令和6年7月26日(金曜日)午後1時から2時30分まで
県庁新館7階大会議室(大津市京町四丁目1番1号)
知事、副知事、教育長、教育委員会委員、ゲスト、子ども若者部長(進行)
1.滋賀県総合教育会議運営要綱の改正について
2.(仮称)滋賀県子ども基本条例について
(村井子ども若者部長)
本日は、皆様お忙しい中お集まりいただき、ありがとうございます。
子ども若者部長の村井と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
定刻となりましたので、ただいまから「令和6年度第1回滋賀県総合教育会議」を開会いたします。
本日の出席者につきましては、お手元の「出席者名簿」および「配席図」の配布により、紹介に代えさせていただきます。
また、本日はゲストスピーカーとして滋賀県子ども若者審議会条例検討部会の部会長であります野田正人先生にお越しいただいております。どうぞよろしくお願いいたします。
また、石井委員におかれましてはオンラインで御出席いただいております。どうぞよろしくお願いいたします。
なお、本日の会議は会場での傍聴と併せて、Web会議システムを活用しまして、オンラインでも視聴をいただいておりますので御承知おきください。
それでは最初に、お手元のデータで参考資料を開けていただけますでしょうか。
今年度県では、新たに「子ども若者部」を設置いたしました。分野横断的に横ぐしを通して司令塔となって子ども若者施策を強力に推進することとしております。特に、教育との関係では、私学振興を当部に移管しましたほか、いじめや不登校といった様々な困難な状態にある子どもたちに関する取組を総括する新たな課も設けております。教育委員の皆様方におかれましては、今後様々な場面でお世話になり、また御意見を賜り、議論をさせていただきたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
ということで、この会議の進行役につきましても、昨年度までは教育長が担当されておりましたけれども、今回私が務めさせていただくこととします。教育長のように華麗に議論を進めるといったことはなかなかできないと思いますけれども、精一杯務めさせていただきますのでどうぞよろしくお願いいたします。
また、資料1を御覧いただけますでしょうか。今年度の総合教育会議の進め方ということで整理した資料でございまして、簡単に御説明いたしますと、今年度の総合教育会議、年間4回の開催を見込んでおります。本日の第1回から第4回まで資料に記載のとおり、本県の教育の振興を図るため重点的に講ずべき施策に関する個別の議題を予定しておりますので、御承知おきお願いいたします。
それでは開会にあたりまして、知事から御挨拶をお願いいたします。
(三日月知事)
本日もお忙しいところ御参加いただきましてありがとうございます。
また、傍聴をいただく方々、御覧いただいている県議会の皆様方含め、滋賀県の教育行政、子ども若者行政にそれぞれの立場で御尽力いただいている先生方に、また関係者の皆様に心から御礼申し上げます。
今年度の滋賀県総合教育会議が第1回ということでスタートすることになりました。先ほど子ども若者部長から説明がありましたとおり、新たに子ども若者部を設置いたしまして、「子ども・子ども・子ども」、一人ひとり主体としての「子ども」、社会の一員としての「子ども」、そして未来への希望としての「子ども」という、この子ども若者政策、教育政策をさらに充実させていくことができるよう、この総合教育会議に心を持って、心を入れて主宰してまいりたいと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします。
私事で恐縮ですけれども、この7月で知事としてちょうど10年の節目を迎えました。2014年の就任以降、この総合教育会議、教育行政、子ども若者行政に、県民の負託を受けて、力を入れて取り組んできたつもりでございますが、まだまだ至らぬところもたくさんあると思います。これからも現場の独立性や自由さはしっかりと守りながら、とはいえ声なき声に耳を傾けて行政として知事として、「ここ」というとき、「これ」というときは大きな力をもって動かしていくことができるよう、「変えるべき」を「変える」ことができるようにこれからも頑張ってまいりたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
まもなく学力学習状況調査の結果も明らかになるのかもしれません。まだ結果の詳細は私も存じ上げておりませんが、年に1回小学6年生と中学3年生がある教科、ある時間だけ行うこの調査そのものに一喜一憂するものではありませんが、この調査から明らかになる様々な事象は大事にしていきたいと思っております。とりわけ、それぞれの科目の学力テストと併せて、先生方、児童生徒、学校に対して行われる学習状況調査の中に、教科の正答率を関連させて様々な重要なデータもあるとするならば、経年の変化や他県との比較も活かしながら、本県の学習環境の改善につなげていきたい、また学習のもとに生活の状況、本人の心のありようというものがあるとするならば、この点もぜひよろしく御示唆いただければありがたいなと思っております。
特に私が知事に就任して以降、「学力」の間に「ぶ」を入れて「学ぶ力」を向上させようと、学力の基礎となる学ぶ力を高めていこうと、より良くしていこうということに取り組んでいるところでございまして、関連する読み解く力の向上のプロジェクトもまだまだ道半ばのところがあろうかと思いますので、この間やってきたことの検証を行いつつ、これからさらにどういったことをすればいいのかということについて、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。
まもなくパリ五輪が開幕しますが、平和の祭典が開幕する一方で、ウクライナの戦争の状態、イスラエルガザ地区の状況、こういったことを見るにつけ、胸が締め付けられるような思いでございます。特に幼き子ども、これからまだまだ育っていく子どもが犠牲になる場面がたくさん報じられております。我が国において、本県においてそういったことがないようにみんなでできることを努めていくと同時に、戦争のみならず、例えば感染症禍や自然災害などの災禍がありますと、弱い人がより弱くなり、そして立ち上がりも一番遅くなるという傾向がございますので、こういったことに心を寄せて対策を作っていきたいと思います。
いま夏休みということで、様々な課外活動や部活動、体験、行楽、旅行などが行われておりますが、そういったことにつきましても大切にすると同時に、実はそういった夏休みの生活が世帯の貧困や様々な事情ゆえなかなか立ち行かない現状でありますとか、そういった体験が十分になされずにこの体験の差が希望の差に繋がってしまい、それが将来の育ちや希望の格差にも繋がるということが指摘されております。子ども若者のそういった育ち学びを左右してしまう貧困ということについても、ぜひ思いを寄せ、この総合教育会議や子ども若者行政、教育行政の中でも意を用いて取組を進めてまいりたいと思います。
