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令和3年度第4回滋賀県総合教育会議の開催結果

開催日時

令和4年3月25日(金曜日)午前10時30分から午前12時まで

開催場所

県庁東館7階大会議室

出席者

  • 知事 三日月 大造
  • 副知事 中條 絵里
  • 教育長 福永 忠克
  • 委員 土井 真一
  • 委員 岡崎 正彦
  • 委員 窪田 知子
  • 委員 野村 早苗
  • 栗東市立栗東中学校 校長 安土 憲彦

議題

・コロナ禍における学校の対応と課題について

会議録

(福永教育長)

それでは定刻となりましたので、ただいまから令和3年度第4回滋賀県総合教育会議を開催いたします。本日は皆様お忙しい中、年度末にお集まりいただきありがとうございます。

本日は「コロナ禍における学校の対応と課題について」をテーマに意見交換を行って参りたいと考えております。

本日の出席者につきましては、石井教育委員が欠席でございますが、知事、中條副知事、石井委員以外の教育委員の皆様に御参加いただいております。またゲストスピーカーといたしまして、栗東市立栗東中学校の安土憲彦校長先生にお越しいただいております。どうぞよろしくお願いいたします。

本日の会議は会場とオンラインの併用で開催させていただいておりまして、三日月知事、岡崎委員、野村委員におかれましてはオンラインでの御出席でございます。また会場での傍聴とあわせまして、ウェブ会議システムを活用してオンラインでも視聴いただいておりますので御承知おき願います。

それでは開会にあたりまして総合教育会議の主催者である知事から御挨拶をお願いいたします。

 

(三日月知事)

皆様おはようございます。今日もお忙しい中、御出席いただきましてありがとうございます。また常日頃、滋賀県の教育行政にそれぞれの立場で御指導いただいておりますことを感謝申し上げます。

安土校長先生ありがとうございます。また教育長へのご就任おめでとうございます。引き続き県と市町で教育行政を連携して頑張って参りたいと思います。

新型コロナウイルス感染症の感染者数の状況は、なかなか下げ切れない状況ですが、だんだんわかってきたこともありますし、おかげさまで滋賀県の皆さんが協力し合って、お互い気をつけながらも、社会、経済、文化、教育活動と感染症対策を両立していく取組を継続することができております。

これまでのことを教訓にしながら、次の第7波に向けても、より賢明な対応が取れるように努めて参りたいと思います。

年初から「子ども、子ども、子ども」と、子どものために、子どもとともに歩む県政をつくろうということを申し上げているところでございます。子ども、子ども、子どもです。子どもというとやはり教育というのは極めて重要なテーマになって参ります。ICTを活用しながら、一人一人にとって最適な学びを確保することも大事ですし、障害のある子ども達の教育環境についても、特別支援学校で教育を受けていただくということも大事なのですが、地域の学校を選択される際には、それを選べるようにする、副次的な学籍制度も本格的にスタートすることになりますし、魅力ある高校づくりというテーマでの議論もさらに前に進めていくこととなります。令和9年開校を目指して滋賀県初の高専設置に向けた準備も鋭意進めているところでございます。

また、何より学校にいる先生や来る人も含めて、みんなが笑顔になるということが大事なのではないかと。住みやすさですとか、働きやすさ、さらにはいろんな人に学校に関わっていただく取組を試行していこうということで、笑顔あふれる学校づくりプロジェクトというものを来年度から本格的に動かしていくことになりました。育休産休の取りやすさや、病気などへの寄り添いが叶う学校づくりを行っていきたいと思っております。

今日は今年度最後の総合教育会議ということで、これまでのことを振り返りつつ、特にこの2年あまりのコロナ禍における学校での様々な対応について、悩みも含めて、今後どのように考えていけばいいのか御議論いただくこととなります。

もちろん感染症は危機、苦難ではありますけれども、ある意味ではいろんなことを見直していく、考え直すきっかけ、転機にもなりますし、これまでできなかったことをやるチャンス、好機にもなると思います。

ぜひ今日は栗東中学校の様々な取組に学びながら、これからの学校づくりについて一緒に考えていきたいと思います。限られた時間ですが、今日もどうぞよろしくお願いいたします。

 

(福永教育長)

ありがとうございます。よろしくお願いします。

それでは早速、議事に入らせていただきます。先ほども申し上げましたが、本日は「コロナ禍における学校の対応と課題について」をテーマに進めて参りたいと存じます。

進行でございますが、まず初めに教育委員会事務局から、学校におけるコロナ禍の対応、成果と課題について説明を行い、続いて安土校長先生から、学校現場における取組状況について御発表いただきます。

これらの説明等を踏まえた上で、コロナ禍における、今後の取組の方向性について皆様と意見交換を行いたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いします。

それではまず事務局から説明をお願いします。

 

(幼小中教育課長)

事務局から学校教育におけるコロナ禍の対応の成果と課題について御説明を申し上げます。まず小中学校の状況につきまして、学習面、生徒指導、学校行事について御説明させていただきます。

まず学習面につきましては、学校と児童生徒が繋がりを持ち、学びを継続していくために、GIGAスクールのコンピューター端末を活用し、臨時休校時には自宅に持ち帰った端末で同時双方向のオンライン授業を実施したり、学校から学習課題を発信するなど、多くの学校で活用することができるようになってきました。

生徒指導につきましては、臨時休業中に教員やスクールカウンセラー等が電話等を活用して児童生徒や保護者に相談対応してきましたが、相手の状況により即した対応を行うため、オンラインの活用の必要性も見えてきたところでございます。また、虐待等の問題に適切に対応するため、課題のある児童生徒の背景や支援策について、スクールカウンセラー等の専門家を交えて協議、研修を行うことで、教員の指導力の向上を図り、学校再開後に虐待の通告件数が増えるなど、早期発見、対応に繋がったところでございます。

学校行事につきましては、卒業式や入学式において、体育館には卒業生もしくは入学生と保護者のみが参加し、在校生は教室でオンライン参加するなど感染対策を取った上で実施いたしましたが、やはり在校生と心を通い合わせる時間が限られたとの課題もあったところでございます。

次のページをご覧ください。学校行事の中止縮小をせざるを得ない状況の中、子どもたちが主体的に新たな活動を考える場面が多くありました。8月には、中学校の生徒会を対象にオンライン交流会を開催し、学校や地域のためにできることについてアイデアを出し合い、生徒会の活性化を図ることができました。

また、東近江市の小学校では、子どもたちが意見を出し合い、コロナ禍における避難所を想定し、保護者や地域のまちづくり協議会の協力を得ながら、校内で宿泊体験を実施したところでございます。こうした修学旅行の変更の取組については一過性のものとならないよう、成果と課題を検証し、今後に向けて何を選択し、何を増やし、逆に何を省くのかを検討する必要があると考えております。以上でございます。

(高校教育課長)

