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令和4年度第4回滋賀県総合教育会議の開催結果

開催日時

 令和5年1月17日(火曜日)午後3時から午後5時まで

開催場所

 県庁新館7階大会議室(大津市京町四丁目1番1号)

出席者

  • 知事 三日月 大造
  • 副知事 大杉 住子
  • 教育長 福永 忠克
  • 委員 岡崎 正彦
  • 委員 窪田 知子
  • 委員 野村 早苗
  • 委員 石井 太
  • (ゲスト)県立愛知高等学校校長 北川幹芳 他 教諭1名
  • (ゲスト)県立三雲養護学校校長 嘉瀬英紀 他 教諭1名

議題

(1)次期「滋賀の教育大綱」について

(2)県立学校のあり方について

会議録

・会議は公開で行います。上記会場にて傍聴いただくほか、Web会議システム(Zoom)のウェビナー機能(オンライン)によって視聴することができます。

【会場で傍聴を希望される方】
開催時刻までに直接会場へお越しください。
※お越しの際は、公共交通機関をご利用ください。

【オンラインで視聴を希望される方】
1月12日(木曜日)までに電子メールでご氏名、メールアドレス、電話番号(日中に連絡を取ることができる番号)を明示のうえ、事前に申し込んでください。
(傍聴申込用E-mail:[email protected]

・発熱等の症状がある方は、会場での傍聴をご遠慮願います。

・会場での傍聴にあたってはマスク着用のうえ、入庁時のアルコールによる手指消毒にご協力ください。

(福永教育長)
ただいまから令和4年度第4回滋賀県総合教育会議を開会いたします。本日の出席者につきましてはお手元の出席者名簿および配席図の配布により紹介に代えさせていただきますのでご了承願います。

本日はゲストスピーカーといたしまして、県立愛知高等学校から北川校長先生、大橋澄枝先生にお越しいただいております。また、県立三雲養護学校から嘉瀬校長先生、西堀悠里先生にお越しいただいております。先生方どうぞよろしくお願いいたします。

 なお、本日の会議は、県庁の会場とオンラインの併用で開催いたします。三日月知事、岡崎委員、窪田委員、野村委員、石井委員におかれてはオンラインでご出席いただいております。なお土井委員におかれては、都合により欠席されていますのでご了承願います。

また会場での傍聴とあわせまして、ウェブ会議システムのウェビナー機能により、オンライン視聴を実施しておりますので、ご承知おきいただくようお願いいたします。

それでは総合教育会議の開催にあたり、主催者である知事からご挨拶をよろしくお願いいたします。

(三日月知事)

それぞれお忙しいところ、ご参加いただきありがとうございます。また常日頃、滋賀県の教育行政、現場の教育に対し、それぞれのお立場でご尽力いただいていることに敬意を表し、感謝申し上げたいと存じます。

また今日は愛知高等学校の北川校長、大橋先生、さらには三雲養護学校の嘉瀬校長、西堀先生、ありがとうございます。リアルにお会いできなくて残念ですが、後ほどお話を伺えることを楽しみにしております。

今日、私は高島市の今津におりまして、北部振興のため、現場で学ぼう「北部の日」ということで、今日と明日、高島市内で現場の皆さんと意見交換させていただきます。この後は県立安曇川高校で、部活動の視察や、関係者との意見交換をさせていただきます。

学ぶことや働くこと、通学も含めて、この地域の振興にとってとても大事ですので、ぜひこの北部振興の中で、学びの充実を中心課題として位置づけて、振興策を皆さんと一緒に考えてまいりたい、実行に移してまいりたいと思いますので、教育委員会の皆さん、どうぞよろしくお願いいたします。

コロナとの付き合い、闘いはちょうど3年になりました。今も多くの方が罹患され、医療現場、福祉現場では懸命にご奮闘いただいております。教育の現場、保育の現場もそうです。皆様方に心を寄せ、療養中の方につきましては1日も早いご回復をお祈り申し上げたいと存じます。

先般、地域の子どもたちと話すことがあり、中学校3年生、高校3年生の皆さんはこの3年間、小学校や中学校の卒業式から、中学生活、高校生活、全てコロナ一色でしたと。私達の学生生活を返してほしいという話がありました。胸が痛みました。

様々な事が中止になりましたが、そのことによってわかったこと、気づいたこと、学んだことがあると思いますので、ぜひこの3年間の取組を検証、総括しながら、今後の感染症対策において、学びや育ちが阻害されない環境を皆さんと一緒に作っていかなければならないと考えております。

せっかくの機会ですので、3点申し上げて、後の議論、また教育大綱の議論に繋げたいと思います。

1点目は、常々申し上げていることですが、教育委員会に初めて来た方や、初めて聞く方がいらっしゃるかもしれませんので、繰り返しになるかもしれませんが、私の教育観について、お話ししたいと思います。

滋賀県知事として有権者から与えられた負託にしっかりと応えるべく、この教育行政は私が重要な政策の柱に据えている一つであります。したがってこの総合教育会議には、大杉副知事共々参加をして、事前にどのようなテーマを議論していくか、また議論いただいたことなどへのフォローも含めてしっかりと関与して参ります。

ただ、知事として与えられている大権、大きな権力は謙虚に行使いたします。教育の独立性や中立性、現場の自由な気風などは、多様性も含めて大事にしたいと思いますので、この点をまず共有させてください。

2点目に、「子ども、子ども、子ども」と私は最近強く申し上げて、政策の充実を図らんとしております。「子ども、子ども、子ども」と、三つ重ねて言っています。「教育、教育、教育」と、20年前に第三の道を模索した政治家であるアンソニー・ギデンズが言ったことと対照的に、「子ども、子ども、子ども」と申し上げております。

その含意は、一人ひとりの全ての子ども、存在主体としての子どもという位置づけが一つと、社会の一員としての子どもという位置づけと、未来の希望という意味での子どもと、三つの思いを込めて、子どものために子どもと共につくる滋賀県を追求しているところです。

学ぶことや育つことを社会全体で応援していくことについて、言葉だけ、メッセージだけではなく、具体策も含めて、皆さんと一緒に形づくっていきたい、充実、改善していきたいと思っております。

そのために、例えば確かな学力について、これは学力保障ということも含めて大変大事な要素ですが、ややもすると、学力テストの平均正答率や、その序列だけで語られがちな学力観を脱却して、例えばその根底にある「学ぶ力」や、その基礎となる「読み解く力」について、現在の大綱に基づいて様々な取組をしておりますが、こういう取組をさらに発展させていきたいと考えております。

最後に3点目、今年に入って私が強調しておりますのは、弱さを大切にしたいということです。とかく強いとか、これだけ大きいとか、これだけいいということを強調しがちな昨今ですが、私自身、皆様自身、学校の先生、一人ひとりの子どもたちも、弱さというものを大切にして生きてみませんか、暮らしてみませんか。

 逆説的な禅問答のような言い方ですが、実は弱さが強さなのではないか。「わかった」ということが言えて、そのことが広まっていく教育は大事にしたいですが、「わからない」と言える教室、「教えて」、「助けて」と言える雰囲気や環境を大事にできる滋賀県でありたいと思います。

