・稲発酵粗飼料(イネホールクロップサイレージ、稲WCS)とは、稲の穂と茎葉をまるごと刈り取ってロール状に成型したものを、フイルムでラッピングして乳酸発酵させた牛の飼料です。
・WCS用稲のメリットは、基本的な栽培技術が主食用水稲と同じで機械がそのまま利用でき取り組みやすいこと、専用の収穫機械により収穫作業を効率的に行うことができることが挙げられます。また、国でも経営所得安定対策の戦略作物として推進しており、水田の有効活用や飼料自給率の向上のために、作付を拡大しましょう。
1.WCS用稲の栽培ほ場を団地化すると、生産から収穫・調製までの作業効率が高まります。また、早生や晩生品種を組み合わせた作付け計画を策定することで無理なく適期収穫ができ、作業の効率化と品質向上につながります。
2.WCS用稲は、茎葉を含めて収穫が行われるため、子実分だけでなく、茎葉分の養分もほ場外に持ち出されます。収穫後には、家畜ふん堆肥などの有機物を施用して、地力の低下を防止してください。
3.WCS用稲の収穫調製機械は大型ですので、栽培ほ場への進入路の確保や沈み込まないための乾田化が必要です。
・WCS用稲の栽培管理から収穫・調製までのポイントを以下に示します。
・なお、詳しくは、一般社団法人 日本草地畜産種子協会が、詳細な技術マニュアル(「稲発酵粗飼料生産・給与技術マニュアル第7版」)、「飼料用イネの栽培と品種特性」を作成していますので、ご覧になってください。
・稲WCSには食用品種、専用品種のどちらの稲も利用できます。作付計画の策定に当たっては、給与農家の要望に応じた適切な品種を導入するとともに、収穫時の作業競合による刈り遅れや倒伏や鳥獣による被害が生じないようにしましょう。
(1)WCS用稲の専用品種は食用品種と比べて発芽率が若干劣る傾向がありますので播種量に注意しましょう。
(2)乾物重とTDN収量を上げるためには、品種の能力の範囲内で多肥栽培を行うことが必要です。
(3)家畜ふん堆肥の施用は多収性の専用品種の増収に有効です。連用すると2年目以降に増収効果が高まり、化学肥料の使用の削減につながります。
(1)WCS用稲の農薬使用については、「稲発酵粗飼料生産・給与技術マニュアル第7版」のほかに、「滋賀県農作物病害虫雑草防除基準(病害虫雑草防除基準:飼料作物)」を確認してください。また、農薬の追加などの今後の情報に留意してください。
(2)「ミズホチカラ」、「モミロマン」などの水稲品種は、「ベンゾビシクロン」、「メソトリオン」、「テフリルトリオン」を含む除草剤に対する感受性が高く、甚大な薬害の発生事例が報告されているため、それらを含む除草剤は使用しないようにしてください。
(1)WCS用稲の収穫は糊熟期から黄熟期を基本とし、稲体の水分含量が70%以下になってから行います。また給与農家の要望に応じて給与する家畜の種類や給与時期を考慮し適宜、早刈り、遅刈りを行います。
(2)収穫作業の効率化と土や泥水の混入による品質の低下を防止するために、中干しを励行するとともに、早期に落水を行って事前に田面を固めておきます。
(3)収穫後は速やかにフイルムで密閉します。また、フイルムの巻き数は、6層巻を基本とし、長期保存(半年以上)する場合は、品質低下を招かないよう8層巻にします。
(1)ロールベール運搬する時はラッピングフイルムを破らないように細心の注意を払い、もし穴が開いた場合は直ぐにビニールハウス用補修テープで穴を塞ぎましょう。
(2)ロールグラブ等でロールベールを運ぶときは変形させない程度にやさしくロールベールを掴み、トラック等で輸送する場合は積載量を守り事故の無いように注意しましょう。
(1)トレサビリティを確保するために、生産者名や栽培場所、収穫日等の栽培履歴を記録しましょう。ロールベールにラベルを貼るなど給与農家にも栽培履歴がわかるようしましょう。
(2) ロールベールの保管は安全性を考えて3段積みまでとし、野外で保管する場合は、カラス対策に防鳥ネット、イノシシが出るところは電気柵を設置しましょう。またネズミ対策のためロールベールは隙間を開けて並べるようにしましょう。
(3)保管場所を適宜観察して、ロールベール廃棄による損失を招かないよう適切な利用に努めてください。