令和10年開校を目指した滋賀の高専の開校に向けた準備、また高校の魅力化をしようということで、まず伊香高校と守山北高校で新しい学科を作っていくという取組もいよいよスタートすることになります。ぜひ、未来の希望を充実させていくためにも、この中学や高校、大学と、学習環境をより良くしていく取組にもみんなの力が注入できるようにしていきたいと思います。課題はたくさんありますが、課題は同時に可能性だということで、皆さんと力を合わせて知恵を集めて、総合教育会議の場で様々な議論を行っていければと存じます。
最後になりましたけれども、この7月から前任の大杉さんの後継として、岸本織江副知事をこの滋賀県にお迎えすることとなりました。大杉さんに続き、文部科学省から来ていただくことになりましたので、そういう意味ではこの子ども若者行政や教育行政を滋賀県としても引き続きより力を入れていくということに繋げていければと考えているところでございます。大杉さんは「一言も二言も多すぎです」とよく仰ってましたけれども、岸本さんは大杉さんよりも一言も二言も多すぎるようなこともあるようでございますので、どうか忌憚なく遠慮なく御意見や御示唆いただきますよう、私からも激励方々お願い申し上げまして、また皆さんにも御紹介申し上げ、冒頭少し長くなりましたが私からの御挨拶とさせていただきます。
今日もこれからもどうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございます。
(村井子ども若者部長)
続きまして、ただいま知事から御紹介のありました岸本副知事におかれましては、今回の総合教育会議が初回となりますので、御挨拶をお願いしたいと思います。
(岸本副知事)
いま知事からの御紹介もございましたが、先週の7月16日付けで副知事を拝命いたしました岸本でございます。文部科学省に1993年に入省いたしまして、主に高等教育や学術政策、文化政策など、その他いろいろと教育政策研究などにも携わった経験などを活かしながら、先生方の御意見もいただきながら、滋賀のこどもまんなか社会実現のために精一杯頑張りたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
(村井子ども若者部長)
それでは早速ですが、本日の議題に入らせていただきます。
まず、議題1の「滋賀県総合教育会議運営要綱の改正」について、事務局から説明をお願いいたします。
(事務局:西川子どもの育ち学び支援課長)
お手元の資料2-1、「新旧対照表」を御覧ください。
今回の改正点は2か所ございます。
まず1点目、第2条第3項の出席者の定足数に関する規定ですが、法律上の必置の規定ではありませんでして、近隣の府県の状況も確認いたしましたが規定しているところがほぼないような状況でしたので、今回整理し削除しようとするものでございます。
2点目、第12条の事務局の規定ですが、今年度の組織改編により子ども若者部が創設されたことに伴い、担当課を変更するものでございます。
説明は以上です。よろしくお願いいたします。
(村井子ども若者部長)
この件に関しまして何か御意見等ございますでしょうか。よろしいでしょうか。それでは滋賀県総合教育会議運営要綱の内容はこのとおり改正とさせていただきます。
続きまして、議題2の方に移らせていただきます。
「(仮称)滋賀県子ども基本条例について」ということで、まず事務局から説明をお願いいたします。
(事務局:野口子ども若者政策・私学振興課長)
それでは私の方から「(仮称)滋賀県子ども基本条例」の審議会の答申の概要について説明させていただきます。資料3-1を御覧ください。
こちらは令和4年12月に知事から審議会へ諮問された内容を示しておりますが、平成18年に現行の「子ども条例」が策定されて以降、子どもを取り巻く環境は変化しており、国の方でも大きな動きとして、「こども家庭庁」の創設や「こども基本法」が施行されたところでございます。
そのような中、滋賀県として当事者である子どもの権利や意見をより重視する、子どものために子どもとともにつくる県政実現のため、新たな条例を検討することとなりました。
新条例の方向性としては現行条例にはない子どもの権利を盛り込み、こども基本法で示されている子どもの意見聴取・反映や、子どもの権利を保護する仕組みについて検討し、県だけでなく社会全体で取り組むという方向性をもって検討を進められてきたところでございます。2ページ目を御覧ください。
この条例を集中的に検討する組織として新たに条例検討部会を設置し、8回にわたり検討を進め、先月21日に知事へ答申されたところで、それから常任委員会で報告したところです。
今後のスケジュールとしては、9月から10月にかけてパブリックコメントを実施する予定で、それと併せて子どもに分かりやすい資料を用いた子ども版のパブリックコメントも実施する予定でございます。最終的に11月定例会議に上程し、年内の制定に向けて取り組んでまいりたいと考えております。
次に資料3-3については報告書の本体ですが、概要版を資料3-2で示しておりますので、そちらで説明させていただきます。資料3-2を御覧ください。
一番上の制定の趣旨ですが、前文の基礎となる要素として、生まれながらにして固有の権利を持っているといった、前提となる子どもの認識や子どもを取り巻く状況を示そうとしております。
目的と基本理念を御覧いただきますと、現行条例にはない子どもの権利を守るということを大きく打ち出し、それを実現するための役割、取組を示すという建付けとしております。
なお、この条例における子どもの定義は、「こども基本法」と同様に、基本的には18歳未満の者を念頭に置いておりますが、18歳や20歳といった一定の年齢で必要な支援が途切れないよう、心身の発達の過程にある者としております。
基本理念では条約の4原則を示し、社会全体で相互の連携および協力のもと取組を行い、また全ての子ども施策は、子どもの権利を守る観点に基づき実施し、一人ひとりの発達の段階に応じた切れ目のない支援を行うことを基本理念としております。
そうした関係者の役割ですが、県、保護者、学校等、事業主、県民について定めております。
まず県は、子どもの権利が守られる社会づくりを推進し、関係者が相互に連携、協力できるよう必要な支援助言を行うことを示しております。
保護者は、子どもが健やかに安心して成長できる環境を整えることを示しております。
学校等は、教育を受ける権利を保障する場であることを踏まえた子どもへの支援、意見表明できる環境整備、社会参画の促進、安心して楽しく通える魅力ある環境づくりを示しております。
事業主は、子どもが雇用される場合の健康福祉への配慮、それから子どもに関わる大人の職場関係について配慮を行うことを示しております。
県民は、子どもの権利の理解、尊重に努め必要な対応を行っていく、ということを示しております。
その右側の部分につきまして、子どもの権利が守られる社会づくりの推進のために、各種取組や制度を位置づけております。
子どもの意見の聴取・反映につきましては、「こども基本法」で国や地方自治体の子ども施策に子どもの意見を反映しなければならないと定められておりますが、県の子ども施策だけでなく社会全体で推進していく旨も記載しており、その中で国連における議論を踏まえた意見聴取にあたり配慮しなければならないような事項も加えているところです。
