○滋賀県自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例

平成28年2月26日

滋賀県条例第1号

滋賀県自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例をここに公布する。

滋賀県自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例

目次

前文

第1章 総則(第1条―第7条)

第2章 自転車交通安全教育(第8条―第11条)

第3章 自転車の安全で適正な利用に関する取組(第12条―第18条)

第4章 財政上の措置(第19条)

付則

自転車は、温室効果ガスを出さない環境負荷の低い身近な移動手段であり、高齢化の進展等を背景とした健康の保持増進や体力の向上といった意識の高まりを受け、その利用の必要性が高まり、その役割は一層大きくなってきている。

環境の保全、健康寿命の延伸、観光資源の開発、高齢化社会に向けての移動手段の確保などに寄与する点において、自転車は、未来を開くことができる魅力的な乗り物である。

一方で、自転車は、身近な移動手段であるゆえに、車両という認識が薄くなりがちであり、歩道等において自転車関係法令を遵守せず、歩行者に危害を及ぼすおそれのある自転車の利用等が増加していること等から、自転車利用者だけでなく、歩行者の大切な命を守っていくためには、交通安全に関する教育を通じて、交通安全の意識の向上や事故への備えを進めるとともに、自転車が安全で快適に利用することができるように道路等の環境を整備していくことが必要である。

自転車は常に大切な命を乗せ、大切な命と関わっていることを念頭に置きながら、自転車の身近な移動手段という魅力を引き出し、自転車の持つ価値を更に高め、新たな価値を創造し、その地位の向上を図っていくとともに、自転車に関して県が先導的な役割を担い、先進的な取組を実施することにより、自転車利用者の意識や自転車に対する認識を根本的に変えていき、これらを普及させて、滋賀発の自転車、自動車および歩行者が互いに尊重することができる社会づくりを進めていくことが何より重要である。

私たちは、県民一人ひとりが、自転車の安全で適正な利用の重要性を理解し、環境の保全や観光の振興に資すると認められる等の自転車の特性を最大限に活用しつつ、関係者が連携を図りながら協働して自転車の安全で適正な利用の促進に関する運動を展開すること等により、自転車の安全で適正な利用のための環境が整備され、自転車が関係する交通事故の防止を図り、県民が安心して暮らすことのできる地域社会の実現ができるよう、自転車の安全で適正な利用を促進していくことを決意し、ここに滋賀県自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例を制定する。

第1章 総則

(目的)

第1条 この条例は、自転車の安全で適正な利用の促進に関し、県の責務ならびに県民、事業者および交通安全団体等の役割を明らかにするとともに、環境への負荷の低減等の環境の保全に資し、または新たな旅行分野の開拓等の観光の振興に資すると認められる等の自転車の特性を最大限に活用しつつ、関係者が連携を図りながら協働して自転車の安全で適正な利用の促進に関する運動を展開すること等により、自転車の安全で適正な利用の促進に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって自転車が関係する交通事故の防止を図り、県民が安心して暮らすことのできる地域社会の実現に寄与することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

(1) 自転車 道路交通法(昭和35年法律第105号。以下「法」という。)第2条第1項第11号の2に規定する自転車

(2) 交通安全団体等 交通安全に関する活動を行う団体および自転車の適正な利用の促進に関する活動を行う団体

(3) 市町等 市町、県民、事業者および交通安全団体等

(4) 自転車関係法令 自転車の利用に関する法その他の関係法令

(5) 自転車交通安全教育 自転車関係法令の遵守その他の自転車の安全で適正な利用に関する教育

(6) 自転車利用者 自転車を利用する者

(7) 自転車損害賠償保険等 自転車の利用に係る事故により生じた損害を賠償するための保険または共済

(県の責務)

第3条 県は、自転車が関係する交通事故の防止を図るとともに、環境への負荷の低減等の環境の保全に資し、または新たな旅行分野の開拓等の観光の振興に資すると認められる等の特性を最大限に活用した自転車の利用ができるよう、自転車の安全で適正な利用の促進に関する施策を総合的に策定し、および実施するものとする。

