指導展開にしました。
最初は先生が説明してくれないことに不安を感じる生徒もいましたが、回数を重ねることで、「あそこが違うのではないか」「やっぱりここが違うと思う」と、教員が示すのではなく、子どもたちが自分たちで気づいて、次に生かすことで、より定着にも繋がったと感じています。
一方で、教員が示しすぎないことで、不安になる生徒もいると思います。そのときは、他の教科でも同様ですが、振り返りシートというものを用意していますので、そこに子どもたちが気づきや不安を書くことで、それを教員がキャッチして、次回の授業の導入で話したり、個別にフォローするように心がけていました。
(野洲小学校角教諭)
子どもたち一人ひとりに自分の意見を持たせることが一番大事だと思っていて、それを待つことが今までで一番苦労しました。
ついつい喋ってしまいたくなるのですが、自分を押さえて、ぐっと我慢しながら授業をしました。
ただ毎回意識しながら授業することで、子どもたちが自分の考えをしっかり持って発表したり、自分の考えだけではなく、友達の考えの良さを見つけたりする姿が見られたので、学習集団として、とても素敵な学級を作れたのではないかと感じています。
(岡崎委員)
授業がなかなか進まないと、ジレンマがあって大変ですね。でも子どもたちが気づいた瞬間に、教室の雰囲気もきっと変わるのだろうな、見てみたいなと思いました。
藤川先生にお伺いしたいのですが、教室の中で、ああじゃない、こうじゃない、と言い出すような雰囲気はなんとなくイメージがつくのですが、その反面でどうしても参画できない子どもも多いのではないでしょうか。今までの教育で育ってきた子どもたちが、中学2年生になって突然授業のあり方が変わることについては、どうでしょうか。
(伊吹山中学校藤川教諭)
ご質問いただいた通り、スライドの写真も見ていただきましたが、最初はなかなか大変な状況からスタートしたのが事実です。
そのため教科だけではなく、例えば本校では朝の会のニュース発表で、1人30秒ずつ毎日ニュースを発表する取組があるので、まずはそこで人の前で話すことに慣れる。2学期には発表時間を30秒から1分に増やしてみる。次は1分話した後に一つだけ質問をしてみるといったように、様々な教育活動の中でスモールステップでの取組を重視しました。
朝の会や道徳の授業でペア活動を増やすなど、少しずつ慣れることによって友達と学び合う雰囲気や、話を聞いてもらえる、自分のことを話していいのだという、豊かな人間関係も大事に作っていきました。でもクラス全体の中で手を挙げることについては、やはり苦手意識を感じている子どもも多いので、今後も粘り強く取り組んでいきたいと思います。
(岡崎委員)
ぜひ頑張っていただきたいと思います。
最後に角先生にもう1点伺いたいのですが、今回のような勉強の仕方に取り組むのは、4年生ぐらいが適切なのか、それとも1学年下げた方がいいのか、お気づきの点あればお聞かせください。
(野洲小学校角教諭)
小学生1年生から6年生まで発達段階がそれぞれ違うと思いますが、昨年度は4年生を担当させていただいていて、その前は5年生でした。
この「読み解く力」のプロジェクトで一緒に勉強させていただいて感じていることですが、どの学年でもできると思います。
先生方が何を意識するかによって、子どもたちは変わってくると思います。
(岡崎委員)
1、2年生は難しいと思い込んでいたので、良い気づきが得られました。ありがとうございます。
(石井委員)
お二人の素晴らしい取組と、プレゼンテーションに感心いたしました。
お聞きしたいのですが、課題として、角先生の資料で、課題として基礎基本の定着がベースであることを指摘されていますが、その点で、著しく劣る児童やグループが存在する場合、どのような配慮や指導をされているのでしょうか。
(福永教育長)
「読み解く力」のベースになる基礎基本は非常に大切ですが、その定着をどのように図っていくか、工夫されていることはありますか。
(野洲小学校角教諭)
普段の授業とは別に、計算や漢字の練習を行っています。また、学習した内容を振り返ったり、適用問題に取り組む時間を取ったりしています。
また「読み解く力」の視点を踏まえた授業づくりに当たっては、苦手な子どもも目的意識をもって参加できるように、ゲームや日常生活の経験、また今まで習ったことの復習を踏まえながら、「今回は何か違うぞ」と思わせるような工夫をしています。
また先ほど藤川先生からもありましたが、授業の中にペアやグループの少人数で話すことで、友達の意見を聞いて、「こうやって考えればいいんだ」と気付ける機会を設けながら、みんなを巻き込んで授業をしています。
(石井委員)
ご苦労が多いと思いますが、大いに期待しております。また新しいICTが活用できるのであれば、どんどん積極的に展開していくことを期待しています。
(福永教育長)
各市町でいろいろなソフトを入れながら、子どもたちが自身の学びの状況に応じて、基礎的な内容を反復練習できることも必要だと思います。