県立高等学校の状況について説明をさせていただきます。資料は4ページと5ページでございます。

まず、コロナ禍での学習状況でございますが、多くの学校でICTを活用して、タブレットやTeamsを利用した授業改善が進んでいきました。

今後の課題といたしましては、令和4年度から1人1台端末が整備されますので、さらに効果的にICTを使った学習ができるよう研究を進めていくことが課題でございます。

続きまして学校行事等でございますが、コロナ禍で、体育祭、学園祭等を中止した学校が相次いだ中で、虎姫高校では、校長先生が一度中止をした学園祭を、自分たちでできることをやろうということで、生徒会が中心になって、中庭で開催した事例もありました。さらに草津東高校の学園祭では医療従事者へのメッセージを出すという取組があり、生徒の自主性、主体性が育まれたという成果がございました。

次に資料5ページを御覧いただきたいのですが、海外修学旅行や海外実習が相次いで中止となる一方、オンラインによる海外交流が進みました。

台湾との交流を行った膳所高校、さらにはバングラデシュやインドの高校と交流を行った守山高校や彦根東高校といった学校がございます。また今日、明日の実施になりますが、彦根東高校では彦根東サイエンス国際フォーラムを開催し、アジアの高校生と交流をしております。世界の高校生が繋がる状況が生まれたことも、新しい成果であったと思います。

また、社会に対する貢献としては、資料5ページに写真を載せておりますが、彦根工業高校では「断みつくん」を作ってくれました。伊吹高校の書道部では地域応援メッセージの懸垂幕を作成しました。

こういった、新しい学びのあり方や教員の教え方など新しい工夫を加えるいい機会になったととらえております。以上でございます。

 

(特別支援教育課長)

続きまして県立特別支援学校の状況について報告させていただきます。資料は6ページになります。

学習面におきましては、特に特別支援学校で重要となりますコミュニケーション指導において、相手の口の動きや表情に注目させる必要がありますが、コロナ禍にあってマスクを着用すると、そうした指導が難しくなることから、フェイスシールドやマウスシールドを特別支援学校の自立活動の時間や聾話学校では日常的に使用して対応しました。言語の指導においては聴覚情報だけでなく、視覚情報の重要さを改めて認識したところでございます。

学校行事の面では、学校間交流や個別の居住地校交流で、双方の子どもたちが直接出会い、触れ合う交流をすることが教育的効果も高かったのですが、感染拡大予防の観点から相手校に出向くことが難しくなり、手紙や作品等の交換といった交流に加えて、オンライン会議システムで画面を通した学習発表など、交流する機会を創出して参りました。

これまで体育館など広い会場での交流では、にぎやかすぎて落ち着いて参加できなった子どもが、それぞれの教室で大きな画面に映し出される相手の子どもたちの様子に注目して参加できるなどの効果も報告されています。

最後に特別支援学校ならではの事項として、スクールバスでの登下校がありますが、登下校時の密の解消対策として、増便対応することで乗車率を減らすことができましたので、令和4年度も引き続き対応して参りたいと考えております。

また、感染した時に重症化リスクの高い医療的ケアが必要な子どもたちは、地域の感染状況に応じて保護者の方が登校を控えさせる場合も多いことから、特に学習機会の保障としてオンライン学習に継続して取り組んでいます。一方で、ケアをされる学校看護師の方が濃厚接触者になって出勤できない等のケースも想定されますことから、感染が拡大したときに、場合によっては代替の看護師確保が必要となることも危惧されるところであり、その対策については今後も考えていきたいところであります。以上でございます。

 

(福永教育長)

 ありがとうございました。

それでは続きまして、栗東中学校の安土校長先生から御発表をよろしくお願いいたします。

(安土校長)

本日発言の機会を与えていただきました栗東市立栗東中学校の校長安土憲彦です。よろしくお願いします。

私からはこのコロナ禍の中、マイナス面ばかり取り沙汰されていますが、逆境をプラスにということで、本校が取り組んだ三つの内容についてお話をさせていただこうと思います。

後でまた説明をさせていただこうと思いますが、私が校長になってから、本校は「仲間力で繋がる」のスローガンで取り組んでいますので、それをキーワードに進めていきたいと考えております。

高等学校の推薦試験を受ける3年生の子どもたちに、12月ごろ面接練習を校長室でやっております。そこで質問をすると、修学旅行、体育祭や文化祭などの学校行事、そして部活動、この三つがやはりベスト3の思い出として残っています。しかしながら修学旅行も延期や中止、短縮になったり、体育祭や文化祭も中止もしくは縮小されています。

部活動については長期の活動停止になったり、最後の夏の大会が親善試合になったり、秋の大会がなくなったりしました。

要するに子どもたちが今まで主体的に頑張っていた活動が学校からなくなってきている状況であります。

本校はコロナ禍以前からですが、特別活動を中心としたこのようなテーマ(資料5ページ)で校内研究に取り組んでいます。

ちょうど国立教育政策研究所の指定も受けて、特別活動を軸にしていきたいと考え、特に学級会でのいろんな問題についての話し合い活動を中心に学校を変えていこうと考えております。

これが学級会の場面です(資料6ページ)。学級の課題について話し合っています。子どもたちは本当に話し合いが大好きです。学級の課題や自分たちがやりたいこと、みんなで取り組みたいことを熱心に話し合っています。

今年はその力を利用して、本校の体育祭である栗中祭を、生徒と教師が実行委員会を組織し、コロナ禍でもできる競技種目や内容を決めていきました。これが実行委員会のメンバーです(資料7ページ)。

今までなら生徒会で話し合ったことを、生徒会担当の教員から職員会議に提案していましたが、子どもたちが考えるのは一部分で、我々教師主導でほとんど決めていました。それを実行委員会のメンバーが同じテーブルに着き、対等に話し合う形に変えました。そこで決まった内容はすんなりと職員会議に通ります。これが会議の様子です(資料8ページ)。これを数回開催しました。今年の栗中祭に向けても、スタートしております。

このプリントは子どもたち、書記の生徒が書いたものです(資料9ページ)。

課題点や、それについてどのようにしたかをまとめたものです。このプリントはそれぞれのクラスにも配布されますし、我々教員にも配られます。話し合いの過程を双方から見ることができます。決して先生が一方的に決めているのではなく、何とか栗中祭をやりたいという思いをお互いの視点で伝え合い、合意形成していきました。

そういった背景をみんなで共有し、生徒と教師の協働により、願いを実現することができました。これが栗中祭の振り返りです(資料10ページ)。詳しくは生徒会新聞にある子どもたちの振り返りを、読んでいただければと思います。

今までは当日は楽しかったとか、競技で勝ててよかったという感想ばっかりでしたが、今回は栗中祭ができたことの背景をみんなが知っているので、クラスの成績のことよりも、生徒会代表への感謝の気持ちばかりです。

これが栗中祭の様子なのですけれども、青空のもと、子どもたちのはじけるような笑顔が印象的な栗中祭を開催することができました。

本校には強力な地域からの支えがあります。10数年前は学校が大変落ち着かない状況でした。そこで栗中サポーターという組織ができまして、そのメンバーの方々がコロナ禍でも学校を支えてくださっています。

