令和2年2月5日(金曜日)午後3時から午後5時まで
県庁北新館5階5-B会議室
(1)幼児教育と小学校教育の連携・接続について
(2)令和2年度滋賀県総合教育会議の総括について
(福永教育長)
滋賀県教育委員会教育長の福永でございます。それでは、予定しておりました、時間となりましたので、ただいまから令和2年度の第5回の滋賀県総合教育会議を開会いたします。
総合教育会議につきましては、知事、副知事、教育長、そして各教育委員が参加し まして、滋賀の教育の様々なテーマについて、意見を交わす場としております。本日は5人のうち4人の教育委員会に御参加いただいておりますが、新型コロナウイルス感染症もございまして、オンライン参加となっておりますので、よろしくお願いいた します。
それでは本日の議題でございますが、御手元の次第にありますように、幼児教育と小学校学校教育の連携・接続について、意見交換をさせていただきたいと思っております。
あわせまして、今年度最後の総合教育議会でございますので、総括についても、意見交換を行ってまいります。まず本日のゲストスピーカーとしてお越しいただいた皆様を御紹介させていただきます。
ゲストスピーカーといたしまして、岐阜聖徳学園大学の西川正晃教授にお越しいた だいております。
西川先生におかれましては、議論の進行に合わせて、専門的な知見から御意見やア ドバイスをいただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
あわせまして本日は、東近江市立五個荘小学校の藤田里恵先生、そして東近江市立 さくらんぼ幼稚園の新麻維子先生にお越しいただいております。
藤田先生と新先生には、県教育委員会が取り組んでおります、学びに向かう力推進 事業の指定をさせていただき、学校と幼児園で様々な取組をしていただいておりま す。その内容について、御紹介をいただきたいと考えております。どうぞよろしくお 願いいたします。
さて会議に入ります前に、教育委員の皆様方は画面越しになりますが、こちらに掲 示しております会議名の横断幕を、東大津高校の書道部の生徒の皆さんに制作をして いただきました。制作に当たりましては、普段書道部の活動では使うことの少ない楷 書体で、誰にでも遠くからでも読みやすい横断幕となるように工夫をしていただいた ところでございます。
総合教育会議におきましては、こうした生徒の皆さんの作品を紹介しながら開催し てまいりたいと思っておりますのでよろしくお願いします。
それではまず、開会に当たりまして、知事から御挨拶をお願いします。
(三日月知事)
どうも皆さん、ありがとうございます。今日もよろしくお願いいたします。
土井先生、岡崎先生、野村先生、窪田先生、今日はウェブですけれどもよろしくお 願いします。
また、西川先生、藤田先生、新先生、お忙しい中お越しいただいてありがとうござ います。幼稚園や保育園から、小学校にどのようにつなげていくのかというのは、大 変重要な課題でございます。
私も知事になって以降、義務教育年限をもう少し長くすることが出来ないのだろう かということを、教育委員会に投げかけながらですね、議論や研究をしていただいて いるところでございます。同時に小学校に入る前の段階からも、人権に対するいじめ というものが起こることがないように、起こってしまっているとするならば、それを できるだけ早くつかんで、お互いがお互いをいたわりあい、傷つけ合ってはいけない んだよということを、教育として、学びとしてこれを大切にしていく。何より、そう いったことで、嫌な思いをする子どもたち、傷つく人たちがないように、私たちがし っかりと取り組んでいくことが、肝要だと考えます。
後ほど紹介があると思うのですけど、この「学びをつなぐ幼小接続ハンドブック」、 これはとてもいいものを作っていただいていると思っています。教育委員会の皆さん に感謝しているところでございまして、後でこういったことをどう生かしていくのか ということについても、皆さんと議論を深めていきたいと思っているところでござい ます。私たち大人にとっても大変大切な学びがこの中にあるのではないかと思ってお ります。ぜひそういった視点からも、大事にしていきたいと思っております。
今日は限られた時間ですが、最後までよろしくお願いします。
(福永教育長)
ありがとうございます。
それでは早速でございますが、議事に入りたいと思います。初めに議題1、幼児教 育と小学校教育の連携・接続でございます。
議論の進め方といたしまして、まず、県教育委員会事務局から、県での取組状況に ついて説明をした上で、東近江市の五個荘小学校、さくらんぼ幼児園での取組につき まして、藤田先生、新先生から御紹介をいただきます。
その後、西川教授から御意見やアドバイスをいただければと思っております。
それではまず事務局から、幼児教育と小学校教育の連携・接続について説明をお願 いします。
(幼小中教育課長)
幼小中教育課の村田でございます。よろしくお願いいたします。
まず、私のほうからは、幼児教育と小学校教育の連携・接続について、県教育委員 会で取り組んでおります内容等につきまして御説明をさせていただきます。
県で取り組んでいる事業につきましては、一つ目に、新規採用教員の研修、初任者 研修に係る連絡協議会でございます。
幼稚園、認定こども園と、希望される保育所の新規採用者の研修に係る協議会を行 っているところでございます。
二つ目に、毎年春と秋に行っております園長等運営管理協議会でございます。子ど も・青少年局と私学・県立大学振興課からも、市町の担当課を通じて、認定こども園 や、保育所、私立の幼稚園等に開催案内を通知してもらいながら、近年は、認定こど も園の園長先生や保育園長先生の参加がどんどん増えているというような状況でござ います。
三つ目に、教育課程および教育課題研究協議会です。例年、文部科学省から出され る協議主題に基づいて市町の幼児課から推薦されて幼稚園や認定こども園からの実践 発表を受けて、協議したり、講師先生の講義を聴いたりして参加者が学んでいます。
いずれも子ども・青少年局等と連携し、幼児教育の質の向上に向けて取り組んでい るものです。こういった協議会においても、幼児教育と小学校教育の連携・接続につ いて合同で研修を行っています。
また、幼児教育と小学校教育の連携・接続の推進に向けましては、 「学びに向かう力 推進事業」を立ち上げて、実践研究に取り組んでいます。
この事業は、幼児期と小学校の円滑な接続を意識した系統的な指導や教育課程の編 成・実施を目指すとともに、それを通して、子ども一人ひとりが自ら進んで課題に向 き合い、解決することができる指導方法について実践的に研究を推進することにより まして、子どもたちの学びに向かう力の涵養を図ることを目的に実施しているもの で、今年度で6年目の取組となっております。
令和2年3月、昨年度末には、これまでの取組の成果をもとに、先ほど知事の方か ら御紹介をしていただきました、幼小接続を推進するためのハンドブックを作成し、 配布しているところでございます。少し内容を紹介させていただきます。幼小の接続 については、スライドに出ておりますように、幼児期の学びの芽生えを児童期の学び の基礎へとつなぐ、言い換えますと、遊びを学習に滑らかにつなぐということが大切 であると考えているところでございます。
また、接続の第一歩として大切なのは、1年生はゼロからのスタートではないとい うことです。見ていただきますと、小学校教育を幼児教育からの延長と考え、幼児教 育での学びを小学校教育につなぐことが重要と考えております。スライドにあります ように、三角形が並んでおりますけれども、ゼロからのスタートを考えると左側のような形になります。これを円滑な接続をすることによってその三角形がうまく、大きくつながっていくのではないかという考えのもとに、円滑な接続をしております。幼 小の接続を滑らかにすることにより、子どもたちの成長がより確かなものになるので はないかと考えております。
そのつなぎを実現するために視点が必要ということになりまして、真ん中の部分、 「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」 、 「10 の姿」とも言います。少し拡大します。真ん中の部分が、この幼児期と児童期をつなぐということで、幼児期の終わりま でに育ってほしい姿ということでございます。さらにその 10 の姿と申しますが、その 具体が次のスライドになります。こういった視点で、遊びの中にある学びを見取り、 小学校での指導につなげることを目指します。
そのためには、互いの教育、保育や授業について、相互理解がとても重要になりま す。
特に小学校の先生方におかれましては、幼児教育をしっかりと理解していただい て、幼児が遊んでいる様子から学びを見取れるようになり、その学びを踏まえた、カ リキュラムや授業を考えていくことが大切だと思いますし、また、幼児教育において は、10 の姿を先生方が念頭に置いていただいて、一人ひとりの発達に必要な体験が得 られるような状況をつくったり、必要な援助を行ったりすることが大事と考えており ます。そこで、本年度はこの取組をより推進するために、 「学びに向かう力推進事業」 では、指定校に担当の先生を配置しまして、15 時間程度、幼稚園や認定こども園へ行 き、保育に参画したり、幼稚園や認定こども園の先生方と一緒に保育の準備に取り組 んだりしながら、幼児教育についての理解を深め、幼稚園、認定こども園と小学校の 相互理解を進めるかけ橋の役割を担っていただきつつ、相互理解を基にした幼児教育 と小学校教育をつなぐ「接続期カリキュラム」を作成するという取組を行っていただ いているところでございます。この後は、今年度の指定地域の一つであります、東近 江市立五個荘小学校および東近江市立さくらんぼ幼児園における取組について、先生 方から御紹介していただこうと思います。よろしくお願いします。
