令和5年9月3日(木曜日)午前10時から12時まで
危機管理センター1階大会議室(大津市京町四丁目1番1号)
知事、副知事、教育長、教育委員
子ども施策の推進について
(議題1) 「こども としょかん」について
(議題2) 「(仮称)子ども基本条例」の策定に向けて
次期「滋賀の教育大綱」について
(福永教育長)
ただいまから令和5年度第3回滋賀県総合教育会議を開会いたします。本日はお忙しい中、お集まりいただきありがとうございます。
本日の出席者につきましては、お手元の出席者名簿と配席図により御紹介に代えさせていただきますので、御了承願います。なお本日は、3名の教育委員が所用により欠席されていますが、議題に関する御意見を事前に伺っており、紹介しながら会議を進めていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
本日は「こども としょかん」の議題に係るゲストスピーカーとして、長浜市立図書館の森館長様、特定非営利活動法人絵本による街づくりの会の平松理事長様にお越しいただいております。どうぞよろしくお願いいたします。
なお本日の会議につきましては、会場での傍聴と併せまして、ウェブ会議システムを活用したオンラインでも視聴をいただいておりますので、御承知おき願います。
それでは開会にあたりまして、主催者である知事から御挨拶をお願いいたします。
(三日月知事)
皆さんおはようございます。
日頃は教育にまつわる御支援、御指導等していただき、心から敬意を表し感謝申し上げたいと思います。
2学期が始まりましたが、先日、朝の早い時間帯に通学路を見る機会がありました。大変多くの方々が子どもたちの通学路でサポートや見守り、ガードしていただいてるのだということを実感し、多くの方々が、子どもたちの育ちと学びに関わっていただいてるんだと改めて知ったところです。
また新しい学年、新しい学校に行って1学期を過ごしたけれども、夏休みを経て2学期ということで、色々と悩みがあったり、困難があったりする子どもや親御さんもいらっしゃるのかもしれません。寄り添った対応をしていきたいと思います。
こういう機会ですので、最近気になっていることや考えていることを何点か申し上げて、後の議論の一つのネタにしていただければと思います。
まず一つ目は、今、県では「子ども・子ども・子ども」、子どものために子どもと共につくる滋賀県をつくろうということで、「子ども・子ども・子ども」と三つ重ねています。その意味は、一人ひとり主体としての子どもと、社会の一員としての子どもと、未来への希望としての子どもという三つを込めて、「子ども・子ども・子ども」と申し上げております。
確かな学力をつけさせたい、つけてもらいたいということで、色々な取組をしておりますが、県が進めてきた「学ぶ力」また「読み解く力」が、どの程度現場で浸透してきているのか、効果を持ち得ているのかということについては、多くの方々の関心もございますので、説明していけるようにしていきたいと思っておりますし、子どもたちの学びに向かう力がどのような状況にあるのかについても、福祉部局等とも連携し、取り組んでいく必要もあるのではないかと思っています。
また、教職員を含めた子どもの周りの大人の笑顔や、ゆとりについても、大変多くの方々から御心配、御支援のお声もいただいているところです。全て学校の先生だけで抱えるのではなく、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー等に支援していただきながら、一人ひとりの子どもを大事にした取組をさらに充実させていきたいと思っております。
また、今日のテーマである「こども としょかん」についても、どこかに1つ施設を造るというようなハードの面ではなく、滋賀県内のこれまで培ってきたネットワークを大事にしながら、一人ひとりの子どもに本を届ける取組ができないか考えているところでございまして、今日の議論で、さらに良い取組が前進する一助になればと思っております。
もう一つは、特別支援学校で学ぶ子どもたちの環境です。一部の学校でマンモス化し、環境が少し悪くなってきているとのことですが、このような課題にも対応する必要があり、方向性を見出していきたいと思っております。
また、子どもたちだけではなく、生涯を通じた学び、生きることや働くことに繋がる学びを、どのように大事にしていくのかということも、次期「滋賀の教育大綱」、教育振興基本計画の中で打ち出していきたいと思っております。参考になると思っているのですが、今週末、ミシガン州知事が来県されますが、ミシガン州では生涯を通じた学び、能力開発ということで、新たな組織を立ち上げて重点的に取組をされてるようです。姉妹県・州としてどのようなことを参考に学んでいけるのかということについても、情報を集め、取り入れていきたいと考えているところです。
会議の前に高校の魅力化の協議をしておりましたが、伊香高校と守山北高校の取組も大変楽しみにしております。
様々な課題がありますが、課題は可能性ですので、そのようなものをさらに伸ばすことができるように、皆さんと一緒に取り組んでいきたいと思います。ゲストのお二人含めて、今日はどうぞよろしくお願いいたします。
(福永教育長)
ありがとうございました。
それでは早速でございますが、本日の議題に進んで参りたいと思います。本日の議題は「子ども施策の推進について」とし、その中で二つのテーマについて御議論をいただきたいと考えております。
それではまず1つめの「こども としょかん」につきまして、まずは、教育委員会事務局からの説明をお願いいたします。
(廣瀬生涯学習課長)
本日はお時間をいただき、ありがとうございます。
滋賀ならではの「こども としょかん」について、現在の取組状況を生涯学習課および県立図書館から御紹介させていただきます。
「こどもとしょかん」の御説明に先立ち、子どもの読書活動の推進に関する法律第9条第1項の規定に基づいて策定している、第4次滋賀県子ども読書活動推進計画について御紹介させていただきます。
本県における子どもの読書活動の推進に関する施策の方向や取組を示すもので、平成17年2月に初めて策定され、その後、情勢変化を反映しながら改訂を重ね、現在の第4次の計画期間は平成31年度から概ね5か年とされております。
この第4次計画の基本的な考え方として、基本目標を「すべての子どもがいつでもどこでも楽しく読書ができる環境づくり」とし、基本的方針、計画年度の間において重点的に取り組むべき事項を定め、そのための施策、事業を記載のとおり進めてきたところでございます。
そして、平成4年度県では県公共図書館協議会等でのご議論をもとに「こども としょかん」のめざす姿、およびコンセプト案をスライドの通り作成いたしました。今年度は本案をたたき台として、子ども読書活動推進協議会等で意見をいただきながら、今年度末に向けて、滋賀ならではの「こども としょかん」で目指す姿や、事業方針を決定していきたいと考えております。この内容は、これまで子ども読書活動推進計画で考えてきたことと乖離するものではないことから、一体として検討していきたいと考えております。
「みんなでつくる滋賀県まるごと『こども としょかん』」について、「こども としょかん」は先ほど知事からおっしゃっていただきましたように、別途ハード拠点を作ろうというものではなく、市町の皆さん、ボランティア、民間の皆様と一緒になって、子どものための読書環境を整えていくという取組として考えております。このスライドは、その考えを「こどもとしょかん」として表したものです。なお、目指す姿や基本方針等は、現時点での案を示しておりますけれども、このポンチ絵や内容も含め、御意見、御議論を受けて決定していきたいと考えております。
それでは、今年度の「こども としょかん」に係る取組について、まずは県立図書館から御説明いたします。
(林県立図書館サービス課長)
次のページを御覧ください。目指す姿や基本方針の決定に並行しまして、県立図書館では、今年度、市町の公共図書館と協働で「出張こども としょかん」という取組を行っております。
次のスライドを御覧ください。公共図書館というと、ほとんどの子どもにとっては大人に連れて来てもらわなければ、来られないところでございますが、図書館の方から子どもや保護者の元へ本を届けようという、いわゆるアウトリーチサービスについて、いくつかプログラムを想定して実施しているところです。現在はコンセプト1に基づきまして、「こども読書PRプログラム」と「多文化共生プログラム」を実施しております。
次のスライドを御覧ください。今年度の取組の実際の様子です。左側は「こども読書PRプログラム」の1つ、野洲市との実践の様子です。アルプラザ野洲で月1回の移動図書館を施行しております。右側が長浜市との実践の様子です。よご認定こども園におきまして、お迎えのスペースに子ども向けの絵本に加え、保護者用の子育て支援本などを置いて、貸出しております。
真ん中の湖南市立水戸小学校では「多言語共生プログラム」が実施されており、当館から、中国語、スペイン語、ポルトガル語、ベトナム語の本を提供し、日本語教室などで紹介・活用されているようです。
これらの取組は大変好評をいただいておりますが、一方で野洲での保護者への聞き取りで、「子どもがうるさくしないか心配で公共図書館をあまり利用できていない。」というような声を複数いただきました。現在市町の図書館では、キッズデーと称し、子どもが騒いでも大丈夫な日を設けているところもあるのですが、アウトリーチサービスに加えて、こういったPR、取組も有効かと思いました。
長浜市と湖南市の実践では、読書への興味・関心の強さに関わらず、多くの子どもと保護者に直接働きかけが可能な園や学校という場での取組の可能性を感じております。