2 県は、自転車の安全で適正な利用の促進に関する施策の策定および実施に当たり、市町等に対し、情報の提供、助言その他の必要な支援を行うものとする。

(県民の役割)

第4条 県民は、自転車の安全で適正な利用に関する知識および理解を深め、自転車関係法令の遵守、自転車の利用に関する知識および技能の習得、環境への負荷の低減等の環境の保全に資する自転車の日常生活への利用、家庭、職場、学校、地域等における自転車の安全で適正な利用の啓発その他自転車の安全で適正な利用に関する取組を自主的かつ積極的に行うよう努めるものとする。

2 県民は、自動車等(法第2条第1項第9号に規定する自動車および同項第10号に規定する原動機付自転車をいう。以下同じ。)を運転する場合には、自転車が車両(法第2条第1項第8号に規定する車両をいう。以下同じ。)であることを認識して、歩行者、自転車および自動車等がそれぞれ道路を安全に通行することができるように配慮するよう努めるものとする。

3 県民は、国、県および市町が実施する自転車の安全で適正な利用の促進に関する施策に協力するよう努めるものとする。

(事業者の役割)

第5条 事業者は、自転車の安全で適正な利用に関する知識および理解を深め、その従業者に対する自転車関係法令の遵守に関する啓発、環境への負荷の低減等の環境の保全に資する観点からの自転車の事業活動および通勤への利用その他事業活動を通じた自転車の安全で適正な利用の促進に関する取組を自主的かつ積極的に行うよう努めるものとする。

2 事業者は、国、県および市町が実施する自転車の安全で適正な利用の促進に関する施策に協力するよう努めるものとする。

(交通安全団体等の役割)

第6条 交通安全団体等は、自転車関係法令の遵守に関する啓発、自転車の安全で適正な利用の気運を醸成するための活動その他自転車の安全で適正な利用の促進に資する活動を積極的に推進するよう努めるものとする。

2 交通安全団体等は、国、県および市町が実施する自転車の安全で適正な利用の促進に関する施策に協力するよう努めるものとする。

(市町等との連携協力、運動の展開等)

第7条 県は、自転車の安全で適正な利用の促進に関する施策の推進に当たっては、市町等と相互に連携協力を図るとともに、当該市町等とともに協働して行う自転車の安全で適正な利用の促進に関する運動を効果的かつ計画的に展開するものとする。

2 県は、自転車の安全で適正な利用の促進を図る上で市町が果たす役割の重要性に鑑み、市町が自転車の安全で適正な利用の促進に関する施策を策定し、および実施するときは、必要な情報の提供、助言、支援または調整を行うものとする。

第2章 自転車交通安全教育

(県民に対する自転車交通安全教育)

第8条 県は、県民に対し、自転車交通安全教育を行うものとする。

2 県は、自動車等の運転免許を受けた者に対して自転車交通安全教育を行うときは、歩行者および自転車が道路を安全に通行することができるように配慮して運転することを啓発するとともに、講習その他の学習の機会を利用して行うものとする。

3 県は、高齢者に対し、乗車用ヘルメットの着用の推奨その他高齢者の特性に応じた自転車交通安全教育を行うものとする。

(学校における自転車交通安全教育)

第9条 県は、学校(学校教育法(昭和22年法律第26号)第1条に規定する小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校および特別支援学校をいう。第15条第5項において同じ。)において児童および生徒に対する発達の段階に応じた自転車交通安全教育が行われるよう必要な措置を講ずるものとする。

(一部改正〔令和2年条例28号〕)

(家庭および地域における自転車交通安全教育等)

第10条 保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の者で、未成年者を現に監護するものをいう。以下同じ。)は、その監護する未成年者に対し、自転車交通安全教育を行うよう努めるものとする。

2 保護者は、その監護する未成年者が自転車に乗車するときは、乗車用ヘルメットを着用させるよう努めるものとする。

3 高齢者の家族は、当該高齢者に対し、乗車用ヘルメットの着用その他の交通安全対策について助言するよう努めるものとする。

4 地域の住民は、乗車用ヘルメットを着用することが必要な者に対し、乗車用ヘルメットの着用その他の交通安全対策についての必要な助言および技術的な援助を行うよう努めるものとする。

