森林づくりの費用負担を考える懇話会から國松知事に
「滋賀の新たな森林づくりと費用負担のあり方について」提言がされました
森林づくりの費用負担を考える懇話会は、琵琶湖森林づくり条例の基本理念を踏まえた、滋賀の新たな森林づくりの取り組みを、実現可能なものとしていくために必要な費用負担のあり方について検討し、平成16年12月22日に、懇話会会長から滋賀県知事に「滋賀の新たな森林づくりと費用負担のあり方について」提言を行いました。
懇話会での検討模様
平成16年4月に学識経験者や県民の代表7名で構成される「森林づくりの費用負担を考える懇話会」を設置し、8回の会議と県民との意見交換会を大津市と彦根市で開催するなど、幅広い視点から慎重に議論を重ね、提言をとりまとめました。
提言の要旨は、次のとおりです。
○ 琵琶湖森林づくり条例の基本理念を踏まえ、滋賀にふさわしい環境重視と県民協働で取り組む森林づくりは、これまでの木材生産を軸とした林業施策の体系には含まれない新たな視点に立った施策であり、その事業効果は広く県民全体に及び公益性が高い施策であることから、その必要な費用は、森林から多くの恵みを享受している県民全体に新たな負担を求めることが妥当
◇琵琶湖森林づくり条例に基づく新たな森林づくりの方向
・環境重視の森林づくり:
琵琶湖と森林との関係を重視し、琵琶湖の水源かん養など森林の公益的機能の高度発揮を目指す施策
・県民協働による森林づくり:
森林が琵琶湖と人々の暮らしと切り離すことができない県民共通の大切な財産であることから、県民が、森林について理解と関心を深め、主体的に参画し協働で森林づくりを推進するという新たな仕組みで森林づくりを支えていく施策
○ 新たな負担により、県民の森林に対する理解が深まり、積極的に森林づくりに参画しようとする意識の醸成に資する。
(1)環境を重視した森林づくりのための事業
森林の公益的機能が高度に発揮されるよう、環境を重視した森林づくりを推進
<1>針広混交林への転換:
水源かん養機能や自然生態系豊かな公益的機能を高度に発揮できる森林づくりを推進するため、スギ・ヒノキの針葉樹と広葉樹が混じり合った針広混交林へ転換
<2>長伐期林への誘導:
森林土壌の安定により水を蓄えるスポンジ効果が高まり、水源かん養機能が高度に発揮される長伐期林(伐採時期が70~80年以上の森林)へ誘導
<3>間伐材の搬出・利用の促進:
間伐材を資源として有効利用すれば、二酸化炭素を長期間固定し地球温暖化防止対策に貢献することから、間伐材の搬出・有効利用の促進
<4>里山の環境保全の推進:
荒廃している里山の原風景や動植物の生息・生育環境を再生するとともに、県民が身近な森林として散策などを楽しめる場として、里山の環境保全の推進
(2)県民協働による森林づくりのための事業
県民一人ひとりが森林の恵みを再認識し、森林に対する理解と関心を深め、主体的な参画のもと協働による森林づくりの推進
<1>森林の大切さの普及啓発:
県民をはじめ下流域の人々に森林の価値や森林づくりについて理解と関心を深めてもらうため、積極的な情報発信、森林環境学習の推進、木の良さを体感できる機会の提供
<2>里山の協働保全:
県民が森林づくりに積極的に参画する具体的な場づくりとして、里山をフィールドに森林所有者、地域住民、NPO、森林ボランティアグループなどの協働による里山保全活動の促進
<3>県民が森林づくりに参画できる体制整備:
地域の森林づくりに県民の意見を反映させるため、流域を単位として森林所有者、地域住民、下流住民、森林組合など多様な主体が参画する流域森林づくり委員会を設置
(3)新たな森林づくりに必要な事業費の算定
琵琶湖森林づくり基本計画の目標事業量などを踏まえて算出された、上記の事業実施に必要な単年度の標準的な事業費は、6億円程度と試算されておりそれをもとに議論