次のページを御覧ください。コンセプト2の「支える人」を支える「こども としょかん」に従いまして、学校図書館支援プログラムを想定しました。取組先が調整中となっておりますが、先日、高島市での実践が決定しましたので、10月から11月にかけ、学校図書館を活用した授業での支援を、高島市立図書館と協働で行ってまいります。
(廣瀬生涯学習課長)
コンセプト3以降について説明いたします。子育て世代にとって魅力ある図書館づくり、保育所等の読書環境調査ということで、現在も集約中なのですが、口頭で申し上げます。
令和3年度文部科学省の幼児教育実態調査において、本県の幼稚園、保育園、および認定こども園が保有している本の冊数は、全国に比較し多い傾向が見られます。また、子ども・青少年局の御尽力で、保育所、認定こども園、認可外保育施設、地域型保育事業者にアンケートを行い、回答のあった219施設のうち、園児数は10人未満から200人以上、保有絵本冊数は50冊未満から2000冊以上と幅があるところでございましたが、絵本に触れる機会を増やすために工夫していることは、「興味のある活動に関する絵本を準備している」が最も多く、続いて「保育士が絵本の読み聞かせをするなど園の近隣地域にある図書館等を活用している」との回答がありました。また困っていることや課題となっていることは「新しい本を買う予算が少ない」が最も多く、続いて「園の絵本等の数が少ない」「本の整理の仕方がわからない」といった回答がありました。
その他、他県の取組について調査を行い、特色ある取組を今後の参考にしたいと考えております。鳥取県では、県立図書館内に「学校図書館支援センター」を設置し、指導主事が在籍して専門的に学校図書館に関する研修や支援等されております。島根県では、学校司書を配置する市町村に対して財政支援をしております。埼玉県では「こども読書支援センター」を設置し、「おはなしボランティア指導者」を養成して、要請があったボランティア団体等に派遣されています。今後、有識者にも意見聴取をする予定でございます。これらを踏まえ、今後さらに対応を検討していきたいと思います。
以上、本年度までの事業を踏まえて、今後の展開案について説明いたします。「こども としょかん」今後の展開案の資料を御覧ください。まず、すべての子どもが身近な環境で本に親しめる推進策として、学校図書館の充実強化を図ってまいりたいと思います。具体的には、学校司書配置に向けての働きかけ、また資質向上等の人材育成に取り組みたいと考えております。環境整備として学校図書館を魅力的で、安心できる場所となるよう、多様な図書の整備等に向けて支援します。支援体制の充実として、公共図書館と連携し、資料貸出に向けても進めてまいります。
また、先ほどの「出張こども としょかん」の試行結果を踏まえ、例えば、子どもがうるさくするのが心配で利用できないという声には、声を出して読んだりする時間帯やスペースの検討、また、これまで公共図書館から本を借りたことがなかった子どもが集まる場所を検討したり、さらに効果的なアウトリーチプログラムの施行なども考えてまいります。
また、先ほど申し上げた「出張こども としょかん」のアンケート調査を分析しまして、学校や保育所、幼稚園などへの支援、保護者やボランティアの参画等に向けて検討するとともに、子連れでも利用しやすい図書館づくりについて検討してまいります。
これらの子どもの読書活動の総合的支援策として、市内各所での好事例の共有、情報交換、対応策の提案など、総合調整を担うセンター機能を県立図書館に付与し、全県ネットワークで子どもの読書に関する相談、研究等を集約し、発信して推進していければと思っています。
センター機能もあわせ、「こども としょかん」の現時点のイメージとしてはお示ししているとおりですが、これから皆様から様々な御意見を賜りまして、さらに良いものとし、子ども読書の世界を広げ、子どもたちがより豊かな人生を送れるよう、県民一体となって進めていけるようにしてまいりたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。以上でございます。
(福永教育長)
ありがとうございました。
それでは、続きまして、本日のゲストとしてお越しいただきましたお二方から、お話をいただきたいと思います。まず長浜市立図書館の森館長様から御発表いただきたいと思います。森館長、どうぞよろしくお願い致します。
(長浜市立図書館森館長)
長浜市立図書館の森と申します。県内公共図書館の立場から述べさせていただきたいと思います。
2枚目を御覧ください。滋賀県公共図書館協議会と申しますのは、県立図書館、県内全ての市町立図書館、また木之本にあります財団法人江北図書館が加盟いたしまして、滋賀県全体の図書館事業の充実発展を図る目的で、いくつかの委員会を持ちながら活動しております。元々、滋賀県は図書館の後進県だったのですけれども、武村知事の時代、1980年に滋賀の図書館振興策というものを打ち出されまして、その後、右肩上がりに実績を積み上げてきたという経緯がございます。この県公共図書館協議会も1980年に発足いたしまして以来40年以上、県内図書館のネットワークを大事にしながら連携を深めてまいりました。
実は、県民1人当たりの図書貸し出し冊数は、ここ数年、東京都と滋賀県が1位2位を独占しております。それも県内の図書館が協力連携して、ボトムアップを図ってきたことが、一つの大きな要因ではないかと考えております。
児童サービス委員会では、この度の「こどもとしょかん」構想を受けまして、県内図書館として、どのように関わっていけば良いのかということを、現在も話し合っているところです。
次のスライドを御覧ください。県内の図書館では、子どもが読書を通じて豊かな心を育めるよう、様々な取組を行っております。おはなし会など子どもへの直接サービス、また、様々な環境整備、子どもと関わる大人への啓発など、その内容は多岐に渡っております。
次の5番のスライドを御覧ください。このような中から、子どもと本を取り巻く現在の課題について大きく3つに整理いたしました。
1つは、全ての子どもが図書館に行けるわけではないということです。図書館内でどれだけ頑張っても、図書館内だけで全ての子どもにサービスをするには限界があることは、どこの図書館でも感じているところです。
次に、一般的な子どもへの取組は定着してきましたけれども、様々な背景を持つ子どもたちへの支援が遅れています。先ほど知事もおっしゃいましたが、例えば障がいがある、外国にルーツがある、貧困、不登校、引きこもり、このような子どもたちにこそ、読書の楽しさを届けることが必要だと思いますが、まだまだこの部分が不十分です。
それから、最後に、本を読む子と読まない子の二極化が進んでいるということです。家庭においても、例えば、寝る前に必ず絵本の読み聞かせをするという御家庭もあれば、1冊も本がないという御家庭もあります。これらを解決していくために、市町や県の図書館、県公共図書館協議会の役割はそれぞれ何なのか、また先ほど申し上げました、滋賀県の強み、他県にはない強いネットワークをうまく生かしていけないか、ということを考えております。
次のスライドです。全ての子どもに本が届くということが、「こどもとしょかん」の1つの大きな目指すところではないかと思っております。そのためには、やはり全ての子どもが最も身近に本と出会える場所である学校図書館を、更に充実させていかなければならないのではないか、それから、多様な背景を持つ子どもたちに目を向けて、意識的に取り組んでいく必要があるのではないかと考えます。
また、どんなに良い本でも、そこに置いてあるだけでは、子どもは手にとりません。子どもと本を繋ぐ大人の意識も、もっと変えていかなければいけません。
さらには、どんな本でも良いわけではありません。子どもたちの心に残り、心の成長に役立つような本と出会ってほしいという願いを持っておりますので、そのような本を選書したり、手渡したりすることもできる司書や、学校司書の資質を上げていくことも必要です。
これらを実現するために、市町、県、県公共図書館協議会の役割を考えたときに、市町の図書館は、やはり、地域の実情に合ったきめ細かい直接サービスを担っていくところではないかと思います。県の図書館は市町だけでは補いきれない、例えば、資料などのバックアップ等をぜひお願いしたいです。
また、市町の学校司書は各市町の予算で雇用されておりますけれども、決して十分といえる内容ではありませんので、何かしらの支援があると良いと思っております。
最後に県の公共図書館協議会といたしましては、専門的な研修などを全県的に行うことで、司書の資質向上を図ったり、情報発信を行ったりすることができると思います。
また、これらの事は図書館だけで、なし得ることではございません。学校教育、福祉、子育て支援といった様々な部門との連携も不可欠です。これらの役割が、それぞれ機能しますと、県全体の子ども読書活動の底上げを図っていくことができるのではないでしょうか。これまで滋賀県内の図書館が全県的に取り組んできた積み上げの先に、「こどもとしょかん」の在り様が見えてきますと、とても滋賀県らしいものができるのではないかと改めて感じているところです。私からは以上です。
(福永教育長)
ありがとうございました。
続きまして、非営利活動法人絵本による街づくりの会平松理事長様から取組について御発表をいただきます。よろしくお願いいたします。
(非営利活動法人絵本による街づくりの会平松理事長)
絵本による街づくりの会の平松です。
私達は「絵本から広がる出会い・体験・感動」を合言葉に、「こどもの笑顔があふれる街に豊かな心を育む街に」を目指して活動しています。2004年10月から活動を始めましたので、来年秋にちょうど20年を迎えます。
