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滋賀に気づいた人INTERVIEW#07 安井龍之介さん

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「明治から続く伝統産業『八幡靴』の将来を担う若き移住者」

小さい頃から手先を動かし何かを作るのが好きだった安井さん。手に職をつけたいと八幡靴の工房「コトワ靴製作所」の門を叩いたのは2年前のことでした。八幡靴は明治から続く近江八幡の伝統産業で、熟練の職人が繊細な足の形に合わせて作るオーダーメイドシューズ。抜群の履き心地とオリジナルデザインが人気で全国から注文が届きます。

熟練の技が生み出す世界にひとつだけの靴

__八幡靴について教えていただけますか。

近江八幡市八幡町では明治時代から靴作りが盛んで、「八幡靴」は手縫いの高級靴として知られていました。最盛期には靴工房がこの地域に数百軒以上あったそうですが、ゴム底の安い靴の流通でどんどん廃業していき、いまでは「コトワ靴製作所」だけになってしまったそうです。

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その現状を知り、靴のバリエーションを増やし、ネットでも注文できるようにして、八幡靴を生まれ変わらせたのが僕の勤める「リバーフィールド」の社長なんです。デザイン性が高く、本革を使った足にぴったりのオーダーメイドシューズは、近江八幡のふるさと納税の返礼品に選ばれたりもして再び人気が高まりました。

今は日本全国から注文があって、とても忙しいです。でも、熟練の職人さんは高齢化していて無理もできないので、僕たちが見習いという形で教わりながらサポートし、伝統技術を絶やさないよう日々努力しています。

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__靴を作る工程は?

昔は木型だったそうですが、いまはお客さんの足形を3Dプリンターでとらせてもらいます。人間の足って左右で長さや形が微妙に違うんですよ。だからこそぴったり足に合う靴は、一点ものの手作りでないと実現できないんです。

八幡靴は分業制で、一枚の革を裁断し、ミシンで縫って、靴の形に立ち上げて行く“甲革づくり”と、出来上がった甲革に靴底を縫い付ける“底付けづくり”があります。今、僕が担当しているのは、底付けの作業です。

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底も革でできているのが八幡靴の特徴のひとつ。底をとりつけた後は、包丁やヤスリで丁寧に何度も削って滑らかにします。底は人目にはあまり触れない部分ですが、靴作りの仕上げの工程。だからこそ手を抜かず心を込めて丁寧に仕上げています。

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ムエタイ選手からの転身!寡黙な職人の姿に憧れて

__靴職人を目指そうと思ったきっかけは?

高校卒業後、1年間だけと決めてタイへ行きました。下宿先がムエタイジムだったこともあり、向こうではムエタイ選手として試合にでたりもしていました(笑)。帰国後、この先何をやりたいかと考えたときに、手に職をつけたいと思って。たまたま親戚が「コトワ靴製作所」を紹介してくれたので、見学に行ったんですよ。その時、黙々と手を動かしている靴職人さんがすごくカッコよく見えて…。「ここで靴職人になる!」と決めました。

__実際に仕事をしてみてどうですか?

いまは僕を含め、5人の若手職人が見習い中です。そのうち4人は僕のように他府県から移住してきた人。みんな八幡靴の靴作りを極めたくて滋賀にやってきました。
仕事中はコツコツ黙々と…といった感じですが、その空気がものづくりをしているって感じがして好きです。基本的に「見て覚えろ」スタイルですが、わからないところは聞けばやさしく教えてくれます。あまり叱られたこともないですね。

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__先輩職人さんから安井さんは筋がいいとお聞きしましたが…

そういってもらえると嬉しいです!僕は1年くらいでひと通りの仕事を覚えさせてもらいました。個人差はあると思いますが、やる気があれば上達も早いのではないでしょうか。
とは言え、すごく奥深い世界なのでまだひと通りできるようになっただけ。極めるにはまだまだ時間が必要です。

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のんびりとした滋賀の暮らしがお気に入り

__滋賀での暮らしはいかがですか?

はじめて来たときは田舎だな、と(笑)。でも、タイでの経験のおかげで、どこでも暮らせる自信がありました。車の免許を持っていないので、どこへ行くにも歩いていきます。歩いているとすごく自然を感じますね。両親が名古屋から滋賀へ遊びにきたときに琵琶湖岸をドライブしたんですが、やっぱり琵琶湖は大きくて、すごくきれいでした。
古着が好きなので休日には大阪のアメリカ村へよく遊びに行きます。大阪へのアクセスがいいのもいいですよね。

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滋賀から広がる夢、いつかは自分の店を

__やりがいを感じる瞬間は?

それはもう1足の靴ができあがった瞬間ですよね。特にいまは底付けを担当しているのでなおさらです。逆に失敗してしまうとつらいですよね。ここの工程までに関わった人の仕事を無駄にしてしまうことになってしまう…。ここではひとりでなくみんなで作り上げている感じがします。
これからはミシンを使う甲革の仕事もやっていきたいです。平面を立体にするのが難しいですが、靴の顔が決まる瞬間でもあるので、やりがいを感じられます。

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__将来の夢は?

自分の店を持ちたいと思っています。自分で靴のデザインとかもできたらいいですね。お店を出す場所は正直どこでもいいと思っています。手に職があればどこでも生きていけますから。でも、今はここで頑張って、八幡靴の伝統や良さをしっかりと学んで行きたいです。

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ある一日のスケジュール

  • 7時30分起床 朝ご飯・お弁当を作る
先輩移住者インタビュー一覧