○滋賀県スポーツ推進条例
平成27年12月14日
滋賀県条例第60号
滋賀県スポーツ推進条例をここに公布する。
滋賀県スポーツ推進条例
目次
前文
第1章 総則(第1条―第7条)
第2章 スポーツ推進計画等(第8条・第9条)
第3章 スポーツの推進に関する施策の推進(第10条―第24条)
第4章 財政上の措置(第25条)
付則
スポーツは、心身の健康の保持増進や体力の向上に重要な役割を果たすだけではなく、人々に夢や感動を与え、精神的な充足感や楽しさ、喜びをもたらすなど、明日への活力をもたらす大きな力を持っており、生きる力となっている。
特に、次代を担う子どもたちにとって、スポーツは、何事にもくじけない心や公正さと規律を尊重する精神を培い、他人に対する思いやりや感謝、豊かな心を育むなど、人格の形成に大きく寄与している。
このようなスポーツが持つ力を最大限に活用して、障害の有無にかかわらず、体力、年齢、適性、健康状態等に応じて、生涯にわたり身近にスポーツに親しみ、またはスポーツを楽しみ、未来を開くたくましい人づくりを進めていくとともに、スポーツによる交流を通じて、地域に誇りや愛着を持ち、活力ある地域づくりを進めていくことが必要である。
私たちは、県民一人ひとりがスポーツの重要性を理解し、琵琶湖をはじめとする豊かな自然環境、観光資源等を活用しつつ、身近にスポーツに親しみ、またはスポーツを楽しむこと等により、心身の健康の保持増進や体力の向上を通じて健康寿命の延伸を図り、豊かで潤いのある県民生活の形成および活力ある地域社会の実現ができるよう、スポーツを推進していくことを決意し、ここに滋賀県スポーツ推進条例を制定する。
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、スポーツの推進に関し、基本理念を定め、県の責務ならびに県民、事業者およびスポーツ団体(スポーツの推進のための活動を行うことを主たる目的とする団体をいう。以下同じ。)その他関係者(以下「スポーツ団体等」という。)の役割を明らかにするとともに、スポーツの推進に関する施策の基本となる事項を定めることにより、スポーツの推進に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって県民の心身の健康の保持増進を通じて健康寿命の延伸を図り、豊かで潤いのある県民生活の形成および活力ある地域社会の実現に寄与することを目的とする。
(基本理念)
第2条 スポーツの推進は、次に掲げる事項を基本理念として行われなければならない。
(1) 心身の健康の保持増進および体力の向上を通じて健康寿命の延伸を図ることができるよう、県民一人ひとりがスポーツの重要性を理解し、生涯にわたりその体力、年齢、適性、健康状態等に応じて身近にスポーツに親しみ、またはスポーツを楽しむことができること。
(2) 子ども(満18歳に満たない者をいう。以下同じ。)が健全な心身を培うとともに、豊かな人間性を育み、または規範意識を醸成することができるようにすること。
(3) 障害者が自主的かつ積極的にスポーツを行うことができるよう、障害の種類および程度に応じ、必要な配慮または支援を行うこと。
(4) 県のスポーツ選手(県内に活動の拠点を置き、または現に居住し、もしくは居住していたスポーツ選手をいう。以下同じ。)がスポーツの競技会において優秀な成績を収めることができるよう、スポーツに関する競技水準(以下「競技水準」という。)を向上させるとともに、優秀な県のスポーツ選手、その指導者その他スポーツの推進を担う専門的な知識および技術を有する者(以下「優秀な県のスポーツ選手等」という。)を育成すること。
(5) 県民一人ひとりが公平かつ公正な環境の下でスポーツ活動を行うことができるよう、多様なスポーツ活動に参加する機会の提供、スポーツ施設(スポーツの設備を含む。以下同じ。)の整備その他スポーツの推進を図るために必要な環境の整備を図ること。
(6) スポーツを通じ、地域の特性に応じた世代間および地域間における交流を促進し、地域の一体感および協働の意識を醸成するとともに、県、県民、市町、事業者、大学およびスポーツ団体等が相互に連携を図りながら協働することにより、地域の活性化を図ること。
(7) 琵琶湖をはじめとする豊かな自然環境、観光資源等を活用し、地域の特性を生かしたスポーツを重点的に推進すること。