先生が子どもに対して「わからない」と言うことも大いに結構。知事が県民に対してわからないことは「わからない」と、怖いものは「怖い」と言うようにしようと思います。このコロナとの闘い3年間で学んだことの一つです。

ぜひ皆さん、今日議論いただく教育大綱の議論を含めて、今私が申し上げたことについても心を寄せていただいて、様々な知見やご経験を寄せていただければ幸いでございます。

限られた時間ですが有意義なひとときになりますことをお祈り申し上げて、私の言葉とさせていただきます。

(福永教育長)

ありがとうございました。それでは、早速でございますが、本日の議事に入りたいと思います。まず議題の1番目は次期「滋賀の教育大綱」についてです。事務局から説明をお願いいたします。

(教育総務課長)

 <資料に基づき説明>

(福永教育長)

ありがとうございました。

それではこの後は事務局から説明がありました大綱の素案に基づき、意見交換を行ってまいりたいと思います。

例えば素案の基本目標、サブテーマ、全体的な方向性、またそれぞれの政策や取組の内容に関して、皆様からご質問、ご意見等をいただきたいと思います。

(石井委員)

柱 2「学びの基盤を支える」で展開する施策の(1)「教職員を支え、教育力を高める」の項目について、支援していくスタンスを取ることについては、大いに賛同いたします。ICTを含めた大きな変化にさらされて、現場でご苦労されている教員をサポートすることが求められていると思います。

今週の新聞でも、教育現場が疲弊していることについての特集記事がありました。全てを真に受けるわけではありませんが、厳しい現実が垣間見えました。ですので、知事が取り組まれているように、率先垂範して、いわゆる三現主義として、現場、現物、現実を重視して、接点を貪欲に広げていただき、頑張っていただきたいと感じます。

(福永教育長)

ありがとうございました。

今の学校現場の実態を踏まえ、現場の実態をしっかり見た上で、実態に合った取組を進めていくことが大事でございます。今後具体的な施策の中でしっかりと打ち出していきたいと思います。

(野村委員)

柱 2(4)「学びを円滑につなげる」について、以前に、「幼稚園期の様子を見ていると、小学校での様子がわかる」とおっしゃっていた先生がおられましたが、就学前の教育や保育が非常に大切だと感じます。

それと関係して、柱 3(2)「地域社会で学びをつなげる」の家庭教育が大切になってくると思います。

集団生活に入る前の家庭教育の中で、外へ出て行っても大丈夫だという安心感や勇気が子どもの中にしっかりと形成され、そして集団の中で他の人たちと交わりながら成長していくことがとても大切だと感じています。

「みんなで学びに関わる」ことについては、部活動を初めとして地域に求められる教育力がとても大きくなってきていると感じています。

八日市養護学校に伺ったときには、たくさんの子どもたちが放課後デイサービスに引き続き通所されていましたし、子ども食堂や地域スポーツクラブなど、子どもたちの居場所作りに力を入れておられる団体がたくさんあると思います。そういった団体が安定した運営ができるための支援をすることで、家庭教育を含めた学びの推進を図っていきたいと感じました。

(福永教育長)

就学前教育や家庭教育、そして子どもたちの放課後の受け皿に対する支援、対応のあり方については、深堀りして、場合によっては大綱における表現を拡充して、取組に繋げていく必要があると感じました。

多くの皆様に放課後の子どもたちを支えていただいていると感じています。

(岡崎委員)

滋賀らしさという意味では、サブテーマで「三方よし」が明確に謳われたことで、滋賀県で暮らす子どもたちが滋賀の伝統を学び、また友達や家庭の中においても、自分だけが良ければいいのではなく、相手や周りに気を配れる教育を進めることに繋がればよいと思います。滋賀発祥の言葉ですので、ぜひ浸透させたいと思います。

もう一点、このコロナ禍でICT教育を充実させるための環境整備が急激に進んだと思います。子どもたちは既に当たり前に機器を使いこなせると思いますが、先生方もこのICTやDXに流されるのではなく、使いこなして、働き方改革や教育の充実を推進する取組に繋がればよいと思います。

その点について、県としてもさらに一層推進していく姿勢を、大綱に落とし込んでいただいていますので、ぜひ進めていただきたいと思います。

(福永教育長)

ありがとうございます。

岡崎委員がおっしゃった滋賀ならではの大綱を策定し、取組を進めていくこと、またICTを使いこなせる状態に持っていくことが非常に大切だと思っています。その点については、様々な施策に繋げるように考えたいと思っております。

(大杉副知事)

コロナを経て、子どもたちが関わる場所の意義が、そこに行けない場面が出てきたことで再確認されたと思います

学校に関しては学びの場であると同時に、当然ながら生活を支える様々な福祉的機能を担っていたということ、また反対に福祉で整備されている様々な居場所も、同時に学びの場であったということです。

そういった意義が再確認される中で、今回の素案は両方の面から配慮いただいています。県ではこれから知事のアイディアのもと、子ども条例の策定を進めていくことになりますが、それに先立って必要なポイントを盛り込んでいただいていると思います。

今回、方向性として学習者主体が盛り込まれていますが、子どもたちの学び方には一人ひとり特色、特性がある中で、学校でみんなで学ぶことを、どのように考えていくのか。この点について、ICT活用を含めて実現している教室を見ると、従来の学び方とは大きく違う学び方をされていますが、みんなで学ぶことの意義も踏まえた学び方がたくさん生まれているので、そういったことをしっかり考えていくことが必要な段階に来ていると感じています。その上で必要な点をこの素案にはしっかり盛り込んでいただいていると思います。

細かな点ですが、気になった点を挙げさせていただくと、一つは「〇〇化に対応した」という言葉です。例えば「グローバル化に対応した」「情報化に対応した」という記載があるのですが、社会に開かれた教育課程という観点からは、目指すところは、社会の変化に受身で対応することではなく、よりよい学校教育を通じてよりよい社会をつくることに、学校発信で取り組むことであると思います。

そういう意味では「〇〇化に対応した」という言葉では、変化に対して受身で取り組む印象ですが、そうではなくて、教育にはそういった変化をより良い方向に持っていくことができる可能性がある、という前提で考えていきたいと思います。

次に市町との関係について、国および市町と連携することが記載されています。これまでは、様々なモデル事業を実施し、事例を横展開することで改善を図るというストーリーで推進してきましたが、様々な状況によって取り組みたいが取り組めない、ハードルを抱えた市町もあると思います。市町が主体的に計画を立て、実現することで、課題解決する能力を向上していくサポートについても考えていく必要があると思いますし、そのために必要な手当てに関してはしっかりとしていくことも大事だと思います。

また、滋賀らしさについて非常に強く位置付けていただいています。私自身も滋賀に来て、滋賀らしい学びの良さを感じているところですが、滋賀に住んでいるとなかなか気づかないこともあると思います。滋賀で学ぶことの良さ、例えば体験活動が充実していることについても、住んでいると当たり前になって気づかないこともあるので、外とも繋がりながら、滋賀の良さを再認識していくことも大事だと思いました。

