問い合わせ/浜縮緬工業協同組合
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浜ちりめんは「シボ」と呼ばれる、表面に凹凸模様のある絹織物だ。シボは生地に美しい光沢となめらかな肌触り、染色の染まりやすさを生み出す。浜ちりめんは無地ちりめんとして出荷され、主に着物として仕立てられる。そのため広く一般には知られていないが、加賀友禅や京友禅にも使われる最高級品なのである。絵画で言うと、キャンバスを作っているというわけだ。純生糸だけを使う浜ちりめんの一つの反物には約3000個分の繭(まゆ)が使われ、製品となるまでには約2ヶ月を要するという。
織物とは経糸(たていと)と緯糸(よこいと)を交差させて織った布。シボは強い※撚(よ)りがかかった緯糸が、元の状態に戻ろうとする時、がっちりガードしている経糸と経糸の間で盛り上がった時にできる。糸の太さ、本数、撚りの強さ、方向などを変えることでさまざまなシボをつくることができる。歴史のある「一越(ひとこし)ちりめん」、シボが大きい「古代ちりめん」、主力商品である「変わりちりめん」をはじめ、これまで多種多様のシボが開発されてきた。その種類は30を越える。言葉にするといとも簡単なようだが、シボは経緯合わせて何万本という極細の生糸の力の結晶なのだ。糸だけでこれだけの種類の模様が作れるのは驚きだ。
経糸と緯糸は機屋(はたや)と呼ばれる企業で作られる。緯糸に強い撚(よ)りをかける作業は、長浜独特で八丁撚糸(はっちょうねんし)(水撚(みずよ)り)という。まず、生糸を柔らかくするために熱湯で40〜50分炊く。そして、乾燥した生糸を強く撚ると切れやすいため、絶えず水をかけて湿らせ、1メートルに2000〜3500回という撚りをかける。水は伊吹山の雪解け水が伏流水(ふくりゅうすい)となった地下水を使う。年中15℃で安定し、成分が変わらないので品質も保たれる。なるほど、ちりめんの産地、京都丹後、新潟五泉(ごせん)、いずれも雪国だ。
出来た生地は「生機(きばた)」といい、組合が運営する精練(せいれん)工場へ運ばれる。この時の生機はごわごわとしているが、精練工場で煮沸すると、セリシンという生糸の成分が溶けて柔らかくなる。同時に緯糸が緩んで撚りを戻そうとしてシボができる。この後、洗いに洗って乾かすと、しなやかな生地に変身する。ここで使われる大量の水が琵琶湖の軟水。湖岸から1キロ先、水深8メートルから汲み上げている。塩類の含有量が少ない軟水が洗濯や染色に適していることは言うまでもない。そして、シボが崩れてしまわないようにその日のうちに生地を乾かしてしまう。
もともとこの地域には広大な桑畑が広がり養蚕(ようさん)が盛んだったという。江戸時代中期に織物が始められ、彦根藩の手厚い保護で発展した。時代を経て、浜ちりめんが生まれ、豊かな水と織物に欠かせない湿度に恵まれた風土で育まれた。琵琶湖のさざ波がシボに、伊吹山の雪が純白の織物になる。浜ちりめんには自然の恵みと先人の知恵が織り込まれているのだ。
まちぐるみによる着物人口を増やすイベント。純白のウェディングドレス、洋服、小物の創作。産地直販の構想。着物離れを懸念して、産地ではさまざまな取り組みが行われている。伝統を活かして、浜ちりめんはこれからどんな色に染まっていくのだろうか。
(取材:2008年1月)
※撚る:ねじりあわせる。
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