1.趣旨
東海道新幹線新駅問題については、東海道新幹線(仮称)南びわ湖駅設置促進協議会正・副会長会議をこれまでに7回にわたり開催し、虚心坦懐に「凍結を含む幅広い議論」を重ねてきたところである。
新幹線新駅の凍結方針は、昨年の知事選挙以降の状況に鑑み、引き続き県民の支持を受けているものと理解している。
このような中で、県は、現行の新駅計画に対し、財政状況が非常に厳しいこと、利便性が低く必要性が低いこと、他の請願駅に比べて著しく事業費が高いことの3つが課題であることを、繰り返し主張してきている。
今、新駅設置事業に対し、県として投資が許される状況にはなく、将来において新たな駅を設置するだけの財政的余裕が生まれた時点で総合的に検討すべきものであることから、新駅の「凍結」(現行協定類の終了)を主張してきたところである。
特に財政状況については、県においても、現状のままでは今後多額の財源不足が生じるものと予想され、ゼロベースでの徹底した事業の見直し、新たな財政構造改革プログラムの策定による大幅な歳出削減を余儀なくされている。
さらに、県が昨年10月に公表した「新幹線新駅の需要予測・波及効果の再検証調査」においては、経済波及効果や税収効果が当初の見込みより大幅に下方修正される結果となった。
未曾有の財政危機と人口減少時代の到来や少子高齢化の進行などの状況を踏まえて、現行協定類を終了し、巨額の投資を避けることにより将来における県民負担の最小化を図ることが、本県にとって最善の選択であると判断しているところである。
しかしながら、新駅設置に係る基本協定や工事協定を既に締結していること、工事の一部が着手されていること、さらに、栗東市が施行者である栗東新都心土地区画整理事業が仮換地指定や一部工事着手という段階まで進捗していることから、現行協定類の終了による影響は出来る限り少なくする必要がある。
加えて、県、栗東市ならびに関係各市の行政に停滞をもたらすことなく、さらには、土地区画整理事業の地権者の皆さんが抱える課題に対して早期に対応する必要がある。
ついては、以下の方針により、関係者の合意を得てこの問題の解決を図ることとする。
2.県の方針の内容
(1) 現行協定類の終了
ア 現行協定類の終了
県、栗東市および促進協議会関係5市は、平成19年4月24日締結の「東海道新幹線新駅設置工事に係る協定類に基づいた履行の諾否の期限及び解除の猶予等に関する覚書」第2条第2項に基づき現行協定類を履行しないことに合意し、現行協定類を終了する。
イ 事業費の清算
県は、新駅設置事業の経過を踏まえ、本事業の清算に当たり、次のとおり費用を負担する。
(ア)県は、栗東市を除く関係5市に対し、関係各市が負担した工事費負担金からJR東海が行った仮清算および本清算による返戻金を差し引いた金額について、本清算後に負担する。
また、大津市が支払った観光振興事業協力金についても、上記に準じて取り扱う。
(イ)県は、栗東市に対し、栗東市が負担した工事費負担金等からJR東海が行った仮清算および本清算による返戻金を差し引いた金額のうち、県の責任に相当する 金額について、本清算後に負担することを前提として栗東市と誠実に協議する。
(2) 栗東新都心土地区画整理事業の継続実施への支援
当該事業が施行されている地域は、都市的土地利用がふさわしい地域であることや、事業が一定進捗していることを考慮し、現行協定類の終了を前提として栗東市が当該事業を継続される場合は、県は、それを支援する。
(3) 県南部地域の振興の方向性の考え方の提案
県は、現行協定類の終了を前提とした県南部地域の振興の方向性の考え方について、促進協議会正・副会長会議等で提案する。
具体的には、県、関係市等で構成する(仮称)南部地域振興会議を設置して検討する。
(4) 東海道新幹線新駅等施設整備促進基金の存置
県は、現行協定類の終了にかかる諸課題を考慮し、当分の間、当該基金を存置する。