私達が活動を始めた原点は、今もあまり変わっていないのですが、毎日のように虐待や自殺、殺人等の心痛むニュースが流れていて、それをただ傍観者として聞いているだけではなく、私達にできることで社会に関わり、良い状態にならないかということで、選んだのが絵本です。
絵本というのは子どもが初めて出会う芸術であり、赤ちゃんにとっては心のミルク、大人にとっては心の花束とも言われておりまして、辛い時に絵本に出会うと寄り添ってくれたり、前向きな気持ちになったりというような力がありますので、その絵本で人間らしい心を育み、家族の絆を取り戻し、心優しく幸せに暮らせる街になったら良いと思い、活動しています。
特に最近ではスマホやテレビ、ゲームなどに時間を取られて、親子の時間が失われているというのが現状なのですが、やはり、絵本は同じ時間を共有できるものですので、絵本ならではの魅力を、どうすれば皆さんに伝えることができるかということを考えて活動しています。
次のスライドを御覧下さい。私達は「絵本を楽しむ」ということを合言葉に活動しているのですが、絵本の好きな人は何もしなくても絵本を楽しんで下さるのですが、そうではなく、絵本は赤ちゃんのものだと思っている人や、絵本に関心がない人、絵本の魅力にまだ出会っていない人、絵本=読書=インドアだからアウトドア派には関係ないと思っている人にも、どうしたら絵本に出会ってもらえるかということで、体験と感動の入り口に絵本を位置づけて、絵本の魅力と絵本の世界の奥深さに出会える場を提供することにしました。
次のページを御覧下さい。様々な活動をしているのですが、高島市は四季折々、豊かな自然、里山環境があります。しかし、意外と地元の子どもが外で遊んでいないという現状もありますので、楽しみながら人間と自然の関わりに気付く、「里山体験隊」という活動をしています。これは読書活動と体験活動をミックスし、環境のことにも少し意識を向けるような内容にしております。
左側の上の写真が毎年夏の恒例にしております、川遊びの様子です。下の写真が、秋に焼き芋をしているところです。川遊びの時は、川や水、魚の絵本を必ず川のそばに持っていきお話の時間を持ちますし、子どもたちは飽きっぽいので、体験内容に沿ったテーマの絵本をその場に持って行き、自由に、手の届くところに絵本があるという環境にこだわっています。
下の写真は焼き芋で、この時は自分で稲刈りをした際のもみ殻で焼き芋をしましたが、焼いている間に、絵本や紙芝居を読むということをしていました。
右側の写真を御覧下さい。これは絵本のある交流スペース、私たちは「かめの部屋」という愛称で呼んでおり、「お買い物ついでに絵本と出会う!」という取組をしていました。
残念ながらこのスペースが閉鎖することに伴い、辞めざるを得なくなりましたが、県の事業の「おうちで読書」にも関わらせていただき、年に3~4回絵本のひろばと称して絵本の啓発等しておりました。上の写真が県の事業で実施していたときのものです。そのときは県から絵本をお借りして、市の社会教育課の読書担当等とも一緒に活動しておりました。
下は最近の写真で、絵本は本会が持っている本をその時々に50冊ほどセレクトして並べて、読んだりしています。
次のページを御覧下さい。その他に子どもと絵本をつなぐ活動として、小学校での読書支援を行っています。左上の写真です。この小学校は毎週金曜日が朝読書の時間になっており、2学年ごとに20分の時間をいただいております。毎学期には45分のおはなし会の時間をいただき、1~3年生、4~6年生に分かれて行っています。
その他に、依頼を受けて、子育て支援センター等での読書支援も行い、「親子での絵本の楽しみ方」や、「絵本の選び方」などの相談を受けながら絵本を紹介しています。この場が「ブックスタート事業」のフォローアップにも繋がっています。高島市がブックスタート事業を立ち上げるときに、養成講座をしたり研修の企画、講師の協力もしたりして、今に続いております。その他にも、地域の他の団体主催のイベントで御依頼があったときに協力もしたりしています。
次のページを御覧下さい。私達は絵本の種蒔き活動をしていると思っているのですが、種を撒かないことには芽も出ないし実にもならない、ということで、やはり一番大事なのは、子どもと絵本を繋ぐための人、先ほどの森館長や知事のお話にもありましたが、そこが一番大事だと思っています。
特に幼少期は親や身近な大人が絵本を繋ぐ役割になりますが、学童期以降は子どもたちが本と出会えるのが学校図書館なので、その学校図書館に本と子どもを繋ぐ読書ボランティア、図書館ボランティアだけでなく学校司書がいることが大切だと考えています。
残念ながら高島市はまだ学校司書の配置がされていませんし、直近でもその計画はないと聞いて少し残念に思っているのですが、今回の「滋賀県まるごと『こども としょかん』」構想の中に、学校支援の充実なども書かれていますので、ぜひ学校司書未配置のところにも働きかけていただけたら、そのような機会になればと思っています。
人と出会い、本と出会い、自分と向き合える、子どもにとっての居場所の一つが「学校図書館」。第2の保健室とも言われていますが、そのような場としての「こども としょかん」の役割が大きいのではないかと思っております。
先ほど廣瀬課長から島根に視察に行かれた際のお話を聞きましたが、学校司書を配置するために財政的な支援をされていたそうなので、高島市で学校司書を配置できていないのは、学校司書の役割を十分に理解されていないということもありますが、やはり財政的なことが大きな要因と聞いております。そのことについても考えていただけるとありがたいと思います。以上です。
(福永教育長)
ありがとうございました。
ゲストのお二人から、いろいろな思いを含めましてお話をいただきました。
それでは、これより意見交換に入らせていただきますが、本日御欠席の3名の教育委員の皆さんより御意見をいただいておりますので、事務局から説明願います。
(會田教育総務課長)
それでは、私の方から本日欠席されている委員の皆さんからいただきました御意見につきまして、要約しながら紹介させていただきたいと思います。
資料4を御覧いただけますでしょうか。まず窪田委員からでございます。「こども としょかん」の取組については大切な取組であり、県として力を入れていただきたい。目指す姿として「本を読んでとても楽しかった」などの読書の成功体験を得られることとあるが、近年はインターネットの普及により、「読書を通じたわかる、調べる楽しさ」といった体験をすることが難しくなっているように感じる。本を読んで楽しかったと思える体験をより具体的に表現しても良いかもしれないと感じた。
また、図書館を利用していない、またはできない子どもと保護者に届けることを考えたとき、学校図書館や公共図書館はもちろんのこと、より身近に本と出会える機会が作れると良いと思う。
次に、石井委員からでございます。子どもの発育段階に応じて興味を抱ける読書の内容等を吟味していくことが重要であり、「楽しさ」や「興味」等が自然に発生する仕組み作りを希望する。また発育段階に応じた電子図書の導入を検討すべきである。
次に、野村委員からでございます。図書館の機能に付加価値をつけて、誰もが本を読むことで「楽しかった」「わかった」「勇気づけられた」といったことが体得できる施設になればと思う。また「こんな本があったらいいな」という子どもの興味関心を追及して、足を運びたくなる図書館を増やしていけることを望む。
先日のふれあい教育対談において、子どもから「図書委員が工夫を凝らしながら本を読む人を増やすことを考えている」との発言があったが、学校図書館においては、子ども自らが考え、行動することで達成感を得られるだろうし、学校全体にも良い影響があると思う。
幼児期に本を読んでもらうことは、育ちにとってとても重要であり、親の余裕を作ることができる社会環境の整備が大切であると思う。
「出張こども としょかん」はとても良い取組に感じた。読書の良さを伝え、子どもたちの将来の道しるべになることを期待するとともに、こうした取組の充実強化のために、県としてバックアップしていただければと思う。
以上でございます。
(福永教育長)
ありがとうございました。お三方の委員からの御意見でございました。
それでは、これから意見交換に入らせていただきますので、先ほどの説明、またゲストの方の発表に対する御質問、御意見、「こども としょかん」に関する御意見など、御発言をお願いいたします。
(塚本委員)
御説明どうもありがとうございました。
私も過去を振り返りますと、自分の思春期であったり、人間関係の悩みであったり、そのような時に、読んだ本によって救われたという経験が、何度かございまして、リアルな人との関わりもさることながら、本の中から色々な言葉に出会い、気付くことがあったということを思い返しました。
このような図書館の取組も、やはり、人にとって本と触れていくということがすごく重要な経験であり、今後も大切にしたいということを思いながら聞かせていただいておりました。
最初の事務局の説明や森館長の説明にありました、多様な背景をもとに困難な環境にある方々にも、本を届けていきたい、外国をルーツとしたお子さんにも、いかに本を届けていくかということを工夫されているとのことでしたが、在日の各国大使館や領事館等において、自国民のケア、自国文化の継承という部分も含め、母国語による本を扱っているのではないかと思います。
滋賀県も、予算等の都合で公的なサポートだけで賄いきれないこともあるかとは思いますが、民間の力や、各国大使館のサービス、生活サポート等と連携し、外国をルーツに持つお子さんへの、外国書籍も含めた本の届け方については、何かしらご検討していただいても良いのではないかと思いました。