(一部改正〔令和2年条例28号〕)

(事業者による自転車交通安全教育)

第11条 事業者は、自転車を利用して通勤する従業者およびその事業活動において自転車を利用する従業者に対し、自転車交通安全教育を行うよう努めるものとする。

第3章 自転車の安全で適正な利用に関する取組

(自転車の安全で適正な利用)

第12条 自転車利用者は、次に掲げるところにより自転車の安全で適正な利用をしなければならない。

(1) 車両の運転者としての責任を自覚し、自転車関係法令を遵守すること。

(2) 自転車の安全で適正な利用に必要な技能および知識の習得に努めること。

(3) 夜間における前照灯の点灯および自転車関係法令に定める反射器材の備付けを行うこと。

(4) 傘をさし、または携帯電話用装置を使用して運転しないこと。

2 前項に定めるもののほか、自転車利用者は、次に掲げる事項を励行すること等により自転車の安全で適正な利用に努めるものとする。

(1) 歩行者が頻繁に通行する歩道(法第2条第1項第2号に規定する歩道をいう。次号において同じ。)および路側帯(法第2条第1項第3号の4に規定する路側帯をいう。以下同じ。)においては、自転車を押して歩くこと。

(2) 歩道または路側帯を通行する歩行者に対し、自己の進路を確保する目的で警音器を使用しないこと。

(3) 前2号に掲げるもののほか、他人に危害を及ぼし、または迷惑をかけるような運転をしないこと。

(自転車の点検整備および防犯対策)

第13条 自転車利用者は、その利用する自転車を定期的に点検し、必要に応じ整備するよう努めるものとする。

2 自転車利用者は、その利用する自転車について、自転車の安全利用の促進及び自転車等の駐車対策の総合的推進に関する法律(昭和55年法律第87号。以下「自転車安全利用法」という。)第12条第3項に規定する防犯登録を行うほか、自転車の盗難の防止のための施錠を行うものとする。

(自転車損害賠償保険等への加入)

第14条 自転車利用者(未成年者を除く。第5項において同じ。)は、自転車を利用するときは、当該利用に係る自転車損害賠償保険等に加入しなければならない。ただし、当該自転車利用者以外の者により、当該利用に係る自転車損害賠償保険等の加入の措置が講じられているときは、この限りでない。

2 保護者は、その監護する未成年者が自転車を利用するときは、当該利用に係る自転車損害賠償保険等に加入しなければならない。ただし、当該保護者以外の者により、当該利用に係る自転車損害賠償保険等の加入の措置が講じられているときは、この限りでない。

3 事業者は、その事業活動において従業者その他事業に関係する者に自転車を利用させるときは、当該利用に係る自転車損害賠償保険等に加入しなければならない。

4 自転車の貸付けを業とする者(以下「自転車貸付事業者」という。)は、その貸付けの用に供する自転車の利用に係る自転車損害賠償保険等に加入しなければならない。ただし、当該自転車貸付事業者以外の者により、当該利用に係る自転車損害賠償保険等の加入の措置が講じられているときは、この限りでない。

5 県は、自転車利用者、保護者、事業者および自転車貸付事業者の自転車損害賠償保険等への加入を促進するため、自転車損害賠償保険等に関する情報の提供その他必要な措置を講ずるものとする。

(一部改正〔令和2年条例28号〕)

(自転車損害賠償保険等の加入の確認等)

第15条 自転車の小売を業とする者(以下「自転車小売業者」という。)は、自転車を販売するときは、当該自転車を購入しようとする者(以下「自転車購入者」という。)に対し、当該自転車の利用に係る自転車損害賠償保険等の加入の措置の有無を確認しなければならない。

2 自転車小売業者は、前項の規定による確認を行った場合において、当該自転車の利用に係る自転車損害賠償保険等の加入の措置が講じられていることを確認できないときは、当該自転車購入者に対し、自転車損害賠償保険等の加入に関する情報を提供しなければならない。

3 事業者は、自転車を利用して通勤する従業者があるときは、当該従業者に対し、当該利用に係る自転車損害賠償保険等の加入の措置の有無を確認するよう努めなければならない。

