県民活動課から「ラウンドテーブルしが」とテーマの趣旨および会議運営ルールの説明
今回は、「甲賀地域の特性を活かした地場産品・産業の情報発信などについて」というテーマで、冒頭の県事務所事業担当課からの関連施策説明と多賀町商工会の方による参考事例の情報提供に基づいて、様々な視点から課題を抽出し、今後のあり方について意見を出し合った。
この中で、出席者の皆さんから多くの意見を出していただいた結果、甲賀地域が抱えている共通の課題が浮かび上がってきた。
それは、甲賀地域には、非常に魅力的で特色のある地域資源が多くあるが、旧町エリア同士の連携や地域全体のコーディネートが不十分であるということである。
つまり、「忍者」、「東海道」、「信楽焼」、「茶」、「薬」など極めて豊富な歴史、文化、産業の資源があるにもかかわらず、他地域と比べて「甲賀地域」を一つにまとめるキーワードが今のところ無く、県(圏)外から来る人に地域を紹介するための十分な連携や情報整理・情報発信ができていない。このために、各町それぞれが特色のある地域づくりを引き続き進めていただくことと並行して、甲賀地域全体でするべきことや出来ることの抽出、見極めをするコーディネーターの存在の必要性が唱えられた。
また、今回のラウンドテーブルのような、NPO、関係団体、企業、行政などの多様な主体が、地域共通の課題について話し合い、ネットワークを築いていくための場が、常に必要とされていることを実感した。
しかしながら、今後もラウンドテーブルに出席された皆さんをはじめとする、甲賀地域のまちづくりにかける熱い思いを持った多くの方々の知恵が活かされ実行力が発揮されれば、元々様々な面で恵まれた環境にある甲賀地域は、昨年2月の新名神高速道路開通を契機として、より一層の発展が期待できるものと思われる。
県南部振興局農産普及課から、県の施策・事業等の概要を説明。
多賀町商工会から、甲賀地域における参考事例として、多賀町における地域活性化事業等の概要を説明。
世話人:「ラウンドテーブルしが」の進行は世話人が持ち回りでしているが、今回のテーマについては、色々な場面で横の連携をされている多賀町での取り組みが参考になるかと思い、以前のご縁もあって商工会から来ていただいた。
また、自己紹介を通して色々なキーワードが出てきた。安全・安心、自律(立)、協働、地産地消、忍者、新名神、下田なす、食育、羽二重餅、お茶、ツリーハウス、ミュージカル、わりばし炭、農業法人、歴史、伝承、地域資源など。甲賀は多賀とすごく似ている部分があるということで話してもらった。個人的には、甲賀地域にはすごく資源があって、頑張っておられる方が多くいるが、横につながっていない感じがする。うまくつながると多賀以上の地域の活性化につながると思う。そういった観点から、こういうところが課題だとか、こういうことができたらいいなとか、地域課題として思っていることで、どなたか意見はないか?
NPOほか:多賀町商工会の話を聞いて、歴史が豊かだと思った。全体が一つのまとまりを持った地域の中でやっておられる。一方で、甲賀地域はそれぞれが独立した地域。一つずつの町における提案としては良いが、甲賀市に置き換えるとどうか。例えば、地元の町のことは知っているが、市内の他の町のことは、あまりわからない。
ところで、多賀では年間何日くらい賑わっているのか?
