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遺伝子組換え作物栽培指針検討委員会(平成18年11月29日)

会議概要

日時

平成18年11月29日(金曜日)9時30分から12時

場所

滋賀県庁本館4A会議室

出席者

高橋委員、長谷川委員、田中委員、脇坂委員、深尾委員、北川委員、佐野委員、城島委員、西山委員(9名/10名出席)

山本農政水産部次長、谷口農政課長、大谷農業技術振興センター次長、藤川農政課参事、その他農政水産部関係職員

議事の概要

開会あいさつ(山本農政水産部次長)

遺伝子組換え技術についての情勢報告

事務局から資料により説明。

意見交換

(学識経験者委員)
  • 開発途上にある遺伝子組換え作物の例についていろいろ報告があったが、本当にできるかどうか分からないものばかり。消費者が聞きたいのは現状であるので、話をすり替えられていると感じる可能性がある。
  • 日本の消費者にとって組換え大豆やとうもろこしを食べる直接的なメリットが感じられていないのでは。アメリカの農家にとっては非常にメリットがあるので、非組換えと比較して1割販売価格が低くても栽培面積が増加している。農薬の総使用量が減っているとか、豊かな土壌が毎年流れているのが減っているとか、そのメリットを表すデータがあるだろう。そのメリットと併せて、遺伝子組換え作物が栽培されて、周辺の環境に影響があったか無かったかといったことについても蓄積された報告がなされているので、公的な機関のデータを使って説明をされた方が分かりやすいのではないかと思う。
  • この資料を、PA事業の中でも、使ったということだが、一般市民の方の緊張の持続時間はだいたい45分くらいだから、理解を進めるという目的であれば、ちょっと多すぎる。
  • 遺伝子組換え作物の開発は、第1世代、第2世代と分かれる。第1世代の遺伝子組換え作物は、いわゆる除草剤耐性とか耐虫性。今先端を行くのは、第2世代であって、機能性作物を目指している。たとえば、ビタミンAを多く含む「コメ」、ラウリル酸含量の高い「なたね」などのように機能性を付与する植物の開発研究が進められている。また、エネルギーバランスの関係で、生産コストを下げるために遺伝子組換えを利用したものがかなり普及している。
(生産者・流通関係委員)
  • 日本政府の食料の安全性に関する取組がゼロだといいたいくらい憤りを感じる。海外から洪水のように入ってきて、そもそも食品の安全性についてどこがチェックしているのか、国内生産の比率から見たら、海外に依存しているのが大半であるから、非常に不安に感じる。
  • 海外のものが大量に入ってくる、安かったら良いだけではすまされない。食品に対して関心を持ってもらう必要がある。また、何を食べさせられているか分からないという不安を持っている人もいる。
(消費者委員)
  • 育てても種子ができないアサガオがあると聞く。そうなると、毎年種を買わなければならないことになり、遺伝子組換え作物の種を作っているいくつかの大きな企業が市場を独占するのではないか。そこの種を買って作らない限り作れない状況ができてくると、次の段階で価格調整もやってくる、やれるんじゃないか、という不安を感じている。また、地球規模での生態系への影響が無いことについて、事務局の説明では弱いと思う。
  • 安心・安全、特に安心の部分は個人の気持ちの問題であるが、遺伝子組換え作物についての情報を正確に伝えれば、安全であるとの理解はしてもらえるから努力が必要。
  • 例えばアメリカの遺伝子組換え大豆の作付が全体の75%を占めているといった情報が正確に県民に伝わっているかどうか心配。現状では日本においてかなり流通している。また、農薬削減による環境保全が生産地をどう変化させているか、そのような情報も伝えて欲しい。
  • また、輸入された遺伝子組換え作物が流通しているのはやむを得ないが、指針で言われている商業栽培については、別物である。作付についての論議は、県民の理解も合わせてしっかりしてもらわなければならない。
  • 近くに直売所があり、栽培した野菜を販売している。化学肥料をなるべく使わないようにし、安心できる食べ物を生産してみなさんに買ってもらって元気になってもらうのが、その直売所の目的。そのため、地元の農家に対する指導を国としてもう少し力を入れて欲しい。例えば、休耕田で大豆を作りなさいと指導はするが、それに見合うだけの保証がないから、田んぼを鋤いて豆を播いたらそれきり。鋤いて種を落として土寄せして肥料をやって、それだけの世話。草の方がたくさん生えて、こんな生産の仕方では先々心配する。
  • 分かりやすい、誰が聞いても理解のできる情報をきちんと出すということが、一番大切。うまくこちらの意図することがきちっと伝わるような情報を出すというのは一番難しいと思う。

