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奨励品種の特性概要

水稲

(1) 奨励品種等

ア コシヒカリ〔農林22号×農林1号〕

県下の平坦〜中山間のやや瘠薄田〜地力中庸田に広く適する。いもち病に弱いので多発地での作付けは避ける。
育苗にあたっては、発芽が遅いので十分に浸種・催芽を行ってから播種をする。
穂数がつきにくいので良苗育成により穂数確保に努める。
多肥による穂数確保は倒伏の危険性が大きいので避ける。
稈が長くやや柔らかいため倒伏しやすいので、穂肥の施用量および時期に注意して完全倒伏を防ぎ、稲体がなびく程度に作り上げるのが良い。
また、登熟期間の高温によって乳白が出やすいので、高温対策技術を組み合わせて栽培する。

イ キヌヒカリ〔[収2800×北陸100号]×北陸96号(ナゴユタカ)〕

地力中庸以上の乾田に適する。
分げつの発生が少なく穂数は少な目となるので、やせ地での栽培は避ける。
登熟期間の高温によって乳白・心白がでやすいので、幼穂形成期前後から受光態勢を乱さないよう肥培管理に留意するとともに、高温対策技術を組み合わせて栽培する。
ただし、湖辺粘質土壌では、高温対策技術を組み合わせても高温年には品質低下が懸念される。
また、いもち病の防除を徹底するとともに、穂発芽しやすいので成熟期が秋雨に遭遇する地帯での栽培や刈遅れは避け、高温多湿時にはやや早めに刈り取りを行う。

ウ みずかがみ〔[滋賀60号(ゆめおうみ)×ヒノヒカリ]×[チクブワセ×ひとめぼれ]〕

地力中庸以上の地域に広く適する。
耐倒伏性は強いが、良食味米生産の観点から多肥栽培は避け、環境こだわり栽培基準を基本とする。
育苗にあたっては、発芽が遅い場合があるので注意する。
葉いもち抵抗性は“やや強”、穂いもち抵抗性は“中”なので、いもち病の常発地で栽培する場合や気象条件によっては注意が必要である。
早生品種で稈長が短いので、紋枯病に注意する。
5月上旬移植では、「コシヒカリ」より出穂・成熟期が7日程度早くなる場合があるので、穂肥の施用時期や防除、収穫時期に注意する。
茶米や胴割米の発生を防ぐため、出穂前後各3週間の常時湛水と収穫直前までの間断かん水を実施する。
収穫は必ず籾の色を見て判断し、籾黄化率85~90%で実施する。

エ レーク65〔ヒノヒカリ×キヌヒカリ〕

地力中庸以上の地域に適する。
瘠薄田や極端な基肥減肥では、初期生育が確保できず減収する。
生育期間全般を通じて「コシヒカリ」、「キヌヒカリ」より葉色がやや濃く推移するが、成熟期には薄くなる。
葉が直立し株も開張しないため茎数が少なく見えるが、見た目以上に茎数がついていることが多い。
また、穂がやや小さいため、圃場では寂しく見えるが、粒厚が厚く屑米が少ないため、「コシヒカリ」、「キヌヒカリ」よりやや多収となる。
高温年でも乳白・心白の発生が少なく玄米の外観品質は安定して良いが、茶米や胴割れの発生を防ぐため、適期刈り取りに努め、登熟期間が高温となったときにはやや早めに刈り取りを行う。
施肥や地力によって成熟期の葉色は異なってくるので、葉色で刈り取り時期を判断することは絶対に避ける。
「キヌヒカリ」よりさらに短稈で倒伏に強いが、良食味米生産の観点から多肥栽培は避け、穂肥は葉色が濃いので遅れないよう適期(幼穂長1mm、出穂前25日)に適量を施用する。
食味は、粘りが強く「コシヒカリ」に優るとも劣らない極良食味である。

オ ゆめおうみ〔越南135号×滋系51号〕

地力中庸以上の地域に適する。
倒伏の心配はないが、早植や多肥栽培で籾数が極端に増加した場合や早期落水をすると腹白、死米が発生し、外観品質の低下を招くことがある。
適正な栽培条件では、「日本晴」より明らかに優る極良食味となるが、多肥栽培によって米の蛋白含量が容易に高まるので、施肥は食味向上に配慮して施用する。
いもち病には強いので、常発地以外で防除の必要性は少ないが、発病状況に応じて防除する。
また、幼稲では抵抗性が十分でないので、苗や移植直後に発生した場合速やかに防除する。
休眠が深いので、育苗にあたっては浸種・催芽を十分に行い播種する。