私事ではありますが、妻が外国人で、私の子どもが幼少期に絵本や文化を紹介した本を、本国から取り寄せていました。そして、その国の人たちとのふれあいの中で、子どもの成長に伴って、本の受け渡しがあったのですが、もしかしたら継承していけば良い本も、もういらないと捨てられてしまっていることがあるのではないかと思います。
そのようなことを、このネットワークで広げていければ、捨てられる本を財産として、学校や図書館に配置していくこともできるのではないかと思いました。
(福永教育長)
ありがとうございました。
塚本委員がおっしゃったことについて、図書館で外国語の本も含め、何か取組がありましたら、御説明をお願いいたします。
(林県立図書館サービス課長)
県と伊藤忠商事株式会社との「伊藤忠からのクリスマスプレゼント」というプロジェクトがありますが、海外の拠点から、それぞれ駐在されている社員の方からのプレゼントという形で、現地の言語で書かれた児童書を県立図書館に寄贈いただいています。
その他にも、おっしゃっていた国際協会には「伊藤忠からのクリスマスプレゼント」のPRをしていただいておりましたが、今年度から更に連携を深めていきたいと考えております。
(福永教育長)
森館長から取組や御意見等あればご紹介いただけますか。
(長浜市立図書館森館長)
外国語にルーツのある子どもたちに向けた本や、障がいのある子どもたちが読むLLブックなど、様々な本を図書館や学校にも置いておりますが、当事者の方に情報が届いていないことが、一番の課題であると思っています。
ただ、当事者の方に直接情報を届けることは難しいので、まずはその周辺の方から、先ほどから話題に出ている国際交流協会の方や、そのような活動をされている方に、情報をしっかりと届けていかないと、宝の持ち腐れになってしまうと感じております。
(特定非営利法人絵本による街づくりの会平松理事長)
会員の方から本を寄付していただくことがあります。つい先日もいただいた本の中に外国語の本があり、私達の活動の中で外国語の本を読むことはありませんので、図書館にお渡ししました。
市民の方も不要になった本は捨てるというパターンが多いかもしれませんが、先ほどの外国語の本の事例を紹介するなどし、活用していくことは、本にとっても良いことだと思います。
(福永教育長)
ありがとうございます。
(土井委員)
森館長、平松理事長、ありがとうございました。興味深く聞かせていただきました。
一つ質問があります。お二方から学校司書に係る内容を充実させていく必要があるのではないかという御意見がありました。
新たに学校に学校司書を配置するとなると、学校側としては司書の仕事だけでなく、学校を支える業務にも協力して欲しいだろうと思いますので、どのような形なら、御協力が得られるかということが大きいと思います。
先ほど知事からもありましたように、学校は様々な方々に支えていただかなければならないのですが、他方で、財政上の問題もありますので、出来るだけ色々な形で支えていただくほうがありがたいというのが現状です。
司書の経験やスキルなどを踏まえ、学校活動全体の中で図書館の業務以外にどのようなことであれば協力が可能かという点について、御意見を伺いたいのですが、いかがでしょうか。
(長浜市立図書館森館長)
直接のお答えになるのか分かりませんが、学校司書は、学校図書館担当職員という位置づけであり、学校図書館の関係業務を行われる方ということで、学校における読書教育というものを位置づけていくためには、司書教諭の方がしっかりと考えていくべきではないかと思っております。
その一方で、学校図書館は、先ほど平松さんもおっしゃいましたが、第2の保健室というような役割も出てきている現状もございますから、現実的には御勤務されている時間や日数が非常に少ない方がほとんどですので、何か特別な業務をされるというよりは、例えば、子どもたちが来たときに温かく迎えらえるような雰囲気づくり等できることもあるのではないかと思います。
誤解を恐れずに申し上げますと、時間がない中で、終始図書の整理等されているケースもありますので、そうではなく、本学校図書館はどういうところであったら良いのかというところまで考え、仕事していただけると、より学校図書館が意義深いものになっていくと感じております。
(特定非営利活動法人絵本による街づくりの会平松理事長)
私は、息子がお世話になった小学校で、朝読書のボランティアと図書館の整理ボランティアをさせていただいています。図書館の整理ボランティアは月2回、5~6名の仲間とやっています。
午前中の活動の時に、ある学年が調べ学習で図書館に来ていました。先生から自分の好きな生き物について調べましょうという課題が出され、一生懸命調べて探してすぐに決まる子もいれば、なかなか決めかねている子もいました。悩んでいそうな子に、「何を調べたいの。」などと聞いて、「その生き物系だったら分類が魚類の棚にあるよ。」とか「猫はここにあるよ。」「カブトムシがここにあるよ。」とそのようなことは言えましたが、そのときに学校司書がいてくれたら、他の分類でも「その生き物ならこういう本もあるよ。」というように、もっと専門的に本と子どもたちを繋ぐことができるということをすごく実感しました。
そのような意味でも、やはり、学校に学校図書館があり、担う人がいるという二つの要素が揃って、初めて学校図書館が生きてくると思いました。ボランティアとしては、図書の整理や、壊れたものにカバーをかけることはできます。しかし、ボランティアは来られなくなったら、新しい方が来るという保証はありません。学校司書がいると、人が変わるとしても、司書は居て下さいます。学校図書館は全ての子どもたちが本に出会える、唯一の身近な場所だからこそ、財政的なこともあると思いますが、やはりその場に専門の学校司書が必要だと思います。
司書教諭と言っても学級担任等と兼務されていることがほとんどです。12学級以上は絶対に置くということになっており、市内には数校置かれており、司書教諭もいらっしゃいますが、当然のことながら担任もしておられ、他の担当もされているので、正直、司書としての業務をしたくても出来ないという現状は聞いております。なかなか先生の立場で思っていても言えないところがあるそうなので、子どもの声だけでなく、子どもと関わっている先生方の声も聞いていただけると良いと思います。
(土井委員)
ありがとうございます。貴重な御意見をいただきました。学校図書館が第2の保健室というお話もありましたが、そのような子どものニーズに応えていくということや、また、本は教材の基礎ですので、先生方が様々な学習活動を計画されていくところにも協力していただけると、司書の仕事のイメージが広がっていき、学校として受け入れやすいのではないかと思いました。
また、今日の御報告について、御意見申し上げますと、「どこでもこども としょかん」という構想、取組は大変面白いと思いました。
よく講演の際に引くのですが、江戸時代の白隠という有名な禅僧のエピソードの中に、地獄という場所があって、そこに鬼がいるのか、鬼がいるところ、そこがすなわち地獄なのか、という問いがあります。それを引き合いに申しますと、図書館という場所があってそこに本があるのか、本があるところが図書館なのかという問いになるのだろうと思います。
学校では学校図書館に行けば多くの本があり、司書がおられる場合もありますが、他方で各教室に先生が学級文庫を置かれ、そこで本を手にすることができるような場合もあると思います。どちらが多くの子どもたちにとって身近に本に触れる機会を提供しているのかといえば、クラスにある学級文庫の方かもしれないという気もします。
しかし、図書館で本を探して読むということは、学級文庫とは異なる意義があるということも確かだと思います。この辺りをしっかりと整理し、充実を図っていこうとされている試みだと理解しましたので、学習や調査研究の場、議論する場、ふれあいの場、くつろぐ場、様々な場に、それを支える本があるという形にされていくことは良いことだと思いました。
また、託児所の設置についても、大切な視点だと思います。ただ、図書館という施設に託児所を設置していくという発想なのか、図書館と託児所を組み合わせていくという発想なのか、この点は考える必要があるのではないかと思います。
これは教育委員としてよりも、一人の滋賀県民として率直に申し上げますが、滋賀県の公共施設のあり方を少し考えた方が良いと思います。公共施設の位置や構造、利用方法等、その組み合わせを、滋賀の地理的条件や、経済的、社会的な構造を踏まえ、全体構想をよく考えていく必要があると思います。
図書館があり、この図書館をどうするかということだけでなく、他の施設がいくつもありますので、それをどのように組み合わせ、位置づけていけば、人が集まり色々な使い方ができるのかということを、考えていく必要があると思います。
また、これは論文や本を書く立場から、要望等申し上げますと、現在、出版は大変厳しい状況です。私が書くものは非常に専門的で学術的なものが多いので、図書館に所蔵されている、ごく限られた専門家が読むような本を手に取ることが多いのですが、そのような本が出版できるのは、よく売れるような本を書いてらっしゃる方や、そのような本を手に取る多くの方がいらっしゃることで成立しているところがございます。
そのような意味では図書館がますます充実していくということは、なかなか厳しいところもございます。新しい文化や様々なものを創生していくときに、それをしようとしている人たちを支えていってもらうということが、社会にとって、非常に重要な面もございます。
その意味では、図書館で本を読むということも、もちろん大事ですし、様々な経済状況の子どももいるということも分かりますが、同時に、それをきっかけにして、自分で本を手に取って、それを、生涯、参考にしていくというようなことを支え、これは本に限りませんが、様々な文化を支えて下さる人達を養成していく場でもあると、大変ありがたいと、文化の観点から意見を申し上げます。以上です。