卒業式には立派な花を活けてくださったり、学校農園で野菜を栽培していただいて、それを販売した収益で学級文庫を買っていただいたり、あるいは夏場に部活動ができずにグランドに生えていた草を刈っていただいたりしました。

また、コロナ禍でトイレの掃除をなかなか子どもたちができなかったんですが、PTA役員の方に自ら来ていただいて、トイレ清掃などをやっていただきました。これはPTA役員の方に浴衣の着付けをやっていただいているところです(資料11ページ)。

本校では3年ほど前から「仲間力で繋がる」をキーワードとしてPTA改革も進めています。特に今年、昨年は総会等もできなかったのですが、これを一つのチャンスととらえて、学校が主体となって一緒に変えていこうという形で進めています。

この四つの内容について改革を進めました(資料12ページ)。

役員の方と話をしていると、役員選挙は、どのように次のメンバーを決めていくか、どの地域からどのように選出していくかについて、大変な苦労があると言われています。また任意団体ですので、加入したいのか、したくないのか、意思をしっかり確認して欲しいという思いがあります。

中学校のPTAを重荷に感じている方はおられるのですが、実際役員になっていただけると、学校の様子がわかり、新たな出会いも生まれてよかったと言っておられます。また、実際に除草作業の案内をさせていただくと、本当に多くの保護者に参加していただいています。

改革として、毎年PTAの入会届を提出していただき、専門部をなくして役員の数も大幅に削減しました。本校は広報部や厚生部、会員研修部等、いろいろな部があり、地域委員の方を含めると、100名以上の役員の方がおられたのですが、

今年は本部役員6名のみでPTAを運営しています。

ここにも書いていますが地域委員、それぞれの地域の支部組織も廃止しました(資料14ページ)。役員選挙も支部から出るのではなく、完全な立候補制としています。本校のPTAのポイントとしては、できる時に、できる人が、できる範囲でやることにしています。無理してやる必要はないのではないか、ということをモットーにやっております。

先ほど説明したPTA改革は私たちの業務改善にも繋がっています。専門部会が開かれるときは夜に会合が持たれますので、担当の先生方は残らないといけません。PTAの専門部なくすことによって、私たちのこういった仕事も減るわけです。

それとPTAの専門部の中に広報部という組織がありました。主な仕事は年3回発行するPTA広報誌です。この広報誌を今年、生徒会に業務委託しました。

PTAと生徒会がコラボし、子どもたちの感性で記事をまとめて発行し、全家庭に配布しました。もちろん予算はPTA持ちです。今までの生徒会新聞とは違いカラー刷りのため、子どもたちも大変喜んでいます。

その他にも校内研究や生徒指導の担当者などに、若い教員をどんどん積極的に活用しています。それに合わせて人材育成を本校では図っています。

写真は、毎週校長室で開催している校内研究の推進部会の様子です。(資料15ページ)。20代後半から30代前半の教員で、私は特活ファイブという名前を付けているのですが、そういったメンバーが本校の屋台骨である特別活動や校内研究を進めてくれています。

このグラフは本校の超過勤務を表したものです(資料16ページ)。注目して欲しいのはこの9月のところです。大幅に超過勤務が減っています。これはコロナの罹患者が増え、部活動を1ヶ月間停止したからです。そしてこの表を1月の職員会議にかけて、次年度の夏場の部活動の時間を短縮しようと提案しました。職員の中には子どもたちが楽しみにしている部活動の時間を減らすことに反対意見もありました。しかし一方で、「そういえば去年の9月は部活がなかったから、勉強がしんどい子どもに教える時間が持ててよかった」とか、「部活がない分、不登校の子どもの家に行って話すことができた」、「余裕をもって教材研究ができた」などの意見も多く出ました。コロナ禍によって働き方を見直すきっかけにもなったと思います。

ICT活用もコロナ禍で大きく進みました。必然的にオンラインを活用しなければならない現実に迫られ、9月あたりに研修の時間がたくさん持てたので、オンライン授業ができるルールづくりなどについて、我々教員が学習する時間も増えました。そういった研修ではコンピューターやSNSに長けている若い先生が中心に講師を務めてくれたことも大きな成果だと思います。

先ほど校内研究の話をしましたが、学校の課題に直結できる研究はやはり学校を活気付けます。このグラフは3年前、本校が校内研究に話し合い活動を取り入れる以前のグラフです(資料18ページ)。この研究をやろうと決めたときの意見なのですが、「子どもたちだけで話し合い活動をできるわけがない」という意見が大半で、肯定的な意見は26%、4分の1ぐらいしかありませんでした。

次に昨年12月にとったアンケートです(資料19ページ)。実に91%もの教員が肯定的な意見を持っています。この研究をやってよかったと、ほとんどの教員が振り返っているのです。研究を進めることで子どもたちの変容が実感でき、さらに教師のモチベーションも高くなってきました。

最後に、私たちは「子どものため」という呪文をとなえながら、何でもやってきました。上限はありません。しかしこのコロナ禍で、実際にできないことがでてきました。それがこれまでの取組を見つめ直す機会になったのではないかなと思います。不必要ではないかと判断したものは勇気を持って復活させない。スクラップしていくことが大事なのではないかと思います。

「逆境をプラスに」ということで、この2、3年本校が取り組んだ内容を、もちろんその以前から取り組んできた内容も踏まえて、説明をさせていただきました。ありがとうございました。

(福永教育長)

安土校長先生、どうもありがとうございました。

それではまず事務局と栗東中学校の安土校長先生から発表がございましたが、この発表、説明に対して御質問がございましたら、お願いいたします。

 

(岡崎委員)

説明ありがとうございました。

安土校長先生にお伺いしたいのですが、見通しのある話し合い活動を生徒たちが進められるようになった成長の元といいますか、コロナ禍という環境が自然と成長させたのか、学校で取り組まれた施策が生徒たちにプラスに働いて、生徒たちの改革、変化が生まれたのか、その点についてお分かりになることがありましたら、教えていただきたいと思います。

 

(安土校長)

この研究はコロナ禍の有無に関係なく、以前から進めています。コロナの影響というよりも、本校でももちろん体育祭や文化祭はあるのですが、それ以外にこの話し合い活動によって、子どもたちが主体的に活動できる場が保障できました。

すなわち、自分の意見が学級の課題を直すために必要とされていると感じられる部分によって、コロナ禍でも、子どもたちが欲求不満にならず、学校で主体的に活動できる場面を多く作ることができ、乗り切れたと感じています。

 

(岡崎委員)

ベースにこれまでの先生方の地道な研究活動があり、コロナ禍をきっかけとして生徒たちがいろいろとディスカッションできていると思いました。

自分の意見が通るとか、考えを述べることによって、子どもたちにとってプラスの結果が出ることで、自信を持ってきたことが伺えました。

 