西澤氏:概ね正月の期間、地元の月1回のイベントの日、土日である。平日、特に月火水は非常に厳しい。地元あってのことなので地元のための取り組みという意味もある。本当に100日もない。
NPOほか:良い話を聞いたし真似たいとも思う。しかし、甲賀地域の場合は有名な神社などが分散してあるが、同じような形でまとめるのは難しい。
NPOほか:農協を中心に団体として椎茸などの野菜を売らせてもらっている。よく売れるのだが、ここの良さを活かして売っていきたい気持ちがある。あとは、県で環境こだわり農産物のレッテルがもらえるのだが、面積が広くないと認められないと聞いた。そういう点も考えていただいて、地産地消の良い物を皆さんに買っていただくためであれば、(基準の見直しなども)考えてほしい。
NPOほか:地産地消の関係で色々な農産物を提供している中で、甲賀市の旧町単位で資源や歴史的なものがすごくたくさんある。ところが、それを甲賀市で一つに、というのが難しい。まず各町単位で資源の掘り起こしをして、色々なやり方で可能になるのでは。
配付資料にあるペットボトルの緑茶だが、環境こだわり農産物で琵琶湖をきれいにしようという取り組みの一環で、行政と地元の大手スーパーと農協、さらに淡海環境保全財団が関わっている。「近江三方よし」でなく、「五方よし」ということで、消費者の方にも喜んでもらえる取り組みでもあり、関心も高まって消費も伸びる。単に作ることだけでなく、色々な意味で連携を取るということが大事。今は連携した態勢で農産物の販売があまり出来ていないのが現状である。「食育畑」は商標も取っていて県とも協力しているが、次への糸口がなかなか見つからない。商工との連携がうまく取れないのが一番問題なのかなと思う。
NPOほか:多賀では今、協議会を立ち上げている。町内に、工業団地があるのだが、会社が一番に考えなければならないのは労働者の健康であり、地元で労働者の健康は任せてくれと言っている。農家の方と委託契約をして弁当屋で仕出しをやっていただき、みんなで食べている。環境こだわり農産物の認証やブランド化も大事だが、昼間人口が増えており、その人達の口コミでも拡がる。多賀の農家が健康を守る、と言うと結構買ってもらえる。
大きな会社でもリストラをされて社員食堂を閉めている所がある。それを狙っているのが大きな弁当屋やコンビニエンスストアである。
NPOほか:地元のお年寄りが作られたのだが形がいびつな物などは、安全でおいしく、それを食べたいと思う人も多い。それをやっているのが三重県の小山田村である。たくさんはないが大変繁盛し、地域活性化に非常につながっている。温泉に来る客だけが買っている。甲賀にはそのような仕組みが無い。使い分けをどうするのかが課題である。
NPOほか:平成16年に合併したが甲賀市は恵まれていると思う。5つの町には非常に特色があり、それぞれの特色を生かしたまちづくりを目指してミュージカルを作った。しかし、あまりにも各町の特色があって、しかも守り過ぎる。先ほどの方も言われたが、すべてがそれぞれ独立のもとで完結している。それらを一つにつなごうとするならば、「文化」が必要。歴史もそうである。例えば、甲南町は忍者で有名だが、忍術屋敷と食文化を一緒にしていかに忍者を活かしていくか、などが地域の課題かと思う。
NPOほか:「忍者」というキーワードで、今は「忍術」に特化しているが、もう少し文化的な拡がりを、ということか?NPOほか:忍者を活かすならば、色々な手法がある。「忍者」「米」などのキーワードを活かしきれていない。各町が関連が無く独立したまちづくりをしているが、ここで「文化」という関連を持ったものを入れると連鎖を起こしていく。彦根は「ひこにゃん」で成功した。長浜には「黒壁」がある。甲賀には一つの大きなキーワードが無い。もっと具体化してそれを関連させることが良いのではないか。必ずしも忍者だけでなく、何かで活かせば良いと思う。
世話人:例えば、多賀では「絵馬」が地域をつないでいくツールとしてあったが。
NPOほか:3月20日に甲南ICができるのだが、甲賀市はやはり忍者であり、甲賀忍者は世界に通じる。でも、観光客が「ああ、忍者の町に来たな。」と感じるような、忍者が町の全体にはなっていない。バラバラなのはやむを得ない面もあるが、そろそろもう少し周辺に拡げて大きな枠で連携を図らないと、いつまでたっても甲賀市としてのテーマができてこない。
NPOほか:皆さんが横のつながりを言われており、私も10年前からそう思っているができていない。だったら横につながらなくてもいいのでは、と最近思っている。お互いを知って、それが横のつながりになるのかもしれないが、連携しなくてもバラバラで良い方法がないか、今模索している。何もかもが個々で、それが特色でもある。個々のままで何とかならないか? ずっと出来ていないのだから、もう良いかなと感じている。
世話人:甲賀は必ずしも横でつながらなくても、という意見があったが。