またその右、社会参画の促進や広報、普及啓発、機運醸成では、子どもの権利自体の周知が足りていないという問題意識から、子どもを含む県民へ広く理解が深まるよう取り組むことを設け、一時的な広報ではなく、子どもにとってわかりやすい情報の提供が必要としております。
その下、「(仮称)滋賀県子どもの権利委員会」の設置につきましては、新たな附属機関として権利侵害の解決に向けた個別救済、制度提案、周知啓発を行う第三者機関を設置することとしております。これは後ほど別の資料で説明させていただきます。
その左、基本理念を実現するための具体的な施策の方針や内容を定める基本計画、こちらは現在改訂作業を進めている「淡海子ども・若者プラン」を条例に位置づけるものでございます。
また、審議会の設置根拠ですが、附属機関設置条例においております。ただ、新しくつくる条例に設置根拠を移しまして、条例の運用や計画の策定実施状況についてのチェック機能を行うと明確に位置付けようと考えております。
以上、審議会の答申内容について説明させていただきました。
次に、資料3-4を御覧ください。
こちらは「(仮称)滋賀県子どもの権利委員会」の組織イメージです。これは条例検討部会の方でイメージとして示されたものであり、これをすべきと決まったわけではございませんが、参考に説明させていただきます。
子どものそばには、まず保護者や先生、友達など身近な聞き役がいるということで、この緑の枠の中で示しております。
さらに、悩みに対応する役割として、各種相談窓口、居場所、支援団体、市町などの存在があるところでございます。
さらに、外側、オレンジのところですが、第三者による対応として今回新たに設置する「(仮称)滋賀県子どもの権利委員会」などが位置しています。
これらのものが、基本理念で掲げている子どもは自由に意見を表明できること、そしてその意見を尊重し、最善の利益を優先して考慮すること、また、社会全体で協力しながら、子どもの権利を守るということを共通認識として持ち、県だけでなく社会全体で推進する建付けとなっております。
子どもは身近な聞き役を通じてでないと相談機関に繋がることができないというわけではなく、直接相談機関に繋がったり、今回新たに設置する権利委員会に直接申し入れができるなど支援を求めることができます。
先ほど説明させていただきましたが、権利委員会による救済の申し出は何人とも可能としております。
緊急の必要性が認められる場合、また権利委員会自らの自己発言により、調査・調整活動を行うと今は考えております。
そして、調査・調整による解決に向けた過程の中で、県やその他の機関に是正するなどの措置を講じるよう求める必要がある場合には勧告、要請を行うものとします。
また、権利委員会は、調査・調整活動の中で子どもの声や「子ども・子育て応援センター」の相談状況等から、子どもの声を踏まえ、必要に応じて制度提案を行い、県と連携した子どもの権利に関する教育・意識啓発を行います。
このように、子どもの周りの様々な関係者が子どもの意見表明権を保障するとともに、人権侵害を受けた場合には、相談窓口や新たに設置する「(仮称)滋賀県子どもの権利委員会」の方で、幅広い体制で子どもを守っていきたいと考えておるところでございます。
説明は以上でございます。
(村井子ども若者部長)
それでは本日のゲストスピーカーの野田先生の方からお話をいただければと思います。
野田先生どうぞよろしくお願いいたします。
(ゲスト:野田部会長)
失礼します。
資料3-5という形で編綴していただいておりますので、御参考にしていただければと思います。すでに報告書案並びにそれに関わる説明はしていただいたとおりなので、その背景あるいは行間の部分でちょっと付け足しをさしていただくことになるかと思います。
ちょうど来年で30年になりますが、スクールカウンセラーという制度が1995年から動いています。その第1期組ということで不登校に関わらず子どもたちの意見を聞かせていただいたりということに関わらしていただき、今回は部会長を仰せつかっております。
国の方では、一昨年まで不登校の専門家会議というのがあり、その委員長をさせていただいたり、後でちょっと触れますけども、生徒指導提要という生徒指導に関する文科省の基本指標の編纂の委員、あるいはちょうど今も中央教育審議会の義務教育のワーキングのメンバーをさせていただいていたりということで、実践的なところでの子どもたちの様々な問題をどういうふうに受けていくかなどについて、ライフワーク的に関わらせてきていただいた立場であります。
資料は全体で6ページものになっていますが、2ページに子どもの権利関係の規定ということで記載しております。
御専門の先生もいらっしゃるので釈迦に説法だなと思いますが。先ほど知事からこういう条例案を検討せよというふうにいただいた中にも出ていましたが、1989年の11月に国連総会で「子どもの権利条約」が批准され、だいぶ遅れて日本もそれを批准したという流れがあります。この1989年という年は実は「子どもの権利宣言」の30周年にあたります。
1959年が国連の宣言の年だったので、たまたまそれの20周年が1979年、ゴダイゴというグループが「Every child has a beautiful name」という、どの子も素敵な名前を持っているという世界のテーマソングだったので、今でも子どもの権利関係で国際的なイベントがあるとみんなでそれを合唱することもあるような、そういう意味で日本がひと働きしたなというふうに思います。
そもそも1979年は国際児童年という年だったのですが、この年に宣言ではなくて条約を作ろうじゃないかということを、その前の年、1978年に当時「連帯」ということでもよく話題になっていましたポーランドが言い出しっぺで国連に持ってきました。条約を作ろう、ついては草案がある、と。
たまたま私はその年から国家公務員をさせていただいておりまして、比較的一次情報に触れる機会もあったのですが、要するに1年でこの条約を作り上げようと思ったら、根深くかつ紛糾しまして、宗教が違ったり人種が違ったり、家族イメージが違ったり、保護者の責任の範囲が違ったりとかいうようなことで当時、例えば日本のお隣の国でも、日本でいう親権を持てるのは父親だけというような規定の国もあったりしました。
そんな中で結局10年、正確には11年かかってやっと1989年にできました。
何が言いたいかというと、その権利、それも子どもの権利っていうものを大人が真剣に考えていくっていうのは、それぐらい様々な奥深さのあるものというふうに認識しておりまして、ちょうどこの1989年に私は国を辞めて大学に出たのですが、個人的ライフスタイルとしても影響を受けたなと思っているものです。
いずれにしても、1994年のこの条約国内批准を受け、滋賀県としてもこの子どもの権利っていうことをどう扱うかっていうことで、2006年、滋賀県も「子ども条例」を制定しています。
これも検討委員会を策定して、かなり長期間いろいろ検討したのですが、その際にたまたま私が委員長ということで関与させていただきました。ただ、先ほどもありましたように、ここでは個別というか、細かく子どもの権利っていうのは何なんだっていうことは記述しないという一定の判断に至っています。それは、むしろ子どもの権利そのものは「子どもの権利条約」に書いてある、なのでそこにまた違う表現をするとかえって混乱させるとか、あるいは法律上の根拠はどっちにあるのだろうということもややこしい話なので、そこをあえて触れずに、むしろその条約を子どもを中心とした滋賀県民に周知啓発するというようなことに力点があったかなと思っています。