(野村委員)
角先生、藤川先生が取り組んでおられることに、他の先生方がどのように関わっておられるのか、そして関わっていただいたことによって助かったことがあれば教えてください。また、実践を同じ校内の他の先生方にもフィードバックする場所や機会が設定されているのか、教えていただきたいと思います。
(福永教育長)
学校内の他の先生方との関係で、工夫しておられることや、お気づきの点があればお願いします。
(伊吹山中学校藤川教諭)
伊吹山中学校では、今年度、私が研究に携わったこともあり、校内に「読み解く力部会」が設置されました。また県がそれをバックアップしてくださったこともあり、教員全体で、再構築、つまり自分の考えをより良いものにしている子どもの姿とはどういうものなのか、教科を超えて交流することができました。
また、授業を実際に見ていただくことによって、「英語ではこういう姿で「読み解く力」の再構築を目指している、では他の教科はどうでしょうか」、といったように、教科を超えて繋がれたことが一つの大きな成果だと思います。
またICT活用について、英語科での活用方法を紹介することによって、例えば体育であれば、動きを動画に撮って、それを小グループで見て分析整理することができたり、音楽のリコーダーで同様の取組ができたりするなど、その他の教科での活用例を全体で共有することによって、教員全体が、再構築に向かう姿について共通理解をして学習を進めることができたと思います。
(野洲小学校角教諭)
野洲小学校でも、まず自分自身が感じた良さを校内に広めたいと思いました。私は今年3年目になりますが、校内研究主任を務めておりますので、「読み解く力」の視点を踏まえた授業づくりを校内に広げています。
力をもった先生方がたくさんおられますので、この教科だったら、このように使えるのではないかと、いろいろな先生方と喋ることで僕も新たな発見をさせていただいています。
また自分自身が授業をした際の、具体的な子どもの姿や、授業のコーディネートの仕方を発信しています。
(福永教育長)
学校全体としての取組を進めていく必要があると思います。
(窪田委員)
お二人の発表をお伺いして、安心して発言、発信や発表ができるためには、スモールステップで取り組んでいくことが重要で、1年生なら1年生のやり方があるだろうし、中学校の3年間の中でもまた深まっていくのだろうと思いました。
スモールステップで取り組むために、いろんな機会を準備することが大事であることと、安心して発信、発表できるためには、聞く力や聞ける集団づくりの大切さをお二人それぞれの発表の中で、改めて実感しました。
新しいことへのチャレンジだと捉えて、構えてしまう教員もいる中で、その良さをそれぞれの立場で広げていきたい、またそのための取組もされているとのことでしたが、今までの教師が教える授業から、子どもたちが学ぶ授業に変わるためには、教師がファシリテートすることや、待つことも必要であるとの話がありました。それは今までの授業の仕方から、シフトチェンジしなければいけないということであると思いますが、お二人のお話を伺っていると、本来教師は、こういう授業をしたかったのではないかと感じます。
子どもたちが生き生きと学ぶ姿を見て、「こういうことを学んでもらうために、どのような導入をすればよいだろう」と、授業をしっかり考えることを、おそらくどの先生も、自分の願いとしてもっておられると思います。
私は大学教員として、滋賀大学附属特別支援学校でずっと校内研究に関わらせていただいています。自己肯定感や地域との連携など、様々なテーマで取り組んでいますが、今年、改めて授業づくりをベースに校内研究を進めてきている中で、先生方がすごく活発に対話をされます。
特別支援学校中学部の子どもの授業実践をテーマにした際に、小学部のときの子どもたちの状況を先生方が知っているということもありますが、「授業づくりは面白いよね」、「じゃあ自分の授業でどうしようか」と、とても先生方が生き生きと校内研究に参加されているのを見ていますので、先生方がこういう教材研究や授業づくりに、安心して時間を割けるための働き方改革が大事だと思います。
先生方がこういった実践をされる中で、例えばICTを柔軟に使えるようになればよいとか、こうすればもっと時間を取れるといったことがあれば、聞かせてください。
(福永教育長)
実際に取組を進めておられて、こうすればもっと子どもたちが生き生き学べるのではないか、そして先生方がもっとやりがいをもてるのではないかといったことがあれば、お聞かせください。
知事や私が聞くべきこと、また米原市長や米原市教育長、野洲市長や野洲市教育長に考えていただくべきこともあるかもしれません。何かお気づきの点があればお願いします。
(野洲小学校角教諭)
多くの先生が、子どもたちに何とか力をつけたい、子どもたちに、「わかった」「できた」と、笑顔で成長してほしいと考えていると思うのですが、どうしても時間がかかってしまいます。
