現在事業実施中の県営水質保全対策事業白鳥川中流1期地区内にある下羽田遺跡において、平成21年度より埋蔵文化財発掘調査(写真1)を実施しておりますが、平成22年度の発掘調査の中で縄文時代晩期末としては近畿地方で初めてとなる竪穴住居と掘立柱建物が同じ遺跡から発見され、その成果を多くの方々に周知する滋賀県教育委員会主催の現地説明会が平成23年2月27日(日曜日)に開催されましたので報告します。
本地区は、東近江市上平木町のほぼ全域で実施している県営経営体育成基盤整備事業上平木地区のほ場整備工事と一体的に事業を進めており、一級河川白鳥川の支流の六ツ木排水流域の最下流部に位置しています。(図1)
本事業は農業排水が琵琶湖に与える負荷を少しでも低減できるように、沈殿機能や水生植物による水質浄化機能が期待できる水質浄化池(図2、写真2)を六ツ木排水路流末に設置する計画ですが、平成21年度の事業着手に先立ち埋蔵文化財の試掘調査を実施したところ数多くの土器類や井戸跡等の遺構が確認されたため、工事着手を一時見合わせ、埋蔵文化財の発掘調査を先行して実施している状況です。
平成22年度の発掘調査では、弧状に配置された縄文時代晩期末の竪穴住居(写真3、図3)や掘立柱建物が多数発見されました。また、住居や建物の南側の一画に土坑墓(写真4、図4)や土器棺墓(写真5、図5)などの墓や木の実貯蔵用の穴が近接して作られ、同時代の集落としては、住居と食糧貯蔵の穴、墓がひとまとまりとして出土し、コミュニティーの構成要素が判別できる県内で初めての事例であることがわかりました。
このような歴史的に価値ある貴重な遺跡および遺構が多数発見されたことを受け、より多くの方々に文化財調査の成果を知っていただき、滋賀県ならびに東近江地域の歴史に興味をもってもらうことにより文化財保護への理解を深めていただくため、去る平成23年2月27日(日曜日)に澄み切った冬の青空のもとで現地説明会が開催され、地元の方々を中心に182名もの参加がありました(写真6、7) 。
平成23年度については、残りの区域約1,700平方メートルの埋蔵文化財発掘調査を実施しているところです。
ただ、この区域は遺跡および遺構の出土する密度が濃いと想定されており、平成22年度と平成23年度との境界付近を試掘されたところ、少なくとも異なる年代の遺跡・遺構などの文化財が2層に分かれて埋蔵されていることがわかったため、大幅な工事着手時期の見直しや事業工期の延長などを余儀なくされている状況ですが、歴史的に価値のある文化財の保護を図りながら事業推進に取り組んでいきたいと思っています。
※本資料の写真およびイメージ図等については、平成22年度「下羽田遺跡の発掘調査成果」にかかる記者発表資料((財)滋賀県文化財保護協会)より抜粋し掲載している。