● 近年の観賞魚ブームの中、意図的と思われる放流等により、多種多様な観賞魚メダカ品種が野外水域で確認される事例が全国的に後を絶たない
● 人工改良品種である観賞魚メダカの野外への放流は、交雑により野生メダカへの遺伝的攪乱を起こすなど、「第3の外来種」として生物多様性にとって大きな脅威
● 今回、滋賀県大津市の池と琵琶湖南湖の湖岸で体外光メダカなどの観賞魚メダカが採集され、本博物館の学芸員が龍谷大学の研究員らと共同で、標本に基づいて記録した滋賀県初の報告を発表
龍谷大学生物多様性科学研究センターの伊藤 玄客員研究員と滋賀県立琵琶湖博物館の川瀬成吾学芸員らの研究グループは、2023年7月30日に滋賀県大津市田上里町の池で、2024年4月29日に琵琶湖南湖の湖岸で採集された魚類の形態的特徴を観察したところ、いずれも観賞魚メダカであると特定しました。滋賀県および琵琶湖・淀川水域の野外水域において、観賞魚として人気のある観賞魚メダカが標本に基づいて記録されたのは今回が初です。
具体的には、池で採集した3個体は“青メダカ”、南湖で採集した1個体は“青体外光メダカ”(幹之メダカとも呼ばれる)に分類され、いずれも観賞魚メダカであると判別。開放水面であり周囲の水路とも接続している南湖で採集した青体外光メダカは、体外光メダカ類の中でも背面の虹色素胞が広範囲に発現する強スーパー光に分類され、美麗な個体です。一方、青メダカを採集した池は、周囲に接続河川はなく、雨水や山の斜面から染み出した水などが自然にたまった小規模な池であり、人為的な移植が考えられます。加えて、青メダカ3個体のうち1個体には脊椎骨の湾曲があり、奇形とみなされることから、品種としては不十分な形質を理由に選別された個体(ハネ個体)であることが示唆されました。こうしたハネ個体の遺棄放流は、各地の野外水域で確認された観賞魚メダカにも共通します。
いずれも近年放流されたもので周囲の在来のミナミメダカとの遺伝的攪乱が危惧されることから、観賞魚の放流は厳に慎まなければならないという認識を高める必要があります。
A−C:“青メダカ”, 20.4mm,18.6 mm,18.7 mm SL,龍谷大学伊藤 玄博士 撮 影(LBM1210060583-1−3),
D−E(同一個体):“青体外光メダカ(強スーパー光)”, 23.8 mm SL,龍谷大学太下 蓮氏撮影(LBM1210060585).
※本研究で作成した標本については、滋賀県立琵琶湖博物館に登録・保管されています。
・雑誌名:『淡海生物』
・論文題名:『滋賀県の野外水域から初めて確認された体外光メダカなどの観賞魚メダカ』
・著者:伊藤玄(龍谷大学 生物多様性科学研究センター)・大場貴保(めだかの館)・堀江真子(世界淡水魚園水族館 アクア・トト ぎふ)・川瀬成吾(滋賀県立琵琶湖博物館)
・発行:2024年7月10日(Online版)・ページ数:4ページ
問い合わせ先:
滋賀県立琵琶湖博物館研究部担当学芸員川瀬、企画・広報営業課鈴木
Tel 077-568-4811 E-Mail [email protected]
龍谷大学 研究部(生物多様性科学研究センター)
Tel: 075-645-2184 E-mail: [email protected]
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