(福永教育長)

ありがとうございました。おっしゃったように、受身でなく、自ら取り組んでいく姿勢をどのように表現できるか、検討してまいりたいと思います。

現在は素案の段階でございますが、今いただきました様々なご意見、特に現場の状況を踏まえたものにしていく必要がありますし、繋がることの大切さや、滋賀らしさ、これも繋がるという部分があると思いますが、こういった点にしっかりと取り組んでいきたいと思います。

あわせて、こども家庭庁ができる中で、子どもたちの放課後の居場所や活躍の場を確保し、教育委員会だけでできないものは連携をうまくとりながら、進めていくことが大事だと思っております。

それでは、知事から全体についてお願いいたします。

(三日月知事)

ありがとうございます。教育長に総括していただきましたように、現場の大切さ、家庭を含めた就学前の大切さ、滋賀らしさ、ICTを使いこなせることなど、委員の皆様方からいただいた視点をさらに盛り込みながら、素案からよりよい案に昇華させていきたいと思います。

また、大杉副知事がおっしゃった、受動ではなく前向きに捉えた取組は大事だと思います。そして滋賀らしさについては、今回「三方よし」という打ち出しをしています。

そしてもう一つ、私がこの教育大綱でこだわっているのは愛、愛情です。この愛情をもって取り組む教育、自分に対する愛もそうですし、周りの人、子どもたちに対する愛もそうですが、今回、この愛を大事にしたいです。コロナも経験したからこそ、より大事にしたい心根として持っていますので、ぜひこれからそういった思いも含めて、皆さんに伝わるように説明、紹介をしていきたいと思います。引き続きよろしくお願いします。

(福永教育長)

ありがとうございました。知事が最後におっしゃったように、この大綱が滋賀の教育現場で働く全ての人の共有のものとならないと、実効性が出てまいりませんので、その点も今後さらに工夫をしていきたいと思っております。

それでは本日いただきましたご意見等を今後の計画案に反映させるとともに、来週予定されております滋賀県教育振興基本計画審議会においてもご審議いただくこととしておりますので、そちらの方でもご意見を伺いたいと思います。

 それでは議題(1)は以上とさせていただき、続きまして議題(2)の「県立学校のあり方について」に移らせていただきます。

まず県立高等学校に関して、取り巻く状況や課題を踏まえた今後の目指す姿について事務局から説明させていただきます。

(魅力ある高校づくり推進室長)

<資料に基づき説明>

(福永教育長)

ありがとうございました。

続いて、特別支援学校に関して、副籍制度や分教室の設置に関する研究について事務局から説明願います。

(特別支援教育課長)

<資料に基づき説明>

(福永教育長)

ありがとうございました。それではただいまから学校現場の取組についてご発表いただきたいと思います。

 まず県立高等学校に関しまして、愛知高等学校の事例について発表いただきます。それでは北川校長先生、大橋先生よろしくお願いいたします。

(愛知高等学校北川校長)

<資料1ページ>

愛知高等学校と、併設されています愛知高等養護学校の校長をしております北川と申します。同席しておりますのが、教育相談や通級を担当しております大橋澄枝教諭です。よろしくお願いいたします。

本日は発表の機会をいただき、感謝しております。地域連携、通級を軸にした生徒の居場所ある学校作りということで、この居場所というのがキーワードだと思っております。そのあたりについて簡潔にご説明したいと思っております。

大きくは愛知高校の現状をお話しして、地域連携の成果と課題、そして通級指導における成果と課題、それから愛知高校の将来展望についてお話し申し上げます。

愛知高校は明治43年に開校し、令和元年には創立110年を迎えた地域の学校です。しかし昭和の終わりくらいから、いわゆる荒れた学校になり、なかなか厳しい状況が続いておりました。生徒からは例えば「愛知高校にしか行けなかった」とか、「恥ずかしくて愛知高校に通っていると言えない」という声もあったと聞いています。

<資料2ページ>

歴代の校長先生をはじめとした先生方のご努力によって立て直しが図られることになるのですが、その取組を大きく4つ挙げております。

1点目が少人数習熟度別授業の展開です。現在1、2年生は3クラスで定員120名ですが、それを4クラスに拡大して、1クラスあたりの人数を少なくしています。さらに英語、数学では習熟度別の授業を取り入れて、一人ひとりに目が届く指導を展開しました。

2点目に学校の特色化・魅力化の推進として、音楽コースを平成6年に、体育コースを平成12年に設置しております。また平成26年度からは文部科学省の研究指定を受け、高等学校における個々の能力・才能を伸ばす特別支援教育事業を実施しました。それに基づいて、平成30年度から通級指導を行っております。また昨年度からは手探りではありますが、日本語指導についても試みを始めております。

3点目に、インクルーシブ・スクールとして、平成25年に敷地内に愛知高等養護学校が開校しました。制服も一緒ですし、入学式、卒業式、文化祭、体育祭等の多くの行事や、部活動、生徒会等も協力してやっております。回数としては多くありませんが、一緒に学習する機会も設けております。そういった取組によって雰囲気が変わってきた部分があると思っています。

最後の4点目は生活指導。生徒指導ではなく、生活指導です。当たり前のことですが、元気に笑顔で挨拶ができること、遅刻がないこと、時間が守れること、そして何より雰囲気が大きく変わったのは、携帯電話の電源を授業前に切り、教室の前にあるモバイルボックスと呼んでいる箱に入れて、授業中は携帯を触らないことが定着してきたことで、スマートフォン、携帯のトラブルは現在皆無になっております。

そういった取組を受けて、概ね落ち着いた学校生活を送っています。目に見える形では、例えば生徒指導案件は令和元年度には39件、46人を指導しましたが、昨年度は14件、17名、今年度は12月現在で、11件、14名であり、大きく減ってきております。高校生が全体としておとなしくなってきている傾向もありますが、これらの取組が影響しているのではないかと思っています。

<資料3ページ>

今後さらに愛知高校を良くしていくための取組として、今日のテーマとしております地域連携について、具体的にいくつかお話ししたいと思います。

資料の写真ですが、創立100周年のときに「地域共学」という立派な石碑が、愛知高校の今後の方向を示すものとして建てられました。

取組は大きくは4点あり、まず「プレジョブシップ」は地元の愛荘町商工会と連携協定を結び、3年生の就職希望者全員が地元企業で就業体験をさせていただくものです。残念ながらコロナで近年行われていませんが、これは大きな特徴だと思います。

他には、町と連携しての主権者教育、そして令和2年度からは学校運営協議会で多くの委員の方々に指導助言をいただいています。また音楽コースが地域へ出て行き、地元の音楽会で発表する機会を設けています。