<1>環境を重視した森林づくりのための事業 2.8億円程度
<2>県民協働による森林づくりのための事業 3.2億円程度
(1)費用負担の手法 -「税方式」-
森林の持つ公益的機能は県民に広く恩恵をもたらしていること、またこれらの恩恵を受けている全ての県民が共同して負担していくべきとの考えから、「税方式」が最適
(2)課税の仕組み -「県民税均等割超過課税方式」-
県民に広く負担を求める点で平等、既存税制の活用により仕組みが簡便、徴税コストも安価、低所得者への配慮が可能なことから、「県民税均等割超過課税方式」が最適
(3)透明性の確保と県民の参画
<1>基金の設置
・県民税均等割超過課税方式は、使途が限定されない普通税であることから、新たな森林づくりのための財源として使うことを明確にする仕組みが必要
・新たに基金を設けて税収を積み立て、各年度の必要となる額を取り崩して事業に充当することが適当
<2>事業過程での透明性の確保と県民の参画
・滋賀県において実施されている施策評価システムにより、事業効果や施策の方向性についてチェックするとともに、税収の使途や実施状況を県民に公表することが必要
・新たな森林づくりの施策の策定に県民が参画できる仕組みを検討することが必要
(4)税率
○現行の県民税の個人と法人の税収割合を考慮して税率を設定することが妥当
○上記の新たな森林づくりに必要な事業費をベースに税率を算出すると下記のとおり
<1>個人:超過税率 年額800円(現行の個人県民税均等割:年額1,000円)
<2>法人:超過税率 均等割の11%相当額
資本等の金額による区分 | 現行(標準税率) | 超過税率 |
---|---|---|
50億円超 | 800,000円 | 88,000円 |
10億円超50億円以下 | 540,000円 | 59,400円 |
1億円超10億円以下 | 130,000円 | 14,300円 |
1千万円超1億円以下 | 50,000円 | 5,500円 |
1千万円以下 | 20,000円 | 2,200円 |
(5)税制度の見直し
施行後5年を目途として、新たな施策の事業効果や森林を取り巻く状況、財政需要の状況等を見極めた上で、制度の点検・見直しが必要
<1> 森林づくりの費用負担を考える懇話会提言(全文)
目次
(1)森林の多面的機能と人々の暮らし
(2)滋賀の森林の現状と課題
<1>森林・林業の現状
<2>課題
<3>森林の荒廃による琵琶湖と県民生活への影響
(3)滋賀が目指す森林づくりの方向
<1>琵琶湖森林づくり条例と基本計画
(1)費用負担の考え方
<1>これまでの森林づくりの限界
<2>新たな森林づくりと県民による費用負担
<3>琵琶湖下流域との連携
(2)使途の考え方
<1>使途の考え方
<2>新たな費用負担による事業の要点
(3)具体的な施策展開
<1>環境を重視した森林づくりのための事業
<2>県民協働による森林づくりのための事業
(4)新たな森林づくりに必要な事業費
(1)費用負担の手法
(2)課税の仕組み
<1>仕組みを検討するに当たって
<2>新税創設(法定外目的税)についての検討
<3>既存税制(法定税)活用についての検討
<4>課税の仕組みの検討結果
(3)透明性の確保と県民の参画に向けて
<1>会計処理上の明確化
<2>事業過程の透明性の確保と県民の参画
(4)税率の考え方
<1>個人と法人の負担を同額とする方法
<2>個人と法人の負担額に差を設ける方法
<3>検討の結果
(5)税制度の見直し
<2> 懇話会での資料集
目次
・環境を重視した森林づくり
・県民協働による森林づくり
・新たな森林づくり施策にかかる標準的な事業費の試算
・森林・林業施策の体系
・森林・林業関係既存施策の見直し方針
3 森林の多面的機能
関連リンク