「淡海の”いい川”づくり研修会~多自然川づくりの技術と推進の方策~」を開催しました。
多数ご来場いただき、ありがとうございました。
日時:平成26年10月18日(土曜日)10時~17時
会場:滋賀県庁新館7F大会議室
テーマ:多自然川づくりの技術と推進の方策
参加者:87名(一般26名、企業15名、学識者・行政46名)
主催:NPO法人瀬田川リバプレ隊、NPO法人全国水環境交流会
共催:滋賀県
後援:国土交通省近畿地方整備局、滋賀県河港・砂防協会、(公財)滋賀県建設技術センター、(一社)建設コンサルタンツ協会近畿支部、(一社)滋賀県測量設計技術協会
※建設系CPD(建設コンサルタンツ協会)単位付与プログラム
◆当日配布資料(
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NPO法人瀬田川リバプレ隊の冨岡親憲理事長より開会のあいさつを頂いたあと、全国水環境交流会山道省三代表理事より今回の研修会の主旨を説明頂きました。
滋賀県における河川の概要、これまでの河川整備状況(琵琶湖総合開発事業等)および淡海の川づくりに関する取り組みについてご説明頂きました。
赤野井湾での取り組みを事例として河川環境系事業の課題をご説明頂き、時代や環境の変化を踏まえた解決策の一つとして「関係者との合意形成」が重要であることをご提案頂きました。
犬上川でのタブノキ誤伐採を失敗事例としてご紹介頂き、今回の発生原因を認識した上での保全・再生対策についてご紹介頂きました。
「カムバック ビワサーモン」をスローガンに掲げた「天野川ビワマス遡上プロジェクト」について、発足経緯、目標およびプロジェクトの取組状況についてご紹介頂きました。
多自然川づくりの留意事項や計画・設計方法などで特に注意すべきポイントを具体的な事例を示しながら、各工法の特徴と併せて解説していただきました。
事例を交えた技術基準の解説と、住民参加・合意形成を主眼に据えた中小河川の「いい川づくり」の在り方、技術者の心構えや熱意の必要性について講演していただきました。
湖産アユは河口付近で産卵する特有の生態があり、瀬涸れ・水位調整・河口部の掘削が産卵や稚魚の降下等に悪影響を及ぼすという調査結果や懸念について生物保全の視点から講演していただきました。
「清流の国ぎふ」づくりを全県的取り組みとし、自然と共生した川づくりを推進するために独自の手引きを作成するなど、現地の特徴・状況を重視した事業を紹介していただきました。
『”いい川”づくりの課題と手法』について、参加者のみなさまと講師の方々で意見交換して頂きました。以下、主な意見交換内容をキーワード別に示します。
→琵琶湖政策課が窓口となって進めており、国会(自民、民主)でも議論が始まっている。県ではマザーレイク21計画に基づき琵琶湖総合保全実施をしているが、法律が成立すれば国家的にも取り組めることとなる。琵琶湖総合開発事業では治水・利水は進んだが、環境に課題が残っている。今後の法制定に期待している。
→環境のためだけの河川改修は困難であるが、付加価値を伴うものであれば事業化も可能だと考える。
→二面張りにした場合の悪影響についても検討が必要である。
→日本河川・流域再生ネットワークにて現在「小さな自然再生」事例集を作成されている。兵庫県武庫川支流では、市民が丸太をジグザグにいれる工事を実施し、河底に土砂がたまるように工夫した結果、生物が戻った例もある。
→琵琶湖守山地区において、ヨシ帯の再生事業を県にて実施した。野洲川河口においても、琵琶湖河川事務所にて実施されている。
→ヨシ帯は「さかなのゆりかご」と言われているが、単に植えれば良いというものではない。生き物の生息環境等を調査の上、事業を進めて欲しい。
→身近な河川だからこそ、みなさんに関心をもって頂き、維持管理にもみんなが関わっていく取り組みが必要である。
→1つの問題にとらわれず、総合的にどうすれば良いかをみんなで考えることが大事。河川技術者ならば、住民の声をまるのみしてはいけない。たとえば、コンクリート張りにした場合のデメリットの情報提供も必要。困っている事象に対する解決策の提案も有効。
→H24年度から流域清掃の取り組みを実施中である。取り組みされているNPOに声かけをして、上流から下流まで一体となり、また下流の三重県とも同じ日に実施するようにしている。
→水際は手をつけないのが原則である。
→上西郷川(福岡市)では地元に年1回分の維持管理の委託をしているが、子供が安全にあそべる場所をつくるためにと、年に数回の清掃等を自主的に行うなど、モチベーションは非常に高い。大変なことと楽しいことをセットでやることが長続きする秘訣ではないかと思う。
→植物繁茂自体は悪いことではない。
→平成6年の大渇水(琵琶湖水位B.S.L-123cm)のときに、湖底に光が届き、大量繁茂のきっかけとなったと言われている。
→繁茂したものは船を使って刈り取っているが、現在根こそぎ刈取る方法も開発中である。また、湖流回復、水質回復の効果も期待している。
→夏に繁茂すると、湖底の無酸素化が進行し、小さな生物が死滅する可能性がある。また、刈り取った後の水草をどこで処分するかも課題である。
→山林の所有者が行うべき管理も、完全にはできていないと思う。滋賀県森林税も活用した対策が必要と思う。
→山林の管理については、県森林部局が所管している。流域治水条例では、森林保全の努力義務規定を入れ込んでいる。平成25年台風18号では6,000トン、平成26年台風では1,000トンの流木やヨシ、ごみ等が琵琶湖に流入した。以前はこのような大量の流木の流入は少なかったように思う。山地に放置されていた間伐材も流れついているようだ。
研修会会場内にて、滋賀県の各土木事務所における“いい川”づくりの取り組みや発表事例のパネルを展示しました。地域の特性を生かし、地域住民との連携や生物に配慮した川づくりが紹介されました。
展示したパネルは、今後、様々な場所で啓発に活用することとしています。
今回の研修会では「多自然川づくりの技術と推進の方策」をテーマにみなさんで様々なご議論を頂きました。議論の中で、特に「地域連携」というキーワードが多く挙がったことからも分かるように、今後の多自然川づくりにおいて、河川技術的側面はもとより、地域一体となって推進していくことが非常に大切であることを学びました。今後、今回の研修会で議論頂いた内容を踏まえ、各主体が淡海の”いい川”づくりのスキルアップに努めて頂ければ幸いです。