PA事業の実績について

事務局から資料により説明。

意見交換

(学識経験者委員)
  • 行政だけがPA事業に取り組むのではなく、大学等との連携強化による取組を考えていただきたい。
  • 特に病虫害が恐ろしいのだが、将来の環境の変化に対して備える遺伝子組換え作物の研究は、新しい品種を作るために10年かかるので、必要になってからでは遅い。そういうところで基礎研究というものが大事だという認識はみなさんに持ってほしい。
  • また、学会にはいろんな人から反対の意見も届く。その意見の内容が、微妙に毎年変化している。例えば、3、4年前だったら安全性一本やりの反対運動であった。ところが、最近はむしろ生態系に対する影響というものについての反対運動を強力に言う人がいる。だから、PAをいろいろな場所でいろいろな人に納得していただく、本当に安全で、生態系にも本当に影響がないということを、不安に感じている人に応じて普及していただきたい、そう思っている。
  • PA事業を行うと認識は改まる。これはもう確実なこと。だけど、じゃ安全性がわかったんだから買いますかというとやっぱり買わない。頭では判っている。だけどそのとおりするかというとしない。これは心理学で言うところの「理解と行動の不一致」という現象。安全なのは分かったが、やっぱり買わないぞということの結果がこういう状況になった。こういうことがもとになって、風評被害が生み出されて、遺伝子組換え作物は栽培してもらったら困るんだということになれば、飛躍した論議であり、何も議論しないまま決着が付いてしまう。だからそういうことになっては、この委員会の意味がないから、そこのところを十分議論しないといけないと思ってい
  • では、なぜ理解と行動の不一致が起こるか、これを直さない限り、このことは解決しない。これは、滋賀県だけの問題ではなくて日本全体の問題である。日本中と言ったのは、ヨーロッパではそういうことが起こりにくいから。日本人は心理学的な要素として、非常に情報に流されやすい、情感で判断し、そして風評によって左右されるという素養を非常に強く持っている。そこのところをどう処理するか、是非滋賀県から声を上げていただいて、そこから遺伝子組換え作物の問題は考えていかないといけないという形にもっていきたい。ただそれは簡単なことではないと思う。
  • 安心・安全という台詞がいわゆる識者や行政の立場でも使われているが、この二つは厳密に区分けされなければならない。なぜならば科学技術者がいくら努力しても保証できるのは、安全にとどまるのであって、安心は彼らの手の届かないところにある。すべての人々がその認識を新たにするのはもちろんであるが、特に科学技術者はやはり深くそのことを心に刻み、それを出発点として情報を伝えていくことを心がけてはじめて市民から信頼される存在になっていく。
  • 滋賀県は農業県として、農業する者をしっかり育てるということも、考えなければならないことだと思う。そのために難しいことばではなく、共通の言葉でもって話し合える環境を作る必要がある。現場で一緒に体験しようということと同じだと思う。
(生産者・流通関係委員)
  • PA事業後の意見で、遺伝子組換え作物を作ってみたいと生産者が言っていると報告があったが、意見の内の一つが総意であるかのように受け止められないよう、選択するのではなく全部羅列してもらいたい。県として対応に注意していただきたい。もう一つ、島根県などでは、遺伝子組換え作物に関するアンケートの結果は全件そのとおり掲載されているので、滋賀県でも一部といった限定をするのではなく、報告の方法についても注意いただきたい。
  • 丁寧に説明をしていただくと、聞いた方としては一定の理解が進んで、遺伝子組換え作物は大丈夫だと思うというのは当然だと思う。しかし、安全を担保したシステムの上に成り立っているものかどうかの議論は、専門家の中で担保をとる必要がある。そのプロセスを抜いて、組換えでないという表示が紛らわしいとか危険をあおってるといったことになれば、本当に一生懸命、日本の農業で頑張っておられる農業者に最終的に圧倒的な不利益が生じるようなことになってしまう。
  • 余談になるが、滋賀県の農業の位置がどの辺にあるか知っていただきたい。県民所得は、全国で滋賀県は上から5番目、一方、(10aあたりの)農業所得は三重県に抜かれて最下位。直売所で地域に活力が出てきたとの紹介があったが、滋賀県民には滋賀県内の農産物を消費してもらって農業を応援してほしい。
  • 消費者の方に、一度私の農場に来ていただいて、農産物を作ることを体験してほしい。
(消費者委員)
  • 現実問題として90%以上輸入されているということを知りながら、店頭に行くと遺伝子組換えでないものが並んでいる。もちろん加工品に多く使っているため、店頭に売っているお豆腐や納豆は量的には少ないので、それに嘘があるとは思えないが、そういう表示が行われていることは、遺伝子組換え食品というものに私たちの最初の関わり方がおかしかったのではないかと思う。一番最初のところで、ボタンをかけ違ってしまったような印象をずっと持っている。
  • PA事業の方法について、例えば出前講座や地域のイベントを活用して、パネル展示するなど、またビデオを観てもらうなどの方法で、県民のみなさんに理解をいただく取組をする必要がある。
  • 安全というものと、安心という部分をごっちゃにしているところに、一番大きな問題があると私には思える。安全というのは、理路整然と納得してもらうように話をすることは出来ると思うが、安心というのは心の問題で、絶対安全ですと言われても、あの人が言っていることは信じられないという心理状況になれば、どれだけ膨大な資料を見せられ説明されても、安心の気持ちになることは非常に難しい。
    • 誰かが風評を一言言えば、みんなで食べないでおこうかというのは、国民性ということになるのだろうが、「そんなことない、食べよう」と言う勇気を出すより、「まあええかみんなが言ってるんやし」っていうように、消費者としては、流されて生きていく方が楽であるとするのが正直なところである。
  • 遺伝子組換え作物をみんなで考える一助として、安心感を与えるような、理解をしていただけるようなパネルを県で作っていただいて、地域のイベントで展示したら、一番よく分かってもらえるのではないか。そのようにすれば、少しでも理解が深まると思う。

閉会