夜遅くまで学校に残って、子どもたちのために準備をしている先生方がたくさんおられるので、時間が必要だと感じています。そのために支援の先生がいてくださると、とても助かると思います。
(福永教育長)
先生が先生でなければできないことに取り組むための環境の整備が必要だと思います。
(伊吹山中学校藤川教諭)
私も角先生と同じで、子どもたちと積極的に関わろうとすればするほど、授業づくりや部活動で一緒にいる時間を長くして、その後に資料づくり等をすることになってしまいます。もちろん自分ももっとタイムマネジメントをして効率的に働くことを心がけなければいけないのですが、サポーターの先生や、事務処理のサポートがあるとありがたいと思います。
あと、GIGAスクール構想でICTタブレットが1人1台支給されているのですが、実際に教室で使いこなそうとすると、接続がうまくいかなかったり、それぞれの教室にモニターが設置されていないために時間を要したりしてしまいますので、その辺りで力添えをいただけるとありがたいと思います。
(福永教育長)
ICTを使うときには、当然ICT環境が大事ですので、そこは教育行政に携わる者がしっかりと考えていかなければならない問題だと思います。
私から伺いたいのですが、中学校では英語教育でデジタル教科書を試行的に使用されると思いますが、その点については、感じておられることはありますか。
(伊吹山中学校藤川教諭)
デジタル教科書が導入されることはニュース等でも見ておりまして、本校でも2学期以降、ぜひ使っていこうと考えています。
生きた英語を実際に聞ける環境がありがたいと思います。もちろん今もQRコードが教科書に付いていて、タブレットで各自が読み取ることができますが、家庭学習としてタブレットを持ち帰ることができれば、さらに学びが深まると感じています。
(福永教育長)
大杉副知事から、ご意見やご質問がございましたらよろしくお願いします。
(大杉副知事)
お二人の実践は貴重な財産だと思います。子どもたちの主体性と先生方の意図性をどのように組み合わせていくか、こうやって試行錯誤しながら授業を形づくっておられる、その試行錯誤自体が、教育の質を支えていると感じました。先生方はどうしても試行錯誤を舞台裏だと言って見えないようにされてしまうのですが、大人の間では、もっともっと共有してもいいのではないでしょうか。これがまさに質を支えているということを、もっともっと共有していくための一つの貴重な財産をいただいたと思います。
今日、常盤木課長から実践の共有があった春日井市などは、その試行錯誤を支える仕組みが非常にしっかりしていて、先生方がICTの得意、不得意に関わらず、みんながオンラインで繋がっています。悩みがあって、これはどうしたらいいだろうとメッセージを送ると、市内の他の先生が助言してくれます。いろいろとやりとりをする中で、行政に言わなければならない事項があれば、校長先生が行政に伝えてくれるなど、先生方自身にそういった学びのオーナーシップがあって、試行錯誤を支える仕組みがあると思いますので、こういったことを広めていくにあたっては、そういう基盤と一緒に取り組んでいくのがよいと感じました。
それから、こういう授業をやると、やはり基礎基本との関係に向き合わなければならなくなります。「読み解く力」の育成の課題としても、基礎基本の定着が出てきていると思います。これは一つには、子どもが基礎基本に向き合おうとする意欲を、授業を通じて高めないと、「読み解く力」の育成に繋がらないことを、授業のメリットの一つとして発信していくことが必要であると思いますし、家庭学習との関係を考えた場合に、どうしても学校だけでは時間が足りないとすると、学習支援をしている様々な団体や、様々な学習支援事業との連携にもなると思うのですが、滋賀県における「学ぶ力」と「読み解く力」の育成の狙いを、学校だけでなく、学習支援を担ってくださっている方々とも共有する必要があると思います。
それが変に伝わって、ドリルをやればいいと誤解されてしまってはいけないので、様々な体験や活動の中でこういう力を培っていくという、関わり方や環境づくりを一緒に考えていけるようになればいいのではないかと思います。
(福永教育長)
基礎基本と向き合うことについては、様々な手法を考えていかなければならないと思っています。
先ほど大杉副知事がおっしゃったように、一つの学校だけではなくて、市内の他の学校と、全体として繋がる取組が米原にあればご紹介いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
(伊吹山中学校藤川教諭)
米原市では、昨年度ICT部会を作っていただき、ICTを効果的に使った授業の進め方について、発信と提案をしてくださっています。
また勉強会を定期的にアナウンスしてくださるので、そういう機会があるとこちらも学ぼうという意欲が出ますし、情報を得られるので、ありがたいと思います。
(福永教育長)