(野村委員)

安土校長先生ありがとうございました。

地域からの支援について教えていただきたいと思います。栗中サポーターの方々がたくさんの活動をしてくださっているのは、やはり先生方のご努力を地域の方がしっかりととらえられているからではないかと思います。そのため、どういった部分をフォローすれば先生方が助かるのか、理解されていると思います。こういった下地は、もちろん先生方と地域の方のコミュニケーションがあるからこそだと思うのですが、地道に努力されてきたことや、気にかけてこられたことがあれば教えていただきたいと思います。

 

(安土校長)

先ほどの説明でもあったのですが、本校には栗中サポーターの方々が30名ぐらいおられます。メンバーは、卒業生の保護者や地域の方が当然多いのですが、学校が少し荒れたときに学校に来ていただき、ごみの掃除や壊れたところの修繕をやっていただきました。

その頃から、学校を隠す、守るというよりもオープンにしました。とりあえず来てくださいとお願いして、どんどん地域の方に学校に入っていただきました。我々教員も地域の方に見られているから、いい加減なことはできません。子どもに一生懸命、真摯に向き合っている姿も地域の方に見ていただきました。今まで学校が閉じていた場合は批判ばかりでした。学校はどうなっているのか、という声が多い時もありました。

でも直接先生方の頑張りを見ていただいたり、学校に入って子どもの現状を見ていただくと、大半の子どもはみんな頑張っています。

そういった姿を地域で発信して、見てもらって、サポーターの方が地域に帰ったときに、学校の先生も頑張っている、大半の子どもが一生懸命授業を受けているということを宣伝してもらえることは、学校としても非常にありがたいです。

また、サポーターの方々は結構年配の方が多いのですが、こうして学校に来て子どもたちと一緒に接するのが生きがいになっているという声もあります。そういった部分でお互いに楽しい部分を共有しながら、活動しているところです。

 

(野村委員)

ありがとうございます。私も地域の方から学校の様子をお伺いすることがありますので、地域に還元していきたいと思います。

 

(窪田委員)

貴重な実践報告ありがとうございました。

子どもたちがコロナ禍で変わったというよりも、コロナ禍という逆境をばねにして、子どもたちが元々持っていた潜在的な力を、学校が引き出されたと思いながら聞かせていただきました。今までやってきたことをスクラップするというのは、校長先生にとってもとても勇気のいることだったと思いますし、先生方にとってもいろいろ葛藤があったと思うのですが、この何年かの取組を通して、校長先生の目から見られた先生方の変容として感じられることがあったら、ぜひ教えてください。

 

(安土校長)

話し合い活動は、小学校では結構熱心に取り組んでおられます。でも中学校になると、年齢的なこともあって、なかなか自分の意見を言うことは厳しいだろう、また子どもたちに任せたら脱線するのではないかという不安もあります。

でも案外、子どもたちは自分の声でしっかりと言いたい、あるいは友達の意見を聞いて良い方に進めたい、という気持ちは僕らよりもあったと思います。それを我々教員が知ったことで、先ほどの円グラフに出ているような先生方の実感にも繋がってきているのだと思います。

また子どもたちの中で司会を務めている生徒はもうエキスパートになっていて、「この話題であれば、あいつに当てればできるだろう」と判断できます。書記の生徒は、最初は意見をつらつらと書いていたのですが、3年生の書記の生徒になると「この意見とこの意見は多分反対意見だから、黒板の逆の方に書いておこう」とか、「この意見は埋もれるだろうから、こちら側に書いて後でまとめればいいだろう」と考えながら、エキスパートになっていくんですね。教員がその様子を見ていると驚きます。

そういった部分の変容は非常に大きくて、力を伸ばすことに我々教員が非常に夢中になったのだと感じています。

 

(土井委員)

安土先生ありがとうございました。御発表の柱は二つあり、一つは子どもたちに対して話し合いの特別活動を通じて主体的な取組をさせておられ、一定の成果を上げておられることと、もう一つは学校業務のあり方についてです。二つの柱をつなぐ視点として、本来、子どもたちあるいはPTAの皆さん、地域の皆さんに任せるべきことを先生方が引き受け過ぎていたという点があると思います。その点を改めて、子どもたちが主体的に取り組むことで、学校の業務のあり方をどのように変えていくかという話だと思います。

資料20ページに、大切なことと本当に必要なことは違い、ビルド&ビルドは避けていくべきだ、とご指摘をいただいていますが、様々な事項のうち栗東中学校の経験の中で、スクラップできることや、その代わりに力を入れたほうがいいことがあれば教えていただければと思います。

 

(安土校長)

子どものためにこうしてやりたい、ああしてやりたいという思いは常にあります。でもそれをすべて叶えようとすると、やはり限界が見えてくると思います。

例えば本校だけではないと思うのですが、確かに部活動がなかった時期に、ICTの研修を持てたり、普段であれば放課後に部活動の顧問としてグラウンドに出ている教員が、教室に何名か生徒を残して勉強を教えることができました。

どちらかというと、これが本来の仕事ではないかと思います。今回の場合は強制的に部活動をやってはいけないと言われたわけですが、夏場でしたら部活動は6時半ぐらいまでやっています。我々の勤務時間は4時45分ですので、初めから超過勤務ありきでやっているわけです。でもそれをちょっと短くしよう、

もうちょっと短くして、その分教材研究する時間や、子どもの家に行く時間を増やしていこうと。

もちろん部活動の教育的な効果はあります。だから一概にはいかないかもしれないけれど、我々教員もこの2年間の経験の中で取捨選択がある程度できてきました。具体的にこれをなくしたら、というものはないけれど、残すものでもちょっと時間を短縮すればいいのではないか、そういったところは見えてきたのではないかという気がします。

(三日月知事)

安土先生ありがとうございます。

今の栗東中学校に生徒として行きたくなるような、そんなご報告でした。

後の議論にも繋がるのでちょっとお聞きするのですが、こういう取組をやってこられて感じられている課題、もしくは悩みはあるでしょうか。今お聞きした中では、すべて好転されているような印象を受けたのですが。

取り組んだけれどできなかったとか、今やろうとしているけど壁にぶち当たっているとかですね。

年度によって生徒の状況も違うでしょうし、リーダー格の生徒がいる、いないとか、いろいろとあるのかもしれませんが、その辺りはどのようにとらえていらっしゃいますか。

 

(安土校長)

課題っていうのはやはり教員が毎年変わるっていうことですね。

常に僕が考えているのは課題に挑戦する姿勢です。だから、先ほど説明した校内研究の特活ファイブのメンバーには若い教員がいるのですが、どんどん転出させています。一昨年特活ファイブとして5人いたメンバーのうち4人が転出しました。1人残って、新たに4人を入れています。エキスパートでずっとやっていくのではなくて、どんどん変えていく。だからその部分でやはり困難は出てきて、苦労はあります。これは同じメンバーで続けていくほうが楽ですよね。