(県の責務)
第3条 県は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、スポーツの推進に関する施策を総合的に策定し、および計画的に実施するものとする。
2 県は、スポーツの推進に関する施策の策定および実施に当たり、県民、市町、事業者、大学およびスポーツ団体等に対し、情報の提供、助言その他の必要な支援を行うものとする。
(県民の役割)
第4条 県民は、基本理念にのっとり、スポーツに対する関心および理解を深めるとともに、日常生活においてスポーツに親しみ、またはスポーツを楽しむことにより、心身の健康の保持増進および体力の向上に努めるものとする。
2 子どもの保護者は、基本理念にのっとり、子どもが心身の健康の保持増進のためにスポーツ活動に参加できるように配慮するとともに、幼児期からの子どもの心身の健康の保持増進および体力の向上、地域におけるスポーツ活動への協力その他子どものスポーツ活動を推進するために必要な取組を行うよう努めるものとする。
3 県民は、県が実施するスポーツの推進に関する施策に協力するよう努めるものとする。
(事業者の役割)
第5条 事業者は、基本理念にのっとり、従業者のスポーツ活動への参加の促進、スポーツを通じた従業者の運動を行う習慣の定着および健康づくりの推進、スポーツ活動に係る支援体制の構築等を図ることにより、スポーツの推進に積極的な役割を果たすよう努めるものとする。
2 事業者は、その事業活動を行うに当たっては、県が実施するスポーツの推進に関する施策に協力するよう努めるものとする。
(スポーツ団体等の役割)
第6条 スポーツ団体等は、基本理念にのっとり、スポーツの普及、スポーツ活動の充実、競技水準の向上等を図るため、スポーツの推進に資する活動に自主的かつ主体的に取り組むように努めるものとする。
2 スポーツ団体等は、県が実施するスポーツの推進に関する施策に協力するよう努めるものとする。
(市町等との連携協力等)
第7条 県は、スポーツの推進に関する施策の推進に当たっては、市町および市町が委嘱するスポーツ推進委員(スポーツ基本法(平成23年法律第78号)第32条第1項の規定によるスポーツ推進委員をいう。)との連携協力を図るものとする。
2 県は、市町がスポーツの推進に関する施策を策定し、および実施するときは、必要な情報の提供、助言、支援または調整を行うものとする。
3 県、県民、市町、事業者、大学およびスポーツ団体等は、スポーツの推進を図るため、相互に連携を図りながら協働するよう努めるものとする。
第2章 スポーツ推進計画等
(スポーツ推進計画)
第8条 県は、スポーツの推進に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るための計画(以下「スポーツ推進計画」という。)を策定するものとする。
2 スポーツ推進計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。
(1) スポーツの推進に関する基本的な方針
(2) スポーツの推進に関する施策の長期的な目標
(3) スポーツの推進に関し、県が総合的かつ計画的に講ずべき施策
(4) 前3号に掲げるもののほか、スポーツの推進に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項
3 県は、スポーツ推進計画の策定に当たっては、あらかじめ、県民、市町、事業者、大学およびスポーツ団体等の意見を反映することができるよう、必要な措置を講じなければならない。
4 県は、スポーツ推進計画の策定に当たっては、あらかじめ、滋賀県スポーツ推進審議会の意見を聴かなければならない。
5 県は、スポーツ推進計画を策定したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
6 県は、スポーツの推進に関する施策の進捗状況を踏まえ、おおむね5年ごとに、スポーツ推進計画を変更するものとする。
(実施状況の報告等)
第9条 県は、毎年度、スポーツ推進計画に基づく施策に係る実施状況を議会に報告するとともに、公表しなければならない。
第3章 スポーツの推進に関する施策の推進
(生涯にわたるスポーツ活動の推進)