(福永教育長)
ありがとうございました。大杉副知事からお願いいたします。
(大杉副知事)
御発表ありがとうございました。非常に貴重な御意見をいただいたと思います。
「こども としょかん」について、少し違う視点で申し上げますと、目指す姿のところに「本を読んで、とても楽しかった!」とあり、これに繋がる取組は非常に練られていると感じました。加えて、「本で知りたいことが分かった。」ということや「調べる楽しさを知った。」ということも含めて考えると、より能動的な読み方といいますか、読みながら自分の思考も作っていき、その思考を表しながらまた次に繋がるという子どもの言語活動、言葉の力全体を支えるような取組が必要になってくると思います。
学校図書館の充実、強化ということを考えた時に、色々な取組があると思いますが、学校図書館法において、学校図書館とは学校の教育課程の展開に寄与するとともに、健全な教養の育成を目的とするというように表現されています。そのような意味で、学校司書も大事ですし、環境作り、貸出助言のようなことも大事なのですが、加えて、幼少中教育課や高校教育課が目指していることと、学校図書館の取組をどのように繋げていくのか、もう一歩踏み込んで、御検討いただいても良いと思います。
色々な取組が既にあると思います。ラーニングコモンズとまではいきませんが、図書館で探究活動の発表会をしたり、カメラやCDプリンター、3Dプリンターなどを持ち込んで、調べながら自分でも表現し、また調べるというような、企画調整課で考えている、スキーム教育の取組なども、もしかしたら繋がってくるのかもしれません。
落ち着いて読書する空間が損なわれないように考慮しながら、検討していかなければならないかもしれませんが、インプットはもちろん、アウトプットすること、言葉の力全体を、どのように支えていくのかということ、これは最近の学力テストで指摘された「自分の考えを表現することに課題がある」ということへの対応にもおそらく繋がってくると思います。
また、私たちはどうしてもアナログとデジタルを対立的に捉えがちですが、子どもたちを見ていると、そこを関係なく、縦横無尽に楽しみ、学んでいると思いますので、そのような意味で、子どもたちに魅力的な環境づくりも考えて良いのではないかと思いました。
学校図書館含め、図書館や、言葉の力を支えるということを考えると、「(仮称)しが子ども読書支援センター」も読書の支援にとどまらず、図書館という場の可能性を支えるセンターだと考えていっても良いのではないか、そのような意味では「しが『こどもとしょかん』支援センター」で良いのではないかと感じたところです。以上です。
(福永教育長)
ありがとうございました。まだまだ色々な御意見もあろうと思いますが、このテーマに関する意見交換は以上とさせていただきます。
それでは、次のテーマに移らせていただきます。
ゲストのお二方におかれましては、ここで御退席いただきます。ありがとうございました。
それでは、続きまして2つ目のテーマ、「(仮称)滋賀県子ども基本条例の策定に向けて」に移ります。現在の条例の検討状況等につきまして、事務局から説明をよろしくお願いいたします。
(秦子ども未来戦略室長)
現在検討を進めております「(仮称)子ども基本条例」について子ども・青少年局から説明させていただきます。
資料2をお開きください。新たな条例を策定する趣旨・方向性というスライドでございますが、新しい条例を検討するに至った経緯等を記載しております。
まず、本県では平成18年に「滋賀県子ども条例」を制定しております。この条例は平成14年以降に、懇話会や検討委員会で検討して制定されました。この検討の中では、平成6年に日本が批准いたしました児童の権利に関する条約の趣旨も踏まえた議論もされておりましたが、制定から16年が経過し、今日の目から見ると、子どもの権利というものを正面から規定していない、必ずしも子ども目線の規定となっていない等の問題意識があり、条例の制定に至りました。
また、この間、虐待や健康、ネット上での権利侵害など、子どもを巡って顕在化してきた課題が認識され、令和4年12月27日に新しい条例を検討することについて、「滋賀県子ども若者審議会」で諮問されたという経緯がございます。
諮問時に想定していた、新たな条例の検討の方向性をスライド下部に記載しております。少し抽象的ではございますけれども、子どもを中心に置いて、子どもが幸せに成長し、大人が子育ての喜びを実感できる、このようなことを滋賀県が実現するために、3つの大きな方向性で新しい条例を検討したいとしております。
1つ目が、子どもを大人に保護される存在としてだけではなく、権利を有する主体として捉える、この子どもの権利について明示するということ、それから2つ目が、子どもの意見表明について具体的な仕組みを検討するというもの、それから3つ目が条例制定過程そのものにおいても子どもの意見を聞いて検討するなど、子どもを真ん中に置いた取組の周知を図っていくなどし、新しい条例の考え方について社会全体で共有していくという方向で進めたいというところでございます。
次のスライドに検討体制を示しております。条例を検討するにあたりまして、先ほど申しましたように、子ども若者審議会に諮問しておりますが、この下に条例を検討するための新たな部会として条例検討部会を設置しております。
委員としましては、有識者の他に子育ての当事者、あるいは支援者、高校生、大学生の方々にも参加していただいており、スライド下部に委員一覧を記載しております。有識者には、前回の子ども条例の際にも御議論をまとめていただきました、立命館大学大学院人間科学研究科の特任教授の野田先生を部会長とし、高校や大学の学校長、小学校の先生、教育学部の教授、医師、弁護士の方々に委嘱して検討を進めていくというところです。検討自体は審議会が中心となってしますが、後程御説明いたします各種団体の方にも意見を聞いております。
次のスライドに移りまして、これまでに検討部会を3回開催してまいりました。第1回は新たな条例を検討する旨をお知らせし、幅広に御意見をいただきました。
主な御意見といたしましては、子ども目線に立って検討する内容を考えることが重要であること、子どもの声を聞いて反映させる仕組みを検討できないかということ、積極的に声を上げにくい子どもの意見を拾い上げるような支援が必要ではないかということ等でした。
第2回の検討部会では、特に「子どもの意見を聞く」ということについて御審議いただきました。これは後程御説明いたします。
第3回の検討部会では、「子どもの権利・基本理念・責務」についてどのように考えていくか、意見交換を行っております。児童の権利条約やこども基本法、他県の条例等を参考にして検討を進めたところでございます。
次のスライドです。「子どもの意見を聞く」という第2回で検討した取組の時にお示しした、話題提供の資料です。
条例でどのような規範を定め、運用をするのかということを考える時に、どのような目的、場面で意見を聞くのかにより、意見の聞き方がずいぶん違うのではないかと考えており、一言で「子どもの意見を聞く」と言っても、法的側面によってかなり積極的に聞く場合、あるいは聞けるようにしておく場合、そのような色々なパターンがあるだろうということでございます。条例そのものに、どこまで反映するかということはともかく、検討するにあたり、実際の施行の運用をイメージする必要があったため、話題提供として提示したものでございます。
意見を聞くということには、大きく分けて2つの効果があると考えられます。スライド上部に記載しております、聞く側としてどのような意義、目的、効果を期待しているのかということ、スライド下部に記載しております、意見を言う側として、子ども自身の成長のような観点等、どのようなものを想定するのかということでございます。先ほど申しましたように、どのような目的でどのような場面で聞くのかによって、意見の聞き方が大分違うだろうということで、いくつか切り分けたものをもとに、実際の運用を想定して様々な御意見をいただこうという趣旨の資料でございました。
第2回の主な意見といたしましては、影響面も含め、子どもの権利が十分に確保されているかどうかについて、第三者が管理する仕組みが必要ではないかとの御意見、子どもの意見を聞く取組は大きなマンパワーが必要だという御意見、意見を言えるかどうかには、匿名性の確保が重要な要素になるという御意見、意見を聞こうと思うのであれば、まず最初に子どもに権利があることを、親や子ども自身に周知するところから行う必要があるのではないかという御意見、まず分かりやすい説明をして、意見表明を支援するような支援が重要ではないかという御意見がございました。
次にスライドの5です。児童の権利条約は、自己に影響を及ぼすすべての事項について、自由に意見を表明する権利を獲得するということです。この4月に施行されたこども基本法では、国、地方公共団体等も含め、子ども施策を策定・実施するに当たり、子どもの意見を反映させることが規定されております。この国や地方公共団体以外の主体、例えば家庭や、塾のようなところの領域をこの条例の射程に含めるかどうかということについて、意見をいただいたところでございますが、方向性といたしましては、この条例はそのようなところまで広く含め、子どもの意見表明権というものを支援していく観点から幅広に規定したいと考えているものでございます。
第3回会議では、意見協議を支援するという、第2回に出てきた意見とも関連する、条例自身が子どもにわかりやすい形で示される必要があるという御意見や、事業者や家庭等にもこのような考え方を適用するということであれば、意見を聞く側のメリットも示す必要があるのではないか、負担感だけがあるということでは取組の広がりに欠けるのではないか、子ども自身の責任や目指す姿のようなことも考えるべきではないか、子育てについては保護者に第一責任があるという問題を前提とするかどうか、そのような御意見がございました。
