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滋賀に気づいた人INTERVIEW#26 隅田あおいさん

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「馬と生きる私を応援してくれた滋賀県の人々に、恩返しがしたい」

隅田さんは、滋賀県で起業して馬搬という事業にチャレンジしています。様々な地域で馬や林業の修行を重ね、生まれ故郷で自分の理想を追う日々。新しい事業に苦労が重なる中、地域の人々の応援を支えに頑張っています。夢は「地域への恩返し」と隅田さんは語ります。

滋賀県では、例の無い事業への挑戦。

__今、どんな仕事をしていますか?

私は、物心がついた頃から馬が大好きでした。滋賀県高島市の出身で、近所にも馬はいなかったのに、どうして馬が好きになったんでしょうね。多分、テレビでムツゴロウ王国とか見た影響かも知れませんね。
今は、長浜市で馬を使って、山から伐採された木を運ぶ馬搬という仕事にチャレンジしています。馬搬って聞いたことありますか?私は確か、インターネットで知りました。馬搬に興味を持った頃、淡路島の友人のところで馬搬のデモンストレーションがあることを聞き、見に行きました。馬搬は、その時にデモンストレーションをしていた岩手県の方に、修行を申し出て学びました。

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__起業までに、準備したことは?

「馬搬で起業するぞ!」と決めたものの、林業は全くの未経験者でした。林業を知らず、馬搬を始めることは林業関係者の方に失礼かと思い、色々なところで林業を学びました。最初は長浜市で林業をしている友人のところです。そこで月の半分は、山の保全活動などを手伝いました。ちょうどその頃、長浜市の方が私に「地域おこし協力隊」を勧めてくれました。でも、起業までにもっと林業の修行をするべきだと思い、さらに岩手県で半年、北海道で4ヶ月ほど林業を経験してから長浜市に移住して「地域おこし協力隊」に入りました。今から4 年前のことです。

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生まれ故郷で夢を叶えたい。

__どうして馬搬を選んだのですか?

馬は環境次第で、違いがあることを知ったからです。

中学3年生の頃、親が私を乗馬クラブに入れてくれました。馬が好きで、色んな乗馬クラブに行くと、とても疲弊している馬に出会ったんです。馬がたくさんの人を相手にしていて疲れていたのかも。それがショックでした。それから馬が働かなくて済むところを探して、高知県で馬の養老牧場をみつけて、そこで2年間働きました。すると、またつい欲が出てきて、今度は自分で何かをしたくなったんです。その後は、色んな馬の施設や、馬を飼っている人を訪ねる旅に出ました。
そして自分の理想に合った馬の仕事はないかと思案し、馬搬という仕事を選びました。でも今も悩みは尽きませんね。自分の理想は、ふくらみ続けているから。

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__滋賀県を選んだ理由は?

正直、馬を飼うなら絶対、北海道がいいんですよ。馬を安く飼えるし、土地は広いし気温は低いし、馬には最適な場所なんです。一度、北海道に行ったら滋賀県には帰りたくなくなると思い、行きたくなかったのですが、修行の観点で北海道に行きました。でも修行の観点で北海道に行ったんです。案の定、北海道は素晴らしかった。けれどやっぱり滋賀県が好きで帰ってきました。

琵琶湖を見ると、ほっとするんです。地元では、たくさんの人が私の無鉄砲な挑戦を応援してくれていました。だから滋賀県で実現させて、恩を返したいと思ったんです。移住した集落には、知り合がいないことがあり、新参者を受け入れてくれない地域かもと心配しましたが、長浜市の人達は、最初から親切でした。この馬を飼う土地も、地元の方が無料で貸してくれると申し出てくれて。
今どきこんな大きな動物を飼っているところは無いので、匂いとかで嫌がられるかもと覚悟していましたが、あたたかく迎えてくれて、馬を見に遊びに来てくれる人もいます。

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地域の応援がなければ、始まらなかった。

__知らない土地での生活は不安でしたか?

私は移住前、北海道にいて自分では家を探せず困っていました。すると市役所の方や地域おこし協力隊の窓口の方が探してくださり、3軒ほど提案してくれました。今の家に決めたのは、この集落の方々が「お!?馬を飼うんか?ええよーおいでー」って言ってくださったからです。
丁度、私が移住した年はコロナウイルスの影響であまり出歩けない時期で、祭りも中止になり、地域に馴染めないかもと心配しました。でも地域の方々が、色々な交流の場を設けてくれました。「一人にしないように」とい心遣いを感じましたね。本当に良い集落なんです。ちなみに、この馬小屋も地域の方がボランティアで建ててくれました。なぜ、これほど応援してくれるのかは分かりませんが、すごく助けてくれています。

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__馬の事業は大変ですか?

うちの2頭の馬は、400kg と100kg もあり、信頼関係ができていないと上手く動かせません。本当はビジネスとして馬を飼うなら、既に調教できている馬を飼うべきなんです。でも折角なので、私は自分で調教しました。調教できていない馬は、人の指示に従わないこともあるので、馬も私も怪我をしないように、少しづつ事業を進めています。馬搬も今、練習の段階です。基礎の基礎をずっと積み上げ続けています。
今の生活は、地域の方々の受け入れ体制がなければ、そもそも全てがはじまりませんでした。だから地域に還元できることを色々と考えていますが、まだ出来ていません。私がいない時でも馬を見に来てくれたり、馬がいることを喜んでくれているという話を聞くと、嬉しいです。

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夢は、人々が集える場所をつくること。

__将来のプランはありますか?

私は、10 年後どころか1 年後もわかりません。それぐらい未知のことが続いています。想像通りにはいきませんが、それで良いです。馬を飼うと休みはありません。たまに離れたくなることはありますが、趣味が馬なので苦では無いですね。
私もこの一年で気分転換の方法を覚えました。外にも仕事に行くことで馬を育てるのにも張り合いが出ました。これも子育てみたいなものです。世の中のお母さんたちは、本当に凄いと思いますよ。小さな子どもは、お母さんと離れられませんもんね。私も今、そんな感じで頑張っています。

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__叶えたい夢はありますか?

滋賀県で馬搬をするには、課題があります。北海道では馬搬をしているところがいくつかあり、稼働率が高いので材木を搬出する業者がいたり、材木を売るルートもある。でも滋賀県では、私が知るところ他には同業者がいません。材木を運ぶトラックは自分で用意しないといけないし、馬搬で運べる木は、建築材としては量が足りない。北海道と同じビジネスをすれば赤字になります。
だから馬搬で運びだした木を薪として売るビジネスを考えています。火を熾す場所をつくり、人々が集える交流の場にしたい。宿泊もできる施設になれば、来てくれた人に休んでもらうこともできる。そうして「人と人が繋がる場所」を生み出したい。それが地域にとっても良いことになると思いますし、私のやりたいことなんです。応援してくれた人の笑顔が見たい。滋賀県は私にとって、馬を飼うには最適な場所なんです。

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ある一日のスケジュール

  • 5時30分起床
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