第10条 県は、県民一人ひとりが生涯にわたり体力、年齢、適性、健康状態等に応じて身近にスポーツに親しみ、またはスポーツを楽しむことができるようにするため、多様なスポーツ活動に参加する機会の提供、地域においてスポーツ活動を行うための環境の整備その他の県民の生涯にわたるスポーツ活動の推進を図るために必要な措置を講ずるものとする。
(県民参加の促進等)
第11条 県は、広報活動、啓発活動等を通じて、スポーツの重要性に対する県民の関心および理解を深めるとともに、体力、年齢、適性、健康状態等に応じて、スポーツ活動に参加しようとする意欲を高め、県民のスポーツ活動への参加を促進するものとする。
2 県は、スポーツ活動の活性化を図るため、スポーツ活動への参加だけでなく、スポーツを観覧し、または県のスポーツ選手その他スポーツを行う者に対する応援もしくはスポーツに対する幅広い支援を行う社会的気運を高め、県民の一体感および協働の意識が醸成されるよう必要な措置を講ずるものとする。
3 県は、総合型地域スポーツクラブをはじめとする地域スポーツクラブ(地域において県民が主体的に運営するスポーツ団体をいう。以下同じ。)への活動の支援および参加の促進、地域が行うスポーツ活動への支援、県のスポーツ選手等との交流の促進、スポーツとして行われるレクリエーション活動に参加する機会の提供その他県民のスポーツ活動への参加を促進するために必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
(県民の心身の健康の保持増進等)
第12条 県は、県民のスポーツ活動を通じた心身の健康の保持増進および体力の向上ならびに疾病の予防、高齢者の介護予防等のための健康づくりを推進し、健康寿命の延伸を図るため、日常生活において運動を行う習慣の増進および適切な休養の取得に向けた取組、栄養の管理および食習慣の改善に係る啓発、スポーツを通じた心身の健康づくりに関する適切な情報の提供その他心身の健康づくりを推進するために必要な措置を講ずるものとする。
(子どものスポーツ活動の推進)
第13条 県は、子どもの心身の健康の保持増進および体力の向上を図るため、スポーツ活動に参加する機会の提供、幼児期からの子どもの心身の健康の保持増進および体力の向上に向けた取組の促進、スポーツに関する指導者の確保および養成その他の子どものスポーツ活動の推進を図るために必要な措置を講ずるものとする。
2 県は、幼児期からの子どものスポーツ活動の充実に向けた取組を促進するため、学校、家庭および地域ならびにスポーツ団体と連携して必要な施策を講ずるものとする。
(学校におけるスポーツ活動の推進)
第14条 県は、学校における子どもの心身の健康の保持増進および体力の向上を図るため、子どものスポーツ活動の充実に向けた取組の促進、学校における運動部活動等のスポーツ活動の推進および体育の充実、スポーツに関する教員の資質の向上、地域におけるスポーツの指導者の確保および活用その他の学校におけるスポーツ活動の推進を図るために必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
2 県は、学校における体育、運動部活動等の充実を図るため、教職員の資質の向上に努めるとともに、教員による指導の充実、地域における指導者の活用および環境の整備、地域におけるスポーツ活動との連携の強化その他学校における体育、運動部活動等の充実を図るために必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
(障害者のスポーツ活動の推進)
第15条 県は、障害に対する県民の理解を深め、障害者の社会参加を積極的に促進するため、障害の種類および程度に応じた障害者のスポーツ活動への参加の機会の提供、障害者がスポーツ活動を行うための環境の整備、障害者の競技水準の向上、障害者のスポーツ活動に携わる人材の育成その他の障害者のスポーツ活動の推進を図るために必要な措置を講ずるものとする。
(自然環境等を活用したスポーツ活動の推進)
第16条 県は、琵琶湖をはじめとする豊かな自然環境、観光資源等を活用し、地域の特性を生かしたスポーツに重点的に取り組むことができるようにするため、ボート、セーリング、カヌーその他琵琶湖等において行われるスポーツ活動への参加の促進、当該スポーツ活動を行うための環境の整備その他豊かな自然環境、観光資源等を活用したスポーツ活動の推進を図るために必要な措置を講ずるものとする。
