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滋賀に気づいた人INTERVIEW#34 橋本花菜子さん、川瀬明日望さん

「『海なし県の離島』で滋賀っぽい楽しくて尊い時間を過してしています。」

琵琶湖に浮かぶ有人島・沖島で暮らしている川瀬明日望さんと橋本花菜子さん。地域おこし協力隊の先輩・後輩として島に来た二人は、島民の少子高齢化などの問題が迫る中、島の魅力を発信すべく自分たちの培った経験を活かし日々奮闘されています。

自分から何か面白いことをやってみたかった。

___滋賀に来られたきっかけは何ですか?

橋本さん:2023 年春に沖島に来るまでは、東京のインテリア雑貨メーカーに勤めていました。東京での生活は楽しく面白いこともいっぱいあったのですが、節目となる歳が近づくにつれて「自分から何か面白いことをやってみたい」と思い始めていた時に、地方で 3 年間給料をいただいて活動できる「地域おこし協力隊」という制度があることを知ったんです。その中で琵琶湖の離島にある民泊の管理人の募集を見つけて、初めて沖島のことを知りました。出身は元々京都でいつか関西に戻るつもりでいましたし、自分の店も持ってみたいと思っていたので、条件がぴったりでした。そして何より琵琶湖の離島という珍しい立地にも惹かれ、沖島への移住を決めました。

 

川瀬さん:琵琶湖に接していない日野町の出身なので、元々水辺や離島の暮らしに憧れを持っていて、大学生の頃はインターンシップで沖永良部島に滞在した経験もありました。ここに来るまでは京都のメキシコ料理店に勤めていて、調理やサービス、印刷物の作成に携わっていたのですが、これからの仕事について考えた際、お世話になった離島に行くか、滋賀で暮らすかの二択で迷った時に「あれ?滋賀にも離島あるやん」と気づきまして。せっかく滋賀に戻るなら滋賀っぽい暮らしがしたい、琵琶湖の傍で暮らしたいという気持ちもあったので、地域おこし協力隊の沖島の求人に応募することにしました。


 

「沖島で生活する」ことが仕事です。

___沖島での地域おこし協力隊の活動について教えてください

橋本さん:沖島にある民泊を管理しています。ホームページを作成して SNS も整えたほか、民泊の設備も一新しました。いつまでもぼーっとしていられるような場所にしたかったので、「おばあちゃん家みたいで落ち着く」と感想をもらえた時は嬉しかったですね。沖島在住の方で最初に出会ったのは、すでに協力隊として活動されていた川瀬さんで、来たばかりの頃は島のルールなどを教えてもらいました。私ひとりではできそうになかったイベントも行政や地域の方に手助けしてもらっているので、地域や人との関わりが重要だと気づかされましたし、協力隊の仕事は「何か大きなことをやる」というより、本当に「生活するのが仕事」だと思っています。

 

川瀬さん:協力隊として島に来てしばらく経ってから、飲食の経験を活かし、京都のシェアキッチンで沖島の食材を使った料理の提供を始めました。湖魚が入ったタコスなどを食べてもらうことで、「これ琵琶湖の魚やったんや」と沖島を知ってもらうきっかけになりましたし、そうしたPRを主に若い世代の人たちに向けて行っていました。また、沖島でも湖魚を使ったアウトドア料理を作るイベントを開催するなど、「沖島に来たいけど、きっかけがない」という人たちのための目的作りも意識しました。魚や漁の相談のために島の漁協には何度も足を運び、仕事をお手伝いしたこともあったので、協力隊の任期が終わった現在はそのまま漁協で働かせてもらっています。


 


 

楽しくて尊い時間をくれる島の人たちがいてこその沖島。

___お二人にとって、沖島とはどんな場所ですか?

橋本さん:泊まりに来られた釣り人やアーティストさんたちとつながりができるなど、民泊の管理人になってから出会いがめちゃくちゃ増えました。夜は静かですし、せかせかした通勤風景もなく、毎朝みんなゆったり話しながらのんびり仕事を始めているので、東京にいた頃よりも時間がゆっくり流れている感じです。

