○滋賀県犯罪被害者等支援条例
平成30年3月29日
滋賀県条例第6号
滋賀県犯罪被害者等支援条例をここに公布する。
滋賀県犯罪被害者等支援条例
(目的)
第1条 この条例は、犯罪被害者等が再び平穏な生活を営むことができるようになるためには、犯罪被害者等を社会全体で支えることが重要であることに鑑み、犯罪被害者等支援に関し、基本理念を定め、および県、県民、事業者、民間支援団体等の責務を明らかにするとともに、犯罪被害者等支援に関する施策の基本となる事項を定め、犯罪被害者等支援に関する施策を総合的かつ計画的に推進することにより、犯罪被害者等が受けた被害を早期に回復し、および軽減して、再び平穏な生活を営むことができるようにし、もって県民が安心して暮らすことができる社会の実現に寄与することを目的とする。
(1) 犯罪等 犯罪およびこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす行為をいう。
(2) 犯罪被害者等 犯罪等により被害を受けた者およびその家族または遺族をいう。
(3) 犯罪被害者等支援 犯罪被害者等が、その受けた被害を早期に回復し、または軽減して、再び平穏な生活を営むことができるようにするための取組をいう。
(4) 民間支援団体 犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律(昭和55年法律第36号)第23条第1項に規定する犯罪被害者等早期援助団体その他の犯罪被害者等支援を行うことを目的とする民間の団体をいう。
(基本理念)
第3条 犯罪被害者等支援は、次に掲げる事項を基本理念として行われなければならない。
(1) 犯罪被害者等の個人としての尊厳を重んじ、その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を尊重するとともに、個人情報の不適切な取扱い、配慮に欠けた言動等により、犯罪被害者等に対し更なる被害を与えることのないよう十分配慮すること。
(2) 犯罪被害者等が受けた被害の状況および原因、犯罪被害者等の置かれている状況その他の事情に応じ、国、県、市町および県民等(県民、事業者および民間支援団体その他の関係者をいう。以下同じ。)が相互に連携し、および協力すること。
(3) 犯罪被害者等が被害を受けたときから再び平穏な生活を営むことができるようになるまでの間、当該犯罪被害者等の立場に立った適切かつきめ細かな支援を途切れることなく提供すること。
(県の責務)
第4条 県は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、犯罪被害者等支援に関する施策を総合的に策定し、および実施するものとする。
2 県は、犯罪被害者等支援に関する施策の策定および実施に当たっては、国、市町および県民等と連携し、および協力するとともに、県民等に対し、情報の提供、助言その他の必要な支援を行うものとする。
3 県は、犯罪被害者等支援において市町が果たす役割の重要性に鑑み、市町が犯罪被害者等支援に関する施策を策定し、および実施しようとするときは、必要な情報の提供、助言または連絡調整を行うものとする。
(県民の責務)
第5条 県民は、基本理念にのっとり、犯罪被害者等の置かれている状況および犯罪被害者等支援の必要性についての理解を深め、犯罪被害者等の名誉または生活の平穏を害することのないよう十分配慮するとともに、県が実施する犯罪被害者等支援に関する施策に協力するよう努めなければならない。
(事業者の責務)
第6条 事業者は、その事業活動を行うに当たっては、基本理念にのっとり、犯罪被害者等の置かれている状況および犯罪被害者等支援の必要性についての理解を深め、犯罪等による被害を理由とした不利益な取扱いをすること等がないよう十分配慮するとともに、県が実施する犯罪被害者等支援に関する施策に協力するよう努めなければならない。
(民間支援団体の責務)
第7条 民間支援団体は、基本理念にのっとり、その有する専門的な知識および経験を活用し、犯罪被害者等支援を推進するよう努めるとともに、県が実施する犯罪被害者等支援に関する施策に協力するよう努めなければならない。
(支援従事者の責務)
第8条 支援従事者(犯罪被害者等からの相談を受ける者その他の犯罪被害者等支援に関連する業務に従事する者をいう。以下同じ。)は、その業務に従事するに当たっては、基本理念にのっとり、自らの配慮に欠けた言動により、犯罪被害者等に対し更なる被害を与えるおそれがあることを十分理解するとともに、犯罪被害者等が受けた被害の早期の回復および軽減に資するよう適切な対応を行わなければならない。
(推進計画)
第9条 知事は、犯罪被害者等支援に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るための計画(以下この条において「推進計画」という。)を定めるものとする。