(福永教育長)
ありがとうございました。
それでは、続きまして五個荘小学校の藤田先生と、さくらんぼ幼児園の新先生か ら、現場での実際の取組について御説明をいただきたいと思いますので、よろしくお 願いいたします。
(藤田教諭)
これから説明をします。
東近江市の五個荘地区には、1中学校、1小学校、3園あり、これまでも校区内で 連携をしながら、教育を推進してきました。
さくらんぼ幼児園と五個荘小学校の合同研究テーマは「自分で考え行動する力を育 む保育や授業の在り方~考えや思いを伝え合い、主体的に学ぶ子どもをめざして~」 です。
このテーマは、五個荘中学校区の幼児園、小学校、中学校 15 年間の子どもの育ちに ついて交流してきた中で、子どもたちの実態から考えました。
まず、担当教員の勤務についてお話しします。月・火曜日は、さくらんぼ幼児園で 勤務しています。5歳児教室を中心に、幼児園の先生方と一緒に保育や打合せを行 い、研修に参加することもあります。水・木・金曜日は、五個荘小学校で勤務してい ます。1年生教室を中心に、子どもたちの支援に入り、学年会や打合せにも参加して います。
担当教員として大切にしてきたことは、幼児園と小学校の互いの教育に触れ、遊び 方・学び方の違いや共通点を伝えるということです。
取組としては大きく3点あります。1点目は「子どもの姿を見取り語る会」の実施 や「遊びから見える子どもの学びの可視化シート」の作成です。可視化シートについ ては、のちほどお話しします。
「子どもの姿を見取り語る会」では幼児園と小学校の教員が、5歳児の遊びの写真 から見て取れる子どもの学びを出し合い「学びをつなぐ幼小接続ハンドブック」の 3、4ページにあります「幼児期の終わりまでに育ってほしい 10 の姿」と照らし合わ せました。またその姿が、小学校のどの場面につながっていくのかを話し合いまし た。例えば、このような写真から、そこで交わされた子どもたちの言葉を考えて出し 合います。
このように、小学校の学習との関連について気付いたり、10 の姿を視点に子どもの 姿を分析的にとらえたりすることを通して、幼児園の遊びの大切さを認識するととも に子どもの学びの連続性を確認することができました。
2点目は、幼児園勤務での気付きや学びを幼児園と小学校の教師に知らせるという ことです。先生向けのお便りにして、幼児園、小学校それぞれの様子が分かるように 伝えています。また、幼児園では子どもの姿をこのようにドキュメンテーションとし てまとめ、保護者なども見られるよう掲示をするのですが、それを小学校でも掲示 し、幼児園での子どもの遊びにおける姿、学びの様子を小学校の教員が知ることがで きるよう、働きかけています。
ほかにも、幼児園の先生とは週2日の幼児園勤務の中で時間を見つけ、保育に対す る質問や子どもの様子について交流をしています。目指す子どもの姿が同じでも、幼 児園と小学校では時間や場所の使い方、学び方の違いがあり、子どもの見方も違いま す。お互いが、普段の幼児園や小学校の生活を知ること、教師の思いや願いを知るこ とが幼小接続の第一だと考えています。
(新教諭)
公開保育では、「子どもの姿を見取り語る会」で学んだ子どもの姿の見取り方を生かして子どもの様子を見ました。その中で、保育での環境づくりの工夫や子どもへの関わり方など学び合いました。
遊びの中では、友達との関わりが深まるように、年齢に応じて必要な用具を減らしたり増やしたりしています。5歳児では、友達と相談しながら用具の貸し借りができるように、意図的に減らしておくことで「次替わってね」「順番に使おう」など、友達とやり取りする姿があり、「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」の「言葉による伝え合い」「道徳性・規範意識の芽生え」「協同性」などの姿も見られました。
また、遊びに使う素材は、「こんなものが作りたい」という5歳児の本物思考を実現するために子どもと一緒に相談しながら準備しています。クリーム作りでは、水の量を加減しながら試したり工夫したりする中で、様々な硬さのクリームができることに気付いていました。自分たちのイメージしているケーキを作るために今までの経験を生かして「たくさん」「少し」と繰り返し水の量を調節していく中で、「自立心」「思考力の芽生え」「数量や図形、標識や文字などへの関心・感覚」という姿も見られました。
(新教諭)
公開保育では、「子どもの姿を見取り語る会」で学んだ子どもの姿の見取り方を生かして子どもの様子を見ました。その中で、保育での環境づくりの工夫や子どもへの関わり方など学び合いました。
遊びの中では、友達との関わりが深まるように、年齢に応じて必要な用具を減らしたり増やしたりしています。5歳児では、友達と相談しながら用具の貸し借りができるように、意図的に減らしておくことで「次替わってね」「順番に使おう」など、友達とやり取りする姿があり、「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」の「言葉による伝え合い」「道徳性・規範意識の芽生え」「協同性」などの姿も見られました。
また、遊びに使う素材は、「こんなものが作りたい」という5歳児の本物思考を実現するために子どもと一緒に相談しながら準備しています。クリーム作りでは、水の量を加減しながら試したり工夫したりする中で、様々な硬さのクリームができることに気付いていました。自分たちのイメージしているケーキを作るために今までの経験を生かして「たくさん」「少し」と繰り返し水の量を調節していく中で、「自立心」「思考力の芽生え」「数量や図形、標識や文字などへの関心・感覚」という姿も見られました。
ドッジボールの場面では、毎日保育者もクラスの一員として一緒に遊ぶ中で、どのようなルールがあると面白いかをその都度みんなで話し合いながら一つ一つ決めていきました。正式なルールにこだわらず、子どもたちが納得して遊びを進めていけるように、また自分たちで遊びを進めていく面白さが感じられるように、保育者は一緒に遊びながら見守っています。ボールの取り合いなどでトラブルが起きたときには、自分たちの思いをぶつけ合う中で、どうしたら遊びが進んでいくかを考え、友達と思い
を伝え合う姿があり、「言葉による伝え合い」「自立心」「道徳性・規範意識の芽生え」などの姿が見られました。「自分たちで解決したい」という子どもの思いと保育者の「きっと今の子どもたちなら解決できる」という思いの下、すぐに声を掛けず、自分たちで思いを伝え合いながら解決できるように見守ったり待ったりしています。そうしたことで、自分なりに解決方法を考えたり、相手の気持ちに寄り添ったりしながら言葉で思いを伝える場面が見られました。
毎日遊びに夢中になる中で、友達とトラブルになったり葛藤したりしながら日々子どもたちは成長しています。遊びの中で子どもにとって困ったことが起きた時は、その都度話し合うようにしてきました。子どもからの声を待ちながら、言葉で伝えられずに困っている様子が見られた時、保育者は一人一人の思いに寄り添い、一緒に伝え方を考え、自分たちで試行錯誤しながら解決できるように見守っています。また、クラスみんなでその日の遊びの中で楽しかったことや困ったこと、みんなに知らせたいことなどを自分なりの伝え方で話し合う「遊びのあとの振り返り」の時間を大切にしています。クラスみんなで驚きや発見を共有し、次の遊びへの期待や意欲につなげています。そうしてきたことで自分の思いを言葉で相手に伝えること、相手の思いを聞いて受け止めることで、伝え合う楽しさが感じられるようになってきました。
(藤田教諭)
小学校の生活科公開授業の様子です。「子どもの姿を見取り語る会」で学んだ子どもの姿の見取り方、幼児園の公開保育で学んだ幼児教育を1 年生の授業を通してさらに学ぶ機会となりました。「五個荘秋まつり~秋のたからもの大発見~」全22 時間の学習のうちの18 時間目です。
以前ペアになって遊んだ5歳児の友達を思い浮かべながら、さくらんぼ幼児園の友達が楽しめる遊びにしよう、をめあてに、相手意識と目的意識をもっての活動です。
「話し合う→もっとよくする→振り返る」の流れで45 分間活動しました。
この学習では、幼児園でつけてきた10 の姿の中の「協同性」「思考力の芽生え」「言葉による伝え合い」の力が関わっています。
さらに合同研究テーマと関連して、次の3点で子どもの成長が見られました。
1点目は、自分たちで作ったおもちゃに改良を重ね、秋の自然物や材料を試したり吟味したりして試行錯誤しながら納得のいくおもちゃを作ることができました。
2点目は、伝え合い交流する場面です。クラス全体で伝え合う時間、グループで伝え合う時間など交流する人数と場所を変え、一人ひとりの子どもたちが伝え合う活動に集中できるようにしたり毎時間の学習で感じたことや考えたことを交流する時間をとったりしたことで、自分の考えと友達の考えを合わせたり比べたりしながら、さらに考えていけるようになりました。また備品を用意しすぎないことで、子どもが試行錯誤し、伝え合う姿が見られました。