その後、国の方も例えば子どもに関する基本法の一つであります「児童福祉法」の第1条に「子どもの権利条約」の趣旨を尊重する、というような形で法令の中にこういうことが書き込まれることがあります。御承知のとおり「こども基本法」が制定され、こども家庭庁が発足する中で、子どもの意見を政策に反映しようというようなことを含むアドボケート、つまり子どもの声をしっかりと受け止めるというニュアンスですが、それと併せて「こども基本法」はどうしても今の人口動向含めて、少子化対策的側面が含まれていました。
条例を検討するということで3枚目ですが、そもそも国連がなぜ様々な権利に関する条約を制定しているかというと、知事の御挨拶にありましたように、国連自体は戦争のない世界を作るには平和を希求する、そのためには本当に一人ひとりの人権がしっかり守られる、ということが重要です。その中でも、大人になってから人権教育というよりは、子どもたちからしっかり権利が守られ、そして権利を守られるっていう体験を、心の底からあるいは育ちの根っこから持った子どもたちが、実は真の平和を希求する方向に行くんだというような考え方が基本とされました。ある意味ではユートピア的かもしれませんが、しかし平和学という領域での基本の考え方、そこから様々な条約ができ、その中でもとりわけ子ども期からの積み上げが大事なんだという意味で「子どもの権利条約」はかなり様々な意味合いが含まれております。
その中でも特に子どもの最善の利益、それから意見表明権、このあたりがもう象徴的に重要なものだったということで、特に第12条をそこに書かせていただいていますが、これはこの間国の政策上も非常に重要なものとされていますが、実はその1989年に国連でできてから1994年までの間、日本国内でもこの条約批准するにあたって積極的にウェルカムな方もいれば、例えばこの特に第12条の趣旨というのは、教育界や福祉界が諸手を挙げて賛成したというわけではなくて、かなり強い反対がありました。要するに子どもたちわがまま放題言ってるにも関わらず、これ以上わがまま言わしてそれを聞くっていうことでよいのか。そういう意見もかなり強烈にあって、国会批准の検討、あるいはそれ以外のところでもかなりビシバシしたことがあったと認識しています。
特に第12条は御承知のとおり、まずこれは条約の権利に関するところの建付けがかなりそうなのですが、一般原則として第1項の方で、自己の意見を形成する能力がある子どもは、その児童に影響を及ぼす全ての事項について自由に自己の意見を表明する権利を確保するというかたちでまず権利としての一般原則が書かれ、そして第2項の方で、もうちょっと各論的に、例えば国はもうちょっとこういうところを保障しなさいというような建付けです。
ただ、自由に意見表明できるということでこれは言葉でも作文でも歌でも詩でも絵でも様々な出し方があるんですが、よく誤解されるのは言われた限り全部受け止めなきゃいけないかっていうと、この場合において児童の意見はその児童の年齢および成熟度に従って、相応に考慮されると。つまり子どもにしっかり語ってもらうと同時に、あるいは表現してもらうと同時に、大人はそれと真摯に向き合うことを要請しているということです。
プラスアルファ第2項の方で、このため児童は特に自己に影響を及ぼすあらゆる司法上および行政上の手続きにおいて、国内法の規定に従って聴取される、これを具体的手続き的な権利として保障、要求されているという建付けになります。
ちょうど子ども若者部としましても児童相談所の所管もしていただいておりますので、例えば子どもを親から離して一時保護するとか施設に入れるとかの話になりますと、この第2項がもろに被りますので、子どもの意見を聞くことが義務化されております。
一方で、それは聞いたからそのままということではなく、そこに行政としてのかなり高度な判断を必要とし、失敗すると虐待で子どもが亡くなりましたみたいな話になるので、非常にセンシティブな課題でもあると思います。
それからもう一つ、「子どもの権利条約」は特に重要な考え方なのですが、子ども自身、もちろんそれを取り巻く親や関係者もそうですが、第42条、締約国は適当かつ積極的な方法でこの条約の原則及び規定を成人及び児童のいずれにも広く知らせることを約束する、とこういう規定になっています。国連の方も実は子どもの権利委員会というのがあって、日本政府は第1回批准した後の報告書を国連に出し、それの審査が1998年の6月だったと思いますが、ジュネーブでありまして私もたまたまそこには同席させていただきました。
この第42条に関して、日本は条約ですので外務省が所管官庁ということになりますが、日本語の他に英語との対訳のものを公表していたところ、権利委員会の方から、日本には英語以外の様々な外国ルーツ、あるいは母語とする子どもたちがいるはずだ、とその言葉に対応していないというのは第42条の課題ということで持って帰って検討しなさいというふうに言われたところを目の当たりにして、非常に印象に残っております。そういう形で条約ということを推進するというような体制がそこに込められています。
4ページですが、翻って、こども家庭庁が今年3月に「こども基本法」についても同じ調査をかけていますが、「子どもの権利条約」がどれくらい知られているか、ということについてアンケートをとった結果、小学生あるいは中学生、高校生、まぁ高校生になると聞いたことがないっていう子はさすがに32.9%、要するに3分の1くらいですが、そうは言っても高校生であっても聞いたことがない、名前だけしか聞いたことがないという子が、全体で3分の2、小学校ですとそのグレーの部分が、聞いたこともない、ということです。
今後に向けて、教育の部分もちろん大人の側も、圧倒的多数が名前だけ、あるいは聞いたこともないという状況ですので、「子どもの権利条約」、その周知から出発するとしたときにいろいろな形で課題があるなということを背景に、改めて先ほどのような報告書を取りまとめることができたということになります。
5枚目のところで、先ほどのように集中して様々な意見を聴取しながらかつその場だけではなく持って帰って読み直してやっぱり課題じゃないかということを事務局に送って、それをまた取りまとめていただくという本当に事務局には御苦労かけました。
いくつか主だった論点として、これはあくまで私見ですけど、一つは先ほど言いました平成18年の条例との比較で、子どもの権利を書くか書かないか、それから「こども基本法」などが含む、例えば少子化対策であるとか子育て支援であるとかっていうのは子どもの権利と同時にそれを守るための環境整備的な部分というのは非常に重要は重要なのですが、ただしかし、今回その子どもの権利っていうことをある意味でシンプルに、まずは書く、その上でというようなことに、委員会としてはそういう建付けにさせていただいた。
