春は転居する人が最も多いシーズンです。令和元年に県が実施した「宅地建物取引業者に関する人権問題実態調査」では、不動産購入や賃貸物件への入居など、住まい探しの中に今も差別意識が見られることが明らかになりました。誰もが住みよい地域をつくるために大切なことは何か、調査結果を通じて考えてみましょう。
調査の目的
同和問題や外国人などの入居差別などの各種の人権問題について、宅建業者の取組や取引段階における状況および前回調査からの経年変化を把握する。
調査期間
令和元年10月15日~11月30日
調査対象
滋賀県内に本店または支店を有する宅建業者の全事務所
同和問題は、「同和地区」といわれる地域に生まれたり住んでいたりするというだけで不合理な差別を受けるという、日本固有の人権問題です。
今回の調査結果では、約12%の事業者が、取引物件について同和地区であるかの問い合わせを受けたことがあると回答しています。前回(20%)より減ってはいますが、今もまだ差別意識が残っていることがわかります。
物件のある場所が同和地区かどうかは、宅地建物取引業法で取引時に説明が義務づけられている重要事項ではありません。
しかし、同和地区の物件であるかを聞かれた場合、顧客の意向に沿って答える必要があると考えている事業者は40%を超えており、5年前とほとんど変わっていない状況です。
賃貸物件の仲介で、家主から入居申し込みを断るように言われたことがあるという回答は、「外国人」「高齢者」が特に多く、30%を超えています。外国人や高齢者、障害者などであるという理由だけで入居を断ることは、その人の居住や移転の自由という基本的な人権を侵害する行為です。
県では、「滋賀県宅地建物取引業における人権問題に関する指針」を定め、事業者と協力しながら、このような人権侵害が起こらないよう、啓発などの取り組みを進めています。
宅地建物は多くの方にとって人生で最も高い買い物ですので、お客様は慎重に物件を検討されます。そうした取引に関わる私たち宅建業者は、適正かつ人権が尊重された取引を推進しなければならないとの使命感をもって職務に臨んでいます。
協会としては、新たに入会した事業者に人権啓発の冊子を配布したり、会員に人権研修を年1回行っているほか、行政とも連携しながら、啓発などの活動を行っています。こうした取り組みの結果、今回の人権問題実態調査では、事業者の回答率が前回よりも約20%上昇しました。また、同和地区であるかの問い合わせを受けたことがある事業者の割合も半減しており、成果が現れているとも感じています。
私は、同和問題などの人権侵害の根底にあるのは、相手に対する不理解だと思います。人権侵害をなくすためには、お互いの存在を認め合い、理解を深めることが一番大切なのではないでしょうか。
県では、今回の記事で取り上げた調査の概要をまとめたリーフレット「宅地建物取引と人権」の内容を抜粋した啓発パネル(B2サイズ)を無料で貸し出しています。
人権や宅地建物取引に関する研修会やイベントなどを行われる際には、ぜひご活用ください!
県庁住宅課
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