あわせて、今回深くは触れませんが高等養護学校の生徒も地元の方々にお世話になっています。

<資料4ページ>

簡潔にまとめておりますが、様々な地域連携の取組を学校で行い、積極的にホームページ等で情報発信を行っていくことで、地元の見方も大きく変わってきています。「愛知高校は最近落ち着いてきたのではないか。」「生徒が頑張っている」と言っていただけるようになってきました。そういった地域の温かい目が生徒の自己肯定感の向上に繋がっていく好循環を生み出しつつあるのではないかと考えております。元々、愛知高校は地域の学校としてかわいがってもらってきましたが、生徒の様子が良くなってくるにつれて、さらに改善されていると思っています。

ただ、課題としては地域連携にあたっての教員の負担、中には経費がかかるものがありますので、それをどのように捻出するか、また生徒支援とのバランスが課題となっています。生徒支援とのバランスと記載しているのは、地域連携の事業も大事ですが、一方で教育的な課題を抱えた生徒がおり、そのバランスをどう取っていくか。地域連携ばかりを前面に出すのではなく、生徒の支援にどのように取り組むのか、そのあたりが大きな課題だと思っております。

<資料5ページ>

続いて、通級指導については平成30年度から週1回、放課後に個別指導を行っています。これについては新入生のオリエンテーション等で案内をして受講者を募集します。1年生全員について様々な情報を収集、集約して通級の対象になりうる生徒を絞り込み、さらに保護者、本人の希望を考慮してアセスメントを行い、指導を行うことになります。

今年度については2年生2名の指導を行っており、主にライフスキルやソーシャルスキルの育成や定着を図っております。2名は少ないと思われるかもしれませんが、生徒、保護者の同意が必要であること、また原則1対1の対応になるため人数に限りがあることを考慮しますと、多くの生徒を対象にすることがなかなか難しい状況だと考えています。

ただ、通級指導によって学校に来られるようになった、もっと早くに学校をリタイヤしていたかもしれない生徒が卒業までたどり着き、そして就職していった、あるいは進級、進学していったということが出てきています。そういったことを考えますと、少人数ではありますが、通級の成果が確実に表れてきていると考えています。

また文部科学省の研究指定の中で、14項目にわたる授業のユニバーサルデザインに取り組みました。例えば黒板の付近に不要な掲示物を貼らない、チョークの色を考慮する、わかりやすい指示を心がけるといったことを、年度初めに教員に徹底しています。

そういったことで全ての生徒が勉強しやすく、「わかった」を積み重ねてもらえる授業が展開されていると考えています。

<資料6ページ>

通級指導における課題は、今申し上げたように原則1対1の指導ですので、人数に限界があること、そして保護者の同意が必要であることです。また外国籍の生徒が増えている中で、単に日本語能力が不足しているだけなのか、発達に課題があるのか、その見極めが非常に難しいです。また通級指導に加えて日本語指導の必要性も高まってきています。高校の現場ではまだ日本語指導のノウハウはそれほど蓄積されているわけではありません。本校も担当の教員が定時制の教員の助言を受けて指導している現状です。これらが通級指導上の問題であると考えています。

<資料7ページ>

通級指導が困り感を抱えた生徒の支援になることは言うまでもありませんが、通級だけで全てが解決するわけではないと考えています。先ほど居場所についての話がありましたが、近年の生徒の状況を考えてみますと、例えば日本語指導が必要な生徒、家庭での虐待、ヤングケアラー、家庭の経済状況が厳しい、家庭内の人間関係が困難であるといった、解決すべき課題が多く見られますし、それらが重複しているケースも少なくなく、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー、市町の福祉関係、警察、教育集会所の先生方等、外部との連携が必須であることは言うまでもありません。それぞれのケースに応じてその生徒にとって何が適切であるか見極めることが必要になってきています。

最後に愛知高校の将来の展望についてですが、今回のテーマに挙げました生徒の「居場所」、学校に来てほっとできる、自分らしく生活ができる、友達と仲良く元気に活動ができる、そういった雰囲気が醸成されつつあると思います。今後も地域に根ざして地域と支え合う学校を目指してまいります。そして何より生徒自身が生涯学び続ける姿勢を身につけてほしいと願っています。

愛知高校は卒業生の7割から8割が地元の企業へ就職していきます。進学希望者も多くが県内の学校へ進学することを考えますと、これから地域で生涯を通じて生活し、やがて結婚もするかもしれませんし、お父さん、お母さんになるかもしれません。そしてまたその子どもたちが地元を支えていくことになりますので、地元に誇りを持ち、地域の発展に貢献できる人間を育成することが愛知高校の使命なのではないかと考えております。

地域連携と通級指導を通じて、生徒の居場所ある学校作り、そういった学校を基盤として穏やかに生活を送って、そこから自分らしく生きていく、自分と向き合って自分らしい人生を送れる、そういう素地を作っていければと考えております。説明は以上です。

(福永教育長)

北川先生ありがとうございました。大橋先生には、この後、皆様との意見交換の中でご発言いただければと思います。

続きまして三雲養護学校から副籍、分教室についてご発表いただきます。嘉瀬校長先生、西堀先生よろしくお願いいたします。

(三雲養護学校嘉瀬校長)

<資料1ページ>

三雲養護学校の嘉瀬と西堀でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

本日は今年度より始まりました副籍の取組および平成30年、平成31年に取り組みました分教室研究についてご報告いたします。

<資料2ページ>

まず本校の概要です。本校は小学校1年生から高校3年生までの知的障害と肢体不自由の児童生徒が対象の学校で、湖南市柑子袋にある本校の他に、県立石部高校の中にある高等部単独の石部分教室、また本校から20キロほど離れた甲賀市信楽町の紫香楽病院併設の紫香楽校舎と、3ヶ所に校舎がある学校です。

今年度5月1日現在の在籍児童生徒数は335名でございます。開校して40年余りの学校ですが、これまでで最も多い在籍数となっております。

<資料3ページ>

本校における副籍の取組についてご説明いたします。まず副籍の取組状況です。副籍に取り組んでいる小学部において、今年度、副籍を希望している割合は全体の22%となっています。

<資料4ページ>

こちらは今年度の交流授業の実施回数です。直接的な交流は3学期実施予定を含めて延べ47回になります。

1年生についてはまず学校に慣れることが大事ですので、2学期からの実施としております。2年生以上は要望により、多くても学期に1回、年間3回の実施としております。

また間接的な交流として、交流を行っている児童の様子を掲載した通信を月1回発行し、副籍校に送付しています。

<資料5ページ>

ここからは実際の取組事例について説明いたします。交流授業の事前学習として、養護学校の教員が副籍校に出向いて出前授業を行いました。養護学校についてクイズ形式で紹介したり、児童の紹介として、頑張っていること、大きな声が苦手であること、早く歩くことができないことや、関わりの際に気をつけてほしいことなどを伝えたりしました。

この出前事業の成果としては、副籍校である小学校の児童が交流授業を楽しみにしていたことや、また交流授業当日に養護学校の児童へ配慮すべきことなどを、よく覚えて関わっていたことなどが挙げられます。