3点目は、振り返りです。授業者は振り返りの方法について悩んでいたので、指導案検討会で幼児園の先生方から5歳児の遊びの振り返りの様子について聞くことにしました。
5歳児の遊びの振り返りは、自分がした遊びについてみんなにお話ししたり、作ったものを見せて説明したりしているということを受け、このような経験を積んできた1年生にどのような振り返りがふさわしいか話し合いました。その中で、どの子にとっても分かりやすい振り返り、そして発表だけではない文字を使った振り返りをすると、1年生の子どもたちが持っている力をさらに伸ばしていけるのではないかと考え、プリントでの振り返りを毎時間続けました。顔マークと「今日のはなまる」の記述です。
幼児園の時の、言葉による伝え合いの振り返りに加えて、文字を使った振り返りの方法も取り入れ、発言することが苦手な子どもも自分の思いを表出できました。
また、伝え合うことを大切にしてきたことで、自分のことだけでなく友達にも目を向けて振り返ることが増え、充実感や次の見通し、やる気へとつながりました。
合同研究テーマである「考えや思いを伝え合い、主体的に学ぶ子どもの姿」が見られました。またそれは、「主体的・対話的で深い学び」を実感する子どもの姿でもありました。
このようにして迎えた秋まつり当日には、幼児園の友達の名前を呼びながら遊びに誘う1年生の姿が見られました。1年生の振り返りの絵日記には、「ペアの子が来てくれてうれしかったです」「今日は1年生で1番楽しい日でした」「次は、1日入学で会えたらうれしいです」などと書いてあり、達成感や充実感、そして自信があふれていました。
また、5歳児は受け身的なお客さん状態ではなく、知っているお兄さんお姉さんとの秋まつりに主体的に楽しむ姿が見られました。幼児園に戻ってからは、秋祭りで体験したことを生かし遊びに取り入れたり「1年生の魚釣り屋さんよりも、もっと本物みたいな大きい池を作りたい」「早く1 年生になりたいな」など思いを強めたり、5歳児の姿にも変化が見られました。
幼児園と小学校が互いの教育を知ることを大切にしてきた1年目の取組でしたが、小学校の教師の意識が少しずつ変わってきました。
これは、初めて6月に行った「遊びから見える子どもの学びの可視化シート」です。写真から見える学びの姿を黄色の付箋に書き、出し合ったものです。次に10 月に行った研修会でまとめた可視化シートです。
6月よりも10 月の方が付箋が増え、遊びの中の学びを見取ることができるようになってきました。
初めは、幼児園の子どもたちの遊びの様子を見ても、それを学びに結びつけることができず、こんな力を幼児園で付けてほしいという小学校側からの要望が多く出ました。
しかし、「子どもの姿を見取り語る会」で幼児園の先生方と交流し「幼児期の終わりまでに育ってほしい10 の姿」を意識して子どもの姿を見ることで、少しずつ遊びの中の学びに気付けるようになりました。また、幼児園の先生方がどのような思いや願いを持って子どもたちと関わっているのかを知り、目指す子どもの姿を改めて共有することができました。
5歳児も1年生も、子どもたちは自分の遊びや生活の中で生まれる必要感から「知りたい」「やりたい」という気持ちをもち、主体的に自分で考え行動する姿が見られました。
つまり安心できる人・場所・ものの中で自信をもって自己発揮できることが分かりました。そのための手段として、伝え合うことの大切さを実感しました。
週2日の幼児園勤務や研修で子どもの実態を把握し、また、9月に5歳児にとったアンケート結果を生かしカリキュラム作りをしています。アンケートでは小学校へ行くことへの期待と不安があり、特に経験のないことに不安をもっていることが見えてきました。特に不安が大きいのは、登校・下校や給食当番、小学校の教師との出会いについてです。
これらのことから5歳児の思いや願いに寄り添えるよう、安心・自信・期待・好奇心をキーワードに五個荘地区全ての幼児園と小学校が一緒に接続期カリキュラムを作成しています。また、4月の週案を1年生の担任と共に作り直しています。
具体的には、4月の週案の中に幼児園で慣れ親しんできた歌や手遊びを朝の会や授業で取り入れたり、幼児園と小学校で共通の掲示物を貼ったりすることで安心感を持てるようにしました。
また幼児園のやり方を参考にすることで、自信をもって行動できるような声の掛け方や視覚支援も工夫しています。1年生はゼロからのスタートではありません。幼小の段差を滑らかにした接続にすることで、さらに子どもたちの力を伸ばすことができると思います。
そして子どもたちが自分との関わりの中で、必要感をもって学べるように生活科を中心とした合科的・関連的な指導を充実させたり時間割や学習活動を工夫することで集中力や好奇心が続くように考えました。
まだまだ作成途中であり、3学期の子どもの様子を見て変更していく点もあると思います。また年度末の引継ぎでは、新1年生が幼児園で力を付けてきた部分と小学で引き続き育てていきたい部分を把握し、毎年子どもの実態に応じて見直し学年経営案に生かしていく必要があります。
5歳児の子どもたちは、生活の中で小学校を意識し、遊びにもその様子が見られます。製作では、ノートや鉛筆、筆箱に加えランリュックも作りました。どの子も1生になることを楽しみにしています。
子どもたちが期待をもち、安心と自信の中で小学校生活をスタートできるよう、幼児園と小学校が一体となって取組を進めていきたいと思います。
(福永教育長)
藤田先生、新先生ありがとうございました。それでは、ただいま発表いただいた内容につきまして、西川先生からコメントあるいはアドバイスがございましたらよろしくお願いいたします。
(西川教授)
失礼いたします。岐阜聖徳学園大学の西川でございます。よろしくお願いいたします。
実は、昨日、この五個荘小学校にはせ参じまして、研究の1 年間のまとめを行っておられる会に参加させていただきました。よくやられたな、というのが率直な印象です。というのは、私も日本各地の幼小連携に関わらせていただいているのですけれども、ことごとくこのコロナ禍を理由に停滞しています。なかなかできない。その中でも、積極的に推進された先生方の意欲に敬意を表したいと思っております。
ただただやっているだけではなくて、私は、今回の五個荘小学校と幼児園の取組に、すごく期待をしているというか、新しいモデルを出していただけそうな気がしております。その良さにもつながると思うのですが、その根拠を来年度への期待も込めて2つ挙げさせていただきたいと思います。まず1 点ですけれども、これは今のお話
を聞いていただいたら分かっていただけると思うのですが、子どもから出発しているということです。
教育なのだから子どもがいて当たり前じゃないか、と思うのですけれど、こういった推進事業や研究会、研究指定というのは、やらなければいけない、というのが先に来る。例えば幼小連携ですと、いろいろなところで、幼小連携なのだから交流しようとか、接続カリキュラムをつくろうとか、とにかくその成果物を出すことが先に来て、年間でどこに交流活動を入れるか、とにかく期日までにつくらなければ、となる。それはすごく大事なことなのですけれども、そこが目的になってしまっているところがよくあります。
ところが、この五個荘小学校とさくらんぼ幼児園は、まず、じっくり子どもの姿を見ていきましょうと、この1年間で、コロナ禍でなかなか動きにくいのですけれども、こうした中で子どもの事実、子どもの学びを集積されたことは、次の研究につながっていくすごく大きなものだと思っています。例えば、今の発表では、先生方が園に出かけて、子どもと関わって、そこで生々しい、かわいいねというだけでは済まないような、いろいろな出来事を目の当たりにされ、子どもの事実に触れる。それを直感的に蓄えていくだけではなく、可視化シートを用いて、この子どもの遊びにはどういう意味があるのかということを読み解いておられる。
直感的に、経験的に、ただかわいかったということだけでなく、それを分析的に子どもの事実として見ておられる。「子どもの姿を見取り語る会」という時間をちゃんと設定されている。小学校の先生と幼児園の先生方が十分に話し合っていけるということが保障されているということです。
それから、今回の幼稚園教育および保育所保育指針の改定で、「ドキュメンテーション」という言葉が出てきました。これは平成28 年に文部科学省が、「子どもの記録として、ドキュメンテーションをやってはどうか」、というのを取りまとめで出したのが1番の出発だと思うのですけれども。
その先駆的な子どもの見取り方としてドキュメンテーションという手法を使って、それを作成するだけではなく、幼稚園の先生が小学校に掲示している。だから、小学校の子どもや先生や保護者も、その子どもの事実をまた見取ることができるということです。
ここまでして幼児期の子どもの姿を徹底的に共有されたということは、なかなかない姿です。これはすごく大きなことだと私は感じています。これが1点です。
それから、その子どもの姿を、単にすごいね、ということだけではなくて、同じ物差しで見ておられます。それがさっきから繰り返し、県の教育委員会の説明でもありましたけれども、「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」、いわゆる「10 の姿」というもので、小学校の先生も幼稚園の先生もそれを物差しにして子どもの事実を見ている。