それからこれはまさに事務方並びに委員会の皆さんにどのように取り組んでいただくかというところにかかってると思いますが、今回の先進的なことを目指す一つとして救済システム、先ほどありましたように「子どもの権利条約」の第12条はその意見を政策に広い意味で反映させるということも重要ですが、一方でもし権利侵害されている、あるいはそれに関わるような意見表明をしたことをしっかりと受け止めてもらったという実感を子どもたちが持つためには、やはり個別の救済システム、あるいは個別の救済までいかなくてもまずはしっかりと聞いてもらいそれに応答してもらうという、そのプロセスは不可欠だろうと思います。
非常にこれは形式的にというと怒られますが、他の自治体でもこういう救済システム的なものは置いていただいていますが、とにかく子どものことに関して子どもの声をしっかりまずは受けとめるという非常にシンプルかつ一番奥深いシステムを提案しているということで、これが実現したらもうすごいだろうなと感じているところです。
そういう議論の中で、そうは言っても既存の県あるいは市町あるいは民間団体を含めて子どもたちの意見を積極的に聞き支えてくださっている団体というのがいっぱいあるわけです。そういうところを別に無視するわけではなく、まさにそういうところと深く連携をしながら、そしてそこがしっかりと、例えば不登校であれ、いじめであれ、あるいは虐待であれ様々な相談窓口、あるいは支援組織として機能している、そこはそことしてしっかり期待しつつそれをバックアップできるようなものにすることが大事です。
併せて、先ほどの条約、条例の周知度を上げていくことで、今もし苦しんでいる子がいるのならその方にしっかり届くものに、そしてまた、先ほど国籍の話を申し上げましたけれども、その分野に長けた委員の方からも、やはり積極的に、特に滋賀は外国籍の方も決して少なくないと、しかもその国籍が最近流動傾向がある、というようなことも含めて、多様性を視野に入れるようにというような御意見もありました。
最後の6ページになりますが、当然、総合教育のこの会議としては学校教育だけではなく、家庭教育であるとか社会教育であるとか様々な視点というのが入ると思います。
先ほどの説明の中でも学校が出ましたけど、やはり子どもの生活の場であり学びの場として非常に重要なところだと思います。併せてその権利を学び、守り、実践する場でもあります。ただやはり一方で、その場が実は権利侵害の場にもなりうる、というそういう中で、まさにこの権利というものをしっかりと認識しながら、場合によっては学校だけで抱え込まず、様々な社会システムの中で展開できればと、そして先ほど特に児童期から権利条約の認知度があまりに低いということとの関係では大人全般必要なことなのですが、やはり教職員の方へ十分な研修であるとか、周知を出発点にして児童生徒へしっかりと権利を伝えそれを保障する、そのあたりをお願いしたいと思います。
それからソフトの関係で、現在では教師も働き方改革含めて労働条件として必ずしも十分ではない中で本当に御苦労いただいています。学校にやれということイコール先生にやれという意味ではなく、まさに地域連携も含めて、社会化された存在として対応していく。そんな中で、権利救済の積極的活用、令和4年12月に改訂版の生徒指導提要というのが出ていますけど、その中にも権利条約、あるいは権利保障ということを書き込ませていただいてるという経過もありますので、ぜひともよろしくお願いしたいと思います。
非常に短い枠でが、一旦私からの意見回帰は以上とさせていただきます。ありがとうございました。
(村井子ども若者部長)
それではこれまでの事務局説明および野田先生からの発表を踏まえまして、「(仮称)滋賀県子ども基本条例」の制定に向けた意見交換に移ってまいりたいと思います。先ほどの説明や発表に対する御質問、御所見など、どなたからでも結構ですので御発言をよろしくお願いいたします。
(塚本委員)
子どもの声を聞くという非常に大切なかつ基本的なことに関して、私も思ったりすることがあるので野田先生に御質問させていただきたいと思います。
本音といいますか、その子どもの本当に言いたいことを本当に伝えてもらうにあたって、かなりの信頼関係が必要ではないかなと思っています。
例えば、厳しい環境にあるような子ども、ある種の大人不信といいますか対人的な不信をもっているような子どもって、そうそう簡単に心を開いて喋ってくれるものだろうかということも常々感じておりまして、そうしたときに何か短い時間でその子どもの何かを引き出そうと焦ってしまうようなことがあると、ついつい子どもって、大人はどんな回答を求めているのかっていうような察知能力ってすごいと思いますので、こういう回答を求められているんだなという模範的な回答に終始してしまうようなこともあるのではなかろうかと思います。
そういったときにやはり時間をかけるのか、子どもとの信頼関係を築きながら本当の声を引き出していくという、臨床心理の現場としても御活躍されてきました知見の中から、こういうことに注意せなあかんよということがありましたら教えていただきたいなと思います。
(ゲスト:野田部会長)
とても大事な、そして関わる親も含めての大人が配慮しなきゃいけないことだと思います。
子どもの権利との関係でいえば、小さいお子さんが親の顔色を見て、逆に言えば親を忖度しながらこう表現せざるを得ない、というような状況、あるいはその逆に、言葉がついてこないのでまずは暴力でとか。そしてもっと悲しいのはその暴力の矛先が自分に向いて自傷行為という、小学校の年齢から30代ぐらいまでの子ども若者の死亡原因の第1位が自殺というようなことがあって、特にこれが低年齢化しているっていうことがありますので、今おっしゃっていただいたような心配な状況っていうのはたくさんあると思います。
確かに信頼関係ベースでいろいろ語ってもらうために働きかけるっていう、それは技法としても重要なのですが、この第12条がいっているのは、最初に子どもが思いついたこと、あるいは言いたいこと、表現したいことを、まずは一旦は自由に表現してもらう、大人はしっかりとそれに向き合いながら、そんなこと言っちゃ駄目ですよが先にいくのではなく、そういう気持ちなんだねということをしっかりと受けとめていく。
そうすることによって、大人としては子どもの方にそこそこ忖度はしてほしいんですけどね、本音は。ですけども、それはもうちょっと成熟してからのことで、まずは子ども自身が自分の内面にあるものを行動とか、あるいは暴力とかじゃなく、言葉で表現できるようにしっかりと受けとめ育てていくっていうのは、それが平和を希求するっていう意味で言えば、気に入らないことをまず暴力あるいは物に当たってではなく、言葉に変えていく。そういうプロセスをどんなふうにできるか。
ただこれも発達というのは様々な道筋を通って今大人になっていくっていうことがありますから、言葉だけの話でいいのかとか、あるいは年齢がこの年だからもう十分わかるというふうに前置きしていいのかというとこも多様ですので、先ほどの第12条の、本人に表現してもらってそれを今度大人がどんなふうに考えていくか、逆に大人の方はその力量が問われているっていうことにもなるんだろうなと思います。
(塚本委員)
アドボケーターという言葉も出てきましたけれども、やはりそういったような大人の関わり方、今言っていただいたような注意点といいますか、しっかりアドボケーターが身に付ける、そういう方を養成していく必要もあるということと理解していますが、そういったことでよろしいでしょうか?