川瀬さん:自動車も一台も走りませんからね。荷物や農具をいっぱい積んだ三輪車が走る光景は沖島独特だと思います。

橋本さん:琵琶湖の風があるので、洗濯物がすぐに乾いて楽ですよね。川瀬さん:あと通販も離島料金なしで届くので便利です。新聞も船で配達されてきますし、テレビも契約すれば見られますよ。

橋本さん:友達もめっちゃ遊びに来てくれます。

川瀬さん:友達と一緒に山に登ったり、ホームパーティーをしたり。住んでいるのが一軒家なので、合宿みたいな空気を味わえて楽しいです。


 

___沖島の人達の印象を教えてください

川瀬さん:気さくな人がとても多いです。沖島は7人の落ち武者が住み着いたことから始まったと言われていて、最初来た時は同じ苗字の人ばかりで驚きました。

橋本さん:引っ越してきた時は私の名前を早速覚えてもらえたり、沖島だよりで紹介してもらえたりして、まるで転校生のように迎え入れてもらえました。すぐに打ち解けられたのは、それまでの協力隊の方たちの頑張りがあったおかげとも思っています。干していた洗濯物が飛んでいった時に届けてもらえたこともありましたし、いつも思いがけないことをしてもらってばかりです。島の人達と一緒に過ごせる時間は本当に尊いです。

川瀬さん:島の将来のことを考えると大変だけど、今こうして漁師さんたちとワイワイやっている時間は楽しいですし、あの人たちいてこその沖島ですよね。

昔ながらの暮らしが残っているのが、ここの良さです。

___今後の夢はありますか?

橋本さん:ここの良さって、昔ながらの暮らしがそのまま残っていることなんですよね。絶景や有名な神社があるからとかじゃなくて、そうしたノスタルジックな暮らしを見に来る人が多いです。

川瀬さん:沖島の景色やコミュニティのある暮らしなど、訪れる人がそれぞれ違った形で魅力を感じてくれていて、移住も検討してくださっている方も多いんですけれど、受け皿がまだまだ足りていないのが現状です。

橋本さん:空き家はあるのですが、売買できる環境が追いついていないんです。そこで沖島の離島振興推進協議会では「おきしま家守」というチームを結成して、状況改善を進めています。

川瀬さん:若い人たちにもっと移住してほしいですよね。

橋本さん:環境が住みやすくなれば若い人も増えてくれると思っています。なので空き家のことを一緒に考えてくれる人が来てくれたら嬉しいです。

川瀬さん:漁獲量の減少などで漁師さんの数も減っています。漁師さんが居続ける島であってほしいので、興味を持ってもらうために楽しく参加できるような漁の研修などを企画できたらいいなと考えています。


 

___滋賀への移住を検討している方にメッセージはありますか?

橋本さん:もし今からリセットして移住を決断する前に戻ったとしても、やっぱり面白そうなことができる沖島での生活を選ぶと思います。そのくらい沖島には可能性を感じています。

川瀬さん:沖島ってすごくレアな環境で、ここに住めるってこと自体がすごいんですよ。こんな経験ってめったにないし、やりたくてもできないです。

橋本さん:どんな場所であっても、いいところもあれば、悪いところもあります。「ある程度悪い面もあるけど、それでもここの環境や人がいい」という心づもりで来られたらいいと思います。

川瀬さん:あまり地域のためとか、身を削ろうとか気負ってもらわなくていいです。ぜひ自分の楽しいと思うことをしてみてくださいね。

ある一日のスケジュール(川瀬さんの場合)

  • 6時30分起床。朝ごはん(時々お弁当を作る)、ニュースをみながらゆっくり食べる

ある一日のスケジュール(橋本さんの場合)

  • 7時00分起床。メールチェックしながら朝食