例えば、よく笑い話であるのですが、小学校と幼稚園の先生が連絡協議会に行って、幼稚園の先生がすごいですよ、と言うと、小学校の先生はこの子は困りましたね、となる。逆に、この子はすごくいいでしょう、と小学校の先生が言うと、幼稚園の先生は、どこがいいんだろう、となる。
それはお互いの学校文化や園文化という文化でしか子どもを見ていないので、同じ物差しがなかった。ところが、今は「幼児期の終わりまでに育ててほしい姿」、「10 の姿」という物差しがあるので、そこをお互いがよく分かるように話合いができるということです。これを徹底して、この1 年間で蓄えられた子どもの事実、学びの集積が大量にあるわけですね。ここの五個荘小学校とさくらんぼ幼児園には。この蓄積を基に、今までだったら、交流活動しましょうとか、見栄えのいいことをして終わっているような研究もありました。接続カリキュラムをつくらなきゃいけないからつくる、見た目はきれいかもしれないですけれど、何か泥臭さというか、そこに子どもの息遣いや、そういうものが本当にあるのかどうか。
子どもが学びに向かっていくような、そのエネルギーを小学校が本当に受け止めているということ、そういうものを実現していく可能性を秘めた研究になるのではないかと、私は、2年目に、今からすごくわくわくしています。
私は、すごい可能性を持った研究だということを1 年目に感じています。
(福永教育長)
西川先生ありがとうございました。ここまで、東近江市での取組、そしてその評価等についてお話を伺いました。
ここからは参加いただいている皆様からの御意見を伺いたいと思います。
皆さんからは、御質問でも結構ですし、課題や、これをほかの学区に広げていくにはどうしたらいいのか等、様々な視点で御意見をお伺いできればと思います。
まず各教育委員の皆さんから、今のお話をお聞きになられて、御意見等ございましたらよろしくお願いします。
(岡崎委員)
本日はありがとうございました。幼児教育がすごく大切だということは、5年ほど前から幼稚園の先生方と関わることが多くて、その中で私もよく聞いています。自分も思い返してみると、やはりそうだなというふうに思っていました。
先ほどの幼小の連携の部分で、改めて気付かせていただいてよかったなと思ったのが、三角形が改めてつながるのではなくて、ピラミッドのように大きくなっていく、そのつながりを意識するっていうことの大切さを、今の御報告の中ですごく気付かせ
ていただきました。これが本当に求めていることなのだなというところを感じた次第です。
特にお聞きしたいと思ったのが、小学校の先生が園に行って授業を週に2日、参画されるという発表だったと思うのですが、その2日間はどれぐらいの時間ですか。例えば午前中とか、3時までとか、そういった時間で園に行かれていたのか、それとも授業の1コマくらいの時間を、園に行かれていたのか。どのような運用をされて、その抜けた間の小学校の授業をどうされたのか気になったので、まず参考程度に教えていただきたいと思います。
(藤田教諭)
幼児園には、週に2日、月曜日と火曜日、1日勤務ということで、丸々2日勤務しています。
小学校では加配教員ということですので、担任などを今年は持っていないので、じっくりと幼児園で、先生方と一緒に保育をしたり、打ち合わせや準備をさせてもらっていました。
(岡崎委員)
それでは御心配なところはなく、気持ちよく幼児園の方に行って、切り替えて幼児教育ができたということですね。
(福永教育長)
各委員の皆様、いかがでしょうか。
(土井委員)
非常に貴重な報告ありがとうございました。
五個荘小学校は確か昨年度、テーマは働き方改革でしたけれども、ふれあい教育対談でお伺いしました。とてもよい環境で教育に取り組んでいただいていると思います。
私もこれは非常によい取組で、広げていくべきだと思いますし、また継続していただいて、どういう成果につながるのか研究していただく必要があると思います。
そこで、教育委員としてお伺いしたいのは、1年間取組をしていただいて、これを各学校に広げていく、あるいは、まず五個荘小学校とその近隣の幼児園で継続していかれるときに、何が必要になるか。
今のままで、全部継続できると感じておられるのか、継続していくために、何か施策を講じていく必要があると感じておられるのか、その辺りについて御意見を伺わせていただければと思います。よろしくお願いします。
(福永教育長)
この取組を、来年以降続けていくためには、どういったことが必要であると感じておられるでしょうか。
(三日月知事)
何を言っていただいても結構ですので。
(藤田教諭)
やはり幼小接続ということで、5歳児の担任の先生、それから1年生の担任がどうしてもメインになっています。そこだけの取組ではないので、やはり小学校ならば1年生から6年生まで、幼児園でも園全体で取り組んでいきたいと思っています。
(西川教授)
それを目指したいと伺ったので、来年一緒にやっていく方法を考えています。
これまでの幼小連絡会や研究会ならば、年長と1年生の先生しか集まらないのですけれど、来年からは、0歳の先生から6年生の先生まで、やはり必要感をもっていきたい。
幼小連携で大事なのは、先生方のこの必要感だと思います。先ほど言いましたように、交流活動をやったら終わり、カリキュラムを作ったら終わりで、お蔵入りしてしまっては、全然機能しなくなってしまう。幼小連携しないと子どもたちは育たないよ、ということを根づかせないといけない。そういうところを目指しておられるところが、すごいと感じています。
(福永教育長)
土井委員、今のお答えについて、何かございますか。
(土井委員)
確かに、昨年お伺いしたこども園も幼小連携をされていて、そこでも学校文化がかなり違っていて、それぞれが理解しようという姿勢をもつことが大事だとおっしゃっていましたし、あともう一つは、勤務形態の関係から、多くの先生が集まる機会を持つことがすごく難しいと伺いました。
これは働き方改革にもつながるのですけれど、そういう時間をどのようにもてるかということがとても大事だし、もっと言えばそこに家庭が関わっていただかないと、なかなか理解が得られないということも伺いました。
(岡崎委員)
今の土井委員の質問と、藤田先生からお話があった、全体として関わっていきたいということの手助けとして、このドキュメンテーションが役目を果たしているのかと思ったんですが、それはどのような場所に掲示しておられたのか、また、子どもたちも見ていたのか、学校の先生方だけが見ていたのか、それとも、参観日等には保護者も見ていたのか、その辺りを教えていただければと思います。
(福永教育長)
藤田先生お願いします。
(藤田教諭)
ドキュメンテーションは、小学校の職員室のみんながよく通るところに、毎月掲示していました。
それを放課後に先生方が足を止めて見たり、そのほかにも加配通信といって、2日間の幼稚園勤務の様子を通信として、先生方に見ていただくという形をとっていました。
(福永教育長)
子どもたちや、保護者の方も見られる機会はあるのでしょうか。
(藤田教諭)
そこまでは見られていません。
(岡崎委員)
ありがとうございます。多分種まきは出来ているのだという感じがしますので、それが広がっていくことが理想なのだろうと思いました。
(福永教育長)
そのほか、いかがでしょうか。
(窪田委員)
今日は貴重な報告ありがとうございました。
ドキュメンテーションも丁寧につくられていて、ぜひ現物を見たかったなと思いながら聞かせてもらいました。
やはり5歳、6歳さんってすごく力をもっていますよね。自分たちで経験に基づいて、文脈もつくっていくし、自分の立場だけではなくて、相手の立場や気持ちになって、自分より年下の子だからここまでは手伝ってあげようとか、自分と対等だからやってあげるのではなくて、やり方を教えてあげようと考えることができる。その子どもたちが1年生になったときに、力をもっている子どもたちの集団として、小学校で受け止めて、こういった形で円滑な接続ができればいいと思います。新しいスタートだけれども、それまでの経験にしっかり子どもたちが自信をもって、手作りのランリュックを作る姿も、新しい世界でまたやっていくんだ、という思いなのだろうと感じました。
今日、お話をお聞きしていて、こういった取組をきちんと理解していないと、幼児教育が小学校の準備教育のような形で、ただ早めていけばいいということになりがちだと私も感じることがあるのですけれども、そこは対等に、お互いの良さや、今どのように子どもたちに響いているのか、そういうところを丁寧につなげてくださっていると感じました。
こういう取組ができるのは、公立の園と、公立の小学校で、どちらも市立であるというところが、大きいのでしょうか。滋賀県内で、民間の幼稚園やこども園も含めて、同じように進めていこうとしたときに、何か課題があるのか、やはり公立同士だからやりやすかったのか、その辺りで、感想があればお聞かせいただければと思いま
(福永教育長)
今回は東近江市立の園と学校での取組になりますが、例えば私立の保育園とこういった取組をしようとした場合に、必要なことやお気付きの点があればお伺いできますか。
(西川教授)
確かに1小学校に、公立だけでなくて私立の保育園から来ることがあると思います。例えばその場合は、距離が離れているから、連携できないということをよく聞きます。つまり、交流のことしか、頭にないですよね。