NPOほか:やはり、地域の特色を活かした文化や産業に関しては、地域の横のつながりが大事である。私がいる「東海道伝馬館」は土山の旧東海道沿いにあり、地域に役立つ場所にしたいと思っている。例えば場所を提供して地域コミュニティの拠点にしたり、特売品を販売したいとも考えている。場所があるのでできると思うが、提案するにあたっては、地元商店に不利益を及ぼしては駄目だし、道の駅との関係や、祭りの時の人の流れなど、色々な人が関わらないといけない。十何年も前から取り組んでいるが、このたび新名神が出来て、県外の観光客がかなり入って来ている。そういう人達のために、本当にもっと土山のことを知って欲しいと思っても、連携ができていなくて、すごく観てもらうところが少ない。例えば観光ボランティアにしても、土山と水口などとの連携はできていない。そういうことに対して、土山に来たら、甲南、水口のここがありますよ、といった、連携して全体でやることがあり、単独の町で出来ないこともある。今日の会議のように、皆が意見を出し合える場や、圏外に向けて発信していくためのコーディネーターが必要である。それが商工会の人だったり、農協の人だったり、どれが適切かなどを見極める人が必要。リーダーのような人がいないので、そこが問題。そういう人がいたら良いなと思う。
NPOほか:桜なら各町に良いものがあり、桜を観たいと言われると案内をするのだが、甲賀でそれがつながると素晴らしい。でも、実際に他から来た人にはわからない。せっかく良い町が5つあるのだから、例えば桜でつながって圏外に発信しても良い。それが産業、観光を踏まえた活性化にもつながる。今はつながるものが無いというのが現実である。
世話人:整理をすると、地域資源があるのにまとまって情報整理・発信がされていない、ということか。
NPOほか:各町が困らないから、それでいけるからである。また、交通の便も良く人口も多い。だから今のままで満足している。
世話人:そこに情報のコーディネーターがいれば、拡がりが出てくるのではないか。
NPOほか:地元の方々の意識改革も必要だと思う。
行政:旧の町ごとに「守り」に入られているという意識を感じた。各町で特徴的なものがあるのだが、観光協会や商工会もバラバラに動かれており、そういうところが来ていただいていると、通じるものがあって良かったのかと思った。
NPOほか:先日、某自治体の幹部を訪ねた時に、部屋の中に「八方美人は八方ふさがり」という言葉があった。我々は多くの資源を持っているが、八方美人になり過ぎていないか。一つひとつテーマを決めて、その中できちんとやっていかなければならない。例えば、観光客へのアンケート調査で地元の町に来た目的は?と聞くと、3分の1は、これといった目的が無く、ただその町に行きたかっただけ、という人である。その中でテーマに沿って、つながる仕組みをつくらないといけない。それがないと、「何が有る。」という形として見えてこない。
行政:甲賀は各地域の魅力がすごく豊かだが、行政がこの豊富な資源と課題を共有して、地域づくりの計画段階から住民が主体的に関わる仕組み、それを実行し検証してさらに発展させる仕組みが必要である。
NPOほか:大津から来たが、今琵琶湖の南湖で水草の問題が起きている。水草が多くて船が通らない。守山でもそういう問題が起きている。甲賀でこんなことを話しても仕方がないが、お互い情報交換というか、甲賀で色々なことを思っておられるのに、同じ滋賀県だけれど、全然そのようなことが大津に届いていない。一方、大津の問題は甲賀には届いていない。直接、面してはいないが、琵琶湖の問題は甲賀の人も協力しないと解決しない。甲賀の問題も大津で手伝えることもあるかもしれないが、伝わってこないので難しい。
NPOほか:行政も金が無く、何をやってもダメだと言うが、あまり言わない方が良い。そういう風潮になってきているが、もっと前向きに考えるべきである。
NPOほか:今、新名神が出来たので、これから中京や京阪神からは日帰り圏である。その中で、やはり地域のガイドは必要である。他市町は大学と連携しているが、甲賀では大学との連携は無いのか? 学生が入ってきたらコーディネーターになるかもしれない。
NPOほか:大学との連携は、要するに地域がどういう問題を抱えているか、それを大学とどういう連携・共有するかがはっきりしていないといけない。はっきりしているものがあって初めて大学に働きかけないと、「何を連携するの?」となってしまう。すぐ近くに龍谷大学や立命館大学があり、新名神ですぐ来られるのに連携できていないのは、「何を連携するのか」というテーマが無いからである。
NPOほか:横の連携では、今、甲賀調理師会では、てんぷら油を回収して公共バスを走らせようとしており、今度はさらに市の学校給食センターの油も集めて年間でドラム缶100本を集めようとしている。甲賀調理師会は、甲賀市、湖南市にまたがっているが、やはりトップの方に意識があれば、広範囲に連携して動かれると思う。
NPOほか:現状を言うと、皆さんそれぞれの意識が似ている。旧町単位で資源は豊富で困っていないが、横のつながりができていない。それを感じている。ただ、歴史的に各町色々豊富なものがあるから、それはそれでアピールすべきである。今、天ぷら油を活用するという取り組みは大事であるが、歴史的には、農協ならお茶などがあるのだが、それを消費につなげるのは難しい。農協としては、「甲賀は一つ」ということを合言葉にしてきており、県外のJAにも出したが、知名度では「甲賀」というと話が早い。次に「信楽」と言うとわかってもらえる。そういう名前は大事にしていきたいし、「東海道」もある。歴史を大事にして、その上で横の連携をどうするかについては、何かそれを一つにまとめられるような組織的なものがあれば、まだまだもっと協調してやっていけるのかと感じた。
