本県では、琵琶湖の保全を通じた水環境関連の産業・研究機関の集積を生かして水環境ビジネスを推進するため、平成25年(2013年)3月に産学官民金のネットワーク組織として「しが水環境ビジネス推進フォーラム」を設立しました。同フォーラムではプロジェクトの形成や販路開拓などに取り組んでいます。
この度、産学官民金のネットワーク組織である「しが水環境ビジネス推進フォーラム」のメンバーである公益財団法人地球環境センターが、同じく同フォーラムに参加する帝人フロンティア株式会社、立命館大学、そして滋賀県とともに「アジア水環境改善モデル事業」に応募したところ、採択されましたので、お知らせします。
【事業名】 繊維担体を用いた多段式生物処理によるベトナム国ハロン湾水質改善事業
【スキーム】 令和元年度(2019年度)アジア水環境改善モデル事業
【対象地域】 ベトナム社会主義共和国ハロン湾地域(クアンニン省)
【実施期間】 2019年11月頃~2020年3月頃
【実施体制】
【実施目的】
ハロン湾沿岸地域の急速な開発や産業発展に伴い、水産・食品工場、工業団地、鉱山等から湾域への汚濁負荷流入による影響が顕在化している。当事業では、水質改善に向けて、繊維担体を用いた多段式生物処理の事業可能性や植生浄化の現地適用性を調査し、現地でのビジネスモデルを検討する。
【対象施設】
ハロン湾沿岸地域の水産・食品工場の排水処理施設
【適用する技術等】
●特殊繊維担体に微生物膜が形成され、排水中の有機物を効率的に分解・浄化する。槽を多段に仕切ることにより食物連鎖を促進させ、余剰汚泥発生量を削減する。
●本装置の後段に植生浄化の機能を付加し、安定的に窒素を除去する。
【期待される成果】
●有機物を効率的に分解し、BOD(※)を90%以上除去できることが可能。
※BOD(生物化学的酸素要求量):水中の有機物などの量を、その酸化分解のために微生物が必要とする酸素の量で表したもので、水質指標の一つ。
●生物膜法のため余剰汚泥の発生量が少なく、処分費の軽減につながる。
●植生浄化により汚水中の窒素分の除去を促進。
■ハロン湾について
ハロン湾は、ベトナム北部のトンキン湾北西部にある湾。クアンニン省の南に位置し、大小3,000もの奇岩、島々が存在する。1994年にユネスコの世界遺産(自然遺産)に登録されている。
景勝地として人気があり、国内外から観光客が訪れるが、近年は急激な開発に伴う景観や水質の悪化が懸念されている。なお、滋賀県とクアンニン省は、平成29年(2017年)に「環境・経済分野の協力に関する覚書」を締結している。
■しが水環境ビジネス推進フォーラム
しが水環境ビジネス推進フォーラムは、平成25年(2013年)3月に設立された産学官民金のネットワーク組織(事務局:滋賀県商工観光労働部商工政策課)。令和元年(2019年)9月末現在で182の企業や研究機関等が参加している。
当フォーラムでは、水環境ビジネスの最新動向をはじめ、先進的な企業の取組や各種支援施策の情報提供を行うほか、具体的なビジネス案件の形成や共同開発等に向けたマッチングの場となるよう運営している。
■環境省「アジア水環境改善モデル事業」
環境省では、アジア地域において我が国の企業が有する優れた水処理技術のビジネス展開を促進し、これらの技術の普及展開を通じてアジア地域の水環境を改善していくことを目的に、平成23年度(2011年度)から「アジア水環境改善モデル事業」を実施している。
本事業では、環境省が実施する公募に対して応募した事業者の中から実施事業者が選定され、採択されれば、1年目に提案地域において現地実証試験の実施に向けた実現可能性調査(FS)を実施する。更に、2年目の継続が認められた場合、現地で小規模な処理施設を製作・導入することにより実証試験等を実施し、3年目には、引き続き現地でのビジネスモデル構築に向けた活動を実施することとなる。