例えば先生方が、五個荘小学校が提案していただいたように、子どもの事実というものをしっかり見取っていく、そうすると子どもたちにどのような力が足りないか、見えてくるじゃないですか。そうすると、この力が足りないから育てていこうねと、その学区で、私立であろう公立であろうと、離れたところでも、また違う立場でも、やはり保育や授業というのは毎日のように行われるわけですから、それを充実していくということが、究極の幼小連携なんじゃないのかなと思います。それをこの五個荘では、来年、可能性を秘めてやっていかれるのではないかという話をしていました。だから、楽しみなんです。
もしかすると、成果として、今御質問いただいたような、民間の保育園であろうともやっていけるモデルになるのではないかと、可能性として感じております。
(三日月知事)
私立の保育園とも連携した取組はできそうですか。
(新教諭)
以前勤務していた校区は、私立の園もいくつかある地域だったのですが、私立の園と公立の園の職員が集まって話し合う時間をもてば、いろいろと共通理解して進めていけると思います。
(三日月知事)
そういう場を作ることができればですね。
(福永教育長)
野村委員のほうから何かございましたらお願いします。
(野村委員)
御説明ありがとうございました。
幼稚園と小学校が連携をするということで、関心深く聞かせいただきました。
小学校の先生が直に幼稚園に行かれて、2日間過ごされるということは、幼稚園の子どもさんたちを、間近で見ていただいて、触れ合いながら、その子たち一人ひとりの発達状況であったり、何か問題を抱えているかといったところも全て含んで、そのまま小学校と同じ目線で見られるというのは、保護者さんにとってもすごくありがたいことなのではないかと感じました。
素直にと言ったらおかしいのですけれども、そのままの成長で、そのまま小学校に行ける子もいれば、やはり変わってしまう環境の中で、どうしても小学校に入っていけない子どもさんが、出てくると思うのですけれども、そういったところも、担当の先生がいらっしゃることで、子どもにとっても、小学校に行ったときに、「あの先生知ってる」となることで、すごく安心できると思うんですね。
そういった面でもすごく良い取組であると思うのと、そして高学年の子にとっても、お兄ちゃんやお姉ちゃんとしての心の芽生えというのでしょうか、下の子を見てあげたり、思いやる心とか、そういったものも取組の中で、芽生えているのではないかなと感じました。
幼稚園の子も、小学校の先生がいらっしゃっていたのと同じように、小学校に行って「あのお兄ちゃんいたな。私を見てもらっていたな。」というつながりが、安心できるのだろうなと感じました。
感想ばかりになりますが、本当に良い取組で、全県で取り組めるようになれば良いなと感じました。どうもありがとうございました。
(三日月知事)
せっかくなのでお伺いしたいのですが、先ほど、年長組と1年生だけじゃなくて、例えば0歳児から小学校6年生までつながればいいのではないか、というコメントやお話がありました。その場合、先ほど西川先生のほうから、今回の五個荘の取組が良かったことの1つに、共通の物差しを持って議論できているというお話があったのですが、幼児期の終わりまでに育ってほしい姿、10の姿だけじゃない物差しというのも必要になるのですか
(西川教授)
まず物差しの件ですけど、それを見ていったときに、五個荘はどの力が弱いかということもしっかりと描き出しておられます。
まだ、可能性として他の物差しが出てくるかもしれませんが、この1年間については、やはり、この幼児期の終わりまでに育ってほしい姿というものがあったから、この姿が弱いよね、ということが話し合えたのだと思います。
具体的にどの姿が弱かったのか、しっかり把握されています。それを基に鍛えるのは5歳と1年生だけじゃないですよね。育てていかなければいけないのは0歳から6年生までですよね。
そこを共通理解して、授業や保育の中でその力をさらに高めていくために頑張りましょうという1年になればいいなという話をされたのだと思います。
(藤田教諭)
一番初めにテーマを決めるときに、やはりこれは幼小だけではなくて、中学校区の子どもたちの課題っていうのを、見ていかなければいけないのではないかということを話し合いました。五個荘地区は小学校1つ、中学校1つということで、そういった見取りもしやすいのではないかということもあるのですが、1人の子どもには0歳からの積み重ね、連続性があって社会人になっていくので、5歳児と1年生の子どもだけではない五個荘地区の子どもということを考えるときに、自分で考え、行動する力を付けたいということで、「10の姿」で言うと自立心、それからサブテーマにもあるのですが、思いを伝え合うというところをみんなで意識していければと思っています。
(三日月知事)
そういうお考えや取組を伺って、とても大事だと思います。
1年生と年長組さんをつなげる幼小接続だけじゃなくて、0歳児からいこうじゃないか、6年生までいこうじゃないか、いやいや、中学生も見てあげたいねというものは、確かにそうだと思います。
その場合、小学校の先生が、保育園、幼稚園に乳幼児を見に行く方がいいのか。幼稚園、保育園の先生が、小学校、中学校へ行って、1年生だけじゃなくて、5年生、6年生も見に行った方がいいのか。
限りある教育資源、時間をより有効に使おうと思うと、どっちのほうにまずは広げるべきでしょう
(藤田教諭)
今年はこういう立場でどっぷりと幼児園に行かせてもらえたので、私は小学校の教師が幼児園の生の姿、ありのままをまず知らないと進んでいかないと感じています。
今年は担当という立場で、本当にどっぷりと行かせてもらえたのですが、1年出させていただいて思ったのは、私だけじゃなくて、みんなが幼児園に行くことができれば良いと思っております。
1時間とか、午前中だけではなくて、長い期間行ければいいと思います。
(三日月知事)
みんなというのは、1年生の先生だけでなくて、高学年の先生も、できれば中学校の先生もですか。
(幼小中教育課長)
この事業を始めるときに、今、知事がおっしゃったように、小学校から幼児園を見に行くのか、幼児園の先生が小学校を見に行くのか非常に悩みました。
やはり、ありのままを受けるということを考えると、小学校の先生が今の園児の生の姿を見ることが大事ではないかと思いました。
今までも事業はやってきましたけども、指定はしていても、交流が限られている状況でした。今回いろいろと先生に1番苦労していただいているのですが、加配という形で中に入っていただくことで、本当にその姿が分かって、この地域の子どもたちをどうつないでいけば、お互いにとって一番いいのかが見えてくれば良いなということで、そんな思いで取り組んでいただいています。
(三日月知事)
当面、それを重点的にやりますか。
(幼小中教育課長)
そうですね。今こうしてカリキュラムを作っていただきましたので、それが地域に合うかどうか、当たり障りのないカリキュラムではなくて、この五個荘地域に1番良いカリキュラムをつくっていただきたい。
それによって、他の園でも、それならば自分でも見ないと分からないよねという話になって、カリキュラムを作っていただくのが、1番いいものができるということだと思います。
(福永教育長)
條副知事、何かよろしいですか。
(中條副知事)
ありがとうございました。感想になってしまうのですけれども、野村委員もおっしゃっていたのですが、幼児園と小学校の違いということで、アンケート結果にもあると伺いましたが、幼児園のこれから小学校に入る5歳の子どもは、やはり不安で情緒が不安定になるお子さんもいると聞いています。小学校に入ってからも、環境が大きく変わって、教科で45分座っていないといけないとか、そういった環境の変化でなかなか落ち着かないお子さんがいらっしゃるということも聞いています。
そういったところへの対応としても、うまくつながって、それぞれの先生が、幼稚園でどういうことを遊びの中から学んできたかっていうことを知ってくれている。またお兄さん、お姉さんで知り合いがいるということで、そういった不安なり、入学してからの課題にも対応していけると思いました。
ぜひ来年度、すばらしいモデルが出てくると思いますので、そういったものを滋賀県全体に広げていければ良いなと感じたところです。
(三日月知事)
私も人前で話すということを保育園児に教えてもらいました。つまらなかったら聞いてくれないですからね。
このおっちゃん、僕らの方を向いて言ってくれているのかな、と思ってくれないと聞いてくれないですから、そこで学びました。
だから、小学校の先生も、もしかしたら県庁職員も、幼稚園、保育園に行かないといけないのではないかな。その子その子の、まさにその姿から、学ぶことがあります
(西川教授)
派遣のことで、県は思い切ってこうして加配という形で進めていますが、これは画期的だと思います。
他の県を見ても、やはり幼から小は行ってないですね。小から幼に行っている。例えば鳥取県を見ると、1年間派遣していますね、完全に籍を移して、べったりと。だから、先ほどから藤田先生がおっしゃっていますけれど、とにかく浸ることが大事です。短い時間で見て、分かったというものではないです。
寝食をともにするというくらいに、そのために果たして週何回がいいかどうかということは、今後の検討の可能性があると思いますが、そういう県もあって、そこはやはり実績を上げておられると感じています。
(三日月知事)
そこはちなみに、両方に籍があって、どちらにも行けるほうがいいのか、一方にどっぷりとつかってやるほうがいいのか、1年で分かるものではないのでしょうか。
聞いていて一長一短あるようですが.
