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滋賀に気づいた人INTERVIEW#14 田中啓介さん

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「“家族を持つ”という覚悟が、移住を後押ししてくれました。都会も田舎も、起業の種はどこにでもある」

「家族を持つ」そう決めたとき、一緒に過ごす時間を優先したいと、すべてをリセットし田舎での暮らしを始めようと決めた田中さん。忍びの里というユニークさに惹かれ、甲賀市の地域おこし協力隊になって3年。地域住民を巻き込みながら、ひまわり畑、養蜂場、間伐材を使ったログハウスなど、持ち前の好奇心と感性で、忍者の町に新しい風を吹き込んでいます。

家族と過ごす時間を優先し、移住を決断

ーー地域おこし協力隊になろうと思ったきっかけは?

大阪で生まれ育ち、大学からは東京へ。渋谷でアパレルの販売員からスタートし、ファッションの会社を起業しました。業績は右肩上がりでしたが、自分の生活は365日ほとんど仕事で、家にいるのは寝るときだけ。彼女との結婚を考えたとき、この生活を続けていて家族が作れるのかと不安になったんです。家族を犠牲にして働くことに意味はあるのか・・・と。このまま都会で暮らせば、僕の性分として忙しく働いてしまう。それなら全てをリセットして田舎で暮らすのもいいかなって彼女に相談したら「あなたならどこでも生きていける」と背中を押してくれました。

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ーーなぜ甲賀市だったんですか?

生きるためには仕事を作らないといけないですよね。まずはまずは足がかりとして地域おこし協力隊を活用し田舎へ移住を決意しました。候補地を選ぶ中で、「水がきれいとか、自然が豊かとか」日本全国に存在する資源ではなく、何かその地域でしかできないこと、と考えていたところで出会ったのが“忍びの里・甲賀市”。全国的にみても忍者を売りにできる町ってそうないじゃないですか!それで甲賀市に興味を持ち志願しました。

ひまわりプロジェクトがつなぐ地域の可能性

ーー地域おこし協力隊としてどんな活動をしようと思いましたか?

今までの自分の仕事は商品を仕入れ、作りあげて販売すること。それをローカライズして、地域ならではの商品セレクトで販売・交流の拠点を作りたいと思ったんですけど、そう簡単にはいかなくて・・・。

私が活動している地区は甲賀市の中でも甲南町宮地区という小学校区で全校生徒が50人ほどの小さな集落。

活動の方向転換をするにあたり、地域の困りごとを聞いていくなかで、高齢化で手がつけられていない田んぼがあると知り、まずはそこをひまわり畑にして地域の活性化を目指そうと提案しました。

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ーー活動は順調でしたか?

田舎の特性として、よそ者は簡単に受け入れてもらえない部分ってありますよね。僕も例にもれずで、初年度はあまり賛同してもらえませんでした。何者かもよくわからない人が旗を振っても、ついてきてくれないのは当然。言葉で説明するよりもまずは自分が動こうと、最初は10アールの栽培スペースでこつこつとひまわり栽培を始めました。すると通りがかった人が、「何しとんねん?」「きばっとるなー」と声をかけてくれるようになり、「耕すんやったらウチのトラクター使い」と機械も貸してくれたり。

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翌年には「うちでも育ててみよかな」と活動に共感してくれる人も増え、3年目となった今年は、栽培規模が15倍の1.5ヘクタールにまで拡大しました!
全国的なひまわり畑に比べればまだまだ巨大とは言えませんが、子どもから三世代に渡って栽培を楽しんでもらっている。地域活動としてこれだけの規模になれたことは満足していますし、ひまわり畑をきっかけにこの地域に訪れてくれる人が増えれば嬉しいです。


 

ただ鑑賞して楽しむだけでなく、ひまわりの種からオイルを抽出し、国産のひまわり油も作りました。菜種やエゴマも栽培して食用油にしています。まずは、これらを地域の特産品として活用していきたいと考えています。

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ーーひまわりプロジェクト以外にも活動を?

養蜂の勉強もして、甲南町の豊かな自然の中で採れるハチミツも作っています。その名も『百花繚乱』。甲南町に咲く百種類以上の花から集めてくる、ここでしか作れないハチミツです。今年は予約だけでほとんど完売してしまいましたが、来春にはもっと多くの人に手にとっていただけるよう、養蜂場も拡大しています。

山から切り出される間伐材の新たな利用価値も模索中です。現状では、間伐材の価値が低すぎて、重労働の対価に見合っていないと感じています。そこで、間伐材を使ったログハウスを作ってみました。自分で組み立て可能で、災害支援住宅にも使えると思います。

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すべては自分のスタイルを貫くため

ーー食用油の加工や養蜂業。新しいことへの挑戦は大変ではなかったですか?

簡単ではないです。でも、この生き方は、田舎で暮らしたいという、いわば自分の“わがまま”なんです。初めてのことでも、可能性を感じたことには挑戦し、自分なりの試行錯誤を繰り返すのが面白い。周りからは大変に見えるかもしれませんが、自分の好きな生き方をしているから苦にならない。

とは言え、田舎は都会よりも起業の種に気づくことは難しい。都会でできるビジネスなら都会ですればいいじゃないですか。田舎の暮らしを楽しむためにも、都会との差別化をしていくためにも、田舎だからできることに気づき、挑戦し、自分のスタイルを貫きながら、これからも慌ただしい生活を送りますよ(笑)

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ーー移住して気づいたことはありますか?

人と言う字は支え合ってできてるんだなということ(笑)。都会で働いているときは、人に任せきれず、全部自分でやっていました。でも、田舎で暮らすようになって、人を頼り、人と支えあいながら生きていくことの楽しさに気づきました。

都会で住んでいたマンションと、いま住んでいる集落の住人の数はほぼ同じ。でも、知り合いの数は圧倒的にこっちのほうが多い。マンションだと隣の人の顔も知らなかったりしますよね。

僕と家内は、この暮らしが気に入っています。いつの間にか、家内も近所のおばあちゃん達とアドレス交換してました(笑)。

何を求めて移住するのか?

ーー移住を考える人へのアドバイスをお願いします

自分たちがなぜ、移住をしたいのか。移住の目的を明確にするのが大事なんじゃないでしょうか。僕の場合は、家族と過ごす時間を増やすことでした。こちらに来てからもバタバタと忙しくしていますが、基本的にお昼ご飯は家に食べに帰るし、夜も飲みに行かず家で過ごすことが多くなったので、家内と一緒にいる時間は圧倒的に長くなりました。

地域おこし協力隊の任期はまもなく終了しますが、この先も僕たち家族はここで生きていくと決めています。

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ーー移住した甲賀市の魅力を教えてください

お茶やもち米の産地だったり、信楽焼があったり、魅力はいろいろありますが、僕は忍者の町をもっと推してもいいと思います。日本全国の中でも、忍者がここまで幅広く活躍した地域は甲賀を筆頭に数都市しかなくて、他には真似できない価値を持っている町です。あまり忍び過ぎずに、全国にアピールしてほしいですね!

ある一日のスケジュール

  • 5時00分コーヒーをゆっくり飲みながら、1日のスタートに備える
先輩移住者インタビュー一覧