(ゲスト:野田部会長)
ここでいうアドボケートっていうのはイメージ的にいうと、福祉領域で例えば施設に入っているとか、一時保護中だとか、あるいはそういうところで選択を迫られているような子どもたち向けの、ある意味での専門性の高い場面でイメージしたものです。
でも、アドボケートっていうのは元々は代弁するとか、ちょっと言葉にしにくい子どもたち、あるいは社会的にそういうことのしにくい立場の人を大事にするということで、例えば弁護士だとか司法書士、あるいはソーシャルワーカーもその機能としてはアドボケーターというようなことかと思います。
一方で、資料3-4の個別救済のところで、緑のゾーンとピンクのゾーンとそれからブルーのゾーンというのがあって、緑のゾーンの例えば保護者、家族、先生、学校、友達、こんな身近な人たちもアドボケートの基本姿勢というか、むしろここがしっかりと子どものくせにそんなことを言うなとかという話じゃなく、この人たちが聞く姿勢を持つことによって子どもは話せる、あるいは話すことが促進される。
そういうことを少なくとも理念としては目指そうとしていることだろうと思いますので、先ほどのようなスペシャルなアドボケーター、それもしっかりと育てましょうということなのですが、一方で身近なところにも必要なことだと思います。
30数年前ぐらい、学校の先生方にカウンセリングマインドというのが大事なんだというようなことが、不登校の増加を受けて社会問題化した、初期そういう話がありましたけどそこにも関わるかなと思います。
(村井子ども若者部長)
子どもたちに一旦自由に表現させる、またそれに大人は向き合う、その向き合うときの姿勢としてはアドボケート、代弁とかそういった姿勢が大切だというような話でしたが、まずはそういう意味でも子どもたちも自分自身の権利を知ってるとか、自分たちにどういう権利があるのかっていうのを知ってもらうということも大事だと思います。
そういったことをどういうふうにして子どもたちにわかってもらうのかというところも非常に重要かなと思いますが、今の私のこの発言以外も含めて御意見、御質問等ありましたらお願いいたします。
(野村委員)
ちょっと感想になります。私はその権利を知るというところでアンケートの調査の中でも子どもから大人まで知らないというのがすごく多かったのが気になりました。その中で一つこう思いました。
子どもはお母さんのおなかから生まれてきます、そしてお父さんとかと出会うことになるんですけれども、そのお母さんのおなかの中に子どもがいるときに、おなかの子には既に権利があるということをお母さんお父さんに理解していただきたいです。この権利そのものをゆっくりとゆったりとした気持ちの中で知っていき、子どもが生まれてきたときに、この子にはこの権利があるということを本当に理解した上で育てていきながら、大切に子どもが育っていけるように周知がしていけるといいかなと感じました。
家庭教育の中で本当に愛情を受けながら、人としての土台を作りながら成長していくことが大事だというふうに思っています。そういった意味でも親になり始める段階での周知の仕方というのが合っているのかなと思いました。
(村井子ども若者部長)
子ども若者部での取組でも、プレコンセプションケアといいまして受胎する前の段階から子どものことだとか健康のことだとかを知ってもらう必要があるよねっていうのを最近の取組として始めております。もしかしたらそういう中に今おっしゃっていただいたようなそもそも子どもっていうのはね、こういう権利があるんだよっていうふうなことも伝えていくということも必要なのかもしれないと思いました。
(福永教育長)
子どもの意見を聞くという話になってくると、教育現場で各学校で当然先生方様々な形で子どもたちと向き合っているわけですが、様々な場面があると思います。
普段の授業での場面とか、あるいは中学校、高校でしたら部活動の場面、あるいはいろんな相談に乗ってもらう場面とか、何か子ども基本条例をいろいろと御検討いただいているなかで、学校現場では特にこういった場面で、先生方、まず先生方に子どもたちの権利こういう権利を持ってるんだよっていうのを理解してもらうっていうのはちょうど今年から教育委員会も少し幼保から高校まで取組を進めているのですが、まず教職員の理解っていう点で理解しているけどどの場面でどういうふうに意見を聞いていくのがいいのか。
それからもう一つは例えば児童会、生徒会で子どもたちの意見をまとめる、それに対して先生方はどう向き合うのかっていう場面もあると思うのですが、野田先生が思っておられる中で、まず先生方にここからスタートしてもらって、ここで子どもたちの意見を聞きながらいろんな取組に反映していくことが、子どもたちにとっても、そして意見を聞いてる先生方にとってもいい方向に向くんじゃないのかなと思っておられるか感じておられることがあったら、御意見をお伺いできればと思います。
(ゲスト:野田部会長)
まず委員会の中では、その学校場面のどういうところでという絞り方での検討の機会はあまりなかったのですが、ただ資料3-3のちょっと細かいところになりますけど、4ページ目に子どもの意見を聴く仕組み、それから子どもの意見の施策への反映という部分があって、その下に、2で子ども等から意見を聴くに当たっては、次の事項に配慮すること、というようなことが、アからケまでかなり詳細に書かれています。
ベースは国連の「子どもの権利委員会」の方から、さっきのアドボケートの前提となるような、まずは例えば、十分そういうことを言っていいんだ、あるいはそこで聴くっていうことは、例えば聴かれたらどうなるのだろうかっていうことが不安で言えない子もいくらでもいるので、前提となるような条件をちゃんと提供しましょうに始まって、最後「ケ」聴取した意見に対して適切に応答するとあります。
なるかならないかの話の前に、要するに君はこういうことを言いたかったんだよね、というあたりをしっかりと応答性高く返していくっていうか、ここまでいろいろ各論的なことがありますので、一方で、条約は先ほど申しましたように自由に意見を表明することができるという形になっています。
だからといって突然言いたくなったからって授業中に手を挙げずに勝手に立ち上がって叫ばれてもそれはそれで困るわけで、やっぱりそういうあたりをどういうふうにその実践的に機会を提供していくか、あるいはそれをしっかり受け止めていくか、そういったことはまさに実践的なこだわりなんだろうと思います。
一方で、その自由にという部分は逆に先ほど申しましたけども、言葉に限定しているものではない、ただやはり可能なら言葉や文字で、そして多様な言葉や使える文字を学んでいくことが、知事が言われた、まさに学ぶ力を裏打ちするっていうか、そういうものに繋がっていくんでしょうから、そこには当然成長過程があるわけです。
実際に保育園幼稚園における子と、あるいは特別支援教育というか、障害のあるお子さんの場合にどのようなところで自己表現するか、あるいは、しっかり作文の時間であるとか、あるいは先ほど言われた生徒会、児童会とか。
実は今から25年ぐらい前に大津市内のある中学校で、いじめへの生徒会の取組ということで、いじめについての生徒による生徒のための電話相談というのが開設されたことがありました。予算その他のこともあって数年だったと思いますが、生徒会の役員を含む20人ぐらいが電話の聞き取り係の訓練を受けて学校内でされていました。
実際誰かからかわからない匿名にしてありますが、電話がかかってくるというような意図的にそういった場面を作ったことがありました。かかってきた電話の本数はしれてるんですが、逆に子どもたち自身が自分たちのいじめの課題を主体的に自分たちで解決しようとするという、この営みというのはまさに大人は大人でもちろんいじめ一つ取ってみてもそれを救済したり実現したりっていうことはしなきゃいけないんですけど、まさに市民社会の原則としてのpeerというか、子どもたち自身にそういう力をつけようということです。
新聞の記事があって、また機会があればそんなこともお調べいただけたらと思います。
(土井委員)