(藤田教諭)
私は今のように、小学校にも行く日があって、幼児園にもしっかり行く日があるというのが良いと思います。
(新教諭)
園の子どもたちは、特に今年コロナ禍もあって、例年に比べると小学校に気軽に行けないことや、交流に行きにくいということがありました。でも小学校から藤田先生が来てくれることを、子どもたちは憧れの小学校からの先生ということで、すごく楽しみにしています。また園の保護者にも説明していたので、小学校がすごく身近というか、ほかの地域とかに比べると随分小学校への期待や安心が、保護者の安心も含めて大きいです。実際に子どものことで心配に思っている園児のお父さんが、うちの子どもを知ってくれている先生が五個荘小学校にいることが、すごく安心すると言っておられました。不安があっても知っている先生がいるということで安心できると思います。
(岡崎委員)
井の中の蛙にならない状態というのも、大事なんでしょうね。
どっぷりとつかることに良さもあるのでしょうけど、定期的に小学校に幼稚園が求めたいこと、小学校から幼稚園に求めたいことを、今回の日数がちょうどいい感じで伝え合っているのかもしれないですし、やはりこれからの研究課題的な部分なのではないでしょうか。
評価軸についても、「10の姿」の評価というのは人として大事なことにだと、見せていただいて思っています。きっと幼稚園から小学校に上がる5歳、6歳児のレベルと、6年生のレベル、中学校のレベルとで、期待、要求するものは全然違うと思います。この軸で見るということが大切で、どのレベルにするかという点はそれぞれの年代で作り込んでいけば、同じ視点で育成していくことができるのではないかな。ですから上の学年から下のほうに見に行く、引き取る側が見に行く。加えて年長の先生が、1年生のところに、育てた子どもたちが無事に楽しく小学校に行っているかを、見に行ける仕組みもあればいいのかなと思いました。
(福永教育長)
今の5歳児の子どもたちは、今年の4月に1年生になりますが、その1年生が入学当初に、このような形で学ばせるのが良い、という最初のカリキュラムをつくっていただいているという理解で良いですか
(藤田教諭)
はい、幼児園で学んできたことを生かせるように今作成中です。
(岡崎委員)
藤田先生は、4月に1年生を必ずもたせていただけるのですか。
(三日月知事)
どこかのクラスをもつというよりも、そういったカリキュラムに基づいて授業なり活動ができるかどうかを、俯瞰して見ていただく立場の方がいい面もあるのかもしれない。
違う学校に行ってしまわれたというのでは、ちょっと困りますね。
(福永教育長)
その他、御意見や御提案がありましたら、よろしいですか。
(土井委員)
2つありまして、まず、先ほど西川先生もおっしゃったことですが、幼小の連携を考える際に、当該学校の当該子どもについての連携、という面と、一般論として幼児教育と小学校教育をどう結びつけるか、という問題があると思います。
地域によっては人口流動が激しいところもあって、必ず人が入れ替わるという部分もありますので、幼児園で見ていた子どもがそのまま上がってくるというわけではない、そういった地域も当然出てくるはずです。そういったところを含めて、取組を拡大していこうとすると、目の前にいる子どもを見てつなぐだけではなくて、ある程度一般化が必要になってきます。その点で、能力を着眼点にして見る力を、先生に付けていくことを目指しておられるのは、いろいろな子どもが来ても、その見る力で個別の子どもを見ることになりますので、その意味で汎用性が高いし期待ができると、西川先生はおっしゃったのだと思います。それは私もそのとおりだろうと思います。
具体的な子どもの引継ぎをすることと、一般論としてそういったつなぎをどうするかを、並行して成果を出していただくと、非常に汎用性があるのではないかと思って期待しています。
それからもう1点、こういった取組はすばらしいと思いますし、進めていくべきだと思います。ただ、冒頭に知事がおっしゃった点とも関わるのですが、こういった機会を与えられる子どもは、ケアがなされて、様々な能力を高めていくことができるわけですけれど、ただ義務教育でないという面があって、ここに組み入れられない子どもたちがいると、それは逆に格差という形で出てきてしまうことになります。これは学校の先生方の問題ではなくて、行政としてどのように考えていくかという問題だと思いますので、その辺りについても、色々な角度から検討していったほうがいいのではないかと思います。以上です。
(福永教育長)
ありがとうございます。
(三日月知事)
土井先生はじめ、委員の皆さんに問いかけますが、そういう意味で言うと、単に五個荘の幼児園と五個荘の小学校だけではなくて、ある程度、指標を見る力をつけていただくことによって、どの子どもにも、どの幼稚園や保育園から小学校に上がる子どもたちに対しても、遊びから学びにスムーズにつなげられるようにする仕組みを、滋賀県が持つということがやはり理想なのでしょうか。
(土井委員)
それは先ほど西川先生や、お越しいただいた先生方がおっしゃったように、単なる交流ではなくて、教育につなげていくための取組なのであれば、やはりそうしないと、よく見知っていますというだけで、あんまり効果がなく終わってしまう。
やはり知事がおっしゃられた方向で進めていくべきではないでしょうか。
(三日月知事)
5年くらいかけたらできますか。10年くらいかかりますかね。
例えばこの五個荘の取組を、まずは東近江市、できれば滋賀県で広げていこうと言ったら。
今年やっていただいたことをより良くつないでいけるように、まずは1年ずつ積み重ねていきましょうか。
(幼小中教育課長)
非常に重いというか、難しいことを言っていただいたのですが、この学びをつなぐ幼小接続ハンドブックは、県内の、全ての私立も含めて、幼稚園、保育園、認定こども園にお配りしております。
知事がおっしゃったように、この「10の姿」が汎用的なキーワードになると私は思っております。どこの保育園、幼稚園、認定こども園から来られても、このベースで小学校の先生は見ていきますよ、あるいは、育てていきますよということが共通認識できていけば、ある程度汎用性が出てくるのではないかなと思います。
私が現場にいた時も、20くらいの園から集まってくる小学校でしたので、なかなか五個荘のようにうまくできないなと反省しておりましたけども、そうなってくると、この「10の姿」のような汎用的なものがやはり必要になるということについても、広めていきたいと思います。
(福永教育長)
先生方が10の姿をしっかり意識して、いろいろな園から来る子どもたちにどのぐらいの力が付いたのかを、見られる力があれば、対応はしていけるのではないでしょうか。全ての学校でこれを進めるのは難しいと思いますが、せっかく五個荘で取り組んでいただいていますので、どのようにすれば、見る力が養われていきますよということができれば。
ドキュメンテーションをそれぞれの幼稚園や保育園でやっておられることで、小学校の先生が、ここの園はこんなことをやっている、こっちの園はこんなやり方なのかということを知って、自分の学校に来る子どもたちでもそれぞれ違うということが見えてくると思います。
これを小学校1年生、2年生あるいは6年生の子どもや、授業参加で来られる保護者の方に、幼稚園の様子を知っていただくことが大事なのかなと思います。
もう少しお時間がございますので、何か御意見なり、御提案ございましたらお願いします。
(三日月知事)
せっかく藤田先生、新先生に来ていただいたので、関連することでもいいですし、言い足りなかったことや、現場でこんなことに困っていること、もしくはこの取組を今後こんなふうにしていければいいなということがあれば。
西川先生からも何かあればお願いします。
(西川教授)
先ほど教育委員会からもありましたけど、やっぱり幼小連携は滋賀県がトップランナーだと思っています。
ちゃんと手順を踏んでおられるというか、最初は平成17年から幼小連携推進事業という交流活動から入っていって、滋賀の55交流(5歳児と小学5年生との交流活動)なんかが文科省の雑誌に取り上げられて有名になりました。けれど交流では駄目だよねという反省に立って学びの芽生えという今の論議があると思います。
ただ遊んでいる、無邪気でどろどろでめちゃくちゃなあの姿の中に、学びがあるよということをしっかりと描き出そうとした滋賀県の取組が、平成22年からだったと思うのですけれども、そういう基盤があって、今の学びに向かう力、つまりその幼児期の遊びの学びを、小学校にももっていきましょうということで推進事業をされている。その体系は全国のお手本になっていると思いますし、ぜひトップランナーとしての自覚と、責任を果たしていただけたらなと願っております。
(三日月知事)
ちょうど私の目の前に西川先生いらっしゃるのですが、すごいプレッシャーをひしひしと感じました。
あと、この学びの芽生えを学びの基礎にしていけたらいいなという考え方は、子どもたちのお父さん、お母さん、お家の方も、一緒に持つべきですよね。