<資料6ページ>

こちらは小学校1年生の学級での1回目の交流授業の事例です。養護学校の児童は初めての場所では緊張し、見通しが持てないことで気持ちが落ち着かなくなる実態があることから、毎日朝の会で歌っている歌を交流授業に取り入れるとともに、副籍校である小学校から提案のあった「さんぽ」の曲を週1回授業で取り入れて、交流授業当日を迎えました。

<資料7ページ>

こちらは交流授業当日の様子です。左側の写真にあるように、しばらくは緊張してあちこちに気持ちが移っていたのですが、「ともタッチ」という曲が始まると、安心して副籍校学級の全員とタッチすることができました。

<資料8ページ>

こちらはそれぞれの担任の評価です。養護学校の担任は、大勢の中で交流ができるか、始まるまでは心配していましたが、当日の様子を見て安心し、2回目の交流授業では、他の取組もできるのではないかと期待を持って思いを巡らせています。

また、この「ともタッチ」という曲は養護学校の児童だけでなく、副籍校である小学校の児童にも楽しめる題材であったことから、交流授業のテーマ曲にしていくこととしました。

<資料9ページ>

先ほどと別の事例ですが、担任や保護者から聞き取った、交流授業を通した児童の様子です。

 上段の4年生男児の保護者からは、帰宅後に嬉しそうに振り返る様子について、また下段の1年生女児の保護者からは、交流授業で取り組んだ粘土で夢中になって遊んでいた様子について、それぞれ記載がありました。

<資料10ページ>

こちらも同様に音楽の授業を通して楽しんでいる様子について記載がありました。

<資料11ページ>

こちらは交流授業後の保護者の感想です。特に右側の感想のうち、上から三つ目、四つ目については、副籍を進めるにあたっての課題であると認識しています。

今後どのような取組を作り上げていくのか、副籍校である各小学校と考えていかなければいけないと感じています。

<資料12ページ>

次に本校が副籍校になる場合について報告いたします。

今年度は甲賀市立小学校3年生の肢体不自由の児童が副籍を置きました。

<資料13ページ>

取組の経過でございます。小学校児童の保護者の希望で、2学期からの交流授業を計画していましたが、児童の体調不良により実施ができておりません。

 間接交流として運動会の新聞をいただきましたが、本校の児童の実態から、直接交流の直前に示した方が見通しを持ちやすいということで、教室にはまだ掲示しておりません。

<資料14ページ>

それぞれの交流授業の目標です。先ほどの特別支援教育課の説明の通り、小学校に籍がある児童については、教育的ニーズに応じたきめ細かな支援や、専門的な指導を受ける機会を確保するために、必要に応じて特別支援学校に副籍を置くことができるとされておりますが、この児童に関しましては、専門的な教育を受けるだけでなく、集団で活動したいというニーズがありましたので、認知面の課題が近い学級に副籍を設定しました。

<資料15ページ>

 ここからは、副籍の取組を持続可能なものとするために、養護学校、小学校双方の教員が見通しを持つこと、また双方の学校にとって、教育的効果を実感できることが大事であるとの視点で示しているものです。

スライドの通り、副籍に関わる者が年間の見通しを持てるように、年間スケジュールイメージを共有することとしました。

<資料16ページ>

また交流授業についても、見通しを持てるようにしました。最初の両校顔合わせの際にこちらの交流授業、年間計画シートを使い、大まかな計画を立てるようにしました。交流授業の実施時期や学習活動などを年度初めに押さえることで、双方が交流授業に意識を向けることができるようになりました。

<資料17ページ>

こちらは事前事後の打ち合わせシートです。交流授業後に交流授業の評価や課題を互いに押さえることは、それぞれの児童を適切に評価することはもちろんのこと、交流授業を通して児童の学びを確認し合うことが、教員が児童や自身の学びの効果を実感でき、次の実践に主体的に取り組むことに繋がると考えています。

以上のように、持続可能な取組の工夫は教員側の負担感を減らし、手応えを感じながら続けていくことで、双方の児童の学びに繋がっていくと考えております。

<資料17ページ>

前のスライドで示した打ち合わせシートを活用したことで、学習活動で行う上で必要な、図のようなサイクルを副籍の交流授業においても当たり前にしていく素地ができたのではないかと考えております。

<資料18ページ>

双方の児童がそれぞれの目標を示した交流授業の実践を経ることで、同じ授業でも、それぞれの学びになることを実感した小学校の教員が、特別支援学級の児童が通常の学級でどのような学びができるのかという視点を持つことに繋がっていくものと考えております。

<資料19ページ>

副籍の取組を進めるにあたって、今後大事にしなければならないと考えていることをまとめたものです。

 一つ目の「児童の卒業後の姿を見通し、長期的な目標をもって」の部分ですが、この副籍の取組は、単年度の取組ではなく、1年1年、交流授業一つ一つの取組の積み重ねが大事だと考えております。

現状では、小学部段階での取組になりますが、児童の高等部卒業後の姿を見通すとともに、地域での生活についてイメージをしっかりと持ちながら、長期的な見通しで交流授業を見ていく視点が必要になっています。

また、二つ目、三つ目についてですが、この副籍の交流授業はその場を一緒に過ごせることだけがねらいではなく、障害のある子も、障害のない子も共に同じように楽しみ、手応えを感じられる授業を設定していくことが大事です。

保護者からの感想にもありましたが、養護学校の児童がお客さんになるのではなく、お互いの児童に焦点を当て、どういう授業を作っていくかという視点で養護学校、小学校双方の教員が話し合い、理解しようとする意識を深めていくことで、この副籍の取組がより確かなものになると考えております。

<資料20ページ>

最後に、本校で平成30年、平成31年に行った地域の小・中学校への特別支援学校分教室設置に関する研究の取組について説明いたします。

研究の目的および研究の内容はスライドで示した通りです。

<資料21ページ>

 こちらの図は、特別支援学校と小学校における各学びの場を示したものになります。小学校には通常の学級、特別支援学級、仮の分教室そして特別支援学校本校があります。

特別支援学校への就学要件を満たす児童2名を含む3名を、分教室の在籍と仮定し、児童の分教室での姿、黒矢印で示した特別支援学級や通常の学級との交流および共同学習での姿を通して、児童の実態に合った指導、支援のあり方について検討いたしました。

<資料22ページ>

この分教室設置に関する研究から得られたこととして、一つ目は、小学校教員が小学校に在籍する障害のある児童への合理的配慮について考えを巡らせる機会を新たに得ることができたことが挙げられます。

 また、この分教室の教育課程の特徴である小学校との交流および共同学習について、意義あるあり方を検討し続けることが必要と明らかになりました。

また教員全体の特別支援教育への意識を高めることが大切であり、各学びの場の教員同士の連携強化が必須であることが挙げられました。

<資料23ページ>

小学校に分教室が設置される場合、一つの学校に、通常の学級、特別支援学級、そして特別支援学校と三つの学びの場ができることになります。

この環境は各学びの場の児童同士の交流はもちろんのこと、教員同士が学び合える機会を生み、小学校に通うどの児童も生き生きと学びあえることを目指す視点、インクルーシブ教育システムの構築への第一歩になると言えるのではないかと、本研究では結んでおります。