いくつかお話を伺って、さらに継続して検討していただけるなら検討していただくのがよいと思う点を申し上げます。
基本的に、権利という形で条例に規定していただくことについて、私も異論はございません。ただ権利概念を用いることになりますと、その権利がどのような意味を持つかという点について、かなり具体的に検討していただく必要があります。特に具体的に救済機関を置くことになりますと、単に子どもにはこういうことを要求する資格があるんだという抽象的な次元を超えて、請求権として何を主張できるのかということが問題になります。権利という言葉づかいが多様な意味を持ってくることになりますので、そこは整理をしていただく必要があるのではないかと思います。
それを踏まえた上で、具体的にどのような段階でどのような権利を問題にするのかを整理していただく必要があるだろうと思います。
意見表明の自由について例を挙げて説明させていただきますと、おそらく一番自然的な自由は、いわゆる表現の自由と同じ意味で、子どもが自分の意見を自由に話すことだと思います。
それは大人にも認められており、ビラを配ることもあれば、集会をすることもあるという意味で、このような意見表明の自由が一番広く保障できるものだと思います。
その次に、学校なら学校あるいは県なら県、市町なら市町になると思いますが、そこでの一定の意思決定手続きにおいて子どもの意見を聴取し表明させる機会を与えることが問題になります。
このような機会をどのような形で認めていくのかが問題になりますが、大きく二つに分けることができると思います。第1に、まさに当該子どもに関する公的な意思決定がなされようとしているときに、当該子どもが自らの意見を表明する場合であり、第2に広く子どもに関わるような政策を形成する場合に意見を述べる機会を認めるという場合です。後者は、さらに将来含めて子どもに関係する可能性のある政策ということになりますと、およそ全ての政策について何らかの意見表明をさせる、ということになろうかと思います。
その各段階でどの程度の保障を与えるのか、つまり、どの程度の意見表明をさせ、それについてどのような配慮をする必要があるのかという、行政側の責務が問題になります。
条例の段階かその次の段階か法形式の問題はありますけれども、その辺を綺麗に整理していただく必要があるだろうと思います。
それができた上でおそらく、救済機関がどのような権利についてどのような救済を行うのかという話になると思います。おそらく一番詰めていただかなければならないのは救済機関の役割で、その他の国家機関にも県の機関にも、一応子どもの権利が侵害されていると思われる場合に第一次的に対応する機関は存在していますので、それらの機関と救済機関がどのような関係を形成するのかが大事になってくるだろうと思います。
それ次第で、この救済機関の規模も決まってきますし、一体何ができるのかという権限が決まってくると思います。先ほど申し上げたこととの関係では、とりわけ基本的人権に関わるような重大な侵害がある場合の申し立てを想定しますと、せっかく救済機関を設けておいてその権限が弱いということでは、一体何のために救済機関を置いているんだという話になりますし、それに対して広く子どもの意見を政策に反映させるような場面で、話を聞くようなことを想定するのではあれば、この機関にそれほど強い権限を与えるわけにもいかないことになると思います。
その意味では、どのような役割をこの救済機関が担うのか、それぞれの役割についてどのような手続きを設けるのかを考えていただく必要があると思います。
権利としてお書きいただいて、かつ救済機関を置くということになりますと、法的に検討しなければならない面倒な問題が出てきますので、多くのところはそれを避けているわけです。そこを今回踏み込んでおやりいただくということに私は反対ではありませんし、積極的意義があると思いますが、県全体で真剣に御議論いただいておかないと、かえって問題が生じることにもなりますので、この機会にしっかり議論をしていただければと思います。
(ゲスト:野田部会長)
救済機関を置く置かない、それからアウトラインとして、どっちかといえば現在はゲート部分というか、そこに繋ぐところと既存の関係をどうするかっていうことはそれなりに議論したのですが、そこから先っていうところで言うと実際いくつかの自治体で動いてる部分とかそれから個別救済的なところのウェイトが近いのでは近県ですと川西のオンブズマンなんかが有名ですけども、そういう中でどう調整するか。
先ほど第12条との関係で言うと、まさに第1項の自由に表明できることとそれを大人の責任で年齢や成熟度に応じてしっかり受け止め、そしてそこでまさに寄り添って考えようという機能の部分。
それから土井先生おっしゃるとおり、権利というのを明確化したときに、一つは現在先ほどの福祉領域におけるアドボケートのように、第2項地方行政に関するものについてしっかり聞けと言われてる部分に関して、それなりの制度的な規定を既に国の方でも検討したり、あるいは自治体でもその仕組みを検討これは必然としてしなきゃいけない部分あるいは現在進行形でやっていただいてる部分があると思いますが、そことの中で今回の救済機関というところがどういうことが考えられるのか。
入口論的に言うと、一つは先ほどおっしゃったように子どもの意見表明権というのはまさに大人とも共通する表現の自由の部分と、それからやはり考え方として子どもは権利性も含む成長発達の手段の一つとしてというか、それを促進するためにまずは意見を言い、応答してもらうことによって意見形成能力が上がり、そして自分に関すること。自分に関することが正当にしっかりと把握できない中で人の気持ちを分かれって言ってもそこは難しいので、そういう意味では少なくとも子どもの権利条約の特性としてはこの第12条は先ほどおっしゃっていただいたように表現の自由的側面と、それから成長発達の過程をサポートするという意味での成長権、それと社会参加ということを実際に経験するという意味での参加の側面を持つと思います。
先ほど条約を練り上げるまでの間にだいぶ議論があった、あるいは日本も批准するときに悩ましい問題があったというのは、実はそういったことの積み上げが結構様々な議論がありましたので。
併せてこの辺りについては国連基準規則であるとかそういった中にも一部記載があるかと思いますので、その辺は逆にまた土井先生に教えていただかなきゃいけないこともあるんだろうと思いますし、それから今回の提案その他に関してもかなり弁護士会からも積極的な御意見等いただいておりまして、おっしゃるとおり個別救済のかなり技法的な部分についてはむしろ滋賀県がこれに本当に取り組むならば、まさにあの全国の中で先んじてたたき台的に検討を要することなんだろうなというふうに私も思っています。
逆に言えば今回そういうことも含めて報告書としては踏み込ましていただいているということを受け止めていただけるとありがたいかなと思います。
何となく各論でそれだけでも何か御議論させていただけると非常にいいんですが、いずれにしてもおっしゃるとおり、そのような課題っていうのは、含まれているんだろうなと思います。
(土井委員)
おっしゃっていただいたとおりだと思います。
ただ、個人的に申し上げると一番手間はかかりますし、ひょっとすると予算措置も必要になるかも知れませんが、一番真剣に取り組まなければならないのは、子ども自身の利害に関わる意思決定を行われる際に、子どもの意見表明の機会を認める部分であると思います。
ここの部分は本当にアドボケートなどの支援者をつけて、しっかり利益状況について判断できるサポートを与えないと、特に親と子の関係で一部利害相反が生じるような場合ですとか、子どもだけの意見ではいかんともしがたい場合がありますので、このあたりのところが一番問題が起こると深刻なだけに、しっかり手当をしていただかないといけないと思います。