先ほど、お父さんが安心してくれているというのがありましたけど、そういう理解というのは、五個荘ではどうなんでしょう。
うちの子どもは積み木ばっかりやってるけど、友達と言い合いしているけど、それは学びの芽生えなのか、と思うだけで、親も向き合い方が変わってくるのではないですか。計算ドリルやらさないといけないじゃないかなというだけではなくて。
(西川教授)
ドキュメンテーションがそうです。例えば泥団子を作っているドキュメンテーションがあります。実はこれをよく読んでみると、どの布でやれば光るかという、科学的な分析を子どもの遊びの中にしているのですが、子どもは理科の実験とか科学的な分析と思っていないんです。
けれど、そういう遊びが実は見られますよということを、この若い先生が書かれた。分析してそれを保護者に発信されているということは、保護者が日常で目にすることは、遊んでるだけじゃないんだ、こういった科学的な見方があるんだ、思考力もあるんだ、言葉や標識というものを獲得してるんだということに気付いていく取組を、今年1年間されたということだと私は思っています。
(三日月知事)
今度の教育しがの記事、この特集にしてはどうでしょうか。
いっぱいいろいろな分野が書いてあるけど、これが学びの芽生えなのか、僕らが学ぶことなのか、みたいなことを。
(福永教育長)
それではお時間もまいりましたが、本日、様々な御意見をいただきました。
1つはやはり、幼児園と小学校で子どもの様子を共有化していくっていうことが非常に大事だということでした。
次に、何度も出てまいりましたが、幼児教育に携わる人も小学校教育に携わる人も同じ物差しで子どもを見ていかないといけないという話でした。学校と園の文化の違いもありますけれども、そういったお話がありました。
あるいは、最後の方に出てまいりましたけれども、遊びから学びへつなげていくというお話がありました。そして、いかに5歳児と小学校1年生だけでなくて、広く、幼児教育全体と小学校教育全体で、その物差しの中で、子どもの成長を見ていくのだろうということだと思います。
今の段階では小学校の先生方が、幼稚園、あるいは保育園に行かれて、いろんなことを知っていただくことが大事なのかなと思います。
それと、やっぱり保護者の方に知っていただくことが大切です。それは我々の役割でありますので、しっかりと伝えていくことも大事だと思います。
本日いただきました、御意見、御議論を踏まえまして、今後の我々の取組の充実につなげていきたいと思います。
それでは議題1の「幼児教育と小学校教育の連携・接続」については以上とさせていただきます。
この後、今日が本年度最後の総合教育会議でございますので、今までの4回の総合教育会議でどのようなことを議論していたかという総括に入らせていただきますので、先生方にはお付き合いただきたいと思います。
(三日月知事)
まずは拍手で、お礼に代えたいと思います。
(拍手)
(福永教育長)
それでは、令和2年度滋賀県総合教育会議の総括について、事務局から説明をお願いします。
(教育総務課長)
教育総務課の岸田でございます。
今年度の総合教育会議の総括について御説明をさせていただきます。お手元の資料を御覧ください。
令和2年度は今回を含めて計5回の総合教育会議を開催いたしました。これまでの4回の会議につきましては、お手元の資料のとおりのテーマについて、各回議論を行っていただきました。それぞれのテーマにつきまして、今年度の取組、また次年度以降の方針等につきまして、主なものを御紹介させていただきます。
第1回会議につきましては、5月13日に新型コロナウイルス感染症対策の緊急事態措置を執っているさなかに、「臨時休業中の学びの保障等について」議論をしていただきました。
その中では再度休業があった場合でも学習の機会を保障すべく、デバイスや接続環境等の整備が必要であるとの御意見をいただいたところでございます。
今年度の取組状況といたしましては、学校用タブレット端末の配備やインターネット回線の高速大容量化、あるいは校内無線LANの整備を実施しておりまして、これらにつきましては年度末までの完了を目指しているところでございます。
今後、再度の感染拡大により休業となる場合には、YouTubeやTeamsを用いた教材配信のほか、各学校での好事例を共有いたしまして、同時双方向のオンライン授業による対応に向けて体制を整えていく方針でございます。
次に、第2回会議では、「ICTの活用による教育の推進について」、議論を行っていただきました。その中では、どの家庭の子どもでも端末が利用でき、同じ教育を受けられる環境を整えることが必要であるといった御意見をいただいたところでございます。
今年度の取組としては、インターネット環境や端末のない生徒に対しましては、モバイルルータや学校に整備する端末の貸出によりまして、対応できる体制の整備を進めておりまして、次年度以降については、学校現場におけるICT活用を推進しまして、教員等へ適切に指導できる情報教育支援員を配置する方針でございます。
第3回会議では、「通常の学級における特別な支援の必要な児童生徒への指導の充実に向けて」をテーマとして議論をしていただきました。
その中で効果的な指導の研究の継続と、県全域への普及の検討を進め、取組を推進する必要があるといった御意見をいただいたところでございます。
今年度の取組としましては、個別支援の充実でありますとか、授業改善を図ることとともに、「読み解く力」の向上を目指しました「プロセスに応じた支援・指導」の実践を推進しているところでございます。
次年度以降におきましては、学びにくさや読み解く力の向上につまづきのある児童生徒への効果的な指導実践につきまして、啓発・普及を行っていく方針でございます。
最後に、第4回会議でございますが、「子どもたちの読書活動の推進について」、県立学校の生徒からも直接意見を聞きながら議論を行っていただきました。その中では子どもが本を読む環境づくりのために、読書の重要性について、子どもに身近な大人を啓発する必要があるといった御意見をいただきました。
今年度、親子が集まるイベント等の場に読み聞かせブースを出展する等、読書に関しますアウトリーチ型啓発を実施しておりまして、次年度以降におきましては、この事業について、今後市町が実施主体となって事業展開していけるように、モデル市町の指定を行い、読み聞かせブース出展に係るマニュアルを作成することによりまして、推進していきたいと考えているところでございます。
総合教育会議は知事と教育委員会が意見交換を行う重要な場でございます。この場の議論により得られました御意見を、今後の施策に反映し、よりよい教育行政に活かしていきたいと考えております。説明は以上でございます。
(福永教育長)
それではただいま、今年度の第1回から第4回までの総合教育会議の総括という形で、事務局から説明がありましたが、参加された皆様方から何か御意見や、あるいは御提案等がございましたらよろしくお願いいたします。
(三日月知事)
それぞれ教育委員の先生方から、今年度1年間の御感想なり、来年度に向けた課題などありましたら、お話をいただければ。
(福永教育長)
知事からリクエストがございましたので、それでは岡崎委員からお願いいたします。
(岡崎委員)
ありがとうございます。
今年1年ですね、会議の在り方がリモートでの開催に変わってきて、仕事の方もリモートワークをずっと使ってきました。
この1年、単身赴任で急遽転勤しましたもので、今まで家庭の中がにぎやかだったので、リモートワークが非常に堪えております。
その中で気付いたことは、寂しいなと思ったときに、寂しいなということを口にすることの必要性を感じました。
仕事で、新たな職場でつながれないこととか、家庭の中で、子どもたちや妻のありがたみ、恋しさというのは、我慢してそういう思いを伝えないようにしようと頑張ってきたのですが、やはりそれでは駄目だなと、寂しいときは寂しいとか、耐えられないときは耐えられない、教えてほしいときには言葉に発するということの、必要性を感じました。
特にこういった画面越しの中に、その必要性をすごく感じていまして、今後ICTを活用した授業がさらに進むのは必然的なことだと思うのですが、知事がいつも言われるように、人はやはり人の中で育って人になっていくということ、人と関わってこそ、人になっていけるんだというところを痛感しているので、今後の新しいICTの活用で、リモートワークの中にもそういった視点を一つ加えて、子どもたちや先生方がしっかりとつながり合って、成長できるような社会になっていけばいいなと思いました。
(福永教育長)
ありがとうございます。それでは、野村委員お願いいたします。
(野村委員)
1年間どうもありがとうございました。
いろいろな御意見をお聞かせいただきながら、このコロナ禍の中で、ICTの進め方とか、それによってどのような環境の中にあっても、授業、学習ができるという便利さ、そういったものを痛感させていただきましたし、また教えていただきました。