世話人:多賀とは違った取り組みでこのようなことがある、という逆の視点で何かないか?NPOほか:先ほど言われたように、無理矢理横の連携をする必要も無いと感じる。何故かというと、まず昔からのまち、自分のまちを愛しているから、そういう意見が出てきたと思う。そこで良いところを磨いて補完すべきと思う。すごく誇りとエネルギーを持っている方がおられることがよく分かったので、それは認めて、つながりを作っていけば良いと思う。多賀は合併していないが、彦根や長浜と連携しており、つながりを作ることが大事。多賀には朝来られると、食事は長浜、彦根でされる。地域連携ではやむを得ない事情があり、より付加価値を付けることを考えている。それで補完関係とネットワークを作る上で、近隣の地域と、1,500年のまちは湖東三山、1,000年のまちが多賀大社、500年が彦根、300年が長浜、といった歴史街道の視点でお互いが出し合っている。例えば、甲賀には「忍者」があるので、それを基に各町毎に補完関係を見出していただければと思う。
いずれにしても本日の皆さんの熱意には圧倒された。
世話人:NPOの視点では、立命館大学でボランティアコーディネーター養成講座をやっていて、学生が各地域に出て行くプログラムがある。今しているのは自分たちの地域の文化を掘り起こして屏風絵にする取り組みである。
だから、皆さんが地域内で頑張るとともに、外へ出て行って情報を発信しなければ大学へは届かない。市が積極的に戦略的な包括協定等を結ぶのであれば可能性はあると思う。今日は県の主催事業だが、これをきっかけに市の産業担当者を交えて、皆さんで独自にやってみても良いのではないか。
東近江市の地域情報化基本計画の業務に携わっている。情報化に関して30カ所の商工会等に回った。同じようなネットワークの話が出ていたが、情報化というのは割とローコストで色々なことができる。話し合っているのは観光産業ポータルサイト。それを組み立てないかという案が今委員会で出ている。また、まちづくり協議会が市内にあるので、そこを拠点に地域情報、それも自治会関連だけでなく、産業等も含めてすべて発信できないかと検討されている。まだ実体は無いが、そういう視点に立って、みんなが一度話し合うというのも良いのではないか。東近江では、一体化したまちづくりを盛んに言われているので、すべての計画が、全市でみんなが取り組むことができるようにされている気がする。多賀での話にあったが、「食」と「給食」、「文化」のような、関係しているものを事業化できるネットワークがあればと思う。
NPOほか:ここにいる方は、自分の地元のものを育てたいと一生懸命活動されている。地域の中で頑張られるのを駄目とは言えない。そういう形がまず最初にあって、それをどうつなぐかである。地元の町に観光ボランティアガイドを4月から置く。他町のガイドの方と交流しながら半年以上かけて10人を養成し、これから認定ガイドが出来る。それができて初めて分担できる。時間がかかったが、やっとできてきた。いきなり「これが無い。」とか「連携が悪い。」などと言っても駄目である。準備をしてきてここまで来た。これからそれをどうつなぐか、今はそのようなレベルにあると認識すべきである。
世話人:今日は人数が多くて話し足りなかったと思う。「ラウンドテーブル」は結論を出す場ではなく、県行政とNPOとで進めていた「協議」の場づくりで、協働に進めるための種を探るものとして始めた。
なお、最近はなるべく地域に出るようにしているが、高島でもそうだったが、ひとつの地域の話に県を被せるとわかりづらい。特に今日のテーマに関して、農業の普及や林業、農村振興は、県が深く関与している分野で、さらに農商工連携で農協や商工会等が複雑に絡んでおられる。一方で「甲賀地域」がテーマと言ったが、湖南市の行政とNPOの方も来ていただき、もう少しエリアを拡げると県のあり方も若干見えたかと思う。また、今も非常に縦のラインが強く、例えば農業サイドの中でもあまり連携できておらず、まして商工関係との連携はなかなかできていない。これを突き破れるのは我々NPOかと思う。また、市行政の担当、県、農協、商工会、観光協会等のプラットフォームができると良いかと思う。今日は難しいテーマで、合併したといってもなかなか一体感を持ちにくい。そのような意味では、県の役割がまだあると思う。地域を跨いだ広域観光という話になると甲賀地域2市の連携だけでなく、調整役が必要かもしれない。
いずれにしても第二弾ができれば良いなと思う。甲賀地域のNPOネットワークが最近どうなっているかもわからないので。皆さんも市だけでなく、県にも言ってもらえればと良いと思う。
世話人:客観的には地域に素材が一杯ある一方で、プラットフォーム、共通の基盤がやはり必要とされていると感じた。
「ラウンドテーブルしが」は、課題抽出、きっかけづくりの場だから、これをきっかけとして、来年度第二弾があっても良い。甲賀地域の方からやりたいという話が出てきて、次につながれば良いと思う。
情報掲載日 2009年03月31日
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滋賀県県民活動課NPO・協働推進担当
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