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氏名 | 山形 蓮 |
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地域おこし協力隊として 赴任した年月 | 2014年4月 |
現居住地 | 滋賀県東近江市奥永源寺地域 |
前居住地 | 滋賀県彦根市 |
「地域のつながりが強いところで暮らしてみたい。」そう強く感じたのは、東日本大震災発生から1ヶ月後の被災地を訪れた時でした。当時ライフラインが何ひとつ復旧していない中、被災地の暮らしを支えていたのは、国や行政による公助よりも、地域の人たち同士による共助の力でした。その様子を目の当たりにし、自分も地域とのつながりを持った暮らしを実践したいと思ったのが、地域おこし協力隊になる一つの大きなきっかけでした。
今、私は東近江市の最東部、三重県との県境に位置する奥永源寺地域に暮らし、地域の特産品である政所茶の振興に取り組んでいます。
「宇治は茶処、茶は政所」と茶摘み歌にも歌われる政所茶の歴史は古く、約600年前に永源寺の僧侶によってこの地に伝えられました。その最大の特徴は、長い年月受け継がれてきた在来品種の茶樹を大切に守り、地域全体で完全に無農薬栽培を実践している全国でも大変珍しい茶処であるということです。しかし、過疎高齢化や日本茶離れ、そして、山間地での無農薬栽培が重労働であることなどが重なり、生産量は最盛期だった戦前の約30分の1にまで落ち込み、絶滅の危機に瀕しています。そのような中で今、政所茶を守ってこられた地域の方の思いを受け止めながら、未来につないでいくことができないかと、実際に茶畑を借りて茶生産を行いながら、体験イベントの実施や商品開発、イベント等でのPR活動などを行っています。
縁もゆかりもない土地で、土間や”つし”と呼ばれる屋根裏のあるような古民家での一人暮らし。一番近くのスーパーとコンビニは車で20分走った三重県側にあります。どこかへ行ったり、何かを買うのに全て時間がかかるようになりました。”ファスト”な暮らしができなくなった分、天気や四季の変化に合わせた暮らしができるようになりました。そして、私の憧れた”地域とのつながりを持った暮らし”というものは良くも悪くも想像以上でした。買い物に行く必要がないほど、いろんな”お裾分け”をいただきます。知恵と愛情の込められたお裾分けはとても嬉しいものです。地域のしきたりで分からないことは、近所の方に聞けば丁寧に教えてくれます。
一方で、暮らしのあらゆる場面で干渉を受けるのも確かです。それを嬉しく感じる日もあれば、少し息苦しく感じる時もあります。悩むこともありますが、今は「私も地域も、慣れるまでに時間がかかって当然」と思うようになりました。結果を急がず、ゆっくりとこの地域に馴染んでいくことができたらと思います。