学校との関係で言えば、できるだけ子どもに表現の自由の機会を与えるといいますか、できるだけいろんな意見を言わせるようにするといった点については、先生方の姿勢の問題だとは思います。学校の中で校則をどうするかなど、いろんな問題がありますので、そういう過程の中で子どもに意見表明をさせることは、先ほどからお話いただいているように子どもが社会参画をしていく上で、自ら意見を形成し意見表明することで責任を負えるようになっていくという教育の観点も重要なところであると思います。権利もそれぞれに深刻さが違いますので、各場面に合わせてしっかり御検討いただければと思います。
(石井委員)
感想となりますが。
先のふれあい教育対談で、不登校の現状と課題を改めて深く認識をして委員として危機意識を持っているところであります。
私は経済界から出ておりますので、やはり近代文明が急速に技術革新を伴って想像を絶するような利便性を享受できる一方で、幼児あるいは小さな子ども等々に対しましても、様々な弊害も起きているっていうことを念頭にいたしますと、こういった動きが県が教育大綱に掲げている三つの柱に直結するようなアクションに繋がっていくのではなかろうかというふうに感じた次第でございます。
(窪田委員)
私も感想だけですけれども、権利を侵害されている子どもたち、障害のある子どもたちも含めてですけど、そこを解決に向けての個別の救済というところでももちろんですし、やっぱりどの場所でも子どもたちが大人の持ち物ではなくっていうところで、子ども自身の主体性が当たり前に尊重されるその人権感覚であるとか、人権意識であるとか、野田先生の説明の中でもまず教職員からということもありましたけれども、大人自身いろいろ問われているところだなと改めて感じました。
子どもたちが自らの権利行使をせっかく学んでも、自らの権利行使を諦めてしまうことに繋がるような大人や社会ではないような形をどう作っていけるのかっていうところもやっぱり大人がすごく問われているところだなと感じさせていただいたところです。
学校現場ではきっと「子どもの権利条約」を学ぶということと、学級目標をどう作っていくかっていうことを合わせた実践であるとか、いろいろ先ほど校則のことであるとか、少しずつそういう取組は進んできてるところかなとは思いますが、やっぱり当たり前の生活の中で子どもたちが意見を安心して表明できる応答性ということも野田先生からあったかなというふうに思います。
それは子どもの意見を何でも受け入れるという子どもの言ったとおりになるということではなく、でもまず聴くよ、まず受け止めるよ、そこから先はもちろん話をしたりいろいろあると思いますし、時には指導も必要だと思いますが、そのあたりの線引きというかその感覚も含めて教育現場でもどんなふうに共有していけるかなということをすごく考えさせられました。
(岸本副知事)
今回の審議会の報告書に至った考え方、今までのいろんな経緯というのはよくわかりましたし、委員の先生方の御意見を聞いて、条例というかたちにしていく上で様々な課題があるということも改めて認識したところです。
私も報告書を拝見してやはり一番注目されるのが第三者機関のところなんだろうなと思いましたが、先ほど土井先生がおっしゃったように、個別の権利の救済ということになると、これからおそらく細かい手続的なところも含めて考えていかないといけないことがあるんだろうなということを考えますと、このあたりを条例というかたちでどこまで最初の段階で実現するかということが焦点の一つなのかなと思いました。
またこれからいろいろと御意見を伺いながら、理念のところは大事にしながら考えていきたいと思いますので、引き続きよろしくお願いいたします。
(村井子ども若者部長)
まだまだお話の中身からすると議論は尽きないのかなと思いますが、時間の都合もございますので本日の議題に関する意見交換としては以上とさせていただければと思います。
それでは最後に、本日の意見交換をまとめてまいりたいと思いますが、知事どうでしょうか?一言お願いできますでしょうか?
(三日月知事)
ありがとうございました。
野田先生、長年にわたり滋賀の教育や、子どものことを様々お考えいただき、今回も子ども若者審議会で、私が諮問したこともありますけども、非常に重要な答申をいただきましたので、これから条例制定に向けて今日いただいた御示唆も含めて考えてもらいたいと思います。
また県議会の皆さんと議論をして、成案を得て、具体中身のある条例と、そして仕組みを作っていきたいと思います。
その上で何点か意見交換の中で出たことも含めて申し上げると、一点目は野田先生がシンプルに子どもの権利を規定してきたと、そして個別救済システムを設置するということを答申いただきましたので、私もここはとても重要だと思います。
土井委員がおっしゃったように、権利の範囲をどのように規定するのかということと、個別救済の権限でありますとか、弱くても存在意義が問われるし強すぎても難しい面もあるとするならば、どのように作っていくのかということは肝になると思いますので、最初は全てがうまくいかないのかもしれませんが、大きな方向性は持って、そして目指していきたいと思っております。
また、知ることの大切さということで、野村委員からも先ほど親になる前のいろいろな教育ですとか妊娠したときの様々なお話があって、これもとても重要だなと思いました。
従ってこの資料3-4のところに、子どもの権利委員会の組織イメージがあって、子どもを左端に置いて身近な聞き役から悩み、人権侵害への対応、そして第三者による対応の最初にある身近な聞き役の大人、親、家族、学校、先生の認識を高めていくことがとても大事だと思いましたので、こうした取組と同時に、この三つ目にある私たち教育委員会とか総合教育会議で議論をしており、学校への期待という言及もございました。
自己完結志向がある学校が社会化された組織として機関として開かれた対応をとることの重要性、ここはとても大事だと思いましたし、答申の中でもあまり書かれてなかったかもしれませんが、学校以上に議論をしていますけど、もしかすると保育園とか幼稚園とか、保育士さんとか、幼稚園教諭の段階でどのような関わり合いを持つのかということも、実は育ちの中で重要になってくるのかなと思いながらこの資料3-4を見ておりました。
また教育長あるいは塚本委員がおっしゃったことに関連しますが、資料の3-3の13ページ以降に子どものアンケート結果が載っています。
Webアンケートの回答の中に、質問の2、意見や気持ちを言いやすくするためにはどういう雰囲気や決まりがあったらいいと思いますかというところで、一定程度、この一番左の青い「匿名性の確保」というのがあって、匿名性の確保がそうなんだということと、権利の主体である子ども、もしくはその権利をある意味侵害されたりうまく保障されないときの救済というものとの兼ね合いをどのように取り払っていったらいいのかは、ちょっと知恵がいるんじゃないのかなと思いました。
最初広く匿名で把握して、そしてこれはというところは個別に救済しに行くということがうまく機能するように、我々意を用いていくことが必要だと思いました。
いずれにいたしましても、これは子どものことだけではなく、ある意味では滋賀の自治とか社会のありようを考えていく上でとても大事なテーマだと思いますので、性急に何か一方向だけいうことではなくて、世界でも時間が必要だとするならば議論はしっかりと丁寧に積み重ねて成案を得るということも念頭に置いて、ぜひこの議論を進めていきたいと思いますので、どうか野田先生始め教育委員の皆様方、今後ともよろしく御指導賜りますようお願い申し上げ、少し長くなりましたが、私のコメントとさせていただきます。
ありがとうございました。
(村井子ども若者部長)
「(仮称)滋賀県こども基本条例」を作っていこうという中で、非常に示唆に富んだ、また貴重な重要な御指摘を様々いただいたと思います。
私どもの方でそういったことも受けとめながら、しっかりと考えてまいりたいと思います。
それではお時間になりました。
以上で「令和6年度第1回滋賀県総合教育会議」を閉会いたします。
皆様におかれましては、長時間にわたりまして熱心に御議論いただきまして厚く御礼申し上げます。
本日はどうもお疲れ様でした。ありがとうございました。