でも、なぜあえてメンバーを変えていくかというと、学校の先生は定期異動で変わりますが、学校は残るわけです。だから、先生がいたからできたというようなものは今後残していってはいけない。

この校内研究をやったのも、先生が変わったからできなくなったっていうことはやめとこういうことで、先生が変わっても続けられる、それをやはり学校の文化に根付かせたいという思いがあったので、そういう形でやっています。そういった事情で生み出す困難さはありますけれど、上手にスライドしながら、やっていく。それの繰り返しだと感じています。

 

(教育長)

それでは、ここまでの発表、またご質問ご意見を踏まえまして、今後学校で、コロナ禍でもさらに教育の充実を図っていくために、どのような方向で取り組んでいけばいいのか、あるいは、どんな活動を見直すのか、ご参加の皆様からご意見をいただきたいと思いますので、何かお考えのことがありましたら、ご発表いただければと思います。

 

(岡崎委員)

2年間、私も人とのコミュニケーションが非常に少ない経験をして、人との繋がりが、人の成長、自分の成長にとっても、大切だと再認識ができる、よいきっかけだったと感じています。

先ほどの安土校長先生の発表の中にありましたPTA活動を私も長年やってきましたけれども、やはり前年踏襲でPTA活動を推進される役員の方が多く、大半の学校がそうだと思います。

その中で思い切ってスクラップアンドビルドという形で、今できることを、できる時に、できるメンバーでやればいいということを推進できるところはぜひそのようにしていくべきで賛成です。

けれども、長年PTA活動をしてきて感じていることは、保護者の方の中にも、子どものために熱心に勉強される方もおられますが、日常に追われている保護者の方も多く、勉強の機会を与えていく必要性があって、やはりこれはスクラップできない部分であって、細々とであっても、保護者向けの教育や、子どもたちが学校でできない経験の機会は、PTA活動として継続していかないといけないと思っています。

役員のあり方について、最近は特に男女共同参画と言われるものの、役員が女性に偏っている傾向が、私の地元のPTAでも多いです。

それを良しとするかどうかは、集まったメンバーで考えることだと思いますが、子どもたち、学校、地域にとって必要なことができるよう、学校側やPTA会長、役員が後押しをしていくべきではないかと、今の発表をお聞きして再度認識ができました。ぜひそういった形で、栗東中学校でもPTA役員の変革が起きて、やめることもいいですが、継続してやっていかければいけないことも議論していただいて、大切にしていただければと思います。

 

(福永教育長)

PTA活動についても、様々な面で今一度見直して考えていくということは大切だと思っております。

 

(土井委員)

私からは大きく2点です。一つは、子どもたちが主体的に取組んでいる栗東中学校の話し合い活動の話ですが、先ほど知事との間で安土校長先生がおっしゃられた点が重要で、話し合いを通じて子どもたちの主体性を育んでいく取組は、栗東中学ならではのものではあってはいけないと思います。

「ならでは」とか「だからこそ」という独自性も重要なのですが、こういった取組は普遍性を追求すべきで、そういう意味では教員を異動させながら広げていく努力をされていることはとても大事だと思います。

また、これがうまく機能できた理由として、コロナ禍が関わっていると思うのですが、体育祭をやりたいという生徒の気持ちに基本的な合意があるのですね。体育祭の開催に向けて、意見をまとめないといけない状況の中で工夫をさせておられます。

みんなで折り合いをつけながら知恵を出そうという空気の中で、話し合いをしたことで、みんなで努力しながらまとめていくことができたのは、よい面だったのだと思います。

ただ環境が変わって、必ずしも合意を形成する必要が共有されていないところでやると、新しい苦労がいろいろと出てくると思います。その場合でも、うまく行かないから任せない、任せないからうまく行かないという悪循環は断つべきで、うまくいかなかったとしても、子どもたちを信頼していくことが重要なのだと思いました。

もう一つは学校の業務のあり方で、ICTと関連することなのですが、資料の最後にまとめていただいている点はその通りだと思います。おそらく一番にスクラップの対象になるのは、コロナ禍で結局しなくなったこと、しようと努力しなくなったことだと思います。ICTの活用によってできたことについては、本当に学校にみんなが集まって一緒にやらないといけない、重要度が高いことであるのか、取捨選択していくべきであると思います。それに対して、ICTではできないから、何とか学校でやらなければいけないと工夫したことは、今後もぜひ学校でやっていかないといけないのだろうと思います。

学習面でもICTを通じてできる部分については、将来的にその学習効果が確認された場合には、本当に教室で教える必要があるのかという疑問が出てくる可能性があると思います。

安土先生にお伺いしたいのは、部活動についてなのですが、部活動や学校行事は、学校でないとできないことですよね。ICTを通じてではなかなかできません。

長時間の部活動について私は賛成ではなく、一定の時間を制限する必要があると思います。短期・中期的には部活動の時間を少し制限しながら、あるいは地域に任せながら、学校の先生方の時間を確保することが大事だと思います。

ただ長期的には、ICTの効果的な活用ができるようになれば、例えば学校の授業時間数を1コマずつ減らし、その部分はICTに任せて、家庭学習等で時間を取る。その減らしたコマを部活動や学校行事など、子どもたちが主体的に活動できる時間に充てたほうがよいかもしれません。

これはすぐにできることではないので、ICT活用に取り組みながら、その効果を確認していく必要があると思いますが、長期的には様々な見方があると思いますので、このことについて、安土校長先生にご意見をいただければと思います。

 

(安土校長)

実は、本校でこの話し合い活動に取り組んでいるのは、みんなでわきあいあいと話し合いができる学校を作ろうという目的ではないのです。

この研究のテーマは「将来の生き方を拓く」ことです。最終的には成果を個人に返していきたい。これから不確実性のある世の中を生きていくためには、これだけやっていれば大丈夫というものはない時代ですので、例えば、挫折することや、入試に落ちること、就職したけれども会社がつぶれることも予想される。その時に対話をしていく、人の意見を聞いて、自分の意見を深めていくことが重要です。この話し合い活動でも合意形成にこだわっています。合意形成は、ある意味では妥協したり、一歩譲らなければできない部分があります。こういった力は絶対的に重要なものです。

本校でも3年生くらいになると、絶対に多数決で決めないっていうのが暗黙のルールがあります。

大半の意見が同じであっても1人の少数意見をいかにうまく組み入れていくかということに、子どもたちもすごく神経を使っています。

多数決であればすぐに決まりますが、そうではなくて、少数派の意見をどうするか、話し合いはこんこんと長引きます。司会の生徒もみんな悩みます。

そうすると、少数意見の生徒が、「みんなの意見もよくわかるし、今回は一度みんなの意見でやってみる。でも、もしもダメだったら自分の意見も取り入れてほしい」と言うのです。この子の成長はすごいですよ。それが将来の生き方に繋がっていくのではないかと思います。

