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この指針は、滋賀県立小児保健医療センターにおける医療安全を推進する際の基本的な考え方や、体制を示したものである。
医療安全の確保は医療機関において最も重要な課題の1つである。安全文化を育むためには、職員一人ひとりが安全な医療の実践に真摯に取り組むと同時に、「人は誤りを犯す」という前提に立ち、個人の責任を追及するのではなく、起こった「誤り」に対して原因を究明し、再発防止策を立て、組織全体で安全に取り組むことが重要である。医療の提供には、様々な「人」、医薬品・医療器機をはじめとする「物」、人が働く「組織」、組織を運用する「ソフト」などが必要であるが、これらのシステムを安全性の高いものにするよう、包括的な医療安全管理が必要である。
また、チーム医療(患者を含む)の中で患者の安全を最優先に考え、各職員の役割が発揮できる組織を目指すものである。医療安全の推進には患者の理解と協力も重要であり、必要な情報を提供のうえ、患者が主体的に医療に参加できる環境づくりが必要である。
医療に関わる場所で、医療の全過程において発生するすべての人身事故を「医療事故(アクシデント)」と定義し、患者の転倒による怪我など、医療行為と直接関係しない場合も含む。
また、患者だけでなく注射針の誤刺・咬傷のように、医療従事者に被害が生じた場合も含む。
医療事故は、医療従事者の過誤、過失の有無を問わない。
具体的には、表1医療事故等のレベル3b以上をさす。
医療事故の一類型であって、医療従事者が何らかの落ち度(過失・不注意)によって患者に被害を発生させた行為を「医療過誤」と定義する。
患者に被害を及ぼすことはなかったが、日常診療の現場で、“ヒヤリ”“ハッ”とした経験を有する事例をヒヤリ・ハット(インシデント)と定義する。
これは、以下の表1 医療事故等のレベル0~3aをさす。
医療行為に伴ってある確率で不可避に生じる病気や症状あるいは、最大限の注意を払って最善の治療を施しても予防不可能な症状である。
レベル5 | 死亡 |
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レベル4b | 永続的な障害や後遺症が残り、有意な機能障害や美容上の問題を伴う |
レベル4a | 永続的な障害や後遺症が残ったが、有意な機能障害や美容上の問題を伴わない |
レベル3b | 濃厚な処置や治療を要した |
レベル3a | 軽微な処置や治療を要した |
レベル2 | 処置や治療は不要であった(観察の強化、バイタルサインの軽度変化、安全確認のための検査などの必要性は生じた) |
レベル1 | エラーや医薬品・医療機器用具の不具合が見られた。患者に実施されたが、患者等への有害はなかった |
レベル0 | エラーや医薬品・医療機器用具の不具合が見られたが、患者には実施されなかった |
センターにおける医療安全対策の推進のために、以下の組織を設置する。
医療安全管理対策を総合的に企画、検討、実施、評価するため、医療安全管理委員会を設置する。
委員会の構成員、任務、運営方法等については別に定める。
医療安全管理者および医療機器・医薬品・放射線の安全管理責任者・事務職員で構成する医療安全管理室を設置し、医療安全管理委員会の方針に基づき組織横断的に施設内の安全管理を担う。
医療機器・手術関連、医薬品、医師看護師、コメディカル、救急体制の5つのワーキングで関連する報告内容の分析、安全対策の立案、対策の評価など安全活動を推進する。
医療事故については、予防に努める事が何より大切であるが、不幸にして医療事故が発生した場合、可能な限り患者の救命を最優先とし、院内の総力を結集して被害の拡大を防止する。
また、上席者を通じ病院長に正確・迅速に報告し、事故調査委員会等の対策を講じる。
原因の如何を問わず、患者、家族への誠実さが基本となることは言うまでもない。
センターにおいて医療事故が発生した場合は、医療事故防止マニュアルに基づき対応する。
医療事故調査制度に該当する医療事故の場合は、「医療事故調査制度に関するマニュアル」に沿って対応する。
医療法第6条11の医療事故調査制度に該当する医療事故(当院に勤務する医療従事者が提供した医療に起因し、又は起因すると疑われる死亡又は死産であって、その死亡又は死産を予期しなかったもの)が発生した場合には、直ちに医療事故調査制度・支援センターへ報告すると共に必要な調査を行う。
調査結果は、患者家族に説明したのち、医療事故調査制度・支援センターに報告する。なお、この制度の対象事例は、別に示す「医療事故調査制度に関するマニュアル」で組織対応する。
職員の安全に関する知識・技能の維持・向上は不可欠であることから、医療安全管理委員会は、少なくとも年に2回、全職員に対する研修をおこなう。
全体研修の他に、各部門で安全研修をおこなうこととし、新人に対する研修を重視する。
標準化・統一化の推進は、個々の業務における誤りの減少につながるとともに、発生した誤りの発見を容易にすることから、作業手順の標準化、クリティカルパスの活用、物品の統一化など、標準化・統一化を推進してゆく。
全ての職員の業務を明確にし、組織内の業務の規則化を図る。また、多部門にまたがる業務では、部門の役割と責任を明確にし、関係部門の合意に基づく規則作りとその遵守を図る。
効果的な安全対策を講じるためには、アクシデント・インシデント報告が重要である。職員は、アクシデント・インシデント報告をしなければならない。
収集した情報をもとに、原因分析に基づく改善策を講じ、必要な情報を関係部門に迅速に還元することが大事である。さらに、改善策が有効に機能しているかを点検し、必要に応じ見直しを図る必要がある。
患者の医療への参加が医療の安全確保の観点からも重要であることから、患者に対し必要な情報を提供し、医療への積極的な参加を求める。
また、患者からの医療に関する不安・苦情・要望に迅速に対応する為に医療相談窓口を設置し、担当者を決めて誠実に対応する。担当者は、必要に応じ主治医・当該看護師長と情報交換を行い適切な対応に努める。患者・家族からの相談内容については、所定用紙で病院長に報告する。
・患者や家族等からの相談に応じられる体制を確保するための患者相談窓口として、保健指導部・医療ソーシャルワーカーが担当する。
・相談等を行った患者や家族等に対しては、これを理由として不利益な取り扱いを行ってはならない。
・相談を受けた内容等、職務上知り得た内容を、正当な理由なく他の第三者に情報を提供してはならない。
・相談を受けた内容は記録するとともに関係部門に報告する。また、相談等で医療安全に係わるものについては、医療安全管理部門と連携して対応し、安全対策の見直し等に活用する。
・患者相談窓口の設置場所、対応時間、相談方法等について患者等に明示する。
医療安全管理指針は公開とし、患者・家族等からの求めがあった場合には、条件をつけずに開示する。写しの交付については、「滋賀県情報公開条例」の提示により実施する。
2005年4月1日策定
2007年4月1日改正
2007年10月1日改正
2008年9月1日改正
2013年4月22日改定
2020年3月23日改定