県民活動課から「ラウンドテーブルしが」趣旨説明、ルール説明
今回は、「滋賀県の農業」というテーマで、農業に関し様々な視点から課題を抽出し、今後のあり方について意見を出し合うこととした。
その中で、出席者の皆さんから様々な事例や意見をいただき、大きく分けて2つの具体的な課題・テーマが浮かび上がってきた。
第一点は、農業体験や地産地消への取り組みなどを通じて、「新たな農業・農村の担い手づくり」を行っていけないかということであった。
二点目は、安全・安心な食の供給や他地域には無い滋賀県の特色・優位性を発揮していくという観点で、「琵琶湖を活かした環境こだわり農産物」について、さらなるPRの必要性とあわせて、琵琶湖の「藻」や外来魚を活かした肥料作りなどの話題が提供された。
これらの中では、現在および将来の食の安全や食糧危機の問題に対して、これを単なるピンチではなく、むしろ滋賀県の新たな農業のモデルを創り出す良い機会・チャンスだと考えられるような、多くの前向きな意見をいただくことができた。
次回の「ラウンドテーブルしが」では、今回の協議内容を踏まえた、さらに実りある議論を深めることができるのではないだろうか。
行政:[別添資料『しがの農林水産業』(「参考リンク」参照)に沿って滋賀県の農政について概要説明。]
農村は、農業を通して多面的な役割・機能を育む場を持っているが、今は農業者の高齢化、農村地域の過疎化により、農村の施設を守る担い手が減ってきた。農家以外の方も一緒になって守っていこうという考えから、施設の保全、田園景観や生物多様性を維持・再生する事業を行っている。こうした取り組みを通して、人とひととの絆・関わりを深めていきたい。
9月から地産地消キャンペーンとして毎月第3土・日曜日を「地産地消の日」とすることを考えている。地産地消推進店舗の登録制度も検討しており、7/25に地産地消キャンペーンの募集説明会を開催予定。
今、安心できるということで、県内産への農産物に対する需要が非常に高くなっている。ニーズに十分応えるだけの生産をしっかりやっていきたい。また、流通体系の整備も必要。対策は2つ考えており、一つは、県内4つの拠点・公設市場(大津、八日市、彦根、長浜)の機能を活かして、県域で県内の農産物を流通させること。もう一つは、地域内流通。直売所、企業の食堂、レストラン、学校給食など、地域内で連携を深めて流通を促進させていく仕組みを考えていきたい。
行政:大多数の県民の方に滋賀県産の農産物がどこにあるのか、まず知っていただく。それと、生産者と消費者の顔が見える関係が大切。今まで生産者は作るだけだったが、売れるものを作るという方向に意識が変わってきている。こだわり滋賀ネットワークの方々には、直接生産者と消費者とを結びつけていく活動をしていただいている。
NPOほか:農業の営業はどうなっているか分からない。企業はおおざっぱに言うと、1.研究開発、2.生産、3.営業の部門があるが、地産地消では、物を売るのと同じくらい、情報を生産と研究開発に反映し、改良させるのが非常に重要。そこを農業でもしっかりやるべきである。
NPOほか:これからはこちらから攻める時代である。例えば東京の中心部ではニンジンをジュースにしたら1杯が高く売れる。向こうから来るのを待っていてはいけない。それを取り入れると、おそらく所得はすごくアップする。最終的には、最初の呼び水だけで、それほどお金を使わなくても良い形ができると前から思っている。ちょっとした呼び水で転がしていくと、自動的に滋賀県の農業は成り立つことも少し頭の中に入れていただきたい。
世話人:去年の今頃、農業の話をラウンドテーブルでした記憶があるが、これから日本の農業は大変だというマイナスのイメージがあったが、この1年で大分関係が変わり、これからの農業は食糧危機もあり、国際資本が農業(肥料)を戦略物資にしようということになってきている。今までと違い、農業が戦略の時代に入ってきている。今年から攻めの計画をどうするかという感じになっている。今まで農業は投資をするという事業ではなかったが、今年から消費者として食料はどうなのか?という不安があって、その不安の部分をうまく呼び水として消費者の投資が引き出せればと思う。たとえ儲けにはならなくても、維持していくための投資を呼び込むことは可能。
NPOほか:自給率、エネルギー問題から考えると、農業でどれだけ雇用できるかは、国家戦略としても面白い。農業を今までされてきた方が、早くその部分に気付いて色々な展開をすべき時期だと思う。ただ、入口から出口までが農家には分からない一方で、一部の入口から出口までわかる人は輸出までしている。入口から出口までがわかる農業のシステムをつくり上げる。それが大きな戦略ではないかと思う。