以上で、今年度より始まりました副籍の取組、および分教室設置に関する研究についての報告を終わります。

(福永教育長)

ありがとうございました。西堀先生には後ほどのやり取りの中でご参加いただければと思います。

それではこれまでの説明や発表を踏まえて、意見交換に移らせていただきます。先ほどの発表等についてのご質問でも結構でございます。皆様からご意見をいただければと思います。

(岡崎委員)

愛知高等学校の北川校長先生に伺いたいのですが、先ほど通級指導で今年度は2名の対応しかできなかったとご説明がありましたが、学校側としては現在の状況から、本来ならば通級指導したい生徒が他にもおられるのでしょうか。そのために先生方がどの程度不足しているのか、お聞かせいただければと思います。

 

(岡崎委員)

愛知高等学校の北川校長先生に伺いたいのですが、先ほど通級指導で今年度は2名の対応しかできなかったとご説明がありましたが、学校側としては現在の状況から、本来ならば通級指導したい生徒が他にもおられるのでしょうか。そのために先生方がどの程度不足しているのか、お聞かせいただければと思います。

(愛知高等学校北川校長)

今年度は2年生の2名を対象としていますが、1年生には日本語指導という形で別の教員が指導に当たっている生徒がおり、その日本語指導についても、日本語だけではなく、ソーシャルスキルトレーニング等も行っておりますので、内容としては通級指導を行っていると言ってもいいのではないかと思います。

先ほども申しあげました通り、原則1対1の指導になりますが、現在特別支援の専門的な知識を持った教員は隣におります大橋1名です。現在、校種間交流で愛知高校に来て、中心になって取り組んでくれていますが、大橋1名ではやはり対応できる子どもの数に限界があります。

では、教員がたくさんいれば対応できるのかと言うと、それも難しいところがあります。例えば他府県ではグループで指導していたり、一つの学校ではなく、複数の学校で集まって指導を行っていたりすると聞いていますので、対象の生徒を増やすために様々な試みをしていく必要があると思っております。

(岡崎委員)

まだ様々な課題があることは理解できました。多様な学びを支えるという意味では、手厚くできるのが一番よいと思いました。

(福永教育長)

今のご質問に関して、北川校長先生から、例えばグループ指導や複数校指導の事例のお話がありましたが、大橋先生から見て、実際に指導しておられて、そういった手法を取ることのメリットや、反対に課題があれば教えていただきたいと思います。

(愛知高等学校大橋教諭)

通級指導を担当しています大橋です。グループで指導することができれば、コミュニケーションスキルを互いに練習することができる等、指導の幅が膨らむので、取り組むことができればよいと思います。

ただ、通級指導を受けていることを人に知られたくない生徒もいますので、グループ指導することについて生徒がどのように考えているかという点や、放課後の生徒たちの過ごし方は様々ですので、毎回来ることができるかといった点を考えると、まだ踏み切れていない状況です。

(福永教育長)

ありがとうございました。確かにメリットもありますが、子どもの思いをどのように考えるかという課題があると思います。

(窪田委員)

愛知高等学校には、教職大学院の学生が見学させていただいたり、田畑教頭先生に授業に来ていただいて、学生がスマホを入れるボックスを実際に見せていただきながらお話を伺ったりして、お世話になっております。

 愛知高校のご報告の中でインクルーシブ・スクールという言葉が出てきていて、とても大事なことだと思いながら聞かせていただきました。資料では高等養護学校が併設されていることを中心に書かれていましたが、ご説明では、少人数指導や習熟度別指導、また一人ひとりの生徒を取り残さないように、校内で通級指導を行っておられることや、日本語指導が必要な生徒にも学校の中でできる対応をされていると伺って、そういった取組を全て含めて、インクルーシブな学校として誇っていいのではないかと思いました。

大橋先生にお聞きしたいのですが、小学校や中学校の場合は、通級が各学校に一つの教室しかなくても、特別支援学級があることで、特別支援教育について教員同士の連携が取りやすいと思います。現在校種間交流で勤務されて、通級を校内で1人で担当される中で、例えば研修の機会や先生方との連携について、また様々な中学校から愛知高校に進学してくる生徒がいると思いますので、中学校との連携等について、悩んでおられることがあれば、お伺いしたいと思います。

続いて三雲養護学校ですが、副籍と分教室については私もいろいろなところでお話を伺っています。とても大事な、先駆的な取組だと思います。

現在は副籍を希望しない子どもの方が割合的に多い状況ですが、その理由や、どういったニーズがあって、あえて副籍を希望しないのか、わかる範囲で教えていただきたいと思います。

また、先ほど肢体不自由の児童の事例では集団で活動する機会の保障について話がありましたが、副籍や分教室の取組を通じて特別支援学校だからこそできることや、改めて特別支援学校の良さとして大事にしていきたいことがあれば教えていただきたいと思います。

最後に、今後本格的に分教室の取組を実施していこうとする場合に、三雲養護学校の分教室が小学校の中にできることで、例えば顔合わせができることや、日常的な活動で物理的な障壁をクリアしやすいと感じられるのはどの程度の規模でしょうか。

もちろん子どもたちの人数にもよると思いますが、特別支援学校の分教室として運営していくために、例えばどの程度の教員が必要であるといったことなど、これまでの取組によって具体的に見えてきたことがあれば、お伺いしたいと思います。

(愛知高等学校大橋教諭)

県内で通級を担当しているのが1人ですので、相談できる人がなかなかいないのですが、前任の担当者が細かい資料をたくさん残してくださっていますし、文部科学大臣の指定研究の際の資料に目を通して、どのように進めていけばよいか、自分なりに解釈して取り組んでいます。

研修については、校内の特別支援コーディネーターを兼務しておりますので、教育委員会の研修に参加したり、全国の高校通級の担当者の協議会が特別支援教育総合研究所で毎年9月に開催されていて、参加させていただいたりしています。そこで、京都府や兵庫県といった近隣府県の先生方と意見交流したり、オンラインだったのが残念な点でしたが、宮崎県や神奈川県等の取組を聞いたりする機会がありました。

研修の機会は少ないですが、この3年間、参加させていただくことで本当に勉強になりますし、新しい気づきもあり、良い機会をいただいております。

中学校との連携については、今年の夏休みに、東近江市から依頼を受けて、通級について話をさせていただく機会があり、そこでは彦根市の中学校の通級指導を担当されている先生と私で、中学と高校の通級について話をさせていただきました。実際に通級指導を担当されている先生と直接お話をして、中学校の通級の内容を知る機会をいただきました。その中学校の先生とは、その先生が担当された生徒が本校に来て対象者となったこともあって、電話等で日々の相談等ができましたので、そういった点では恵まれていたと思っています。ただ、まだまだ私自身が勉強不足なところもありますので、これからも日々学んで子どもたちに還元したいと思っています。

(三雲養護学校嘉瀬校長)

まず、副籍を希望しない理由や事情については、確認していません。ただ今後、この副籍の取組を伝えていくことを通して、この副籍への理解をさらに進め、できるだけ希望者が増えるようにと思っています。ただ副籍は強制するものではありませんので、保護者の方とうまく連携しながら、取組について伝えていきたいと思っております。

