(前文)
あらゆる人々が個人として尊重され、住み慣れた家庭や地域社会でいきいきと生活し、完全参加と平等を享受できる社会こそ、これから私たちがめざすべき社会である。
こうした社会を実現するためには、県民一人ひとりが自助と連帯の精神に基づき、社会に積極的にかかわるとともに、県、県民および事業者が協働して、高齢者、障害者等の行動を阻む様々な障壁を取り除き、一人ひとりの多様性を理解し、尊重することを基にして、すべての人が円滑に利用できるよう配慮された生活環境を整備することにより、だれもが自らの意思で自由に行動でき、安全で快適に生きがいを持って暮らすことができる福祉のまちづくりを進める必要がある。
滋賀では、琵琶湖をはじめとする穏やかな自然にはぐくまれた人情細やかな風土の中で、多くの先人たちにより、一人ひとりの命をかけがえのない尊い命として大切にする福祉の心がはぐくまれてきた。
私たちは、この滋賀の地に培われた福祉の土壌を活(い)かし、お互いの命をいつくしむ共生の心をもとに、一体となって、だれもが住みたくなる福祉のまちづくりを進め、これを未来に引き継ぐことを決意し、ここにだれもが住みたくなる福祉滋賀のまちづくり条例を制定する。
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、だれもが住みたくなる福祉のまちづくり(以下「福祉のまちづくり」という。)に関し県、県民および事業者の責務 を明らかにするとともに、高齢者、障害者等にとって安全かつ快適な生活環境の整備を図る等福祉のまちづくりのために必要な施策を推進し、もって県民の福祉の増進に資することを目的とする。
(定義)
第2条 この条例において「高齢者、障害者等」とは、高齢者、障害者、妊産婦、難病患者、病弱者、乳幼児を連れた者等で、日常生活または社会生活における行動に制限を受けるものをいう。
2 この条例において「公益的施設等」とは、病院、社会福祉施設、購買施設その他の多数の者の利用に供する建築物、官公庁舎、道路、公園、駐車場および公共交通機関の施設で、規則で定めるものならびにこれらに付帯する施設をいう。
3 この条例において「公共車両等」とは、一般旅客の用に供する鉄道の車両、自動車および船舶で、規則で定めるものをいう。
(県の責務)
第3条 県は、福祉のまちづくりに関し、基本的かつ総合的な施策を策定し、およびこれを実施するものとする。
2 県は、自ら設置し、または管理する公益的施設等を高齢者、障害者等が安全かつ快適に利用できるようにするものとする。
第4条 削除
(県民の責務)
第5条 県民は、高齢者、障害者等が安全かつ快適に生活することができるよう住宅の整備を図る等福祉のまちづくりに関し、理解と実践に努めるとともに、県が実施する福祉のまちづくりに関する施策に協力しなければならない。
2 県民は、高齢者、障害者等が安全かつ快適に利用できるよう配慮して整備された公益的施設等および公共車両等について、高齢者、障害者等の利用の妨げとなる行為をしてはならない。
(事業者の責務)
第6条 事業者は、その事業活動が地域社会と密接な関係にあることを自覚し、県が実施する福祉のまちづくりに関する施策に協力しなければならない。
2 公益的施設等を設置し、もしくは管理する事業者または公共車両等を所有し、もしくは管理する事業者は、当該公益的施設等または公共車両等について、高齢者、障害者等が安全かつ快適に利用できるよう努めなければならない。
3 住宅を供給する事業者は、高齢者、障害者等が安全かつ快適に生活できるよう配慮された住宅の供給に努めなければならな い。
第2章 福祉のまちづくりに関する施策
(施策の基本的事項)
第7条 県は、第1条の目的を達成するため、次に掲げる事項を基本とし、福祉のまちづくりに関する施策を総合的に講ずるものとする。
(1) 県民が福祉のまちづくりについての理解を深めるための学校、職場、地域社会等における学習および啓発活動の推進
(2) 高齢者、障害者等の行動範囲の拡大および安全かつ快適な利用を図るための移動・交通対策の推進ならびに公益的施設等の整備の促進および整備に関する情報の提供
(3) 県民が自ら進んで、創造性を生かし、福祉のまちづくりに関するボランティア活動に参加できるための活動情報の提供および養成研修の実施
(4) 視聴覚障害者が円滑に情報を利用し、およびその意思を表示できるための情報提供手段の充実
(5) 高齢者、障害者等が安全かつ快適な住環境の中で生活できるための住宅対策の推進
(6) 福祉用具の使いやすさの向上を図るための技術的な支援および福祉用具の普及
(7) すべての人が円滑に利用できるよう配慮された物品の研究開発の促進
(指針の策定)
第7条の2 知事は、前条の規定に基づき福祉のまちづくりに関する施策を総合的に実施するに当たり、施策の方向その他必要な事項に関する指針(以下「指針」という。)を策定するものとする。
2 知事は、指針を策定するに当たっては、あらかじめ県民および事業者の意見を反映することができるよう、必要な措置を講ずるものとする。
3 知事は、指針を策定したときは、これを公表するものとする。
4 前2項の規定は、指針の変更について準用する。
(推進体制の整備)
第8条 県は、市町、県民および事業者と連携して福祉のまちづくりを推進する体制を整備するものとする。
(財政上の措置)
第9条 県は、福祉のまちづくりを推進するために、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。
第3章 特定施設の整備等
(特定施設整備基準)
第10条 知事は、規則で定める公益的施設等(以下「特定施設」という。)のうち多数の者の利用に供する出入口、廊下、階段、エレベーター、便所、駐車場等の部分の構造および設備の整備に関し、高齢者、障害者等の利用に配慮すべき事項について、特定施設の区分に応じて規則で必要な基準(以下「特定施設整備基準」という。)を定めるものとする。
(特定施設整備基準の遵守)