そして自分の意見が通るということは、自尊感情が高まります。自尊感情が高まってくると、本校は生徒指導が大変な学校でしたが、クラスの雰囲気がすごくよくなって落ち着いてくるのです。先ほどの業務改革ではないですが、生徒指導が忙しいうえに、特別活動もしなければいけないのか、と思われますが、先生の負担になるのではありません。年度当初に職員にも言ったのですが、特別活動をやることは生徒指導をすることにもなるのです。

決してビルド&ビルドではなくて、特別活動をやることによってすべてができるということを力説して、実際に落ち着いたクラスになっている姿を見ると、先生方がまた意欲を示してくれるということがあります。

次にICTの話ですが、実際に体調を崩している子どもからはオンラインでお願いしますと連絡が学校に入って、そのクラスの授業はずっとオンラインに映します。

そういった部分では休んでいる子にとってはありがたいし、不登校傾向の子で、教室には入れないけれど、みんなと一緒に授業を受けたい生徒にとってはICTが大きな武器になっています。

ただし、やはりできることとできないことがあります。できることはどんどんICT活用を進めるべきだと思いますし、もちろん話し合いもできるのですが、やはりリアルな感情や、近い距離で話すことができません。

だからできるところは充実させながら、できないところを明らかにして学校でしっかりとやっています。部活動についても土井委員がおっしゃったようにできません。

部活動について、最近は柔道が話題になっていますが、大会の在り方として、中体連は全国大会まで繋がっていて、それがある限り部活動は続けるという考え方の先生もおられます。

でも私個人としては、もう大きな大会はいらないのではないかと思っています。中学校レベルであれば県大会ぐらいでいいのではないか。

というのは、一昨年は全国大会がなくなりましたから、それぞれの地域で親善試合をして終わろうということになったのですが、子どもたちは親善試合でも一生懸命やるんですよね。やっぱりゲームが楽しいんです。

その試合が全国に繋がっていこうが、地方大会であろうが、やはりその1試合が楽しい。みんなで他の学校と試合をして、それに対してみんなで応援をしていく。

子どもたちの純粋な楽しみ、喜びを、競技スポーツの宿命であるかのように、とりあえず全国一を目指せというのは、大人のわがままなのではないか。

中には全国を目指す子どももいるかもしれませんが、それは高校や社会人、あるいは競技スポーツの団体で頑張ればいいことであって、中学校レベルであれば、地域の学校と合同試合をする程度でも、ものすごく充実しているので、そういった部分は考え直していくべきだと思っています。

 

(土井委員)

最初のお話、その通りだと思います。

私も主権者教育に関わってきましたが、この話し合い活動や特別活動は、最も重要な主権者教育です。社会科で政治の仕組みを学習するのも主権者教育の一つですが、重要なのはこちらの方だと思います。

他の方法としては、ディベートもあって、こちらは自分の意見を明確に伝える訓練にはなるのですが、合意ではなくて決裂を導くことになるので、個人的には、安土先生がおっしゃった話し合いの方が、どのように合意を形成するかという工夫をしたり、知恵を出したりすると思います。

安土先生がおっしゃったように、今回は相手の意見を尊重するけど、次回は自分の意見を採用してほしいという柔軟な対応というのは、合意形成のあり方を時間軸の中で調整しようという子どもたちの知恵ですが、これは信頼関係のある共同関係の中では非常に重要で、こういったことを子どもたちが学んでいくのは大事だと思います。

また部活動の件は、私もその通りだと思うところが多々ございました。ありがとうございました。

 

(野村委員)

何が起こるかわからない状況で、何ができるのか、またどのようにすればできるのかを話し合いながら、課題を見つけて自分たちで学び、判断し、仲間とともに共有しながら、解決しようと工夫されている栗東中学校のやり方が、これから生きていく上で、働いていく上で、必ず力になってくるだろうと感じています。

そして何をなくすのか、残すのかということについてですが、体育祭であったりとか、文化祭であったり、修学旅行であったり、そういった体感覚で得られる体験っていうのは、子どもたちの心の中に記憶として残っていくと思います。

そういった体験がなかなか実際にできない状況で、どのような方法であればできるのだろうかと、突き詰めて、考えて実践されていることは、ずっとやっていかなければならないと感じています。

また、学校の対応だけでなく、やはり家庭での対応が必要だと思います。生活習慣の乱れや、保護者の方のご負担や、仕事が制限されて収入が不安定になるなどといった点については、教育委員会だけでなく、福祉関係や地域とも協力し合いながら、何をするべきなのか考えていかなければいけないと思います。

次に、安土先生がおっしゃっていた、人が変わってもできる、という部分については、学校だけでなく、社会においても、企業においても重要だと思います。人が変わったからできなくなった、というのは言い訳であると思います。人が変わってもちゃんとできる社会をつくっていかないと、循環していかないと思います。

そして先ほど土井委員もおっしゃっていた部活についてですが、私もいろいろ考えていきたいと思っています。先生方のご負担はありますが、子どもたちにとってどのような部活動、大会の在り方にしていくことが一番よいのか、考えながら進めていきたいと思います。

 

(福永教育長)

ありがとうございました。

これはすぐに答えが出ない問題ですが、部活に何を求めるのか、子どもたちが何を思っているのか考えながら検討していく必要があると感じました。

 

(窪田委員)

お話を伺っていて、コロナ禍という一つの逆境があったからこそ、子どもたち自身も、こういう学校生活を送りたかった、こういう学校生活を取り戻したいという願いに気づくことができて、だからこそ自主性や主体性が育まれたのだと思います。もちろんこのコロナ禍と合わせて、これまでから話し合い活動に取り組まれてきた下地があったからこそだと思います。

また先生方にとっても、どのように取捨選択していくかという点で、どういう学校にしていきたいのか、どういう教育をしたいのか、一人ひとり考え直したり、先生方自身が合意形成を図っていく機会になるでしょうし、地域にとっても、どういう学校であって欲しいか、考える機会になって、それぞれの願いが折り合わされる一つのきっかけになったのではないかと思います。

そこから得たものを次にどのように引き継いでいくのか、また今後コロナ禍が収まっていく中で、今までのやり方に戻したいものが出てくるのか、そのあたりは、今後数年、いろいろと問われるのだろうと思います。

でも、安土先生の報告をお聞きしていても、話し合い活動においては、生徒たちにとって切実さのあるテーマが大事であると思います。どういう学級にしていきたいかといった、子どもたち、生徒たちにとって切実さのあるテーマが話し合いに必然性も生み出すし、話し合い活動によって集団が育っていく中で、一人ひとりの個を切り捨てないで、どのように大事にしていけるかということを、学べたのだと感じました。

私は滋賀大学附属特別支援学校に行くことが多いのですが、例えば小学部で聴覚過敏のある子どもがいて、同じ空間にいるほかの子どもが大声を上げると、しんどくて、泣いて教室から飛び出していたのですが、オンラインが使える環境が整い、先生方がスキルを身につけられたことで、学校に登校したあとに、1人で別室からオンラインで朝の会に参加することができるようになりました。コンピューターを通してであれば、他の子どもの騒ぐ声が聞こえても大丈夫だったので、そういった形で、オンラインを通して、対面ではないからこそ、つながれるようになった子どももいます。