次にスライド6です。特に意見聴取に関するところが大きいですが、1はその実効性の確保や、多様な子どもの意見も反映するために、積極的に子どもの意見を聞く仕組みというものを考える必要があるのではないかということです。2ですが、県に対して子どもが意見相談をしやすい仕組み、その受け皿となるような仕組みを検討する必要があるのではないかということです。3は意見を受けたときにフィードバックを実施するということが重要ではないかということです。4ですが、家庭や、保護者、このような方々に対する機運、普及、啓発に係る働きかけをしていく必要があるのではないかということでした。
ここには書いておりませんが、この条例自身を子どもに分かりやすいものとするために、条例の方法の検討と並行して、分かりやすい表現や説明をした資料も併せて用意していく必要があると考えております。
その他の取組といたしまして、実際の運用についての手引き等を作成したいと考えております。これについては、国でも、子どもの意見を聞く取組を、こども家庭庁などを中心に検討しているところで、この情報も得ながら検討してまいりたいと思っております。
そして括弧書きの部分ですが、子どもの権利の救済などの第三者機関については、現在、色々な既存の仕組みがございますので、そのようなことも踏まえ、必要性について、検討してまいりたいと思っております。子どもの意見を聞く取組としては、児童福祉法が改正されたことにより、特定の場合に意見を聞く仕組が整備されておりますが、これについては別法で仕組みが簡潔的に整備されているということで、別途検討してまいりたいと考えております。
次のスライドに今後のスケジュールを掲載しております。
年内にあと3回ほど条例の検討部会を開催したいと思っており、年度内に答申を得られることを目標として進めたいと考えております。いつ制定するかということは、その後の手続きも踏まえ、時期の明言が厳しいのですが、年度内には審議会への答申を目指しております。今月以降、子どもや関係団体の意見を聞きながら、この条例の中身を検討していく手続き、取組を進めていきたいと考えております。
子どもの意見を聞きながらこの条例を制定するのですが、子どもだけではなく、大人の意見も聞く必要があると考えております。具体的にどのようなところに聞くかということをスライド下部に示しておりますが、子どもについては、小学校上学年、中学生、高校生等です。また、声を届けにくい人の意見を聞くことが重要ということで、不登校の子どもや、外国にルーツのある子どもといった方々の意見、広報課のところで取り組んでいる次世代県政モニター、あるいはホームページ、このようなところでも子どもの意見を聞いてまいります。並行して、学校の先生方、経済団体、支援団体、県政モニターの方々を通じて、両面から意見を聞きながら検討していきたいと思っております。
以上でございます。
(福永教育長)
ありがとうございました。
この(仮称)滋賀県子ども条例について、本日御欠席の委員の方から意見をいただいていますので、御紹介させていただきます。
(會田教育総務課長)
恐縮ですが、再度、資料4を御覧いただけますでしょうか。
まず窪田委員からでございますが、現行での取組やその成果と課題を整理した上で、新条例のポイントを教えてほしい、という御要望がございました。
次に石井委員からでございますが、条例検討部会のメンバーについては、幅広い人選となっておりバランスが取れていると思う。検討を進めるにあたっては、他府県の検討内容等もヒアリングしていくべきだと思う。外国にルーツのある子ども、不登校の子ども、障害のある子ども等に関して充分な検討と配慮が必要だと思います。
次に野村委員からでございますが、子どもの権利とは、大人と同じように認められた基本的人権であり、滋賀県として条例を制定し、条例に沿った形で子どもの成長を守ることが必要である。保護者や地域教育機関など条例についての認識や理解を深めてもらうためにも、条例に規定する取り組みとして掲げられている「家庭や企業、教育機関等に対する働きかけ」これを充実させていただきたい。子どもが生き生きと夢を持ち健やかに成長できる仕組み作りを整備し、環境を整えることで子どもの権利も守られていくと思う。人は親の愛情をもとに成長していくものであり、子どもの権利を守るためには、「親・家庭・保護者の理解」が欠かせないと思う。家庭教育力や地域教育力を高めるとともに、権利と社会的ルールを理解できる子どもに成長させていくことが大切であり、そのためにも社会全体で取り組み、これから生まれる子どもたちにもこの条例が活かされるよう考えていく必要がある、という意見でございます。
以上でございます。
(福永教育長)
窪田委員から、今回検討を進めている新条例のポイントは何かという御意見に対して子ども・青少年局から何か御意見はありますか。
(秦子ども未来戦略室長)
先ほどの説明と重複する点もあるかもしれませんが、子どもの権利を明示するということ、それから、子ども目線の条例とするということです。具体的な中身について申し上げますと、特に、子どもの意見を聞くという視点が1つの柱になると考えております。そのためには、周知も含めて、子どもが意見を言いやすい環境というものを社会に広めていくことにも、取り組んでいく必要があると思っており、意見表明以外も含め、すべての子どもを大切にする社会となるような考え方が広く共有されるよう、条例制定後に周知に取り組む、あるいは条例の中にそのような考え方を入れていく、このようなことがポイントになるのではないかと思っております。
(福永教育長)
ありがとうございました。
それでは、皆様から御意見を伺ってまいりたいと思います。
(塚本委員)
資料の中にアドボケイトという表現がありますが、様々な状況にあり、意見を言いにくい子どもたちの代弁者、代弁してくれる仕組みは大切なことだと思っております。
それと同時に、子どもの声、意見を聞くということは非常に大切だとは思いますが、アドボケイトのことでもあるのですけれども、主張が抑圧され、我慢している子どもたちは多いのではないかと思います。
これは不登校や児童虐待にも若干関係があるかもしれませんが、最近の社会情勢は様々な面で厳しいところがあり、そのようなところで、本来の子どもらしさを発揮できず抑圧されるような環境にいる子どもたちが、ある種の仮面をつけて育ってしまうのではないかと思います。
周りからのプレッシャーがある環境の中で、本来の自分を表現できず、例えば良い子の仮面や、必要以上に親切であるような、本来のその子でない仮面を付けながら育つ子どもは、まじめな意見を言ってしまうと思いますが、その意見が、本来のその子の意見であるのかということにも配慮しながら、子どもの声を代弁するアドボケーターという捉え方が必要ではないかと思いました。
(福永教育長)
ありがとうございました。
様々な思いを表現したり、意見を言ったりする時に、本当にそのように思っているのかどうかを判断するのは難しいということを、様々な場面でもお聞きします。その点を今後どのようにしていくのかということだと思います。
(土井委員)
ありがとうございます。検討を進めていただいて、お礼申し上げます。
スライドの4ページ目の「子どもの意見を聞く目的や局面等を整理していく必要がある」について、これはその通りだと思います。
一個の人間として生きていく上で、自分のことは自分で決めるという側面と、みんなのことはみんなで決めるという側面の2つがあります。自分のことは自分で決めるということで、自分の話を聞いてもらうという側面と、みんなの一人として話を聞いてもらうという側面は、話を聞くことの意味が全く違います。
子ども達にとっても、自分のことは自分で決めるという局面があり、その部分について話を聞くことは、真剣にしていただかないといけないと思います。虐待やヤングケアラーのような問題については、権利と言っても自分の生きる権利に関わってくる部分ですので、しっかり整えていただく必要があると思います。
他方、みんなの一人として意見を聞くという時は、子どもの意見を聞くという面もあるのですが、将来大人になる存在であり、そこで責任を果たしていく一人として、子どもの段階からしっかり意見を言うということだと思います。聞き方、あるいは意見の反映の仕方は当然違ういうことを前提に整理していただければと思います。
それからもう1つは、主体ということと、聞いてもらうということと、聞いてもらって話すということをおっしゃっていると思います。みんなの一人として話を聞くというところは、非常に困難な環境、自分ではどうしようもない環境にある子の話を聞くということとは、違う局面であって、聞いてもらうだけでは駄目だとお考えいただいた方が良いと思います。
大人が聞いてあげる機会を与える、子どもは聞いてもらえる機会がある、という一方的な文脈で「聞く」ということを進めていくのは、あまり良くないでしょう。特に将来のことを考えますと、子どもたちも、聞いてもらう立場であり、且つ聞く立場になっていかなければなりません。聞いてもらうことによって考え始めてもらうということが重要で、考えることを通じて自分たちが何かをしなければならないのだというところに繋げ、自分たちがしなければならないのだから、他の人の意見を聞かなければならないのだというところに持っていかないと、恐らく本来の目的は実現できないのだろうと思います。
その意味では、聞いてもらうというところから始まるのかもしれませんが、最後はしっかり聞ける、お互い聞き、聞かれる立場に立つというところを目指していただくのが良いのだろうと思います。そうすると責任を持って考えて話すことに繋がっていきます。
