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ふれあいプラスワン

アイヌの人々や文化への理解を深めよう (広報誌滋賀プラスワン 令和4年(2022年)3・4月号 vol.196)

~知っていますか、滋賀とアイヌの歴史的関係~

アイヌの人々のことは、滋賀で暮らす私たちには関係がないと思っていませんか? 歴史をひも解くと、滋賀とアイヌには知られざる結びつきがあります。アイヌの人々への理解を深め、人権が尊重される社会をつくっていきましょう。

アイヌの歴史と現状

アイヌは、現在の北海道を中心に暮らしてきた日本の先住民族で、固有の言語や伝統儀式・祭事など、独自の豊かな文化をもっています。

しかし、明治以降の日本語の使用を強制されるなどの同化政策により、こうした文化は消失の危機にさらされ、容姿の違いなどによる差別・偏見などの問題も発生しました。

そうした状況を改善するための様々な対策も行われましたが、十分ではなかったため、アイヌの人々の誇りが尊重される社会の実現を目指して、令和元年に『アイヌ施策推進法』が制定されました。

内閣官房・内閣府「国民のアイヌに対する理解度に関する調査」(平成28年度)より

アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律(アイヌ施策推進法)抜粋
【令和元年5月施行】

第4条 何人も、アイヌの人々に対して、アイヌであることを理由として、差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない。

第6条 国民は、アイヌの人々が民族としての誇りを持って生活することができ、及びその誇りが尊重される社会の実現に寄与するよう努めるものとする。


アイヌと滋賀の関わり

自然界のすべての物に魂が宿るとする伝統を受け継いできたアイヌ。人々は豊かな自然を活かした独自の生活様式を大切に暮らしていました。

こうしたアイヌの文化は、滋賀とは無関係にも思えますが、江戸時代には近江商人がアイヌ(蝦夷地)と盛んに交易を行っていたという歴史的な結びつきもあります。

アイヌの歴史や文化への理解を深め、アイヌの人々の人権を尊重することが、すべての人の人権が尊重される社会の実現につながるのです。

サロルンリムセ(鶴の舞)を踊る若者たち
北海道平取町の二風谷コタンに復元されたチセ(家)

近江商人の足跡は蝦夷地にも!? アイヌと近江の意外な接点

滋賀大学 経済学部 教授 青柳 周一さん

滋賀ではあまり知られていませんが、近江商人はアイヌの人々が暮らす蝦夷地にまで進出して経済活動を行っていました。現在の私たちの食卓にもつながる、アイヌとの交易の歴史についてお話しいただきました。

近江商人の蝦夷地進出

江戸時代に現在の北海道南端に置かれた松前藩では、蝦夷地のアイヌとの交易を藩の財政基盤としていました。この交易を請け負う形で本州の商人が蝦夷地へ進出します。早くから組織的に進出したのが近江商人で、彦根の柳川や薩摩、近江八幡の商人は「両浜組」を結成して特権的な立場を築きました。

全国に送られた海産物

やがて商人は蝦夷地の海に着目し、アイヌの人々や北東北からの出稼ぎの和人(日本人)を労働力として、大がかりな漁業を展開しはじめました。

蝦夷地で獲れたニシンは肥料に加工し、米の主要な産地であった近江にも送られ、その農業生産を支えました。さらに江戸時代には蝦夷地から全国へ海産物が送られ、そこから塩鮭や昆布だしといった食文化が広く形づくられていきました。

また、飛騨出身の商人の横暴に対して、アイヌによる大規模な蜂起が起きたことを記した近江商人の古文書は、「クナシリ・メナシの戦い(1789年)」の貴重な史料となっています。蝦夷地の漁場では、アイヌの人々が過酷な労働を強いられていたのです。

違いを認め合う社会へ

先住民族としてのアイヌの人権は、滋賀に暮らす私たちにとって決して無関係な話ではありません。アイヌという独自で固有の歴史と文化を持つ民族が日本に存在することを理解し、違いを認め合い尊重すること。それが、多様性のある共生社会につながっていくと考えています。

滋賀大学経済学部附属史料館

近江商人に関する様々な史料を収集・展示しています。詳細はホームページをご覧ください。

附属史料館 外観

啓発資材貸出のご案内

県では、人権をテーマにした研修会やイベントなどに活用いただけるよう、啓発資材の貸出を行っています。ぜひご活用ください!

■人権啓発資材(紙芝居やクイズなど)
紙芝居やクイズなどで子どもから大人まで一緒に楽しみながら人権について考えることができます。詳細は県ホームページでご覧ください。

アイヌの文化や歴史をさらに知りたい方へ(「じんけん通信」のご案内)

毎月1回県ホームページに掲載している「じんけん通信」令和3年7月号・8月号では、アイヌの文化や歴史への理解を深めていただくための特集記事を掲載しています。興味のある方は、ぜひ一度ご覧ください。

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県庁人権施策推進課
電話番号:077-528-3533
FAX番号:077-528-4852
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