カ 日本晴〔東海7号(ヤマビコ)×幸風〕

県下の平坦〜中山間の地力中庸〜肥沃田に適し、半湿田〜乾田に適す。湿田では、根腐れによって、穂数や一穂籾数が減少し、収量が低下する。
秋落ちしやすい水田では、ごま葉枯病や穂枯れが出やすく、品質・収量が低下するので、作付けにあたって有機物を施用するなど土壌改良が必要である。
極多肥や多肥・密植にすると稈の伸びが大きく草勢が悪化し登熟が劣るので避ける。
穂発芽性が十分でないため、極端な早植えや生育期間の高温によって生育が早まり、成熟期が秋雨時期と重なると穂発芽するので注意する。

キ 秋の詩〔滋系54号(吟おうみ)×コシヒカリ〕

県下の平坦部に広く適するが、いもち病に弱いので常発地での作付けは避け、倒伏の恐れがあるので、大豆跡や野菜跡での作付けは避ける。
肥沃地では倒伏の危険性が高まるため、施肥量と施肥時期に十分注意する。
地力の低い地帯では、生育中期に栄養凋落を起こすと籾数不足となるので、つなぎ肥を考慮する。
休眠が深いので、育苗にあたっては浸種・催芽を十分に行い播種する。
食味は、粘りが強く「日本晴」より優り、「コシヒカリ」、「キヌヒカリ」並みの極良食味である。
刈遅れは、胴割れの増加をきたすので、適期収穫を心がける。

ク 玉栄〔山栄×白菊〕

主に湖南・湖東平坦部の地力中庸〜やや秋落ち田に適し、強度の秋落田、強湿田には不適。
穂数過多になりやすいので基肥はやや減量し収量・品質が低下しないよう注意する。
穂肥は適期に適量を施用し、それ以降の施肥は酒造適性の低下につながるので避ける。
また、早期落水は、品質低下の原因になりやすいので避ける。
なお、酒米は胴割れの発生を極力防ぐ必要があるので、適期刈り取りを行うとともに、乾燥は予備乾燥を経て仕上げ乾燥を行う。

ケ 滋賀羽二重糯〔改良羽二重糯の系統分離〕

県下の平坦部に適するが瘠薄田には不適である。
倒伏しやすいので施肥は控えめとする。
また、いもち病の防除を徹底する。
本品種は晩生であるため移植から幼穂形成期までの栄養生長期間が長い。
したがって茎数確保のための基肥増施や早期追肥による生育の過繁茂を避けつつ、幼穂形成期前に極度に葉色を落とさないよう稲体の栄養維持に留意する。
なお、前年にうるち種が栽培されていると漏生籾からの裸地(自然)生えが発生するので、出穂前に2回程度抜き取りを行い、うるちの混入を防止する。
また、逆に本品種を作付けし、翌年にうるち種を作付ける場合も同様にもちの混入に注意する必要がある。

コ 吟吹雪〔山田錦×玉栄〕

県下中南部の地力中庸以上の地域に適し、瘠薄田には不適である。
また、県下北西部などの秋冷が早い地域では登熟ムラを生じることがある。
茎数は比較的とりやすいが、最高分げつ期から幼穂形成期までの期間も長いので、この間に栄養凋落を起こすと大きく減収する。
生育中期の栄養を維持し、7月上旬の葉色が葉緑素計で40(葉色板で4.5)を下回らないように、必要に応じてつなぎ肥を施用する。
穂肥は出穂前25日に適量を施用し、以降の施肥は酒造適性の低下を招くので避ける。
また、胴割粒の発生を極力防ぐため、出穂後の水不足に注意し、早期落水を避けるとともに適期刈り取りに努める。

(2) その他品種

ア ハナエチゼン(越南122号×フクヒカリ)

地力中庸〜肥沃地に適し、瘠薄田には不適である。
出穂期が早いので、適期に遅れないよう穂肥を施用する。
いもち病真性抵抗性遺伝子を有するが、圃場抵抗性は十分でないので、いもち病の発生を認めたら防除する。
白葉枯病に弱いので常発地での栽培は避ける。
紋枯病にも弱いので発生状況に応じて防除する。

イ あきたこまち(コシヒカリ×奥羽292号)

地力中庸地に適する。
倒伏しやすいので肥沃地では施肥量に注意し、大豆跡や野菜跡での栽培は避ける。
いもち病に弱いので防除を徹底し、常発地での栽培は避ける。

ウ ヒノヒカリ(愛知40号(黄金晴)×コシヒカリ)

