本調査は、子どもの貧困への対策および支援を検討する基礎資料を得るため、滋賀県と龍谷大学の共同研究により実施しました。調査では、子どもの支援者における貧困への意識、支援の実際、そして支援者としての習熟などを明らかにすることに重点をおき、支援者に対するアンケート調査および聞き取り調査を行いました。
(1)調査期間 平成27年11月
(2)調査対象
※機関でとくに支援に関わっている方1名が無記名で回答。スクールソーシャルワーカー(SSW)およびスクールカウンセラー(SC)は本人が回答。
(3)調査方法 各支援機関に調査票を配布・郵送回収
(4)調査票配布数 1,478
(5)有効回答件数 906
(6)回収率 61.3%
【調査対象者】
一定のキャリアを持ち、子どもの支援に関して熟達度が高いと判断された支援者6名
内訳
・県内の自治体で家庭児童相談室に勤務する職員 4名
・複数の小学校を担当するスクールソーシャルワーカー 2名
※家庭児童相談室
自治体において、子どもや家庭に関する相談対応、虐待の通告に対する対応、要保護児童対策地域協議会におけるケースの進捗管理等を実施する機関。
※スクールソーシャルワーカー
学校を拠点として、問題を抱える子どもの支援に向けて、関係諸機関と連携を取りながら関わる者【調査方法】対象者に以下の4項目の質問を実施して、回答を聞き取り。
(「1.現在の業務に至るまでの経緯」「2.現在の業務の概要」「3.子どもの貧困支援への関わり方についての見解とその変化」「4.子どもの貧困支援における葛藤」)
【分析の枠組み】
子どもの貧困に関わる支援業務における熟達について、「(1)多様な経験の接合」「(2)多様な関係の構築」「(3)多様なあり方の受容」の3点により整理。
(1)多様な経験の接合
・対象者は、自身の多様な経験を肯定的に位置づけており、特に年齢が高かったり、現職での経験年数が長い者ほど、過去の体験を現在の仕事の内容につなげている。
(2)多様な関係の構築
・職場外の連携においては、通告・相談を受動的に受けるだけでなく、積極的に関係機関に足を運んで日常的に信頼関係を築き、必要に応じて関係機関をつなげていくことで状況の改善にあたっている姿が見られる。
・職場内の連携においては、ケースから受ける負担を抱え込まないようにするため、職場内で常に相談し合える雰囲気や仕組みをつくることが必要になる。
(3)多様なあり方の受容
・子どもの貧困に関わる支援は成果が見えづらく、支援者の役割ややりがいが見当たらないことが葛藤につながることもある。このような状況において、「自分のような立場の者がいること自体が重要である」という認識が複数聞かれた。
・現在の職業に向いている人、職業適性については、一つ目が「経験が豊富であること」、二つ目は「新しい経験が積めること」が挙げられている。つまり、経験・視点・知識などの「多様さ」が重視されている。