NPOほか:作る側の担い手が自活するということが大事である。農家として、補助金がないと生活できないというのは本来おかしなスタイルである。自立できるかが本来の担い手になる条件になる。自立していただくためにどうするか、というのが大きな課題。農家として自立していただく政策に特化すべきである。
行政:地域によっては少子高齢化ということで、取り組みを続けていくためには、一過性の事業に終わらず、経営感覚に優れた担い手の育成などを他の施策とどうリンクして事業展開されるのかと考えて話を聞いていた。
NPOほか:担い手が一番の問題だと思う。小中学校において農業経験をさせるべきだと思う。今は田舎の子どもも農業を知らない。ほとんどは関係団体等に委託農業をしている状況である。後継者、担い手の育成は必要。
NPOほか:ある程度の助成の中で自立できているのが残念ながら実態である。その中で、自立できていく体制づくりが必要。農業の経営支援をしたいと思っているが、企業の中では、ニーズに合ったものを作るということだが、この基本がないといけない。チャンスとしては食の安全が随分クローズアップされている。今はある意味自立できるチャンスである。これをどう活かすかということかと思う。
NPOほか:担い手というのは大きい農家だけではない。家庭菜園でも立派な担い手である。10坪くらいの小さな場所があれば、一家族が一年食べるだけの野菜はとれる。家庭菜園を普及させて、みんなが小さな担い手になればいい。施策というほどではないが、NPOからでも小さな担い手の活動をしていければと思う。
NPOほか:環境こだわり農産物の知名度が低い。生産者側の支援も大事だが、食べる人へのアピールも必要。
NPOほか:環境こだわり農産物は他と値段的にはほとんど差はないにもかかわらず、あまり知られていない。スーパー等で意外と目立たない。しっかり表示されていれば。野菜などがいくつもある中で、果たして環境こだわり農産物のマークが貼ってある時に、きちんと手にとってどれだけ気付いてもらえるか、消費者に一人ひとりにどう届けるか、が課題ではないか。流通の中にきちんと入らないと拡がらない。
行政:2年前に県民意識調査したら認知度は44%であった。この44%をどう受け止めるか。これだけの量で皆さん半分知っていると取るのか、これだけの税金を使ってまだ半分かと。両面の取り方があるかと思う。そこで応援団を作ってPRしていこうという取り組みをしている。
NPOほか:スーパーにそういうコーナーを設けるのも必要な取り組みだが、顔の見える関係で、あの人だから買おうということも大事。
NPOほか:環境こだわり農産物は意外と当地の人が認知していない。滋賀県独自の化学肥料に頼らない農業政策という点では、県外の方がむしろ高い評価をしている。
NPOほか:滋賀ならではの良い面をどう活かせるかが大事。米については飼料米に結びついたものをやってみればどうか。畜産と結びつけた循環型農業では、肥料が高騰しており、有機肥料を有効に活用した循環型農業にすれば、地産地消につながる。ブランド・マーケティング戦略は見直す余地がある。
NPOほか:琵琶湖を抱えてこれだけの農業を展開しているところは全国他に無い。琵琶湖を活かしていかに農業をどうするか。これからは、農家は肥料を自分たちで作る時代だと思っている。琵琶湖から取れる肥料・エネルギー資源はたくさんある。例えば「藻」がそうである。このようなものをいかに農業に転用するか。これはおそらく滋賀県ででしかできない。これが可能になれば大きな資源になる。もう少しダイナミックな環境とリンクしたような農業を心がけてほしい。私たちのNPOは、ブルーギル、ブラックバスの「ありがとう券」に関わって、堆肥化している。こういうことが滋賀県の農業に活かせるはずである。縦割りで難しい面があるので、我々NPOにつないでいく役目があると思っている。
NPOほか:滋賀県の棚田は大変素晴らしいので、ぜひ残してほしい。そういうものを中心に琵琶湖を考えた農業を構築していく余地があると思う。
NPOほか:滋賀県が環境こだわり農業を全国に先駆けてやっており、その点では賞賛されているが、特に琵琶湖を抱えた県として環境こだわり農業はどうするのかが今後の課題である。
NPOほか:農業もエネルギーを使う。琵琶湖を活用したものが農業と直結すれば、飛躍的に他府県よりも有利な立場になる環境にある。毎年、琵琶湖で藻の処理をしているが、琵琶湖をきれいにするために刈り取る必要があれば、出口を考えれば予算が減っても案外回れるのかなという気がする。バイオエタノールになる可能性もある。そういうことを考えると、ゴミが資源になる。非常に大きなエネルギー資源を抱えた県だということを認知し、それをいかに活用するかということを考えていただければ面白い県になるのは間違いない。