第11条 特定施設の新築、新設、増築、改築、移転、用途変更(施設の用途を変更して特定施設とする場合を含む。)、大規模の修繕または大規模の模様替え(以下「特定施設の新築等」という。)をしようとする者は、特定施設整備基準を遵守しなければならな い。
2 前項の規定にかかわらず、特定施設整備基準に適合させる場合と同等以上に円滑に利用することができると知事が認める場合または地形もしくは敷地の状況、建築物の構造、沿道の利用の状況、事業者の負担の程度その他やむを得ない理由により、 特定施設整備基準による整備が困難であると知事が認める場合は、特定施設整備基準に代えて、知事と協議により定めた基準によることができる。
3 特定施設を設置し、または管理する者は、当該特定施設について、特定施設整備基準(前項の規定により知事と協議により定めた基準による場合にあっては、当該基準。第13条および第22条第1項において同じ。)に適合している部分の機能を維持するよう努めなければならない。
(特定施設の新築等の届出)
第12条 特定施設の新築等をしようとする者は、あらかじめ、規則で定めるところにより、当該特定施設の新築等の内容を知事に届け出なければならない。
(指導または助言)
第13条 知事は、前条の規定による届出があった場合において、当該届出に係る特定施設が特定施設整備基準に適合しないと認めるときは、当該届出をした者に対し、必要な指導または助言を行うことができる。
(特定施設の新築等の内容の変更)
第14条 前2条の規定は、特定施設の新築等の内容の変更(規則で定める軽微な変更を除く。以下同じ。)をしようとする場合について準用する。
(既存特定施設の特定施設整備基準への適合)
第15条 この条例またはこれに基づく規則の施行の際現に存する特定施設(現に新築等の工事中のものを含む。以下「既存特定施設」という。)を設置し、または管理する者(以下「既存特定施設の設置者等」という。)は、当該既存特定施設について、特定施設 整備基準への適合状況の把握に努めるとともに、特定施設整備基準に適合するようその整備に努めなければならない。
(整備計画の届出)
第16条 知事は、特定施設整備基準に適合していない既存特定施設について、特に整備の必要があると認めるときは、当該既存特定施設の設置者等に対し、当該既存特定施設を特定施設整備基準に適合させるための工事の計画(以下「整備計画」とい う。)を作成し、届け出ることを求めることができる。
2 第11条第2項の規定は、前項の規定により整備計画を作成する場合について準用する。
(指導または助言)
第17条 知事は、前条第1項の規定による届出があったときは、当該届出に係る整備計画について、必要な指導または助言を行うことができる。
(整備計画の変更)
第18条 既存特定施設の設置者等は、整備計画の変更をしようとするときは、変更に係る整備計画を知事に届け出なければならな い。
2 前条の規定は、前項の規定による届出があった場合について準用する。
(公共工作物の整備)
第18条の2 信号機、バスの停留所その他の公共の用に供する工作物で、規則で定めるもの(以下この条において「公共工作物」という。)を設置し、または管理する者は、当該公共工作物について、高齢者、障害者等が安全かつ快適に利用できるよう努めな ければならない。
第4章 雑則
(適合証の交付)
第19条 知事は、第12条の規定による届出をした者または既存特定施設の設置者等から特定施設が特定施設整備基準(第11条第2項(第16条第2項において準用する場合を含む。)の規定により知事と協議により定めた基準による場合にあっては、当該基準。以下この条において同じ。)に適合していることを証する証票(以下「適合証」という。)の交付の請求があった場合において、当該請求に係る特定施設が特定施設整備基準に適合していると認めるときは、当該請求をした者に対し、適合証を交付するものとする。
(勧告)
第20条 知事は、特定施設の新築等をしようとする者が第12条(第14条において準用する場合を含む。以下第22条までにおいて同じ。)の規定による届出を行わずに工事に着手したときは、当該届出を行うべきことを勧告することができる。
2 知事は、第12条の規定による届出をした者が、当該届出に係る特定施設の新築等の内容と異なる工事を行ったときは、当該内容の工事を行うことその他必要な措置を講ずるべきことを勧告することができる。
3 知事は、既存特定施設の設置者等が、第16条第1項または第18条第1項の規定による届出を行わないときは、当該届出を行うべきことを勧告することができる。
(公表)
第21条 知事は、前条第1項または第2項の規定による勧告を受けた者が、当該勧告に従わないときは、当該勧告の内容その他規則で定める事項を公表することができる。この場合において、知事は、あらかじめ、当該勧告を受けた者に対し、意見を述べる機会を与えなければならない。
(立入調査)
第22条 知事は、この条例の施行に必要な限度において、その職員に、第12条の規定による届出に係る特定施設に立ち入り、当該特定施設が特定施設整備基準に適合しているかどうかについて調査させることができる。
2 前項の規定により立入調査をする者は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者にこれを提示しなければならない。
(国等に関する特例)
第23条 国、県、市町その他規則で定める者については、第12条から前条まで(第15条および第18条の2を除く。)の規定は、適用しない。ただし、国、市町その他規則で定める者(以下「国等」という。)は、特定施設の新築等をしようとするときは、あらかじめ、知事にその内容を通知しなければならない。
2 知事は、前項ただし書の規定による通知があったときは、当該通知に係る特定施設の整備について、当該通知をした国等に対し、必要な要請を行うことができる。
(規則への委任)
第24条 この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。