平坦部の地力中庸〜肥沃地に適する。
熟期が遅いため、秋冷の早い地域では登熟不良となる可能性がある。
また、最高分げつ期から幼穂形成期までの期間が長いので、この間に極度に葉色を落とさないよう稲体の栄養維持に留意する。
移植時期が遅くなると減収するので、留意する。

麦類

(1) 奨励品種

ア 農林61号(小麦)〔福岡小麦18号×新中長〕

平坦部を中心とした県下広域に適し、各種病害に対し、比較的強く作りやすい品種であるが、耐倒伏性は中程度なので極端な多肥は避ける。
また、耐寒性および耐雪性は不十分で極端な早播きは避ける。
熟期は梅雨に遭遇することが多いので刈取適期を判断して刈り遅れないようにする。

イ シロガネコムギ(小麦)〔シラサギコムギ×西海104号〕

県下中・南部の平坦部における地力中庸〜肥沃地に適し、分げつ力旺盛で倒伏に強いので多肥栽培に適する。農林61号より湿害に弱いので排水には十分留意する。
茎立ちが早いので極端な早播きは避け、凍霜害を受けないようにする。
また、穂発芽性はやや易なので刈り遅れないようにする。

ウ ふくさやか(小麦)〔シラサギコムギ×シロガネコムギ〕

県下平坦部に適する。農林61号より2〜3日早熟な白ふ(穂の色)の品種。短稈で耐倒伏性は農林61号より強い。
穂数は農林61号に比べやや少なく、排水対策の徹底と穂肥の適期施用により穂数確保に留意する。
千粒重はやや小さいが外観品質は良い。
赤さび病の耐病性はシロガネコムギ並。穂発芽耐性は農林61号よりやや劣るので適期収穫に努める。

(2) その他品種

ア ミノリムギ(六条大麦)〔東山皮1号×コウゲンムギ〕

県下平坦部に適する、耐雪性および耐湿性に優れることからが、湖北・湖西の中雪地にも適する。
熟期は中生に属する。
やや長稈であるが、稈が強く茎の挫折抵抗性は高い。
収量性は大麦で最も多収の部類に属する。
なお、穂発芽しやすいので適期刈り取りに留意する。
各種の病害には比較的強い。

イ イチバンボシ(裸麦)〔四国裸58号×四R系697〕

県下平坦部の地力中庸〜肥沃地に適する。熟期は早生に属する。 短稈で倒伏にやや強いので機械栽培に適するが、極端な多肥栽培は倒伏を招くので避ける。うどんこ病と赤かび病にはやや弱いので適期防除に努める。裸麦は湿害に最も弱いので排水には十分注意する。

大豆

(1) 奨励品種等

ア エンレイ〔農林2号×東山6号(シロメユタカ)〕

秋冷の早い地域や中山間地で、地力中庸以上の転換畑に適する。
やや短茎で茎が強く耐倒伏性は強い。
密植栽培で多収となるので栽培管理を十分に行う。
耐病性はウィルス病、紫斑病ともにかかりやすい。
特に紫斑病の防除を徹底する。
播種期が遅れないようにする。

イ オオツル〔東山80号×エンレイ〕

倒伏しやすいので過度の早播、密植、多肥栽培を避け、培土は的確に行う。 ウィルス病抵抗性が中程度であるため、激発地での栽培は避ける。

ウ タマホマレ〔Lee×東山7号(フジミジロ)〕

県下全般で地力中庸以上の転換畑に適する。耐倒伏性は強く、多肥密植適応性が高いので、生育量を大きくするような栽培管理をする。
晩播適応性は高い。 耐病性は紫斑病には中、ウィルス病にはやや強であるが、立枯性病害には抵抗性を持たないので連作を避ける。

エ フクユタカ〔岡大豆×白大豆3号〕

葉焼け病・さび病には強くない。 また年次により子実の裂皮が生じやすい。 蔓化・倒伏しやすいので、晩播きし、密植、多肥栽培を避け、培土は的確に行う。 また、年次により子実の裂皮が生じやすい。

オ ことゆたか〔エンレイ×九州96号〕

秋冷期の降雨の影響が少ない県南部から東部地域の平坦部に適する。 極端な早播・遅播を避け、適期に播種する。対病性は紫斑病にはやや強く、ウイルス病には強である。 倒伏抵抗性が強く、最下着莢高が高いので、機械化栽培に適する。裂莢に注意し、適期収穫を行う。

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滋賀県農政水産部みらいの農業振興課
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