4 事業者は、前項の規定による確認を行った場合において、当該従業者の自転車の利用に係る自転車損害賠償保険等の加入の措置が講じられていることを確認できないときは、当該従業者に対し、自転車損害賠償保険等の加入に関する情報を提供するよう努めなければならない。

5 学校、学校教育法第1条に規定する大学、同法第124条に規定する専修学校および同法第134条第1項に規定する各種学校の長は、自転車を利用して通学する児童、生徒または学生があるときは、当該児童、生徒または学生に対し、当該利用に係る自転車損害賠償保険等の加入の措置の有無を確認するよう努めなければならない。

6 第4項の規定は、前項の規定による確認を行った場合について準用する。この場合において、第4項中「当該従業者に」とあるのは、「当該児童、生徒および学生ならびに当該児童および生徒の保護者に」と読み替えるものとする。

7 自転車貸付事業者は、自転車を貸し付けるときは、当該自転車を借り受けようとする者に対し、自らの加入している当該自転車の利用に係る自転車損害賠償保険等の内容に関する情報を提供しなければならない。

(一部改正〔令和2年条例28号〕)

(広報、啓発等)

第16条 県は、自転車の安全で適正な利用の促進について、県民、自転車利用者および事業者の関心および理解を深めることができるよう、必要な広報および啓発を行うものとする。

2 前項の広報および啓発を行うに当たっては、県は、自転車を利用する県外からの観光旅客の関心および理解を深めることができるよう、必要な配慮をするものとする。

(自転車安全利用指導員)

第17条 知事は、自転車の安全で適正な利用を指導するため、自転車安全利用指導員(以下「指導員」という。)を委嘱することができる。

2 指導員は、次に掲げる活動を行う。

(1) 自転車交通安全教育を行うこと。

(2) 自転車の安全で適正な利用に関する広報および啓発を行うこと。

3 指導員は、第12条の定めるところにより自転車の安全で適正な利用を推進するために必要であると認められる場合には、自転車利用者に対し、指導または助言を行うことができる。

(道路環境の整備等)

第18条 県は、自転車の安全で適正な利用の促進を図るため、その管理する道路の保全(除雪、除草等を含む。)を適切に行うとともに、自転車道、自転車歩行者道等の整備、自転車の通行することのできる路側帯、自転車専用の車両通行帯および自転車横断帯の設置その他必要な道路の環境の整備に努めるものとする。

2 県は、市町が行う自転車等駐車場(自転車安全利用法第2条第3号に規定する自転車等駐車場をいう。)に関する整備その他自転車の安全で適正な利用の促進を図るための道路の環境の整備に対する支援その他必要な措置を講ずるものとする。

第4章 財政上の措置

第19条 県は、自転車の安全で適正な利用の促進に関する施策を推進するために必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

(一部改正〔令和4年条例3号〕)

1 この条例は、公布の日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。

(1) 第9条(義務教育学校に係る部分に限る。)の規定 平成28年4月1日

(2) 第14条(第3項を除く。)および第15条の規定 平成28年10月1日

2 県は、滋賀県自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例の一部を改正する条例(令和2年滋賀県条例第28号)の施行後3年を目途として、自転車を取り巻く状況等を勘案し、この条例の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。

(一部改正〔令和2年条例28号〕)

(令和2年条例第28号)

1 この条例は、令和2年10月1日から施行する。ただし、第9条および第15条の改正規定(同条第7項に係る部分を除く。)は、同年4月1日から施行する。

2 この条例の施行の日から令和4年3月31日までの間における改正後の第10条第1項の規定の適用については、同項中「未成年者に」とあるのは、「未成年者(18歳未満の者に限る。次項において同じ。)に」とする。

(令和4年条例第3号)

1 この条例は、令和4年4月1日から施行する。

滋賀県自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例

平成28年2月26日 条例第1号

(令和4年4月1日施行)

体系情報
第11編の2 生活環境/第1章 県民生活
沿革情報
平成28年2月26日 条例第1号
令和2年3月30日 条例第28号
令和4年3月25日 条例第3号