2 推進計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。
(1) 犯罪被害者等支援に関する施策の基本的な考え方
(2) 犯罪被害者等支援に関する具体的な施策
(3) 前2号に掲げるもののほか、犯罪被害者等支援に関する施策を推進するために必要な事項
3 知事は、推進計画を定めようとするときは、あらかじめ県民等の意見を反映することができるよう、必要な措置を講ずるものとする。
4 知事は、推進計画を定めたときは、遅滞なく、これを公表するものとする。
5 前2項の規定は、推進計画の変更(軽微な変更を除く。)について準用する。
(総合的支援体制の整備)
第10条 県は、国、市町および県民等と連携し、および協力して、犯罪被害者等が被害を受けたときから再び平穏な生活を営むことができるようになるまでの間の必要な犯罪被害者等支援を一体となって推進するための総合的な支援体制(次項において「総合的支援体制」という。)を整備するものとする。
(滋賀県犯罪被害者等支援推進協議会)
第11条 県および関係行政機関等は、犯罪被害者等支援に関し必要な協議および連絡調整を行うため、滋賀県犯罪被害者等支援推進協議会(次項において「協議会」という。)を組織することができる。
2 前項に定めるもののほか、協議会の組織および運営に関し必要な事項は、協議会が定める。
(人材の養成等)
第12条 県は、犯罪被害者等支援の充実を図るため、犯罪被害者等からの相談の業務その他の犯罪被害者等支援に従事する人材を養成するために必要な施策を講ずるものとする。
2 県は、支援従事者が自らの配慮に欠けた言動により、犯罪被害者等に対し更なる被害を与えることがないよう、ならびに犯罪被害者等が受けた被害の早期の回復および軽減に資する適切な支援を行うことができるよう、犯罪被害者等支援に係る研修の実施その他の必要な施策を講ずるものとする。
(民間支援団体等に対する支援)
第13条 県は、民間支援団体が行う犯罪被害者等支援に関する事業の円滑な実施を図るため必要があると認めるときは、当該民間支援団体に対し、必要な情報の提供、助成その他の支援を行うことができる。
2 県は、支援従事者がその業務に従事する過程において受ける心理的な負担を軽減することができるよう、支援従事者に対する心理相談の実施その他の必要な施策を講ずるものとする。
(相談窓口の設置、情報の提供等)
第14条 県は、犯罪被害者等が再び平穏な生活を営むことができるよう、総合的な相談窓口の設置、経済的な助成に関する情報その他の必要な情報の提供、犯罪被害者等の援助に精通している者の紹介その他の必要な施策を講ずるものとする。
(保健医療サービスの提供等)
第15条 県は、犯罪被害者等が心身に受けた影響から早期に回復できるよう、心理相談等心身の状況に応じた保健医療サービスおよび福祉サービスの提供その他の必要な施策を講ずるものとする。
(安全の確保のための施策)
第16条 県は、犯罪被害者等が更なる犯罪等により被害を受けることを防止し、その安全を確保するため、一時保護、施設への入所による保護、防犯に係る指導および助言、犯罪被害者等に係る個人情報の適切な取扱いの確保その他の必要な施策を講ずるものとする。
(居住の安定を図るための施策)
第17条 県は、犯罪等により従前の住居に居住することが困難となった犯罪被害者等の居住の安定を図るため、県営住宅(滋賀県営住宅の設置および管理に関する条例(昭和34年滋賀県条例第31号)第2条第1号に規定する県営住宅をいう。)への入居において特別の配慮を行うほか、必要な施策を講ずるものとする。
(雇用の安定等を図るための施策)
第18条 県は、犯罪被害者等の雇用の安定を図るため、犯罪被害者等に対する就労支援その他の必要な施策を講ずるものとする。
2 県は、事業者が犯罪被害者等の置かれている状況および犯罪被害者等支援の必要性についての理解を深め、犯罪被害者等を支えるための職場環境の整備改善その他の犯罪被害者等支援を促進できるよう、情報の提供その他の必要な施策を講ずるものとする。
(啓発等)
第19条 県は、県民が犯罪被害者等の置かれている状況および犯罪被害者等支援の必要性についての理解を深めることができるよう、啓発活動その他の必要な施策を講ずるものとする。
(学校における教育)
第20条 県は、学校において、犯罪被害者等の置かれている状況および犯罪被害者等支援の必要性についての理解を深めることに資する教育が行われるよう、講師の派遣その他の必要な施策を講ずるものとする。
(財政上の措置)
第21条 県は、犯罪被害者等支援に関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。
付則
この条例は、平成30年4月1日から施行する。