大人が期待することだけを話すのではなくて、自分として何をしなければならないのかを話していただくのが重要だろうと思いますし、それが主体なのであって、主体として尊重するということはそういうことだと理解して進めていただければと思います。
(福永教育長)
ありがとうございました。副知事からお願いいたします。
(大杉副知事)
条例を作り、どのように活用されるのかということを考えた時に、先日、豊島区の児童相談所にお邪魔してきたのですが、まさに辛い状況にある子が最初に来るその入口に、豊島区の子ども条例前文が掲げてありました。
それは、「あなたの人生の主人公はあなたです。あなたのことをあなたが選んで決めることができます」ということですが、まずはそのメッセージを子どもに伝えて、そこからスタートする支援をするという活用のされ方ができるような、条例になれば良いと思います。
(福永教育長)
ありがとうございました。知事からお願いいたします。
(三日月知事)
ありがとうございます。
「子ども、子ども、子ども」というときに、子ども基本条例、権利の定めと意見表明の仕組み、もしくは、そのようなことがあらゆる主体に理解・共有される、このことはとても大事に考えておりますので、そのようなことが整った条例を皆で定めていきたいと思っています。
その際に、本日お二人の委員がおっしゃった、本来の子どもの意見ではなく、少し仮面をかぶってしまっていたり、慮りすぎて抑圧されているような意見になっていたりするようなことを、どう私達が見極めて受け止めるのかという視点や、土井委員がおっしゃった、「自分のことは自分で決める、みんなのことはみんなで決める」、特に「自分のことは自分で決められるんだよ」という、今の大杉副知事が紹介された豊島区の児童相談所の入口のメッセージや、みんなのことはみんなで決めるのだから、聞いてもらうだけではなく、お互い聞くこと、言ったことを基に考えること等、そのようなことはとても大事だと思います。子ども基本条例だから何か聞いてあげる、やってあげるだけにならないような作り方やメッセージの出し方が大事だと思い聞かせていただいておりました。
ただ、これから子どもの権利を定めることも、どのように聞くのかということも含め、多くの方に御理解いただけるようになるためには、まだまだステップがいるような気がしますので、丁寧に進めていきたいと思います。
(福永教育長)
ありがとうございました。
高校で主権者教育をする際にも、多くの生徒の意見をいかに聞いて、自分の意見を言うのも当然大切ですが、他者の意見を聞きながら、どのような取組を進めていくのが一番良いのかをみんなで考えていこう、少数の意見もどうしたら尊重できるのかを考えていこう、という話をよく聞くので、子どもたちはそのようなことも考えていると思います。
そのような取組を、多くの学校で広めていくことも大切ですし、大杉副知事や土井委員がおっしゃった、本当に困っている、訴えたい、声を出したい、と思っている当事者にちゃんと向き合える大人になっていく、スタートは保護者、親であると思いますが、それ以外にも、関係する人達が軽く受け止めてしまって、ちゃんと聞けていないことが、その当事者である子どもにとって非常に辛いことに繋がっているのではないかということを大変感じます。
ここまでの御意見等を聞いて、今後条例の検討を進めていくに当たり、子ども・青少年局の方から何かありましたら、御発言をいただければと思います。
(秦子ども未来戦略室長)
いずれの御意見も反映させていくべきものと受け止めております。
今後の検討を通じて、今おっしゃったように、中身が十分に体現された運用が可能になるように検討していきたいと思っております。
(福永教育長)
ありがとうございました。
報告事項の次期「滋賀の教育大綱」について、事務局から説明をよろしくお願いいたします。
(會田教育総務課長)
それでは、私の方から次期「滋賀の教育大綱」について御報告申し上げます。
資料3-1「滋賀県民政策コメントの結果および計画内容の修正について」をお開きいただけますでしょうか。次期「滋賀の教育大綱」を兼ねております「第4期滋賀県教育振興基本計画」につきましては、去る7月21日の第2回総合教育会議におきまして、原案を御協議いただいた後、1の実施概要に記載しております通り、7月24日から8月23日までの間、県民政策コメントを実施いたしました。その結果、11人の方々から合計39件の御意見を頂戴したところでございます。この39件の御意見につきましては、別途掲載しております資料3-2にまとめておりますが、本日は計画案に反映を図ることといたしました御意見と、修正概要につきまして御説明申し上げます。
2の主な修正箇所についてを御覧いただけますでしょうか。1に記載しております通り、今回の県民政策コメントよりいただきました御意見を踏まえまして、5点の修正を行うことといたしております。
まず1点目ですが、チャットGPTなどの生成AIを始め、人工知能が飛躍的に進歩する情勢にあり、教育にも積極的に取り入れるべきではないかという御意見をいただきましたので、この御意見を踏まえ、資料に記載しております通り、人工知能の活用についても言及することといたしたところでございます。
2点目は読書バリアフリーの取組に関しまして、視覚障害者以外の障害者もその対象となることについて明示すべきではという御意見をいただきました。資料に記載しております通り、視覚障害者等という要望について注釈を加えまして、発達障害者等も含まれる旨、明記することといたしたところでございます。
2ページです。3点目は、読書活動の推進に向けた学校図書館の活用にあたって、校長のリーダーシップを活用すべきとの御意見をいただきましたので、これを踏まえ、校長のリーダーシップに関して資料に記載の通り追記するものでございます。
次に4点目でございますが、こちらは読書バリアフリーの推進において、LLブックなどの多様な形態の書籍が対象となることを表すべきとの御意見をいただきました。これを踏まえ、アクセシブルな書籍等について注釈を加え、多様な形態の書籍としてLLブックなどを例示として記載することといたしました。
また5点目でございますが、不登校だけでなく、例えばヤングケアラーなど、学校への通いにくさのある子どもについても、教育的・福祉的な支援の対象であるとすべきとの御意見をいただきましたので、これを踏まえ対象を幅広く捉えることができるよう、資料に記載の通り表現を見直したところでございます。
以上5点いただいた御意見を踏まえ、修正を行うこととしたところでございますが、これらに加えまして、3ページに記載しております項目について、時点修正を行うことといたしております。図書館を生かしたまちづくりの推進について、施策の一つとして、子どもを真ん中に置いた図書館づくりと掲げてきたところでございますが、これまでの関係機関を交えた検討状況なども踏まえ、資料に記載しております通り「こども としょかん」の取組を明記することといたしました。修正につきましては以上でございます。
最後に今後の予定でございますが、来たる9月20日に開会いたします県議会9月定例会議におきまして、本計画の策定状況について報告することといたしております。その後、11月に開催を予定しております第4回総合教育会議におきまして、最終案をご確認いただいた後、県議会の11月定例会議に議案を上程し、議決を得た上で、本年中に策定してまいりたいと考えており、令和6年度からの施策展開にしっかりと反映したいと考えているところでございます。
説明は以上でございます。
(福永教育長)
県民政策コメント、パブリックコメントを踏まえた修正や時点修正をさせていただきましたが、何か御質問や御意見はございますか。
それでは、本件につきましては報告の通り今後進めていくことにさせていただきます。
もう少し時間がございますので、本日の子ども計画について次期「滋賀の教育大綱」等も踏まえ、皆さんから御意見がございましたら御発言いただければと思います。
(塚本委員)
今の教育大綱も含めまして、あらゆる面で、この困難な環境にある子どもたちへの配慮が盛んに取り入れられておりますので、大切な視点だと思っておりますし、当然力を入れていくべきだと思っております。ただ、「困難な」や、「多様な」「配慮で」などのような言葉でひとくくりにされるのではなく、様々な言葉を、虐待や、不登校、いじめ等、漏らすことなくしっかりと取り上げるべきだと思います。
そのようなことに焦点を当てることは素晴らしいですが、例えば、「不登校は、様々な要因や背景があり、難しい。」だけで終わっていないだろうか、ここ数年、様々な研究がされており、要因等に関する知見は集積されていると思いますので、根本解決することは当然難しく、一朝一夕にできることではないのですが、そのような知見をしっかりと拾い上げ、課題への対処から、更に社会のあり方として解決していくような、大きな具体策に踏み込める文言が出てくれば良いと思っております。
すぐに意見が出てこなくて申し訳ないのですが、先ほど申しました、子どもが付けてしまう仮面に関して、様々な抑圧を受ける環境で本来の主張を抑えてしまう、例えば家庭の中で親の要望とそれを受けてしまう子どものような、お互いが自身を抑圧しながら持ってしまう共依存のような不健全な関係性の中で、生きづらさを抱えて不登校になってしまったり、様々な要因が絡みますので、不登校という一つの事象を捉えましても、その複雑さは分かりますが、大きなタイトルや施策の中に盛り込む時に、焦点を当てているということでは終わらず、そこから先にこのような社会を作るということが具体的解決に結びつくのだということをしっかり考えていかないといけないと思いました。
(福永教育長)
ありがとうございました。