教育実習についてもコロナ禍での対応は大変だったと思うのですが、子どもたちもオンラインに慣れてきているので、オンラインを通しての実習という形で、子どもたちとクラスごとに交流をさせてもらえました。子どもたちも画面の向こうにいる実習生の先生に話し掛けたりすることにも慣れています。

もちろん対面に勝るものはないのかもしれませんが、この会議もそうですけども、離れていても、物理的に距離があってもつながれることを、今後も大事にしていきたいと思いながら聞かせていただきました。

 

(安土校長)

コロナ禍で、子どもにアンケートを取ったのですが、「学校は楽しいですか」という質問があるのです。私はこの質問をやめてはどうかと考えています。学校は楽しいばかりではないですよね。

学校はアミューズメントパークではないのですから、テストがあったり、友達と喧嘩したり、嫌な思いをしながら学校に行くこともあります。楽しいばかりではありません。

だから、「学校は楽しいですか」という質問を、「あなたは学校が新しくなるように努力していますか」という質問に替えてはどうかと考えています。

保護者にも同様に、「お子様は学校が楽しいと言っていますか」という質問を「学校が楽しくなるように何かアドバイスをしていますか」という質問に替えてはどうか。

親にも主体的に参画してもらうことが大事で、常に受け身のような質問はよくないと思っています。

子どもたちには「今日学校でこういうことしたいな」という思いや、「友達と仲直りするために行こう」という主体性を持って来てもらいたいし、親にもやはりそういう形で参画してもらいたいと思います。

だから、私はずっと思っているのですが、滋賀の子どもを全国と同じ定規で見なくてもよいのではないかと思っています。全国学力・学習状況調査と同じ質問で比較するよりも、滋賀の子どもに対して、滋賀独自の定規を持って見ていけばよいのではないでしょうか。

私たち教員は、「これを大事にしたい」ということを、それぞれの学校で考えています。その定規でしっかりと測れる指標が欲しいと思っています。

そういった部分でも、受け身ではなくて、もっと主体的に進められるようにしていきたいと考えています。

 

(福永教育長)

ありがとうございました。

主体的に取り組むということが一つの大きなテーマだと思います。また、そうでないと生きる力を身につけていくことにならないと思っています。

それでは中條副知事から、全体をお聞きになってご意見等ございますか。

 

(中條副知事)

安土先生、本日は貴重なお話をどうもありがとうございました。大変参考になりました。

長引くコロナ禍で、特に第6波は児童・生徒の皆さんたちの感染も多く、学校現場では今も様々ご苦労がある中で、事務局のまとめた成果と課題にもありましたけれども、コロナ禍でもできることを様々な工夫をしながらご対応いただいていることが非常によくわかりました。

栗東中学校の取組の中では、コロナで学校行事も中止や縮小する中で、どうやったら実施できるかということを、生徒さんたちがキーワードである主体性を持って、主体的に考えて取り組めるように、先生方が様々なご支援をしながら、先生方が用意してあげる、一方的に決めるのではなくて、合意形成を図りながら体育祭を開催されたということは、生徒さんの自主性、主体性を育むことになり、また、生徒さんの代表として関わった方だけではなくて、それ以外の生徒さんにとっても非常にすばらしい経験だったのではないかと感じました。

校長先生の最後のまとめにあります、「大切なことと本当に必要なことは違う」というのは、非常に重要なことだと思っておりますし、事務局で成果と課題をまとめておりますけれども、コロナ禍を機に進んだICT活用によってできるようになったことや、充実したことは、さらに進めていく必要があると思います。一方でコロナ禍で見えてきた、少しここは省いてもいいのではないかという部分については、やはり先生方の働き方改革の観点や、また、それによってできた時間を充実した教育に使っていくということからも、重要だと思いますので、今後この成果と課題も踏まえて、精査検討していく必要を感じました。本日は本当にどうもありがとうございました。

 

(福永教育長)

知事から、今までの皆さんのご意見を聞かれて、お感じになったことはありますでしょうか。

 

(三日月知事)

ありがとうございます。まず安土先生がおっしゃった、「少数意見も大事にしながら合意形成する、時間軸も使いながら、今回はこれでいいけど、次はこれをやろう」という話の仕方はいいですね。

今の国会でも、また、県議会でも参考にしなければいけませんね。中学校でそれができるのに、だんだんと高校、大学、社会人になるとできなくなっていくのはなぜなのでしょう。

僕が子ども、子ども、子ども、子どものために、子どもとともに、というのは、実はそういったところにもありまして、そういうピュアな力に僕らがもっと学んで、社会の在りようを考えていく必要があるのではないかと思います。

今日お聞きしたことで、今後の学校づくりに活かせるのではないかと感じた点を数点申し上げますと、一つは先ほどもご意見にありましたが、栗東中学校だけ、栗東中学校ならでは、安土校長先生だから、ではなくて、今日ご発表いただいた取組は、すべての学校で大事にされるべきであると思いました。

また後段で先生がおっしゃったように、全国統一や受け身ではなくて、滋賀県ならではの物差しというものを、堂々と確立していけばいいのではないだろうか。一人ひとりの学びを大事にしてあげることと、ともに学ぶことを大事にすべきではないかということ。

コロナ禍でより進んだICTの積極活用はさらに進めるべきだと思います。オンラインだから一緒にやれる効用というものを最大化するべきだと思いますし、一方で、オンラインでは見る、聞くことはできますが、触覚とか、味覚とか、嗅覚、例えば学校生活ならではの汗臭さとか、つまらんこと言ったときのざわざわとした空間、あとは熱量とか感情、こういうものはやはりリアルでないと伝わらないところがあるので、こういう実感覚は大事にしてあげるべきだと思いました。

最後は、子どもたちの主体性の尊重について、先ほど部活動の問題がありました。部活動を含めて、学校業務をどのように改革すればよいのか、何をやめて、何をやればよいのかということも、子どもたちと一緒に考えていく視点があってもよいのだろうと思いました。

業務のスクラップや時間短縮への挑戦を、ぜひ現場や教育委員会、子どもたちも巻き込んで、やっていければと思いました。

(福永教育長)

ありがとうございました。知事から本日皆さんからいただいた様々なご意見をまとめていただきました。

やはり一つのキーワードは、主体性、主体的に活動するということです。私も感じたことですが、実は子どもたちは、それぞれの年齢がありますが、すごくいろんな力を持っています。その力を引き出すための工夫をすれば、様々なことができてくるのではないか。そこから先生方が学び、気づくこともたくさんあるのではないかと思います。

それともう一つは、経験することによって、みんながエキスパ―トになれるので、いろいろな人がエキスパートになるための工夫が必要であると思います。特定の人だけではなく、他の人もエキスパートになっていくための工夫をすることで、広がっていくのではないかと思います。