市全体の先生方がICTで繋がっていることも、必要なことだと思います。
(野洲小学校角教諭)
野洲市では保幼小連携や小中連携がありますので、そういったところで他の先生と繋がったり、子どもたちの現状や目指す姿について話したりする機会があります。
(福永教育長)
そういったプラットフォームのようなものを作って取り組んでいくことも一つの方法かもしれません。
それでは知事からご発言をお願いいたします。
(三日月知事)
角先生、藤川先生の発表を伺って、学校は楽しいな、先生はすごいなと思いました。改めてお二人の先生の意欲的な取組に敬意を表したいと思います。また、先ほどのやりとりの中で、角先生が待つことに苦労したとおっしゃったことや、藤川先生が自らの気づきを促すことが定着に繋がるとおっしゃった言葉は、実践、実体験の悩みに基づくお話だと思います。我々行政が全体を見るときにも、そういう視点は大事にしなければいけません。ついつい性急な結果を求めて、一部の数字だけで判断してしまうことを戒めておきたいと思います。
同時に、「小学生」が「笑学生」になりましたという言い方は素晴らしいと思いましたし、陣取り合戦で面積を表現してみると、子どもたちが目的意識を持つことに繋がりますよね。
藤川先生の最初のスライドで、白けた様子で生徒たちが画面を見ている場面がありました。あのときは汗が出たのではないかと思いますが、それを苦労しながら学習集団づくりに繋げていかれた過程は、お二人の先生にとって成長、学びの機会になっていると思います。
この「学ぶ力」の向上、そして「読み解く力」の向上は、私達自身が悩みながら進めてきたことです。
学力テストの平均正答率で、滋賀県が毎年低位に甘んじていることを、県民の代表者である県議会議員の皆様から御指摘を受けてきました。
もちろんテストの点数は、低いより高い方がいいのかも知れない、わからないよりもわかる方がいいのかもしれませんが、もっと大事なことがあると考え、「学力」の間にひらがなの「ぶ」をつけて、学力向上のためにも「学ぶ力」を向上させようと、平成27年に「学ぶ力向上滋賀プラン」を作って取り組んできました。
私自身も様々な子どもたちのテストや学校の様子を見て、やはり読めないといけない、読み解けないといけないと考え、「読み解く力」を高める取組をみんなで進めています。
そして校内研究などでお二人の先生をはじめ、様々な実践が出てきたことで、効果的な方法や、課題が徐々にわかってきましたので、これらをさらによりよく進めるために、例えば教育大綱の策定や、環境整備に取り組んでいきたいと思っています。
その中で、先ほども大杉副知事、また石井委員からもありましたが、基礎基本をベースにして、「読み解く力」の向上に繋がることを考えると、やはり先ほど教育委員会が示した資料3の一番下の課題にもありますが、子どもがしっかりと学びに向かえるよう、学校や家庭等の子どもを取り巻く環境をよりよいものにするために、課題を整理することや、学校の外の関係機関との連携が、とても大事だと思いますし、基礎的基本的な知識・技能の習得が不十分である子どもに対して、全校体制で取組を進めることの重要性を、改めて現場の取組とともに確認できたと思っています。
先ほどお二人の先生から、もう少しサポートがあればもっと子どもたちに向き合えると、控え目ですが、とても本質を突いたお話がありましたし、教室によって環境整備が整っておらず苦労することについては、福永教育長が現場の環境改善に取り組むと言ってくださっていますので、頑張って進めていきたいと思います。
お二人の先生、本当にありがとうございます。これからも頑張りましょう。
(福永教育長)
知事に本日の議論をおまとめいただきました。
子どもたちが、その目的意識を持って、なぜ今これを学ぶのかしっかりと受け止め、考えて学ぶことが大事だと思っています。あわせて、話すこと、表現力も大事ですが、人の意見をしっかり聞くことは、それ以上に大事だと思いました。
ただこういった取組は、一度に進むわけではありません。先生方から、スモールステップ、小さな一歩で、前に進んでいくというお話もございました。少し時間がかかるかもしれませんが、小さな一歩は、将来の大きな一歩に繋がると思っていますので、そういった取組を教育委員会あるいは学校現場だけではなくて、全ての県民の方々と一緒に取り組むことが大切です。
我々は我々の役割として、特に小中学校においては、19市町の首長、教育長の皆様としっかりお話をしながら、滋賀全体を高められるように取組を進めていきたいと思います。
それでは、最後に知事からご発言いただいたことを踏まえまして、本県教育の一層の充実に、一緒に頑張っていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
それでは以上で令和4年度の第2回滋賀県総合教育会議を閉会いたします。皆様におかれましては長時間にわたり熱心にご議論いただき、ありがとうございます。
本日はお疲れ様でございました。