不登校という一つの事象についておっしゃっていましたが、例えばいじめという事象におきましても、友達同士、あるいはクラスメイトの中で人間関係がうまくいかない、うまく表現できない、色々なことを言われた時に、きちんと出来ないということがそのようなことに繋がったり、様々な要因を膨らませていくということに繋がると思います。
あるいは、自殺も、親と子どもの関係がうまくいかない中で、先ほどおっしゃった親の期待に対して、自分がどう向き合ったら良いのか、どう生きていけば良いのかということに悩む、そのことをきちんと相談できるような、適切なアドバイス等ができるような、誰にも相談できないということではいけないので、このような時に相談できる仕組み、より相談しやすくなる仕組みというのが、まず必要なのではないかと思っています。その次には、おっしゃっている、相談を受け更なる解決策に向けどのような対応ができるのかという繋ぎが大切になるのではないかと、御意見をお聞きし、感じました。
(土井委員)
子どもの意見を聞くということ、そして、滋賀の教育大綱の在り方についてもですが、聞くということは大変面倒なことです。聞いたことに共感できるかどうかも分かりませんし、自分の思いと違うことを言い始めると大変面倒だと思います。
しかし、それでもなお、聞くことは大変大事なことです。子どもの意見を聞くと言いますが、先ほども申し上げましたように、最初は、何となくこのように言えば良いのではないかというような意見が出てきます。本当のその子の声が聞こえてくるまでには、さらに時間がかかります。また、そこまで聞いたとしても、本当にその子自身が、自分がそう思っているのかどうかさえ分からないこともありますので、本当に聞くというのは、大変時間がかかることなのですね。
恐らく、話を聞いてもらい、また、相手の話を聞く中で自分が形作られていくことになるのだと思います。そのため、教育やこの子どもを中心とした施策において、子どもを、これは子どもに限らず大人もですが、相手を主体として尊重するということは、完全にこちらが操作できるわけではないということを認めることだと思うのです。
現在の教育施策やその他の施策等において、子どもは操作可能な対象である、という前提で、いかに効率的に計画的に操作するのか、というような話になっていくのは大変怖いことですし、気になります。
PDCAサイクルを早く回すということがよく言われますが、それは明らかに相手方が操作の対象であって、こちらが計画的かつ正しく操作すれば、その結果が出るという想定になっているのですが、教育では、それは無理だと思います。
私自身、仕事柄、よく学生にも伝えることですし、教育委員会においても申し上げたことがあるのですが、自分を超える人が育ってくれなければ、教育は失敗なのです。教員はとても辛い立場で、「ずっと自分の方が上だった。」という教員人生は、教育としては失敗であって、どれだけ自分を超えられる人間を育てられるかというところが重要であり、その意味では教員の操作を超えてくれる子が出てきて、初めて、社会は進んでいくことができるのだと思います。
教育大綱やその他にも計画が色々とあり、見通しを持って考えること自体は重要なので、その部分についてはとても大事なことだと思いますし、このように示していただいているのはありがたいことだと思います。しかし、このようなことを考えること自体に重要な面があるとすると、子どもの意見を聞く条例を作るためには、少し時間がかかっても良いので、本当に聞くということはどのようなことなのかということを、このプロセスを通じて経験していただければ良いと思いますし、教育計画はそのようなものなのだと理解して、お話を聞かせていただきました。
(福永教育長)
ありがとうございました。
(大杉副知事)
個人的には、土井委員がおっしゃった、滋賀のまちづくりや公共施設の在り方についても、また色々と御意見をいただきたいと思ったところです。
教育大綱も子ども基本条例もですが、環境づくりといいますか、どうしてもカリキュラムの中で何を効率的にするのかという逆算をしがちではありますけれども、やはり、常に申し上げている幼児教育に立ち返って、子どもたちが学ぶ場、遊ぶ場をどのように整え、子どもたち自身が主体的に色々なものを掴み取っていく場を作るという形で考えていく必要があるのだろうと思います。そのような意味での課題意識が揃う都市は強いと思いますが、恐らく学力テストの英語が平均以上ということも、英語教育をなんとかみんなで導入し、子ども達が困らないようにしなくてはならないという環境づくりを、課題意識を持って、一生懸命に取組まれたからだろうと思いますし、そのような意味では先生方自身が腹落ちする課題設定ができているのか、単に学力テストということだけではなくて、その学力テストを手段として、子ども達が自分の考えを表現する力、色々なことを自分で発信していけるのか、困難な状況の中でしっかり声をあげられるのかということにも繋がるのではないかと思いますので、そのような目で、子ども達の発達を支えるということも、課題意識を共有しながら、指摘されていることにも対応していくという、もう少し大きい目で課題設定を発表できたらと思っております。
(福永教育長)
ありがとうございました。最後に知事からお願いいたします。
(三日月知事)
本日はありがとうございました。
今日も生きることや、共に生きることの難しさ、また、その意義等を感じながら、議論を拝聴させていただきましたし、最後に土井委員がおっしゃった「社会が進んでいく」という言葉に少し反応してしまいました。私は「誰も犠牲にならない社会をつくろう」と言っています。見かけ上の数字を作るために誰かが泣いていたり、都市部が発展するために地方が廃れていったり、やはり、そのような社会の在り様は違うのではないか、持続可能ではないのではないかということを思い、滋賀からそのようではない新しい豊かさや幸せをつくれたら良いと思っています。
教育大綱の議論の時にも申し上げており、どれくらい反映できるかは、これからではありますが、分からないと言える学校をつくろう、「先生分かりません。」もしくは「助けて。」を言える社会をつくろう、ということを申し上げております。とかく強みを示せと言われる世の中ですが、弱みを見せて、弱みこそ強みだと感じられるような取組を皆さんと一緒につくっていけたらと思っています。
2つ目の議論になった子ども基本条例は、先ほど申し上げた通りですが、今日1つ目の議題である「こども としょかん」では、森さん、平松さん、お話いただき、また後半の議論も聞いていただき、ありがとうございました。この読書活動と図書館サービスは、私が知事として、県民の付託を得て県政を進める際の重視する政策テーマの一つです。
毎年、公共図書館協議会の皆さんと意見交換をしながら、どのような図書館サービス、行政をつくっていけば良いのかということを一緒に考えており、先般8月29日に森館長を始め、皆さんと貴重な時間を持つことができました。
コロナ禍においても、踏ん張って、一人ひとりに一冊一冊丁寧に手渡し届けるサービスを継続してきて下さったということに、改めて感謝したいと思います。SNSも良いですが、電子図書も大事ではありますが、人を介して本を届けることの意義を再確認いたしました。是非、これからの「こども としょかん」や図書館行政を考えていく時に、貸出冊数の多さや、県、市町立の図書館のネットワークがきちんと整っているという、この滋賀が有する強みは大事にしていきたいと思っています。
私が国会議員の時に、国会図書館に「審議が我々を自由にする」という言葉が掲げられていて、「なるほど、そうだな。」ということを、30代半ばに感じたことがあります。
また上皇后美智子様が、被災した子どもたちに絵本を届けられる、あのような取組なども、今、改めてその大事さを再確認しないといけないのではないかと思います。
全ての子どもに本を届けるという、滋賀ならではの「こども としょかん」をぜひ皆さんと一緒につくりたいです。来年度やろうと考えている、これは読書だけではなく、図書という言い方もあるのではないかというお話もありましたが、いずれにしろ、滋賀の子どもの読書活動、また図書を届ける取組を支援する、支える人を支える取組は、来年度しっかりやっていきたいと思います。
今日メディアの皆さん、議員の皆さんがいらっしゃるのか、分かりませんが、教育長とも、学校図書館の入口となる司書も、「あったらいいね。」「いたらいいね。」「でも市町のことだね。」ということで議論を止めるのではなく、何年間かけてここまでいこうという目標を持って、一歩踏み出さないかということを投げかけさせていただいております。
教育委員の皆さんも、また、現場で頑張っていただいてる皆さんもいらっしゃいますが、滋賀の図書館サービス、図書館行政を、特に、子どもという文脈で、さらにもう一段もう二段と上げていけるように頑張っていきたい、そのことが主体としての子どもの「こうやって意見言えばいいんや。」「みんなでこうやって関わればいいんや。」ということにも繋がるのではないかということを改めて、感じさせていただきました。一緒に頑張っていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
(福永教育長)
ありがとうございました。今いただきました御意見、そして本日の会議でいただきました御意見を踏まえて、知事部局、そして教育委員会、関係の皆様方がしっかり連携し、本日の議論を今後の子ども施策にしっかりと生かしてまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
それでは、以上をもちまして令和5年度第3回滋賀県総合教育会議を閉会いたします。皆様におかれましては、長時間にわたり熱心に御議論いただきました。厚く御礼を申し上げます。
本日はお疲れ様でございました。どうもありがとうございました。