(スポーツの推進を通じた地域の活性化)
第17条 県は、スポーツの推進を通じて、世代間および地域間の交流を促進し、地域の一体感および協働の意識を醸成するとともに、関係者が相互に連携を図りながら協働することにより、地域の活性化を図ることができるようにするため、県民と県のスポーツ選手等との交流、地域の特性に応じたスポーツの推進に関する取組への支援、スポーツの各種の競技会等の開催または誘致、スポーツを通じた国際的な交流の促進、スポーツに関連する産業の振興、地域スポーツクラブへの参加の促進その他のスポーツの推進を通じた地域の活性化を図るために必要な措置を講ずるものとする。
(人材の育成、資質の向上等)
第18条 県は、スポーツの推進に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、優秀な県のスポーツ選手等の育成、スポーツの推進に関わる者に対する研修の実施その他スポーツの推進に関わる者の資質の向上を図るために必要な措置を講ずるものとする。
(競技水準の向上)
第19条 県は、県のスポーツ選手の競技水準の向上を図り、県のスポーツ選手が国際的または全国的な規模のスポーツの競技会において優秀な成績を収めることができるようにするため、県のスポーツ選手およびその指導者の計画的な育成その他の競技水準の向上を図るために必要な措置を講ずるものとする。
2 県は、県のスポーツ選手がスポーツの競技会においてその能力を最大限に発揮することができるようにするため、県のスポーツ選手に対する練習のための環境の整備ならびに栄養の指導および管理、スポーツに関する科学的知見の活用の促進その他県のスポーツ選手が能力を最大限に発揮するために必要な措置を講ずるものとする。
3 県は、スポーツの普及および競技水準の向上を図るために事業者、大学等が行うスポーツへの支援に対し、必要な措置を講ずるものとする。
4 県は、スポーツによる事故その他スポーツによって生じる外傷、障害等の防止およびこれらの軽減を図るため、県のスポーツ選手の心身の健康の保持増進および安全の確保、指導者等の研修、スポーツ活動に伴う事故の防止に関する啓発および知識の普及、スポーツドクター(スポーツによる事故等の治療等に携わる専門的な知識および技能を有する医師をいう。)等の活用の促進その他スポーツによる事故等の防止および軽減を図るために必要な措置を講ずるものとする。
(施設の整備等)
第20条 県は、県民のスポーツ活動への参加の促進およびスポーツ活動を通じた交流の促進を図るため、スポーツ施設の整備および管理を行うものとする。
2 県は、前項の規定によりスポーツ施設の整備および管理を行うに当たっては、民間の資金等を活用するよう努めるとともに、当該スポーツ施設の利用の実態等に応じて、安全の確保および障害者等の利便性の向上を図るよう努めるものとする。
3 県は、県が設置する学校その他の施設をスポーツ活動の場として有効に活用できるよう努めるものとする。
(普及啓発等)
第21条 県は、県民がスポーツに対する関心および理解を深め、日常生活においてスポーツを行う意欲を高めるため、スポーツの推進に向けた普及啓発、多様な学習の機会の提供その他県民がスポーツに対する関心および理解を深め、スポーツを行う意欲を高めるために必要な措置を講ずるものとする。
(調査分析等)
第22条 県は、スポーツの推進に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、定期的にスポーツの推進に関する実態について調査を行い、当該調査に係る情報および資料を分析し、ならびに提供するものとする。
(顕彰)
第23条 県は、スポーツで顕著な成果を収めた者およびスポーツの推進に寄与した者を顕彰するものとする。
(推進体制の整備)
第24条 県は、スポーツの推進に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、体制の整備その他必要な措置を講ずるものとする。
第4章 財政上の措置
第25条 県は、スポーツの推進に関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。
付則
1 この条例は、公布の日から施行する。