あと、コロナ禍とは関連のないところですが、安土校長先生のご説明の中で、地域との繋がりの中で、もっと学校をオープンにして、地域の人や卒業生に見てもらおう、そして感じられたことをまた取組の中に生かしていくことで、学校への理解や協力が広がっていくのではないかと思います。

学校をオープンに見せていくことは、なかなか辛いところもあるかもしれませんが、実はそれが一番の効果を持つのではないかと思っております。

部活動やICTも含めて、これからどのように滋賀の取組をしていくか、市町の教育委員会の皆様とも一緒に、県全体として、先ほどのご意見にもあった、滋賀ならではの物差しという考え方も入れながら、滋賀ではこういう子どもを育てるんだということを、19市町と県の教育委員会で一緒に取り組んでいきたいと思っています。このテーマについては以上とさせていただきます。

 

本日が令和3年度最後の総合教育会議となります。6月に開催した第1回が教員の人材確保について、9月に開催した第2回が、その時点でのコロナの対応と県立学校のあり方について、12月に開催した第3回会議がICTを活用した教育の推進について、そして本日の第4回会議がコロナ禍における学校の対応と課題についてをテーマとして開催いたしました。

この1年の総合教育会議等を通じて教育委員の皆様が感じられたこと、何かございましたら、お一人ずつご発言をいただきたいと思います。

 

(岡崎委員)

今日の発表の中にもありましたが、大きな社会変化は変えるチャンス、変われるチャンスだろうと思っています。ですから、今まではこうだったからという議論ではなくて、どのように変えていけばよいかということが大切だと思います。

また合意形成は社会に出てからも本当に必要です。今、私は開発の仕事に携わっていますが、ひとつひとつ合意形成を得ながら物事を進める力は、社会に出て行くときには必要なことです。そういった力を身につけながら、今までにない自分、今までにない学校や滋賀らしさを育んでいただきたいと思います。

他県の指標もあるかもしれませんが、滋賀県がどのように考えて、どのように子どもを育てるかということを真剣に考えて、変革を起こしていければということを強く感じました。

 

(野村委員)

1年間どうもありがとうございました。様々なことを学ばせていただきました。

学校等を訪問させていただいたり、協議させていただいたりする中で、学校や地域、そして教育委員会といった、団体や単位だけではなく、連携や繋がりといった、お互いにフォローし合うこと、話し合うことが必要で、それによって一番いい滋賀をつくっていけるのかなと感じました。

ありがとうございました。

 

(窪田委員)

私も1年間、いろいろと勉強させていただきました。

総合教育会議での意見や、ご報告は本当に大事なことが凝縮されていると感じますし、それをどのようにすれば県全体に共有していけるかということを、自分自身の中で課題にしながら、引き続きお世話になれたらと思っております。

 

(土井委員)

ありがとうございます。

先ほど安土先生が最後におっしゃった、学校は楽しいか、学校は楽しくなければならないのかということが、今年1年を通じて大事なことだと思います。

安土先生は受け身よりも主体的に楽しくすることに関与するということが大事だとおっしゃいましたし、私もその面はあると思います。

以前も申し上げたのですが、学校の教育は、楽しい場にすることよりも、一定の守られた空間の中で、ある一定の信頼感が維持された空間の中で苦労させることが目的であって、その苦労を通じて人間は大きくなっていくし、能力を開花させていく部分があります。

そういった意味では苦労することは成長の機会として、児童生徒の皆さんにとっても、若い先生方にとっても、非常に重要であるので、その苦労を通じて楽しかったと感じられるのであればよいのですが、単に面白かったということが、本来の目的ではないとおっしゃるのは、その通りだと思います。

ただ、無理に苦労させる必要もないので、ICT等の便利なものを使って不必要な苦労なくしていくことは重要です。そうすると問題になるのはどういった点で苦労していくこと、様々な取組をしていくことが大事であるかを見極めるのが重要であると思います。

今年は様々なことを議論させていただきましたが、年間を通じて、最後にそう感じました。

 

(中條副知事)

1年間、教員の人材確保や県立学校のあり方、ICTを活用した教育の推進、コロナ禍での課題や成果といったテーマで、様々な事例発表や委員の方々のご意見をお伺いして、学ばせていただくことが非常に多かったと感じています。

この会議で伺ったことをぜひ県の取組、施策に生かしていきたいと考えております。

ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。

 

(安土校長)

やはり滋賀の子どもたちが大好きです。栗東市は小さい町ですけれど、例えばこの学校では人権教育を一生懸命頑張っているといった独自の方針を出していきたい。でもそれをはかる物差しがないわけですよね。

この学校は何を頑張っていて、そしてどのような子どもたちが育っているのか、それぞれの学校で違う部分があります。

もちろん全国で合わせなければいけない部分もあると思うのですが、その独自性を大事しながら、オンリーワンの教育をやっている、あるいは全国を引っ張ってやるというくらいの気概を持っている先生がたくさんおられると思うので、そういったところをうまく引き出しながら、今後も微力ですけれど、何かできることがあればお手伝いしたいと考えております。

 

(福永教育長)

引き続き、多くのことについて議論をさせていただき、共有しながら取組を進めたいと思っております。

それでは最後に知事から本年度1年を振り返ってご発言いただければと思います。

 

(三日月知事)

まずお礼を申し上げます。今日、非常に貴重な問題提起やご発表をいただいた安土校長先生にお礼申し上げたいと思います。

また教育長をはじめ、教育委員会の委員の先生方には、それぞれの立場で様々な御意見をいただき、私自身、知事としても人間としても、大きな学び、深い学びをさせていただいております。本当にありがとうございます。

また後ろにおられる、教育委員会のスタッフの皆さんにも敬意を表したいと思います。

やはりコロナを経験しながら、夢は子どもにあり、知恵は現場にありだと実感いたしました。

様々な取組を聞くにつれ、危機は転機であり、転機は好機だと感じております。

来年度以降、この総合教育会議で、例えば、少人数学級のあり方をぜひ皆さんと議論をしたいと思います。さらにどう滋賀県が引っ張って作っていくのか。

また、学校の施設のあり方、どこに、どのような学校をどういうレベル、規模で作っていけばいいのか、特別支援学校の再配置や分離新設も含めて、皆さんと議論していきたいと思いますし、人は人の中で人になるということで、人である先生と、人である子どもたちが学ぶということで、言うならば、教職員の数と力、モチベーションをどのように、よりよいものにしていけばいいのか、ぜひ来年度の課題、テーマとして議論できたらと思います。本当にありがとうございました。頑張りましょう。

 

(福永教育長)

知事ありがとうございました。

それでは時間も参りましたので、これで本日の第4回滋賀県総合教育会議を閉会いたします。皆様どうもお疲れ様でございました。

お問い合わせ
子ども若者部 子どもの育ち学び支援課
電話番号:077-528-3456
FAX番号:077-528-4854
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