NPOほか:琵琶湖を抱えている滋賀県ならではの有望な条件がありながら、噛み合っていない部分もある。技術的に突破しないといけないことと、ネットワークのことの両面がある。やはり環境こだわり農産物の優位性をもっとPRすれば良い。世界が水不足である一方で、滋賀県は水に恵まれ、かつ塩害が無い。もう一度、地産地消なり地域循環型農業の将来展望、グランドデザインを描くことから始めていくことが大事。県も限られたお金の中で、豊かな資源をもう一度活用していく視点が本質的に必要である。
NPOほか:農業者以外の人も野菜を作り、家庭内で自給率を上げ、それが地域内の自給率を高めることにつながると思っている。貸し菜園をやっているが、自分が作ることで本当においしいと分かって、それが地産地消につながることもある。食べる人に向けたものもあって良いのではと思う。
行政:野菜については意外と多くが家庭菜園に担われている。それは重要という認識をしている。それを地域で流通することも必要。家庭で作られた野菜を直売所や朝市で活用するような方法もある。そのためには、少し表示を勉強していただき、出荷組合に入り、組織化して商品として体裁を整える、自信を持って提供できる形にすることは当然必要である。
NPOほか:直売所ではそれなりに品質も必要。みんなが同じものではだめである。しかし、加工するとか、色々なことが出来るのでは。何でもない一夜漬けのドボヅケが都会ではよく売れる。加工にはそういう面白みがある。行政(市・県)も限られた予算の中で、やはり地域の農業のモデルを考えないといけない。
NPOほか:NPOでも子ども向けの農業体験活動はあるが、会場の周囲は農業者ばかりだから、いくら募集しても誰も参加しない。もう少しやりたい人達と望んでいる人達をつなげるような仕組みができれば良いと感じた。
行政:子どもの農業体験は都市部の子どもはなかなか触れあう機会がないので、そういった貴重な体験ができればと思う。
行政:現場にいたときに感じたが、農村にいる子どもたちも必ずしも農業について知っている訳ではない。家でもあまり手伝ったりしない。そこで、小学校では体験実習をかなりやっている。そういった中で皆さんにご協力いただくこともあると思う。
行政:昔から農業は暮らしの一部だった。子どもが農業経験を知らないという話もあったが、身近なものでないと続いていかないし、意識できない。今の子ども達は、一過性の体験でなく暮らしの中でしていく、という経験がないから、できれば農業が大事だという教育をしてもらえたら良いのかなと思う。例えば、学校のカリキュラムに入れて、農地保全の大切さ、農業の重要性を学び、体験する機会を通じて、子どもに理解が拡がっていくのかなという気はする。
NPOほか:都市農村交流対策事業でも、地域外からの移住者を農村でどういう風に受け入れるかの対策・施策を、もう少し詳しく聞けたら嬉しい。
NPOほか:都市と農村の交流がよく言われ、地元でも都市部の子どもの農業体験事業をどんどんやっているが、受け入れるだけでは駄目ではないかと思っている。大阪の一部の地域と10年来交流しているが、「昼市」が好評である。米や野菜を持って行っている。これからはそういうことも考える必要がある。
NPOほか:農業に対する人々の意識をどう変えるかが大切だと思う。農家に生まれて大変だという子ども達の意識を変えるというのと、外から来て農業に憧れを持ち、良いイメージを持っている人を如何に地域に取り込んでいくか、のバランスが大切である。
世話人:20年弱前から県でも集団化の話、転作のブロック化、環境こだわり等、進んだ政策もあったが、幹ではなく、せいぜい枝の面であった。もう少し県独自で国の制度や法律を乗り越える仕組みを戦略的に考えることが必要である。滋賀県はまだ人口が増える。単純に考えれば、宅地開発が行われ、農地が減り、自給率が下がる。10年後、20年後のことを考えていかなければならない。統計的な数字だが、例えば、農地でも平野部の大規模化が可能なところと中山間地の割合はどうなのか、転作の状況、耕作放棄地がどれだけあるか等、そのような所も総合的に見てやっていく必要もある。担い手では、参入規制をどうするのかが大きい。多面的な役割等、色々な目で考えるべきであるが、すごく可能性があると思う。こういうことが市民と行政が一緒に考えれば良いと思う。
世話人:皆さんの意見を聞いて、非常に食糧危機・食の安全などの対応・対策に苦慮している側面もあるが、何か滋賀県として明るい兆しも見えてくるのかなという勇気をいただいた。ぜひ次回も時間があれば参加いただいて、今日のこの気運を醸成させていただけたらと思う。
事務局:次回(7月22日(火曜日))は、いずれかの地域振興局で開催する予定。都合がつけば、本日の議論を踏まえて皆さんにご参加いただけたらと思う。
閉会[12時00分終了]
e-mail:[email protected]