高島市の露地栽培のブドウにおいて、令和5年10月に、多数のハゴロモ類の寄生が認められました。採集した成虫を滋賀県病害虫防除所において同定した結果、海外原産のシタベニハゴロモであることが確認されました。本県でのシタベニハゴロモの発生確認は初めてであるため、令和5年度病害虫発生予察特殊報第2号として発表しました。なお、県内では、11月22日までに、本種によるブドウの枯死や果実への被害は確認されていません。
本虫はカメムシの仲間で、成虫の体長は翅を閉じた状態で約2.5 cmです。前翅はクリーム色、後翅は半分が赤色で、いずれにも黒点が散在します。
本虫の原産地は中国本土、台湾、インドやベトナムですが、世界各地に発生が広がっています。国内では、平成21年に石川県のニワウルシで初めて発生が確認され、本県を含む計10府県の庭木、街路樹や樹林地で発生が確認されています。
本虫は主にブドウ、ナシ、ウメ、リンゴなどの果樹、ニワウルシなどの庭木や街路樹に寄生します。成虫や幼虫が樹液を吸汁し、植物の生育不良や枯死を引き起こします。加えて、大量の甘露を分泌することで「すす症状」発生の要因となります。
県では、農業者に対して、1)ほ場をよく見回り、成虫や幼虫は見つけ次第捕殺すること、2)産み付けられた卵塊はそぎ落とし、適切に処分すること、3)施設栽培では、ハウスの開口部を防虫ネットで覆い侵入を防ぐことを呼びかけています。なお、令和5年12月26日現在、本種に対して登録のある農薬はありません。
(参考)
1)特殊報:県内に今まで発生が確認されていなかった病害虫を発見した場合や、病害虫が今までとは違う特異的な発生をする現象が認められた場合に発表しています。
2)甘露:糖分を多く含んだ排泄物のこと。