その中でやはり私は一番、今年度のテーマとしてはなかったのですが、やっぱりその家庭教育の大切さ、幼児教育の大切さ、そういったところが大人になるまで関わってくると感じました。以前に東近江市の認定こども園に行かせていただいた中でも、心の根っこを強く太くするということをされていて、どうしても家庭教育の大切さを感じずにはいられないです。子どもをかわいい、かわいいと言いながら、育てられる環境の整備をしていくべきなのだろうなと常々感じています。
今後の私の活動も、そういったことを気にかけながら、力を入れていきたいと感じています。
(福永教育長)
どうもありがとうございました。窪田委員よろしいでしょうか。
(窪田委員)
1年間ありがとうございました。また総括についてもありがとうございます。
私も今年度オンラインで参加させていただくことが増えて、県外に住んでいますので、それで助かったところもあります。一方で、こういった総合教育会議で普段お会いしている教育委員の皆さんとはオンライン上でもつながっているなという安心感がありますが、今日お越ししただいた先生方も含めて、この機会でしか出会えない方々との出会いの場ということを考えると、やはり対面でできるということも、大事だなと改めて考えさせられたところです。
今年度は、コロナがあって、障害のある子どもたちの親御さんの話も聞いていますと、かなり経済的に厳しくなって、それで家庭が不安定になると、子どもがもう一層不安定になってしまうとか、ちょっと歯車がずれるだけで大きく狂ってしまうという話も聞きます。今後、コロナが落ちついたとしても、教育や子どもたちについては、先ほど野村委員から家庭教育の話もありましたけど、きっと影響が長引くこともあるのだろうということも見据えながら、また皆さんと一緒に、県の教育にどのように貢献できるかということを考えていきたいと思っています。
今回コロナだからこそ、オンライン化であるとか、スリム化できるところは働き方も含めて、思い切って変えられるところは変えていきながら、岡崎委員もおっしゃっていましたけども、だからこそ見えてきた、やはり大切だよねというところを丁寧にくみ取っていけたらいいなと思ったところです。引き続きよろしくお願いします。
(福永教育長)
ありがとうございました。それでは土井委員お願いいたします。
(土井委員)
この総合教育会議でも、ICTの活用、それから特別支援教育等について議論しましたし、県の教育の基本方針として、読み解く力の向上に取り組んでいます。
また総合教育会議での議論はまだですが、これからの県立高校の在り方についても御審議いただいているところです。
それらの施策に共通して、何を大切にしていくかということを考えたときに、私なりに1年間この会議に出させていただいて、やはり一人ひとりの能力をそれに応じて伸ばしていくということが共通のコンセプトなのだろうと思います。そのためにICTを使うのだし、そのためにいろんな教え方あるいは育て方を考えていかなくてはいけないのだろうと思います。
その一人ひとりの能力を伸ばしていくことを考える際に、今日は幼小を中心に考えていただきましたけれども、幼小中高大と教育全体の過程が続いて、最後は社会に輩出することになります。
そう考えると、一人ひとりの能力を伸ばしていくのですけれども、最終の目標は、その能力をみんなのために使っていくこと、そこにつなげていく必要があるのだと思います。自分の能力を高めるだけが目的ではなくて、高めた能力をどのように生かすのかが最後の重要なところで、それを幼児教育から大学に至るまで、どの過程でどのような力を伸ばしていくのかということを考えていかないといけないのだろうなと思います。
その意味で、協働的な学びを中心にしながら、最終的には自分の力を自分のために使うのは当然ですけれど、できるだけみんなのために使っていくんだ、そうすることでお互いがお互いを認め合うことができるんだ、そういう方向で滋賀の教育を築いていくべきなのではないかと思うのです。
今日も幼児教育に携わっておられる先生がおられますけれども、今年度に行ったこども園でおっしゃられたことで、そのとおりだなと思うのは、たとえ乳児でも目を見て話してやらないといけないということ。そうすることによってその子認めていることになるのだということです。幼児教育の先生方はすごくそれを大事にされてると思います。
大学で講義をしていますと、なかなか一人ひとりの目を見るというわけにはいかず、だんだんおざなりになっていくのですけれども、その根本の部分をしっかり育てて、それを大事にしていくというのは、やはり非常に重要だと思います。
そういう意味で一人ひとりの能力を伸ばしていくということと、一人ひとりを大切にするということは、結びついていると思いますので、滋賀らしさとして打ち出すのであれば、そういった形で今後打ち出していけたらなと思いました。以上です。
(福永教育長)
ありがとうございました。
それでは中條副知事から、御感想をいただけますか。
(中條副知事)
私は第3回、第4回会議、そして第5回と参加をさせていただきました。毎回、それぞれの取組をされている方々からお話を伺って、教育委員の皆様からの御意見をお伺いして、とても勉強になりました。
(福永教育長)
ありがとうございました。
それでは私も一言だけ申し上げたいと思います。教育長になっていろんな取組をさせていただいておりますが、やはり、私は1番大事だと思うのは、子どもたちが、笑顔で、学校や幼稚園に来られて、友達や先生方と一緒に楽しく学べるというものをつくっていかなければならない。
その中で将来、生きていくということが大事なので、そういった力をどのように育てれば良いのかということを意識しながらやっています。その際に子どもたちもそうですが、いつも知事から言われるのですが、今日お越しいただいている先生方も笑顔で、ここで働くことは楽しいよね、こういう子どもたちを見ていると楽しいよね、と思えるような学校現場あるいは幼稚園、保育所の現場になるように、一生懸命取り組ませていただいているつもりですがまだまだ十分ではありません。引き続きその気持ちを忘れずにいきたいと思っています。私の感想としては以上です。
臨時休業ということも踏まえまして、本来は子どもたちが学校で、先生とそして友達と、あるいは先輩、後輩と学ぶ、活動するということが大事だと思っております。
その中で、最後に滋賀らしい取組というものも、大切にしたいと思っておりまして、全ての小学校5年生が乗船します学習船うみのこも、今非常に厳しい状況にありますが、できるかぎり工夫しながら、しっかりと続けていくことが、滋賀の教育、学びの場だと思っております。
それでは最後のまとめを三日月知事にお願いいたします。
(三日月知事)
ありがとうございました。今年度も大変お世話になりました。
委員の先生方にはいろんな角度から、その時々でたくさんの御示唆をいただきましたし、岡崎委員におかれては寂しい生活の中でも明るく、この教育委員会でいろんな御指導もいただきました。今日は藤田委員がいらっしゃいませんのでちょっと寂しかったのですけれども、私もこの教育委員会との総合教育会議は全て出席しております。
全ての時間を一緒に議論し、一緒に学ばせていただくと、そして聞いたことを予算や施策として、確実に作っていくということをみなさんと一緒にやっておりますので、これからもそういう取組は大事にしたいと思います。
今年度の今日までの5回の取組につきましても、今日、ご出席いただいてる皆様をはじめ、それぞれの持ち場で仕事をしてくれております教育委員会のスタッフの皆様に感謝したいと思います。
あと教育長もおっしゃいましたけど、コロナで厳しかったときに、3月4月に学校休業をせざるを得なかった。これはもう一生忘れないでしょうね。今でも反省しています。この学校休業はすべきじゃなかったのではないか。ただ、当時いろいろなことが分からなかったので、仕方なかったこともあるのですけれど。
ただそういう中にあって、子どもたちが、この先生方が、本当にたくましく、その現状を受け入れた中でどう学ぶのかということに懸命に取り組んでいただいて、むしろ僕らはその中で、これからの新たな学びの可能性に、気付かせていただいたのではないかなと思っています。
ICTの学びもそうですし、こうすれば友達とつながれるという、いろんな取組もそうです。
ぜひこのコロナ禍で学んだことをしっかりと生かしていきたいと思っています。
引き続きこの総合教育会議を大事にしていきたいと思います。
どうぞ、委員の先生方、教育委員会のスタッフの皆様方はじめ、どうぞよろしくお願いいたします。
本当にありがとうございました。これからもよろしくお願いします。
何より今日すばらしい発表を御提供いただきました、西川先生、藤田先生、新先生に改めて感謝申し上げ、私の言葉とさせていただきます。ありがとうございました。
(福永教育長)
それでは御参加いただきました皆様、長時間にわたり、御審議をいただき、ありがとうございました。まだまだ新型コロナウイルス感染症は予断を許しませんので、それぞれの持ち場で気を付けながら、子どもたちの笑顔のために御活躍いただくことをお願い申し上げます。
それでは、本日の第5回滋賀県総合教育会議は以上で終了させていただきます。
どうも御苦労さまでございました。