次に特別支援学校だからこそできることや良さについてですが、この副籍については特別支援学校だけではできませんので、副籍校である小学校と一緒に作り上げていかなくてはならないと思っております。そういった意味ではお示ししたシートや打ち合わせをさらに充実させるということが大事だと思っています。

今年はまだ初年度であり、意義について十分に浸透できていない部分がありますので、交流授業後にどういった学びができたのか、担任同士が共有していくことが大事であると思っています。この事後の打ち合わせがより充実することが、今後の副籍の取組が充実するための一つの手がかりになると感じています。

最後に分教室の規模感についてですが、子どもたちの集団をどのように作り上げていくのかが、一つのキーワードだと思っています。ただ、認識面でどういった課題に迫られるのかが、一つの大事な要素だと思っていますので、その点がクリアにならないと、十分なお答えが難しいところです。

(石井委員)

愛知高校の地域連携について、プレジョブシップで商工会との連携を図られましたが、メリットはどのような点でしょうか。そして今後、商工会等に期待したいことを教えていただきたいと思います。

もう1点、三雲養護学校の資料で、「副籍の取組、今後に向けて」とありましたが、現代社会が抱える課題について、意義のあることが記載されていると感じました。経済界としても、障害者雇用という非常に社会的な要請がある中で、そこに繋がってくることであり、真摯に学んでいかなければならないと感じました。

(愛知高等学校北川校長)

新型コロナウイルス感染症の影響で、私が校長になってからプレジョブシップは実施されておりません。状況が変わってきましたので、企業の方に伺っていますが、なかなか就職希望者全員分の受け入れがなく、違う形を考えております。

ただ、プレジョブシップは2日間ではありますが、地元の企業でお世話になることで、地域で見守ってもらっている、助けてもらっているという意識を生徒に持たせることができたと聞いています。

また企業の方からは、愛知高校はなかなか厳しい学校でしたが、実際に生徒が来てみると「一生懸命に頑張ってくれる」、「挨拶もできる」と、愛知高校を見直していただき、再評価していただける点で、大きな効果があったと思っています。

来年度も企業側の受け入れが厳しい状況であり、工夫していかなくてはなりませんが、ぜひとも継続していきたいと考えています。

(野村委員)

愛知高校のご説明で、通級指導によって就職や進学、進級ができたことが、成果として上がっていると伺いましたが、課題として、生徒や保護者の同意が得られないとの話がありました。

保護者の方が通級指導に同意をされない理由にはどういった例があるのか、教えていただきたいと思います。

(愛知高等学校大橋教諭)

保護者の方のお考えも様々です。本校への入学前に支援計画や指導計画の引き継ぎを断られるケースがあったり、作成自体を拒まれているケースもあったりします。生徒についても「自分には障害なんかない」と言うケースがあります。

現在通級指導している2年生2名や、過去に卒業していった生徒の場合は、保護者の希望があった生徒です。対象となった生徒は、担任から保護者に通級の話をして、快く承諾していただいたり、保護者懇談に私が同席して、通級指導で、放課後1時間ほど一緒に勉強しませんかと、お話をした生徒です。入学時に実施した困り感アンケートで、コミュニケーションに困っているといったことを受容して、はっきりと書いたり、他人に話したりしてくれる生徒を今は対象としています。

通級指導を拒まれる場合には、放課後に来てくれないケースが過去にありましたので、今は少ない人数ですが、同意したうえで来てくれる生徒を指導しています。

(岡崎委員)

通級指導を受けたおかげで子どもたちにも改善が見られ、成長でき、就職することができるといった、良いサイクルができて、保護者の方の理解や生徒のモチベーションに繋がっていけばよいと思います。

(福永教育長)

ありがとうございました。一定の成果が見えてくることは大事だと思います。

それでは知事よろしくお願いします。

(三日月知事)

北川先生、大橋先生、嘉瀬先生、西堀先生、とても大切な取組を地道に作り続け、積み重ねていただいていることに心から敬意を表します。

短い時間のご説明でしたが、そのご苦労や今後に向けた志、意気込み、また課題提起が伝わってきました。しっかり受け止めさせていただきたいと思います。

愛知高等学校のご説明について、先ほど校長先生から、発達の課題なのか、日本語能力が不十分なのか判断が困難であるとのお話がありました。また、大橋先生にお答えいただいたように、本人の同意が必要だけれども、「自分は大丈夫」と拒まれることや、また岡崎委員のご意見にあった、卒業後の生活や進路にどういった影響があるかということについて関連して、2点質問があります。

一つは出身中学校との連携についてです。個別の支援計画や個別の指導計画の引き継ぎを含めた中学校との連携をどのように改善すればよいのか。

もう一つは、発達に支援が必要なのか、それとも日本語教育をすればよいのかという点について、もちろん現場でいろいろとご対応をいただいているのですが、専門家によるアセスメントの必要性をどのように感じておられますか。

(愛知高等学校北川校長)

日本語指導自体が高校の現場でまだ十分に確立されていないところがあります。日本語指導は国語の教師がやればいいのではないかという意見を持つ教員もいるのですが、国語の指導と日本語指導とは全く別のものですので、今後日本語指導にどのように取り組んでいくのかが大事だと思います。

愛知高校が非常に恵まれておりますのは、高等養護に特別支援の先生がたくさんおられるので、例えば教育相談委員会等を合同で開いておりますが、その場で具体的にいろいろなアドバイスが得られることは非常に助かっています。単に情報共有するだけでなく、具体的にどうすればよいのか、どこと連携すればよいのか、何が問題なのか、明確に示されるので、教育相談委員会が非常に充実していると思っております。

(愛知高等学校大橋教諭)

出身中学校との連携がうまくできていると、私一人ではなくて高等養護学校の先生に相談して、ケース会議のようなことをしたりすることができます。

ただ、連携や資料の引き継ぎについては、市町によって大きく差があります。ある市町は資料をいただき丁寧な引き継ぎをしていただける一方で、もっと知りたいことがあるのに、何もいただけない場合もあります。

当然、中学校の実態もそれぞれ違いますので、そこまで手がつけられていない状況もあると思いますが、必要な場合には管理職を通じて、または私が窓口になって、直接連絡をして情報を聞くことがあります。

また卒業後の進路についても、引継ぎを希望される場合は資料を作成して引き継ぎに行った生徒もおります。また卒業後に向けては、とにかくわからないことを思い切って聞ける人になろうと指導しています。失敗やわからないことを隠すのが社会に出ると一番よくないことで、社会的自立においても求められる点だと思いますので、良さを生かしながら、わからないところはヘルプが出せるようになることを心がけて指導しております。

(三日月知事)

ありがとうございます。今おっしゃった、県内市町ごとのいろいろな差、もちろん学校の事情などもあると思いますが、この中高の繋ぎですね。これは以前から課題認識しておりましたが、このテーマにおいても大変重要な課題があると認識いたしました。

