近年、「食後数時間程度で一過性の嘔吐や下痢が起こるが、軽症で終わる」という有症事例が全国的に報告されています。
これらの事例では、以前から知られている、食中毒病因物質や化学物質等が検出されないか、検出しても症状が合致しないため、原因不明として処理されてきました。
厚生労働省が全国の事例を調査したところ、平成21年6月から平成23年3月までの間に198件確認されました。
これら198件の事例について、詳細に食品解析を行ったところ、生鮮魚介類が含まれていた事例が多く、その中でも「ヒラメ」を食べたものが多く確認されました。
そこで、ヒラメについて病因因子の遺伝子解析を行ったところ、クドア属の寄生虫(※)に感染していることが確認されました。
(※)粘液胞子虫:Kudoa septempunctata(クドア・セプテンプンクタータ)
クドア属の寄生虫は、一般にゴカイ等の環形動物を介して魚に感染すると考えられており、魚の筋肉(身)をゼリー状にしてしまう種類はあるものの、人体には直接的な影響はないとされてきました。
これまでの事例から、クドア属の寄生虫が寄生した食品を生で食べることにより、必ずしも発症するものではありません。
事例が少ないことから、現時点では、どのくらいの量を食べると症状を示すかは明らかになっていませんが、発症した場合には食後数時間程度(4~8時間程度)で、下痢、嘔吐、胃部の不快感等が認められるものの、症状は軽度であり、速やかに回復し、翌日には後遺症もないとされています。
また、これまでに発症した本人以外に、家族等から二次感染は報告されておらず、研究成果からも感染の可能性はありません。
(1) -15℃~-20℃で4時間以上凍結する
(2) 中心温度75℃5分以上加熱する
上記のいずれかの処理により、クドア・セプテンプンクタータは病原性を示さなくなることが分かっています。
クドア属が寄生したヒラメによる食中毒の防止には、次のような対応が必要といわれています。
(1)養殖段階においてのクドア属保有稚魚の排除
(2)飼育環境の清浄化
(3)養殖場における出荷前のモニタリング検査
現在、農林水産省では、「ヒラメ養殖施設でどのようにしてクドア属の寄生が起こっているのかの経路の解明」や「養殖場などで簡便にクドア属の寄生の有無を判別できる技術の開発」等の取組を開始しています。
啓発チラシ
ヒラメ筋肉組織中のK.septempunctata[PAS染色]
ヒラメから抽出したK.septempunctata胞子[メチレンブルー染色]
【画像提供:滋賀県衛生科学センター】
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