(福永教育長)

それでは、大杉副知事から全体をお聞きになって、ご意見等ございましたらお願いします。

(大杉副知事)

ありがとうございました。大切な取組をお聞かせいただきました。北川校長先生のご説明については、先ほど知事からご指摘がありましたが、専門家との繋ぎに関しては、この分野を様々な大学が研究していたり、アセスメント指標を開発していたりするところとの連携の可能性を、今後探ればよいのではないかと思います。今後の課題としてしっかり受け止めていきたいと感じました。

 嘉瀬校長先生に一つ質問させていただきたいと思います。幼稚園の段階で積極的に知的障害のある子を受け入れて、そうでない子と一緒に生活する園を何度か訪問させていただいたのですが、子どもたち自身が、この仲間で、どういう遊びを工夫したら楽しくなるか考えながら、一緒に生活しているのですね。それを見ていると、この子たちが大人になって地域で一緒に生きていく姿が浮かんできました。発達の段階ごとにできることと、できないことがあると思うのですが、発達の段階ごとで必要なアプローチ等について、感じておられることがあればぜひお聞かせください。

(三雲養護学校嘉瀬校長)

やはり発達というところを一番大事に捉えていかなくてはならないと思っています。小学校1年生段階では、小学校の子どもたちと養護学校の子どもたちの違いがまだ大きく見えないので、一緒に取り組むことができるのですが、学年が上がっていく中で違いがどんどん見えてきて、保護者の方もどのような思いを持っておられるのか、しっかりと私達自身がサポートしていかなくてはならないと考えております。

ただ、課題が違うから副籍ができないのではなく、いずれは地域に暮らしていく子どもたちですので、発達の課題に関わらず、どういった取組が必要なのか追求していく必要があると感じております。

(福永教育長)

様々なご意見をいただいたところでございますが、予定の時刻が近づいてまいりましたので、ここで知事から、総括的に本日のテーマについてご意見がございましたら、よろしくお願いいたします。

(三日月知事)

せっかく両校の先生方にお越しいただいたので、知事や教育委員会にこういうことを言いたい、やって欲しいということがあればお願いします。何を言っていただいても結構です。

(愛知高等学校北川校長)

私は3年間、愛知高校と愛知高等養護学校の校長をさせていただき、今年度末でひと区切りがつきます。この3年間の総計、総括をせよ、ここまでやってきたことを発表せよということで、知事からこういう機会を与えていただいたと思い、今日の会議は非常にありがたく思っております。

 要望ということではありませんが、3年間で気がついたのは、通級や様々な学校の取組から、どうしても漏れる生徒が何名かいる、自分が困っているということにすら気がついていない生徒がいることに気がつきました。

そういった取りこぼしがない、1人も漏らさないことが大事だと思っております。そのようなことをこれからも考えていきたいですし、皆さんにも考えていただきたいと思っております。ありがとうございました。

(三雲養護学校嘉瀬校長)

今年副籍に取り組んで感じているところですが、養護学校には先ほど説明しましたように、小学部、中学部、高等部があります。ただ、副籍に取り組んでいるのは小学部だけです。ですので、中学部、高等部の先生方は、副籍をどのようにやっているのか知りたいのですが、なかなかわからないところがございます。

その点で、学校の中でもっと共有していかなくてはならないと思っています。

そこは特別支援学校だけでなく、相手である小学校でも同じで、小学校で副籍を実施しているところは分かるのですが、他の学年は全く知らないというところもあります。そこをどのように共有していくのかが課題だと思っております。今後副籍を展開していく上で、どのように解決していくのか、我々ももっと考えてまいりますが、知事、教育委員会にも考えていただけますとありがたいと思っております。

(福永教育長)

ありがとうございました。今おっしゃられたことは非常に大きな課題で、一部の人だけが知って、取り組んでいるのではなく、滋賀県におられる一万数千人の先生方の共通の取組にしていくことが大事だと思っています。

知事、それではよろしくお願いいたします。

(三日月知事)

ありがとうございました。

先生方のお人柄がにじむお話をいただいたことを、私もしっかりと受け止めたいと思います。

その上で、今日両校からご提起、ご紹介いただいたことは、私も冒頭申し上げましたし、一つ目の議題である教育大綱にも繋がるのですが、一人ひとりの児童生徒、全ての児童生徒の学びの保障をどのようにしていくのかということに繋がる取組です。同時に、地域社会の一員である一人ひとりの育ちをみんなでどのように応援していくのか、高等学校、高等養護の中でどのように取り組むのか、地域の小学校とどのように繋いで、分教室や副籍を作っていくのかという取組だと思います。

今も最後に、お二人の校長先生からありましたように、本当は受けた方がいいのだけれど、取組から漏れてしまっている児童生徒の課題や、小学校では実施されているけれど、中高に行ったときにどうなっていくのか、また中高の繋ぎの課題、このあたりを両校の取組も教訓としながら、今後さらに滋賀県全体で作る際の検討材料にさせていただきたいと思っております

あわせて、先ほど石井委員からもありましたように、地域の企業や事業所との繋がりですね。卒業後の進路との兼ね合いもございますし、こういった取組を学校内の先生方で対応しようとすると担当の先生が大変ですし、費用の工面が必要であることを考えると、人的、資金的な支援をしっかりとして持続可能なものにすることも重要だと思います。

私は多文化共生できる、外国籍の人たち、子どもたちとも一緒に暮らしていける滋賀でありたいと思っておりますので、この日本語指導については、高等教育レベルにおいてもさらなる充実を図ってまいりたいと思います。

今申し上げたことについては、今日いただいたことを材料にしながら、さらに教育委員会でも、私自身も含めて検討させていただいて充実に向けた取組を思考してまいりたいと思っております。

また、三雲養護学校では施設面でもご苦労いただいていると聞いています。教育委員会でも課題認識して、すぐに全ては難しくても着実に改善できるように取り組もうとさせていただいておりますし、また機会があればずいぶん良くなって、生徒の皆さんもキラキラ輝き始めている愛知高校の方にも伺って、生徒の皆さんと交流する機会を探りたいと思います。

本当に今日はお忙しい中、このような学びの機会をいただいたことに心から感謝申し上げて、引き続き一緒に頑張ることをお誓い申し上げて、私の言葉といたします。ありがとうございました。

(福永教育長)

知事ありがとうございました。

全ての子どもが、そして全ての滋賀県の人が活躍できる社会を作っていくことが私にも課せられた役割だと思っております。特に企業の皆さんと連携をして、中学生、高校生、そして特別支援学校の生徒たちが社会に出る準備をするための受け皿として様々な形でご協力をいただけると大変嬉しく思いますので、その点につきましては、経済界の皆様方にしっかりと呼びかけていきたいと思っております。

それでは以上で、令和4年度第4回滋賀県総合教育会議を閉会いたします。

長時間にわたり熱心にご議論いただきまして誠にありがとうございました。

お問い合わせ
子ども若者部 子どもの育ち学び支援課
電話番号:077-528-3456
メールアドレス:[email protected]
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